彩―隠し事 402
温泉-9
冷たい料理は冷たいうちに、温かい料理は温かいうちに食べるという配慮で部屋食ではなく個室の食事処で供されため、予約時刻の18時が近付いたので向かう。
案内された個室は落ち着いた雰囲気のテーブル席で卑猥な思いは自然と霧散する。
「彩はビールにする??」
「健志と同じものがいい」
「辛口の冷酒をいただきたいのですが詳しくないのでお任せでお願いします。富士山や八ヶ岳に囲まれた山梨県は水が美味しいはず、その水で作られた酒が不味いはずがないと思うので地酒をお願いします。それと、煮貝と馬刺しも適当と思える時にお願いします」
「かしこまりました。
向付から椀盛り、焼き物と進み、地酒の七賢の冷酒も一層食欲をそそる。
名水の誉れが高い白洲はミネラルウォーターの生産量が日本一、サントリーも醸造所を構え、白洲と名付けられたウィスキーを生産するほどの土地で育まれた七賢はビールを好む彩の喉を気持ち良く通過する。
「美味しい。ビールもいいけど、この酒のファンなった」と顔を綻ばせる。
「なに??彩が何かした??大食い女だって言いたいの??」
猫背になることなく箸を上手に使う彩の健啖家ぶりに目を細める健志は食べることを忘れて見惚れる。
「食事って生きるためのエネルギー確保の手段だけど、彩はただの餌じゃなく食事を楽しんでいる。姿勢はいいし見ていて清々しく感じる」
「両親に愛されて育ったって想像できるって言うんでしょう。何度も聞いたけど、そんなに見つめられると恥ずかしい」
季節の食材が料理人の想像力と創造力で新たな姿に変わり、見栄えや匂いなど、こだわりの食器と共に二人の五感を刺激する。
「美味しい料理とお酒、健志が今、素晴らしい時間を過ごせるのは大好きな彩に温泉一泊旅行をプレゼントしたいと思ったからでしょう??そうでしょう??彩に感謝している??」
「クククッ、可愛いなぁ。好きだよ」
「健志が彩を大好きなのは知っている。聞いているのは、温泉に誘いたくなるほど好い女と付き合っていることを感謝しているかどうかって事。ねぇ、どうなの??」
「感謝しているよ。たまにしか会えない時間を大切にしたいと思っている」
「彩は仕事もあるし、今はほんの少し疎遠になっているけど夫もいる。健志には申し訳ないと思っているけどたまにしか会えないの、ゴメンね」
「いいよ、ご主人がいるってことも承知の上だし、連絡を待っているのも楽しいよ」
「クククッ、会えない時は夢の中で彩と希望通りのデートをしているんでしょう??」
「そうだよ。夢の中では彩の都合を気にすることもなく思い通りにデートしているよ」
「どんなデートをしているか知りたいけど教えてくれる気はないんでしょう??素っ裸にひん剥かれて好き放題に凌辱されているんだろうな、そうでしょう??」
「ノーコメント」
「クククッ、いいよ。夢の中で毎晩犯されても…付き合い始めたきっかけを思うとそうでなきゃおかしいもんね。それに、彩と付き合うためにカヲルさんと別れたんでしょう??……たまにはエッチしてもいいよ」
「美味しい酒と料理、煮貝と馬刺しは期待通りだし、手を伸ばせば彩に触れることができる。来てよかったよ」
「健志は美味しい料理とお酒、可愛い彩を見るだけで満足のようだけど、私は性的に満足させてくれる人に巡り合うために彩に変身しているんだからね……楽しみだなぁ」
「惚れる相手を間違えたかなぁ……」
「何か言った??…健志は彩のことが好きなんでしょう??違うの??」
「違わない、夢に出てくるほど大好きだよ。オレは彩に嫌われないように頑張るしかないか、クククッ」
デザートを食べる彩の瞳は妖しく光り、切子グラスに残る冷酒を飲み干した健志はそんな彩の横顔を盗み見て顔を綻ばす。
「ごちそうさま……まだしなきゃいけないことがあるから、早く部屋に戻ろうよ」
「彩は可愛いなぁ。よし、戻ろう」
「ちょっと待って……ごめん、電話みたいなの」
「じゃぁ、先に戻っているよ」
「嫌じゃなきゃ、此処で待っていて……もしもし、どうしたの??」
席を立とうとした健志を止めた彩はスマホを取り出して話し始める。
「うん……そうなんだ。しょうがないよ、仕事だもんね……分かった。あなたも身体に気をつけてね。無理をするなって言っても、責任を果たそうとするのがあなただって分かっているから……それじゃぁ、帰りは週末になっちゃうんだね……うん、あなたの好物を用意するから楽しみにね……うん、私も一週間、全力を尽くすよ。愛している……」
スマホの向こうの夫と話す彩は最後に健志を見つめて、愛していると言葉をつないでウインクする。
「出張中の夫からだった。明日、帰ってくる予定だったけど進捗状況がはかばかしくなくて、工場に居残るんだって……寮に戻って夕食を摂っている最中だと言ったけど、食器らしい音がカチャカチャしていた。たぶん一人じゃないと思う……いいの、何も言わないで。浮気している夫を嫌いになれないし、彩に変身して健志と楽しい時間を過ごしている。ウフフッ、愛していると言った言葉は夫と健志、どちらに伝えたかったかなんて聞かないでね」
