想いを巡らす 4
ベイブリッジの下を通過した船が港の奥を目指して白波を立てている。
「男は船で女は港って言うけど、健にとっての彩は、どこにでもある一つの港??」
「船にもいろんなのがあるよ。取った魚を条件の好い港を探して立ち寄る漁船もあれば、世界中あちこち予定通りに寄港する豪華客船もあるし、二つの場所を行き来する渡し舟のような船もある。オレはあちこちの港に行かないよ、迷っちゃ困るから」
「そう、良かった・・・お腹が空いたから、何か食べに行きたい」
「うん、ちょうど良い時刻だね。少し歩くけど良いかい??」
ホテルを出た二人は左に観覧車、右側にクイーンズスクエアの建物を見ながら桜木町方面を目指して歩く。
日本丸が見えると、
「世界一周じゃなくてもいいから、日本丸で風任せに太平洋へ出てみたいと思わない??」
「たっぷりの食糧と時間を積んでね。他人の目を気にせず彩と二人きりで海の上・・・アッ、忘れちゃだめだ。電池も積まなきゃ」
「クククッ、オモチャ用??」
「そうだよ。四方を海に囲まれて、寝っ転がれば陽の光が降り注ぐ中、彩が我慢できるはずがないだろう。スッポンポンの彩を最初の内はボッキッキ~で相手できても、いつまでもっていう自信はないよ」
「止めて、そんな身振り手振りで話すからすれ違う人が笑ってるよ」
左側に港、右側に横浜の街を見ながら西に進んで川を越え、万国橋を左に見て左右の歩道をつなぐアーチをくぐってレンガ敷きの馬車道通りを歩く。
県立歴史美術館や損保ジャパンの壁面など、この街の歴史を未来に語り伝える威風堂々とした建物を見ると、手をつないで歩く二人の不倫など歴史の中に一行のメモさえ残すはずもないし、そんな事を悩んでもしょうがない、目の前の幸せを精一杯楽しもうという気になる。
関内駅近くのビルにある和風ダイニングに入り、予約してあった旨を伝えるとロフト形式のカップル専用個室に案内される。
しっかりとした壁とドアに囲まれた個室は他人の目を意識することなく二人きりの時間を過ごすことが出来る。
「なんか、いやらしい部屋。照明さえもエッチに感じる・・・知らず知らずのうちに小声になっちゃうね。それよりも予約してたんでしょう??前に来たことがあるの??」
「ベイスターズの応援に来た時にね」
「ふ~ん・・・誰と来たかは聞かないであげる」
過度な装飾が無く向かい合って座る二人を灯りが照らし、テーブルの下では健の足が早くも彩の足に絡みつく。
「いやんっ、そんな事・・・したくなっちゃうよ」
「オレだって・・・ホテルの部屋でソファに座っていたらスカートは穿いてるけど、パンツを穿いてない彩が跨ってウニャウニャしただろ、あの時、先っちょが入ったのに気が付いた??」
「あっ、バカにしてる。例え先っちょだけでもオマンチョにチンチンが入って気付かないと思う??」
「ウフフッ、そうだね」
コンコンッ、ノックと共にオーダーした料理などが運ばれてきた。
魚介類や地鶏のグリルなどを彩はビール、健はジンジャーハイボールと共に腹に収める。
いやらしい部屋だと言ったことも忘れたように、エッチな気持ちを表に出さずに彩は貪りつく。
目の前で気持ち良いほどの健啖ぶりを見せる彩に温かい気持ちが湧いてくる。
「お腹が空いてるんだからしょうがないでしょう・・・品が無くって嫌??」
「お風呂でオレに寄りかかって安心できるって言ってくれたろう。彩ほどの好い女が本気で食べるのも気を許しているからこそだと思って嬉しいよ・・・本当だよ」
