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桜子 -3

バスルーム

シャンパンで乾杯し、夜の東京湾を見ながらのディナーは二人の緊張を解き急速に距離を縮めていく。
周囲の建物から洩れる明かりや街路灯が暗い海を照らし、波に揺られて煌びやかな景色を作る。
レインボーブリッジを走る車のライトが果てることなく続く。目指すのは二人がいるお台場なのか、アクアラインから房総半島、あるいは羽田空港や横浜方面に向かう人もいるだろう。
「レインボーブリッジを通過する人たちは何処に行くんだろう。羽田空港かなぁ……」
続く言葉を口にせず、ステーキにナイフを入れる桜子を見つめる柏木は相好を崩す。
「笑った、笑われるようなことをした覚えはないんだけど」
「車の乗降や歩く姿が凛としてカッコ好いなって思ったし、昼食時も姿勢や立ち居振る舞いが優雅だった。今も上品でご両親に愛されて育ったんだろうなって想像できる。惚れちゃいそうだよ……あっ、ゴメン」
「謝らないで、惚れちゃえばいいのに。大歓迎するよ」
「えっ、あぁ、考えとくよ」
「クククッ、惚れるかどうか考えるの??脈なしだね、ざんねん」

「どうする、バーに行く??」
「少し疲れたから部屋に戻りたい。いいでしょう??」
「もちろん、いいよ。バスタイムの後でマッサージしてあげる。案外と上手いんだよ」
「マッサージ??いやらしいヤツ??」
「ばか、真面目なヤツだよ」
「クククッ、照れているの??」
チン……エレベーターで二人だけになると柏木の正面に立ち目を閉じてキスをねだる。

「えっ、どうしたの??柏木さんが用意してくれたの??」
シャンパンクーラーに浸かって飲み頃に冷えたモエエシャンドンが迎えてくれる。
「チェックインした時にディナーの時間などを計算して頼んどいたよ。風呂に浸かって海を見ながら飲むと美味いだろうと思って」
「私の好きなシャンパンをありがとう。シャンパンは飲まない、スパークリングワインで十分って聞いたような気がするけど……」
「店でそんな事を言ったような気もするな」
「すべてじゃないけど、気になるお客さまや大切な人の言葉は些細なことでも憶えているものよ、気をつけた方が好いよ」

バスタブに湯を張る準備を終えた桜子に促された柏木は、グラスは私が持っていくと言う声に頷きシャンパンクーラーを持ってバスルームに向かう。
ドアをほんの少し開けて入浴の準備をする桜子を覗き見しようとすると、
「女の裸が珍しいの??」
後ろ向きでブラジャーを外しながら揶揄うような言葉に首をすくめてゆったりと湯に浸かる。
待つほどもなく股間と胸の膨らみを手で隠した桜子が姿を現し、
「目を閉じてくれる??」
目を閉じて両手で顔を覆うと密やかに近づく気配がして柏木に背中を預ける格好で湯に浸かる。
二つのグラスにシャンパンを満たして乾杯をする。

柏木の手は自然な動きで背後から桜子を抱きしめて胸の膨らみに手の平を這わせる。
「大きくないでしょう??」
「小さくはないよ」
「ウフフッ、丁度いい膨らみなの??バスルームに窓があるって素敵」
「素晴らしい景色を見ながら左手にシャンパン、右手で桜子のオッパイの感触に酔う。至福の時間だよ」
「バスタブに浸かって背中越しにあなたに抱かれてレインボーブリッジを見ながらモエエシャンドンで喉を潤す。夢のよう……次も私が誘うとはしたない女だって思われるだろうから、今度は誘って欲しいなって言ったのを憶えている??」
「憶えているよ。遠いしオレには眩しい店だから頻繁には無理だけど必ず行くよ」
「ふ~ん、普段はオレって言うんだ……勘違いしてるよ。お店は高浜さんに誘われた時だけでもいいの。お店ではこんな事をできないでしょう??」
乳房に添えた柏木の右手に自らの手を重ねて胸を押し付ける。
「そういう種類の店じゃないもんな。プライベートで誘っていいの??」
「違う、まだ勘違いしてる、怒るよ。プライベートで誘ってもいいかじゃなくて、私は店の外で会いたいの……お店で会うのに誘って欲しいなんて言わないよ」
「見てごらん、レインボーリッジの下を船が通るよ」
「意気地なし……」
返事をせず、はぐらかすような言葉に苛立つ桜子は、柏木の胸に背中を預けて寄りかかる格好から身体を入れ替えて太腿を跨いで股間を押し付け、シャンパングラスを窓の縁に置いて両手を首に回し嫣然と微笑む。

「喉が渇いた」
店では周囲から浮いて見えるほど清楚で上品に見える桜子が性的欲望を隠そうともせずに柏木の気持ちを翻弄する。
ゴクッと唾を飲んだ柏木はシャンパングラスを傾けて口に含み、桜子の首と背中に手を回して抱き寄せ唇を重ねる。
シャンパンを流し込むとゴクッと音を立てて喉を鳴らし、桜子の両手は柏木の身体を妖しくまさぐる。
舌を絡ませて唾液を交換し、言葉に出来ないほどの想いを伝えあう。

「気持ちや考えが合う人ってたくさんいるけど身体の相性が合う人ってなかなかいないでしょう??私たちはどうかしら??」
「気持ちは共鳴していると思うしオレの身体は桜子を求めている。身体の凸と凹もピタリと合うと思うよ」
「楽しくて長い夜になりそう」
泡にまみれた身体をまさぐり合い、汗と雑念を洗い流して相手への想いだけを残してバスルームを出る。

ナイティを着けた桜子はバスローブ姿のまま窓際でシャンパンを味わう柏木に向かって、
「約束でしょう」と、うつ伏せでベッドに横たわる。

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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