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桜子 -1

店外デート 

「久しぶりに夜の誘いなのか??」
「それに違いはないけど桜子ちゃんを覚えているだろ??崩れた雰囲気のあの人は来ないのかって……連れてきてくれって言っているんだけど、どうする??」
「今日、明日って訳にはいかないけど、明後日なら行けるよ。崩れた雰囲気ってのは失礼な言いかただな、会社帰りのハマたちとオレのナリは違ったけど」
「明後日はピシッとスーツでキメタ恰好を見せてやりなよ、惚れ直すと思うよ」
「揶揄うんじゃないよ、連れてきてくれは営業トークだろ。時刻は改めて連絡してくれ。それじゃぁ、明後日を楽しみにしている」


「いらっしゃいませ。ご来店お待ちしていました。高浜様にもう一度お会いしたいとお願いしたのですが、ありがとうございます……スーツ姿もお似合いです」
「俺は添え物。今日は桜子ちゃんと柏木の邪魔をしないように黙って水割りを飲んでいるよ」
「そんな事を……高浜さんを邪魔だなんて思いませんよ」
「高浜に聞いたんだけど崩れた雰囲気が私への印象と言うことなので昔を思い出してスーツを着けてきました。表情や身のこなしが崩れているなら無駄な努力だけどね」
「崩れた雰囲気は批判したわけじゃありません。そんな風に感じさせたのなら謝ります、ごめんなさい」
「私こそ美人を前にして斜に構えた言葉遣いを反省しています」
「いえ、そんな……仕事帰りでスーツ姿のお客様が多いので柏木様がすごく新鮮でした。以前は同じ会社にお勤めだったのですか??」
「そうです、同期でした。私事で退職しましたが今は満員の通勤電車を見て辞めなければよかったかなと思うこともあります」

「高浜さん、私のお願いをお聞き入れ頂いてありがとうございました。柏木さん、今日はありがとうございました……お見送りいたします」

「遠くからわざわざ来たのに桜子ちゃんは話をするだけで満足したようだね。期待させて悪かったな。俺は地下鉄だからここで別れるよ。それじゃぁ」
柏木の手の中に、お見送りの最中に桜子から渡されたメモがあるのを知らない。
よろしければ電話ください。番号を書いておきます。桜子
読み終えた柏木は宙を睨み、フゥッ~と息を吐いて名刺をポケットに入れる。


「もしもし、桜子さんですか??……柏木です」
「昨日はありがとうございました。厚かましいお願いで嫌な女だと思われたかもしれませんが、どうしても、もう一度お話をしたかったモノですから」
「どうですか、店の外でお会いしませんか??」
「えっ、いいんですか。どういう風にお誘いしようかと思っていたのですが、ありがとうございます」
「お誘いした後で申し訳ないのですが桜子さんの事をよく存じ上げないので、どうすればいいか困っています」
「ドライブはどうでしょうか??誰にも邪魔されずにお話できますし……行先はお任せします。それと、たまたまですが明日はお店から休みを頂いています」
「分かりました。ご都合のいい場所を教えてください、お向かえに上がります」

首都高都心環状線を芝公園で降りて待ち合わせのホテルに向かう柏木は成り行き任せで今日のデートに至った経緯を振り返り、目の前の餌に大口を開けて食らいつくダボハゼのような女性好きは我ながら困ったモノだし、もう少し落ち着いた生き方をできないものかと苦笑いを浮かべる。

ホテルについてラウンジに向かうと桜子が手を振って迎えてくれる。
平日とあって待ち合わせや商談中のサラリーマンの姿も多く、にこやかに手を振る桜子と待ち人である柏木を見比べる人もいる。
そんな視線を無視して、遅れてごめんと言葉をかけると、
「私が早く着きすぎたからで柏木さんは遅れていません。本当に来てくれるか心配で何度も時刻を確かめてはドキドキしていました」
パンツ姿の桜子はカジュアルなコーディネイトにもかかわらず優雅な振る舞いで見つめる柏木を楽しませる。
「何かついていますか??そんな風に見つめられるのに慣れていないから恥ずかしい」
「謙遜の度が過ぎると同性に嫌われますよ」
「フフフッ、さりげなく褒めてもらえるのって気持ちが好いです。あっ、決して柏木さんの仰る通り、そうだその通りと思って謙遜している訳じゃないです。そんなに自信家ではありませんから」

「桜子さんを見て、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。この言葉を思い出しちゃった」
「えっ、褒めてもらっていると思うけど言葉が過ぎると揶揄われているようで不愉快です……ウフフッ、私を口説いていますか??」
「席を立って迎えてくれた時の印象はすらりと伸びた茎に咲く芍薬、優雅に座った姿は百花の王と言われる牡丹の花。楽しそうに笑顔を浮かべるときは風に揺れる可憐な百合の花を連想させる。大袈裟に褒めているわけじゃないよ」
「もっと褒めてもらいたい。柏木さんの褒め言葉は私の耳と脳を優しく愛撫してくれる。心地良くて身体が火照っちゃう」
「言葉の愛撫か、そんなテクニシャンだったとは自分でも気付かなかったよ」
他人行儀と思えるほど堅苦しく話していた二人はそれほどの時間を必要とせずに打ち解け、際どい冗談を交えて話すほどになっていた。
「行こうか」
「はい、行っちゃいましょう」
「えっ??」
「柏木さんと一緒だと楽しくて普段の私とは別人になっちゃいそう。ウフフッ」

柏木が車のドアを開けると笑みを浮かべて感謝を表し、後ろ向きに浅く腰を下ろして揃えた両足を引き入れると同時に正面を向く。
優雅で自信に満ちた所作を見ると自然と笑みが浮かぶ。
芝公園で首都高に乗り川崎浮島JCTでアクアラインに進路を取る。
何処に行くのかとも聞かず、食事、ファッション、スポーツなど尽きることない話題で桜子は笑みを絶やすことがない。
君津で下りて房総スカイラインを走り始めると、視界から海は消えて山の中の景色になる。
「外房の海に沈む夕陽を見ながら愛を語ってくれるなら嬉しいけど、この道は何処に続くのでしょうか??」
「クククッ、夕陽を見ながら口説きたいけど無理だな。外房で見えるのは朝陽、夕陽は無理だから口説けないな」
「そうだ、西伊豆にでも行けば富士山と沈む夕陽を見ながら口説いてもらえたかもしれない。ざんねん……でも美味しい魚料理を期待できそう」

房総スカイラインから鴨川有料道路を経て、鴨川市内から西に向かう。
「美味い魚を食べに行こう。クジラもあるよ」
10Km ほど西にあるクジラ料理が自慢の店でクジラのステーキ、刺身、唐揚げ、しぐれ煮や地魚の刺身などを堪能する。
「クジラ料理は初めてじゃないけど、クジラの種類やメニューの多彩さはすごいし地魚の刺身も美味しかった。この店の料理が目的だと言われても納得しちゃいそう」
「桜子さんを驚かせるのは少々の事じゃ無理だろうから、ここまで来たんだよ」「これで終わりじゃないでしょう??」
「次が問題だな。つまらないと言うか、楽しんでもらえるか……オレの評価が決まるだろうな」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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