馬刺しやカルパッチョ、さつま揚を食べて焼きそばからアイスクリームを食べ終わる頃には、彩は健を、健は彩を早く食べたいという思いが募る。
「カクテルを頼みたいけど、それよりも欲しいものがある」
「オレもだよ。オレは、カクテルよりも観覧車に乗りたいなと思っていたけど、今はベッドに寝っ転がってライトアップされたベイブリッジを見たいな」
「ねぇ、帰ろう。我慢できなくなっちゃった・・・チンチンの先っちょが入った時、やっちゃえば良かったかなぁ・・・これは彩からのプレゼント」
スカートの中に両手をくぐらせてショーツを下ろした彩は、指先で摘まんで健に差し出す。
「えっ、どうしたの??」
「スカートの中はスッポンポン。健と二人だからスリルを味わいたいの」
「スリルとスピードはセックスの前戯になるって人がいるらしいけど彩もそうなの??」
「う~ん、そうかもしれない。運転してる時に前を走る車を追い越した時にドキッとする事がある」
「スカートを脱いじゃいなよ」
「イヤッ、そんな事できない」
「大丈夫だよ。誰も来ないし、外からは見えないよ。ここで、スッポンポンの彩を見たい」
ハァハァッ・・・健にも感じられるほど彩の息が激しくなり、目の縁が朱に染まる。
想いを巡らす 3
「えっ、何、嘘でしょう・・・すごい・・・健が用意してくれた部屋は驚く事ばかり・・・」
シャワーを浴びた健はバスタブに湯を入れながら座り込み、続いてシャワーブースに入ろうとする彩は感嘆の声を漏らす。
バスルームには大きな窓があり、リビングで見た景色と同じ横浜港が広がり、ベイブリッジを走る車が見える。
「好い景色だろう。ビューバスは、バスタイムと海が好きな彩へのプレゼントだよ」
バスタブとシャワーブースは透明な壁で仕切られているだけなので、汗を流す彩の全身を余すことなく見る事が出来る。
汗を流し終えてバスタブに近付く彩の顔を見つめ、徐々に視線を下げていき幼児のような股間を見つめる。
「いやっ、そんなに見つめないで。外の景色を見るか目を閉じるかしてよ、恥ずかしい」
健は縁に寄りかかって目を閉じ、彩は股間を隠す事もなくバスタブのそばに立ちシャワーヘッドを健に向ける。
ウフフッ・・・シャァッ~・・・・・
「オッ、気持ち良いな・・・ツルマンも目の前に見えて眼福ってやつだし、外の景色も絶景。どこを見るか迷っちゃうよ」
「目を閉じていたはずなのに・・・彩がお湯を掛けるって分ってたの??」
「彩の事が好きだからね、悪戯好きなのも知ってるよ。シャワーを浴びせられなかったら、オレの彩への思いを疑うところだったよ」
「ウフフッ、健は彩が何を考えてるか分かるんだ・・・じゃぁ、今はどうして欲しいと思ってるか、当ててみて・・・」
立ち上がった健は、彩を抱き上げてそのままバスタブに戻り、腿を跨いで座らせる。
眩しそうに健を見つめる彩は目を閉じ、その頬に両手を添えて存在を確かめる風の健は唇を合わせる。
アフッ、ウッ・・・互いの唇をついばみ、舌先が宙で絡み合う。唇が離れては重なり、重なっては離れていく。
「変わってない・・・彩は彩のままだった」
「彩の事を確かめていたの??嫌な男。彩を後ろから抱っこして・・・いいでしょう??」
腿を跨いで胸に寄りかかると同時に健の腕が彩を包み込む。
「こうして背後から抱きかかえられると安心できるし、幸せだなぁって感じる」
「ありがとう、背後は見えないし無防備だから、後ろを任せられると言ってもらえると嬉しいよ」
スポーツに興じ身体を動かすのが好きな彩の身体は、小柄といえども均整が取れて一人でいるところを見ると実際よりも大きく見える。
