彩―隠し事 396
温泉-3
15時をほんの少し経過した頃でウインズまで2km余り、前日発売締め切り時刻には十分な余裕があり、散歩を楽しんでも間に合うだろうと川の両側の桜並木沿いに手をつないで歩く。
「この遊歩道はさくら温泉通りって言うんだね。桜が満開の頃は人でいっぱいになるんだろうな」
数か月前には満開の桜並木だっただろう景色を想像するとつなぐ手に自然と力がこもる。
「彩は写真撮影も好きだけど、今日は止めとく」
「そうか、そうだね」
この瞬間は記憶に刻むだけにして他人の目に触れるかもしれない記録は残さない方がいいのだろう。
10分ほど歩くと左側に広い公園が広がり、整備された緑地では家族連れが遊び、観光客と思しきカップルが東屋で日差しを避けながら楽しげに語らっている。
「日焼けを気にせず寝っ転がりたいなぁ」
「クククッ、寝っ転がってうたた寝する彩のそばに座って日陰を作ってあげるよ。帰りに彩の寝顔を見せてくれるかなぁ」
「寝顔を見るだけでいいの??ホテルに戻って彩の衣服を脱がせてスッポンポンにしたくないの??」
「今日は可憐な彩を見ていたい。彩を相手に欲情を滾らせると別れた後が辛くなるかもしれないからな」
「ふ~ん……彩のハダカンボの写真や動画を残してあげようか??」
「欲しいけど、いらねぇよ。オレは彩が思っている以上に惹かれているから、ポケットにハダカンボの彩を忍ばせていると執着しちゃうかもしれねぇよ」
悪ぶって話す健志の横顔にちらっと視線を走らせた彩は満足とも不満とも区別のしようもない笑みを浮かべて一心不乱に歩き始める。
小柄な彩が急ぎ足になっても健志は易々とペースを合わせ、苦にすることがない。
笛吹みんなの広場と名付けられた公園を後ろにする頃には川が合流して幅が倍ほどになり、桜並木も途絶えている。
小学校や幾つもの旅館やホテルを見ながら、さくら温泉通りを経て富士見通りを40分ほど歩くとウインズ石和に到着する。
彩は、7を軸にして1・4・6・8相手の馬連と3連単マルチ、健志は10を軸にして4・5・6・7・8相手の3連複を買って帰路に就く。
二人が揃って当たることはないので、当たった方が次に会った時に何でも命令できるルールにする。
「次に会う時が楽しみ。健志を彩の下僕にしてあげる……楽しみだなぁ」
「オレが勝ったら、そうだなぁ……バイバイするまで彩の股間のポケットにオモチャを入れることにしよう。クゥッ~、想像するだけでアレが昂奮する」
「ほんと??……嘘吐き、可愛いままでおっきくなっていないよ」
周囲に注意を払いながら健志の股間に手を伸ばした彩はわざとらしく頬を膨らませる。
「可愛いなぁ……キスしちゃおう」
頬を膨らませた彩は周囲の人たちを気にして羞恥から俯き、そんな彩を愛おしく思う健志は自らの想いを抑えることなく彩を抱きしめて唇を合わせる。
「ウフフッ、ねぇ、早く帰ろう。お風呂に入って汗を流しっこ、その後は露天風呂に場所を移して……健志が彩の身体と気持ちに火を点けたんだよ。ねっ、いいでしょう??責任を取ってもらうからね」
言い終えた彩が上唇に舌を這わせて滑りを与える仕草が色っぽい。
昂奮で唇はリップグロスを塗ったようにプルプルと滑りを帯びて透明感が増し、みずみずしいうるおいが健志の琴線を刺激する。
彩にもまして獣欲を滾らせる健志は通りかかったタクシーを止めて、背中を押すようにして乗り込み、ホテルに戻る。
バタンッ……ホテルの部屋に戻り、ドアが二人とそれ以外の世界を分けると彩も健志も衣服を脱ぎ捨てて素っ裸になり唇を重ねて抑えていた欲情を解き放つ。
ングッ、ングッ、クゥッ~……ジュルジュル、ジュボジュボッ、ハァハァッ……見つめ合う瞳は獣欲を隠そうともせずに妖しく光り淫蕩さを漂わす。
気持ちの昂りを抑えきれない二人は息を弾ませて互いの肌をまさぐり、健志は小柄な彩を胸に抱え込み、彩は胸に顔を埋めて背中に回した両手に力を込める。
「SMショークラブで下着姿になって縛られた彩を見た健志が一目惚れしたでしょう。クククッ、ゲストたちは互いを見えないけどステージからは、はっきり見える。健志が緊縛された彩を見る目はギラギラして欲望を隠そうともしていなかった」
「ムッチムチの腰から太腿のライン、あの日から夢に出てきていたんだよ……後日、ホテルで偶然会った時は神様にお礼を言ったよ。会わせてくれてありがとうってね」
「そんな出会いだから、セックスにつながる欲望が露わになるのもしょうがないよね……そうでしょう??お風呂に入りたい」