筋肉が覆うだけの身体ではなく柔らかな肉が全身を包み、直接肌を合わせるとムッチリとした感触が伝わって心地良い。
成熟してマシュマロのような弾力のある乳房を手の平で包み込んでヤワヤワ揉み込む。
「手の平を押し返してくるような感触が彩のモノだ、彩と一緒に居るって実感できる」
「大きくないオッパイなのに??・・・健は、以前そう言ったでしょう??」
「彩が言ったんだよ。彩のオッパイは大きくはない手の平サイズって・・・それを否定せずに真似しただけなんだから」
「そうだっけ、思い出せないけど信用する・・・見て、赤レンガ倉庫の向こうは大桟橋だよね、そこに大きな客船が停泊してるよ」
彩の指さす方向に視線を移すと、客船らしき大型船が見える。
「あの船に乗って南の海を航海中、ザブンッて海に飛び込む彩の姿が想像できる・・・クククッ」
「そんな事をするとサメの夕食になっちゃうよ・・・アンッ、気持ちいぃ・・・言って、彩は可愛いって」
「可愛い彩に毎日会えないのが寂しいよ・・・」
「私も・・・健の事を忘れることが出来れば楽になると思うけど忘れられない」
本音とも冗談とも取れる言葉で気持ちを表現した二人は、それ以上、言葉を繋ぐ事は止めて港の景色を見つめる。
時にはバスタイムに一時間近くもかけるほど風呂好きな彩が、大好きな海を見ながら健に抱きかかえられて至福の時間を過ごす。
波が陽光を反射してキラキラ輝く明るい景色と、バスタブに浸かって不倫相手の男に抱きかかえられる淫靡な自分を比較して訝しく思う。
今朝、二泊出張の夫を見送った時は隣家の奥さんに、いつも仲がいいねと言われた。
その夫は、会社の後輩と浮気をしているような気がする。
確信に近い思いでいるが、それを確かめる勇気もなく悶々と過ごしていた時にブログを通じて懐かしい健と再会し、今また過ちを犯そうとしている。
「どうした??」
彩は背後から抱きかかえてくれる健の腕に手を置き、全身を預けて目を閉じる。
「彩は二泊出来るけど健は??」
「オレも大丈夫だよ。本当に好いのか??」
「出張は二泊だし、実家へ帰るって言ってあるから平気。上手くいってないわけじゃないけど、電話するはずがないから・・・健は??」
「ウチのは実際に実家へ行ってるから大丈夫。結婚当初はオレが学生だった事や妻が水商売してたりとギクシャクする事もあったけど、今は義姉との仲が妬けるほど好いから大丈夫だよ」
「そう、良かった・・・でも、二泊じゃ、あの船に乗って世界一周ってできないね」
想いを巡らす 2
「えっ・・・すごい、この部屋で間違いないの??彩のためなの??・・・ウフフッ、無理しちゃって、ありがとう」
昂奮で声を上擦らせる彩は振り向いて健の頬に唇を合わせる。
部屋に入ると右側にベッドルーム、左側にリビングルームがあるスイートタイプで大きな窓に広がる眺望は夜が待ち遠しくなる。
ライトアップされた景色や走る車のヘッドライトが作る光の帯を想像すると、自然と顔が火照り動悸が激しくなる。
ベッドルームの正面に観覧車が見えて赤レンガの倉庫群が続く。海を挟んで、その向こうにはビルの立ち並ぶ街並みが続き、青い空がそれらを優しく包み込んでいる。
「ライトアップされた観覧車やビルの窓に点く灯りを想像してごらん・・・興奮するだろう」
「うん、興奮する。夜景を見ながらこのベッドで健に愛されるんだよね・・・あぁっ~、ダメ、濡れちゃう」
倒れ込むようにベッドに寝た彩は、目の縁を朱に染めて妖しげな視線を健に送り、魅入られたように覆い被さる健は唇を合わせてスカート越しに腰を撫で回す。
「間違いなく彩だ。このムッチリ感は忘れることなく手の平が記憶している」
「アンッ、彩も健に抱かれるこの感触を忘れた事はなかったよ。枕を抱いて気を紛らしていたんだから・・・もっと強く、ぎゅっと抱いて・・・いぃの、嬉しい」
再会を待ちわびていた時間を抱きあう事で取り戻した二人は、軽く唇を合わせて気持ちの火照りを冷まし、身体の疼きを我慢してリビングルームに場所を移る。
目の前には港の景色が広がり正面には左右の埠頭を繋ぐベイブリッジが見え、その下をタグボートが走り岸壁には大きな客船が係留されている。
海が好きな彩は大きな窓ガラスに手を突いて目の前の景色に見入り、健はほんの少し開く窓を開けて海の匂いを招き入れる。
景色に魅入られる彩を残してエスプレッソマシンで抽出したコーヒーを持ってソファに座ると、香りに誘われて振り向き鼻をヒクヒクさせる。
健の腿に向かい合って座った彩は、
「好い匂い・・・二杯も必要ないのに、飲ませて」
さすがに淹れたてのエスプレッソを口移しでと言うわけにはいかず、カップを支えて彩が飲むのを静かに見つめる。
海を背にして座る健の腿に座る彩の目の前には横浜港が広がり、陽の光を反射してキラキラ光る海面を見つめて眩しそうに目を細める。
左手を彩の背中に回して身体を支え、髪を撫でていた右手が背中を撫で下りて腰から尻の感触を味わう。
「それで好いの??我慢できちゃうんだ」
海に視線を向けたままの彩はからかうような言葉を掛けて下半身を蠢かす。
「クククッ、車に乗る時、お姫様になりたいって言ったろ。お姫様に失礼な態度を取っちゃいけないかなと思って我慢してるよ」
「ウフフッ・・・許してあげる。やりたい事をしても良いよ」
そうか、ありがとう、と言った健は尻を撫でていた手をスカートの中にくぐらせ、下着を着けていない肌の感触を確かめるように手の平を押し付ける。
「あぁ~、いいな・・・彩だ、間違いなく彩だ」
「クククッ、ムッチリ尻の感触は変わってない??彩の自慢なんだからね」
「見なくても触ると分かるよ。目を閉じると・・・手の平に吸い付くような白い肌、手の平と肌が混じり合って一つになってしまいそうだよ」
「ウソ・・・目を閉じて、白い肌って分るの??」
「うん??・・・目を閉じると染み一つない彩の白い肌が瞼の裏に浮かぶんだからしょうがないよ」
「奥さんと同じベッドで寝るほど仲がいいんでしょう??奥さんを抱きながら彩の事を思い出した事はある??」
海を見ていた彩の瞳は、悪戯心を滲ませて健の瞳を覗き込む。
「正直に言うと、それは無い。目の前にいる大切な人以外を思い出したりしないよ。それは今も同じ、目の前にいる大切な彩以外の人を思い出したりしない」
「そうなの、良かった。奥さんを抱きながら彩の事を思い出したりしたら奥さんは気付くはず。それは、彩にとっても好ましい事じゃないもん。健といる時間は楽しいけど主人と別れるつもりはないし、それは健も同じでしょう??」
「そう、その通りだよ。彩と一緒になっていたら、どんな生活をしているのかなぁって想像した事はあるけどね・・・想像だけならいいだろう??」
「うん、そんな想像してくれるのは嬉しいし、彩も考えた事はあるよ。大切な人が一人じゃなく二人いるって楽しいね。もっとも、健の大切な人が、奥さんと彩以外にいないとは言い切れないけどね」
「おいおい、オレはそんなに信用できないか??」
「浮気はしたことがない。浮気をするのは妻にも相手にも失礼、オレはいつも目の前の相手に本気だ・・・が主義なんでしょう??ウフフッ」