「予約の必要のない貸切風呂があるようだから行こうか、夕食まで1時間半ほどあるし、汗を流してこよう」
素っ裸のまま抱き合う二人は再び唇を合わせ、舌を絡ませる。
「お風呂に行こうよ。彩のことを離したくないのは分かるけど、切りがないよ。ギュッと抱きしめられるのは嫌いじゃないけどね」
下着を着けようとする彩を制した健志は左手に持った浴衣を手渡し、右手を突き出してショーツを受け取る。
「下着を着けさせてくれないの??」
甘く艶のある声が健志の股間を刺激する。
「彩が選んだピンク地に花模様の浴衣が似合っているよ。可愛い……」
内庭沿いに風情のある廊下を貸切風呂に向かう途中、チェックインを済ませて客室に向かう客とすれ違う彩は浴衣の裾に右手を添えて乱れるのを防ぎ、先に立って歩く健志はそんな仕草に大人の女性の色気を感じる。
引き戸を開けて浴室に入り、札を下げて鍵を掛けると他の客が入れなくなり貸切状態になる。
掛け湯を済ませて円形で陶器製の浴槽に二人で向かい合って入り、手足を伸ばしても十分に余裕がある。
「気持ちいぃ……いつだったか、彩が温泉に行きたいねって言ったのを覚えていたの??」
「そんなことを聞いたっけ、覚えてないよ」
「ウフフッ、照れなくっていいのに。彩が温泉に行きたいって言ったから、来たんだよって言ってもいいよ……彩は正直な人が好き」
「そうか、そうだよ。彩の温泉に行きたいという言葉、いいきっかけになったから誘った。これが真実ってヤツだよ」
「紗矢ちゃんたちとセックス三昧の夜。あれが切っ掛けになるんだから健志と彩はエッチで結ばれた仲って証明されちゃったね」
「嬉しいような寂しいような、しょうがねぇか……抱っこしたいな」
「クククッ、いいよ。彩も抱っこしてほしいなぁと思っていた」
向かい合う格好から彩は立ち上げり、無毛の股間を手で覆うこともせずに近付き、健志の部屋の広くはないバスタブと同じように太腿を跨いで背中を預ける。
健志の左手が胸に伸び、右手が腹部を抱きかかえると彩はフゥッ~と息を吐き、
「健志に背中を預けて抱きかかえてもらうと安心できる……温泉に行きたいって言った彩の希望をかなえてくれたからご褒美を上げる。ねぇ、洗い場で仰向けに寝てくれる??」
15時をほんの少し経過した頃でウインズまで2km余り、前日発売締め切り時刻には十分な余裕があり、散歩を楽しんでも間に合うだろうと川の両側の桜並木沿いに手をつないで歩く。
「この遊歩道はさくら温泉通りって言うんだね。桜が満開の頃は人でいっぱいになるんだろうな」
数か月前には満開の桜並木だっただろう景色を想像するとつなぐ手に自然と力がこもる。
「彩は写真撮影も好きだけど、今日は止めとく」
「そうか、そうだね」
この瞬間は記憶に刻むだけにして他人の目に触れるかもしれない記録は残さない方がいいのだろう。
10分ほど歩くと左側に広い公園が広がり、整備された緑地では家族連れが遊び、観光客と思しきカップルが東屋で日差しを避けながら楽しげに語らっている。
「日焼けを気にせず寝っ転がりたいなぁ」
「クククッ、寝っ転がってうたた寝する彩のそばに座って日陰を作ってあげるよ。帰りに彩の寝顔を見せてくれるかなぁ」
「寝顔を見るだけでいいの??ホテルに戻って彩の衣服を脱がせてスッポンポンにしたくないの??」
「今日は可憐な彩を見ていたい。彩を相手に欲情を滾らせると別れた後が辛くなるかもしれないからな」
「ふ~ん……彩のハダカンボの写真や動画を残してあげようか??」
「欲しいけど、いらねぇよ。オレは彩が思っている以上に惹かれているから、ポケットにハダカンボの彩を忍ばせていると執着しちゃうかもしれねぇよ」
悪ぶって話す健志の横顔にちらっと視線を走らせた彩は満足とも不満とも区別のしようもない笑みを浮かべて一心不乱に歩き始める。
小柄な彩が急ぎ足になっても健志は易々とペースを合わせ、苦にすることがない。
笛吹みんなの広場と名付けられた公園を後ろにする頃には川が合流して幅が倍ほどになり、桜並木も途絶えている。
小学校や幾つもの旅館やホテルを見ながら、さくら温泉通りを経て富士見通りを40分ほど歩くとウインズ石和に到着する。
彩は、7を軸にして1・4・6・8相手の馬連と3連単マルチ、健志は10を軸にして4・5・6・7・8相手の3連複を買って帰路に就く。
二人が揃って当たることはないので、当たった方が次に会った時に何でも命令できるルールにする。