時間の経過と共に自分に正直になり、いつものようにあるがまま受け入れて今を楽しむ事だけに集中する。
唇を合わせて彩の肌を撫で回すうちに健の股間に力が漲り、それを感じた彩が中腰になって下半身を蠢かすと、
「あっ、入って来ちゃう、エッチ」
「彩が変に動くからだろ、オレのせいじゃないよ」
「ウフフッ・・・入らせてあげない。久しぶりだから一回目は、ゆっくり可愛がってもらうんだからね。手抜きしちゃダメだよ」
「今日は寝かせないよ・・・なんかさ、暑くなってきた。汗を流したいからシャワーを浴びてくるよ。彩も一緒にどう??」
「うん、先に行ってて、後で行くから」
想いを巡らす 1
前日のバケツをひっくり返したような雨も止み、宇宙の果てまで続きそうな青い空を見上げる男は眩しさを避けるために手をかざす。
「何か見えるの??」
「えっ、あぁ・・・久しぶり。元気だったようだね、調子はどう??」
「その前に、質問に答えてよ」
「不思議だなぁって・・・」
「なに??わけわかんない」
「この場所の緯度は35度くらいだけど、赤道上にいると考えて欲しいんだ」
「何だか分かんないけど良いよ。私は赤道上に立っている・・・これで良いのね」
「うん、ありがとう。赤道の周囲は凡そ4万キロ、24時間で地球は1回転する・・・時速に換算すると、4万キロ割る24で約1670キロ。時速1670キロで回転しているのに目が回らないし、つんのめる事もない。電車だと立っていられないよ・・・そんな事を思って空を見ると不思議でね」
「ウフフッ・・・おつむは重症だね。それとも彩と久しぶりに会って興奮してる??」
「そうか、久しぶりに会えるってんで興奮してたんだ。治療しなきゃ・・・」
男は自らを彩と呼んだ女の腰に手を回して抱き寄せ、何も言わずに唇を合わせる。
「クククッ・・・どうしたの、急に。皆が見てるじゃない、恥ずかしいよ」
「うん、落ち着いた。治療終了・・・食事にする、それとも風呂に入る??ベッドの方が良い??」
「その前に予約してくれたホテルを確かめたい・・・まさか、ラブホなんてことはないよね??」
「クククッ、不倫中の二人の目的はラブホが満たしてくれる・・・乗って、それとも紳士らしくエスコートしなきゃダメ??」
「そうね、健と一緒の時間はお姫様になりたいな」
健と呼ばれた男はドアを開けて彩が頭をぶつけないように気遣いながら車に乗るのを待つ。
「それでは彩さま、ホテルに向かいます。シートベルトを止めてください」
「シートベルトをしても襲わない??彩が座った時、自慢のムッチリ腿の辺りをジロッて見たでしょう、気付いていたんだから・・・エッチ」
「えっ、ごめん・・・確か、普段はジーンズが多いって聞いた記憶があるからオレのためのスカートかなって・・・」
「そうだよ、家を出る時はジーンズだったよ」
「えっ、途中で穿き替えてくれたんだ・・・クククッ、思い出すよ。昔、彩と会っていた頃の田町駅。ジュリアナ東京へ行く女子が田町駅のトイレで着替えをするんだよね。トイレに入る前は蛹、出てくると妖艶な蝶に早変わり・・・そんな事を思い出して我慢できなかったよ。感じ悪かったなら、ゴメン」
カーナビに入力する健の手元を見る彩は表情を綻ばせて、
「バブルの真っ只中、思い出すね・・・ウフフッ、そうなの、彩の太腿が大好きなんだ。なら許す、大好きなものはジロッて見たくなってもしょうがないよね・・・」
走り始めた車の周囲に一瞥をくれて、大丈夫だなと独り言ち、あっという間もなくスカートを捲り上げて股間を晒し、すぐに元に戻す。
「ウンッ??下着を着けてないの??筋が見えたよ」
「クククッ、教えてあげない・・・忘れたの??」
「うん??憶えてるよ、忘れるはずがないよ。再会から別れの朝、サヨナラを言う直前にソリソリしてツルマンにしたんだよね、それで次に会う時までソリソリを続けるって言ったんだ、忘れるわけないよ。彩の言葉を思い出しちゃアソコを大きくしてたもん」
「ほんとう、彩の事を思い出して大きくしてたの??ボッキッキィ~って・・・うちの人に、急にどうしたんだよって言われながらずっとソリソリしてたんだよ、嬉しい??」
うちの人の一言に健は反応を示さなかったものの、近況を話題にすると互いの伴侶を思い浮かべてギクシャクするのを経験しているので、一瞬話が途切れる。
「彩、会いたかったよ」
伸ばした左手を彩の腿に置いた男は前を見つめたままで言葉を掛ける。
「うん、彩も会いたかった。健の姿を見た瞬間、嬉しくて駆け出したくなる自分を抑えるのに必死だったよ・・・健の手に触れているのは嬉しいけど、事故が怖いから後でね」
「そうか、我慢するか・・・不倫の男女、久しぶりの逢瀬で我慢できずにイチャイチャして交通事故。そんな見出しになっちゃ困るしね」
他愛もない話を続け、しばらく会えなかった時間がもたらす緊張が解れた頃、ヨットの帆に似た外観のホテルに到着する。
チェックインを済ませた二人はベルボーイの案内を丁重に断り、エレベーターの扉が閉まると同時に我慢の限界と言わんばかりに彩は健に抱き付く。
小柄な彩は健の胸に顔を埋めて大きく息を吸い込み、羞恥を滲ませた瞳で見つめる。
「健は何も言わずに私の唇にチュッとして満足したかもしれないけど、彩はこれでやっと落ち着いた。久しぶりで健の匂いで胸を満たして落ち着いたよ」
シースルーエレベーターから見える横浜の街並みを気にする風もなく彩は言葉をつなぎ、無言の健は背中に回した手に力を込めて自然と頬が緩むのを意識する。
待ち合わせ 7
コンニャクと紛うほどフニャフニャだったペニスもアユの指で摘まんでワインに浸し、何度か舐め取るうちに半立ちとなり二人の表情に笑みが浮かぶ。
「もっと大きくなるかな??大きくなったカッチカチのあなたが好きなんだけど」
アユは摘まんだペニスの先端を指先で撫でながら楽しそうに話し掛け、見つめる男は腰を突き出してフェラチオを催促しているように見える。
「無理だよ。可愛いアユが相手でも二度はムリだよ」
「ウフフッ・・・試しちゃおうかな」
舌先が亀頭を舐めて鈴口をつつく。エラをなぞり、竿の裏側の筋に沿って舌がチロチロと這い降りていく。
根元に添えた指は徐々に熱を持ち、男はアユの昂奮を感じて鼓動が早くなり息をするのも辛くなる。
半立ちのペニスを包み込んだ手を何度か上下させても変化の兆しさえ見えず、ダメか、と呟いたアユはパクリと口に含んで顔を上下する。
左手を添えたペニスを温かい口に含んでネットリと舌を絡ませ、右手で包み込んだ陰嚢をヤワヤワと揉むと変化の兆しが見え始める。
瞳に笑みを浮かべたアユは、誇らしげに上目遣いで男を見つめる。
男の表情はアユの意に反して先ほどまでの笑みが消えて無表情に見える。
一瞬、フェラチオする事を怒っているのかと思ったが、額に被さる髪に手櫛を入れて整えられると、そうでは無さそうだと安心する。
無表情のまま剥き出しのペニスを咥えさせる男に見下ろされる自分の姿を想像すると興奮が高まり、動悸が激しくなる。
ソファに座る男。その男は抱いて欲しくてたまらなかった相手であり、その前に跪いて見下ろされながらフェラチオするのは得も言われぬ悦びがある。