「次に会う時が楽しみ。健志を彩の下僕にしてあげる……楽しみだなぁ」
「オレが勝ったら、そうだなぁ……バイバイするまで彩の股間のポケットにオモチャを入れることにしよう。クゥッ~、想像するだけでアレが昂奮する」
「ほんと??……嘘吐き、可愛いままでおっきくなっていないよ」
周囲に注意を払いながら健志の股間に手を伸ばした彩はわざとらしく頬を膨らませる。
「可愛いなぁ……キスしちゃおう」
頬を膨らませた彩は周囲の人たちを気にして羞恥から俯き、そんな彩を愛おしく思う健志は自らの想いを抑えることなく彩を抱きしめて唇を合わせる。
「ウフフッ、ねぇ、早く帰ろう。お風呂に入って汗を流しっこ、その後は露天風呂に場所を移して……健志が彩の身体と気持ちに火を点けたんだよ。ねっ、いいでしょう??責任を取ってもらうからね」
言い終えた彩が上唇に舌を這わせて滑りを与える仕草が色っぽい。
昂奮で唇はリップグロスを塗ったようにプルプルと滑りを帯びて透明感が増し、みずみずしいうるおいが健志の琴線を刺激する。
彩にもまして獣欲を滾らせる健志は通りかかったタクシーを止めて、背中を押すようにして乗り込み、ホテルに戻る。
バタンッ……ホテルの部屋に戻り、ドアが二人とそれ以外の世界を分けると彩も健志も衣服を脱ぎ捨てて素っ裸になり唇を重ねて抑えていた欲情を解き放つ。
ングッ、ングッ、クゥッ~……ジュルジュル、ジュボジュボッ、ハァハァッ……見つめ合う瞳は獣欲を隠そうともせずに妖しく光り淫蕩さを漂わす。
気持ちの昂りを抑えきれない二人は息を弾ませて互いの肌をまさぐり、健志は小柄な彩を胸に抱え込み、彩は胸に顔を埋めて背中に回した両手に力を込める。
「SMショークラブで下着姿になって縛られた彩を見た健志が一目惚れしたでしょう。クククッ、ゲストたちは互いを見えないけどステージからは、はっきり見える。健志が緊縛された彩を見る目はギラギラして欲望を隠そうともしていなかった」
「ムッチムチの腰から太腿のライン、あの日から夢に出てきていたんだよ……後日、ホテルで偶然会った時は神様にお礼を言ったよ。会わせてくれてありがとうってね」
「そんな出会いだから、セックスにつながる欲望が露わになるのもしょうがないよね……そうでしょう??お風呂に入りたい」
「予約の必要のない貸切風呂があるようだから行こうか、夕食まで1時間半ほどあるし、汗を流してこよう」
素っ裸のまま抱き合う二人は再び唇を合わせ、舌を絡ませる。
「お風呂に行こうよ。彩のことを離したくないのは分かるけど、切りがないよ。ギュッと抱きしめられるのは嫌いじゃないけどね」
下着を着けようとする彩を制した健志は左手に持った浴衣を手渡し、右手を突き出してショーツを受け取る。
「下着を着けさせてくれないの??」
甘く艶のある声が健志の股間を刺激する。
「彩が選んだピンク地に花模様の浴衣が似合っているよ。可愛い……」
内庭沿いに風情のある廊下を貸切風呂に向かう途中、チェックインを済ませて客室に向かう客とすれ違う彩は浴衣の裾に右手を添えて乱れるのを防ぎ、先に立って歩く健志はそんな仕草に大人の女性の色気を感じる。
引き戸を開けて浴室に入り、札を下げて鍵を掛けると他の客が入れなくなり貸切状態になる。
掛け湯を済ませて円形で陶器製の浴槽に二人で向かい合って入り、手足を伸ばしても十分に余裕がある。
「気持ちいぃ……いつだったか、彩が温泉に行きたいねって言ったのを覚えていたの??」
「そんなことを聞いたっけ、覚えてないよ」
「ウフフッ、照れなくっていいのに。彩が温泉に行きたいって言ったから、来たんだよって言ってもいいよ……彩は正直な人が好き」
「そうか、そうだよ。彩の温泉に行きたいという言葉、いいきっかけになったから誘った。これが真実ってヤツだよ」
「紗矢ちゃんたちとセックス三昧の夜。あれが切っ掛けになるんだから健志と彩はエッチで結ばれた仲って証明されちゃったね」
「嬉しいような寂しいような、しょうがねぇか……抱っこしたいな」
「クククッ、いいよ。彩も抱っこしてほしいなぁと思っていた」
向かい合う格好から彩は立ち上げり、無毛の股間を手で覆うこともせずに近付き、健志の部屋の広くはないバスタブと同じように太腿を跨いで背中を預ける。
健志の左手が胸に伸び、右手が腹部を抱きかかえると彩はフゥッ~と息を吐き、
「健志に背中を預けて抱きかかえてもらうと安心できる……温泉に行きたいって言った彩の希望をかなえてくれたからご褒美を上げる。ねぇ、洗い場で仰向けに寝てくれる??」