恋してやまない男に奉仕するのは悦び以外の何物でもない。
気持ち良いとか、嬉しいとか褒めて欲しいと思わない。
愛おしい男の足元に跪いて奉仕する自分に恋するのを意識する。
奉仕する相手の男が愛おしいし、その男に奉仕する自分もまた愛おしい。
クチャクチャッ、ジュルジュルッ・・・フェラチオに熱が入る。
口に含んでいるのは恋しい男そのもの。舌を躍らせ、一心不乱に顔を上下する。
ウッ、ウググッ・・・突然、口の中のモノは膨れて喉の奥をつつく。
目に涙が浮かんでも口に含んだモノを吐き出すどころか、フェラチオに一層熱が入る。
そんなアユに男が声を掛ける。
「おいで、オレのモノをオシャブリしてくれるアユを見ると心が熱くなって力が漲ってきたよ」
「うん。好きな男のモノが私のお口の中でズンズンって大きくなると・・・ウフフッ、アソコがグチョグチョになっちゃう」
抱え上げたアユをソファの肘掛を背にして座らせ、大きく足を開かせる。
股間を隠そうとすると手首を掴んで払いのけ、伸ばした指で割れ目を開いてじっと見つめる。
「イヤッ、恥ずかしい・・・何も言わないで見つめられると欠点を探されているようで不安になる。やっぱり意地悪な男」
羞恥で顔を上気させたアユは、見ちゃダメの言葉を残して身体を捩じり、男に背中を見せる。
腰を掴んで動きを封じ、腰から首まで産毛の存在を確かめるような繊細な動きで舌を這わせる
「アウッ、ウッウッ・・・いやぁ~ン。オマンチョを隠したら、背中を・・・アンッ、やっぱり、あなたの触る場所が私の性感帯・・・アウッ」
「いっぱい感じてくれて嬉しいよ・・・緊張しちゃダメだよ」
触れるか触れないかの微妙なタッチで舌と爪の先を縦横無尽に背中で遊ばせ、膨れ上がって宙を睨む股間のモノをアユの内腿に押し付ける。
アユが手を伸ばして掴もうとすると男は腰を引き、快感で漏れそうになる声を防ごうと手を口に持って行くと再び腿に押し付ける。
「いやんっ、オチンチン。私のチンチン」
背中を向けていたアユが正面を向いて男の下半身に手を伸ばすと、ずり下がって両足を抱き、股間に顔を埋める。
「好い匂いがする。アユの匂いがする、甘くてエロイ・・・この匂いは何処から漏れてくるのかな??」
滑りの元となる場所に鼻先を擦り付けて左右に震わせる。
男は指や爪、唇や舌を使ってアユを愛撫する。
膝や腿を股間に擦り付けても、アユは喘ぎ声を漏らす。
アユも両手、唇だけではなく髪の毛の先が男に触れても気持ち良さげな表情を浮かべるのを見て、自らの快感を高めていく。
どちらが求めたわけではなく、自然なままで二人は身体をつなげて互いの気持ちを確かめ合う。
上になり下になり、正常位から側臥位を経て騎乗位に変化し、抱きかかえて対面座位となり濃厚なキスを交わす。
思いのたけを伝えようとして貪り尽し、唾液を交換する。
「ハァハァッ・・・すごい。こんなの初めて・・・二度目が出来るかどうかなんて嘘。もう何も欲しくないほど、満足させてもらった」
「そうか、オレはもう用なしか・・・何も欲しくないんじゃしょうがないな」
「クククッ・・・怒るよ。次はいつ会ってくれるの??違った、いつ抱いてくれるの??」
それには答えず、何かしたい事や、どこか行きたい所があるかと聞かれたアユは、
「ある・・・あるよ。レストランで食事をしてホテルのベッドへ・・・ダメ??もちろん、泊まらなくてもいいよ」
「う~ん・・・土曜日か日曜日でどう??」
「ウフフッ・・・決まり、次の土曜日で決まり、3日後の土曜日だよ。約束したよ。ホテルは勘弁してあげても良いよ」
<<おしまい>>