話し終えた彩を抱き寄せた健志は頬に手を添え、瞳を見つめて表情を緩め、
「一つ提案だけど、月曜日はオレんちから出勤しなよ」
「クククッ、これから部屋に戻った健志が彩を満足させてくれるかどうかで決める。明日の夜、退屈な時間を過ごすくらいなら帰ってセルフプレジャーグッズに慰めてもらった方がいいもん」
チュッ、頬に手を添えたまま額に唇を合わせると、彩はクゥッ~ンと艶めかしい声を漏らして濃厚なキスをせがむ……ヌチャヌチャッ、ニュルニュルッ、二人の舌先が宙で絡み互いの想いを探り合う。
ニュルニュルッ、ジュルジュルッ、ウッウゥ~ン……つつき合い絡み合わせていた舌を丸めて口腔に押し入ると、迎え入れると同時にフェラチオのように舌を絡めて唇が前後し、温かい粘膜に包まれる感触に身体だけではなく心までブルッと震える。
ハァハァッ、早く部屋に戻ろうよ……言葉にせずとも二人の瞳が妖しく燃えて欲情の昂ぶりが伝わる。
ドサッ……シュッシュッ……ジュルジュルッ、ヌチャヌチャッ……ベッドに倒れ込んだ二人は剥ぎ取るように衣服を脱がせ、思いのたけを確認するように唇を合わせて唾液を交換するような濃厚なキスをする。
冷たい料理は冷たいうちに、温かい料理は温かいうちに食べるという配慮で部屋食ではなく個室の食事処で供されため、予約時刻の18時が近付いたので向かう。
案内された個室は落ち着いた雰囲気のテーブル席で卑猥な思いは自然と霧散する。
「彩はビールにする??」
「健志と同じものがいい」
「辛口の冷酒をいただきたいのですが詳しくないのでお任せでお願いします。富士山や八ヶ岳に囲まれた山梨県は水が美味しいはず、その水で作られた酒が不味いはずがないと思うので地酒をお願いします。それと、煮貝と馬刺しも適当と思える時にお願いします」
「かしこまりました。
向付から椀盛り、焼き物と進み、地酒の七賢の冷酒も一層食欲をそそる。
名水の誉れが高い白洲はミネラルウォーターの生産量が日本一、サントリーも醸造所を構え、白洲と名付けられたウィスキーを生産するほどの土地で育まれた七賢はビールを好む彩の喉を気持ち良く通過する。
「美味しい。ビールもいいけど、この酒のファンなった」と顔を綻ばせる。
「なに??彩が何かした??大食い女だって言いたいの??」
猫背になることなく箸を上手に使う彩の健啖家ぶりに目を細める健志は食べることを忘れて見惚れる。
「食事って生きるためのエネルギー確保の手段だけど、彩はただの餌じゃなく食事を楽しんでいる。姿勢はいいし見ていて清々しく感じる」
「両親に愛されて育ったって想像できるって言うんでしょう。何度も聞いたけど、そんなに見つめられると恥ずかしい」
季節の食材が料理人の想像力と創造力で新たな姿に変わり、見栄えや匂いなど、こだわりの食器と共に二人の五感を刺激する。
「美味しい料理とお酒、健志が今、素晴らしい時間を過ごせるのは大好きな彩に温泉一泊旅行をプレゼントしたいと思ったからでしょう??そうでしょう??彩に感謝している??」
「クククッ、可愛いなぁ。好きだよ」
「健志が彩を大好きなのは知っている。聞いているのは、温泉に誘いたくなるほど好い女と付き合っていることを感謝しているかどうかって事。ねぇ、どうなの??」
「感謝しているよ。たまにしか会えない時間を大切にしたいと思っている」
「彩は仕事もあるし、今はほんの少し疎遠になっているけど夫もいる。健志には申し訳ないと思っているけどたまにしか会えないの、ゴメンね」
「いいよ、ご主人がいるってことも承知の上だし、連絡を待っているのも楽しいよ」
「クククッ、会えない時は夢の中で彩と希望通りのデートをしているんでしょう??」
「そうだよ。夢の中では彩の都合を気にすることもなく思い通りにデートしているよ」
「どんなデートをしているか知りたいけど教えてくれる気はないんでしょう??素っ裸にひん剥かれて好き放題に凌辱されているんだろうな、そうでしょう??」
「ノーコメント」
「クククッ、いいよ。夢の中で毎晩犯されても…付き合い始めたきっかけを思うとそうでなきゃおかしいもんね。それに、彩と付き合うためにカヲルさんと別れたんでしょう??……たまにはエッチしてもいいよ」
「美味しい酒と料理、煮貝と馬刺しは期待通りだし、手を伸ばせば彩に触れることができる。来てよかったよ」
「健志は美味しい料理とお酒、可愛い彩を見るだけで満足のようだけど、私は性的に満足させてくれる人に巡り合うために彩に変身しているんだからね……楽しみだなぁ」
「惚れる相手を間違えたかなぁ……」
「何か言った??…健志は彩のことが好きなんでしょう??違うの??」
「違わない、夢に出てくるほど大好きだよ。オレは彩に嫌われないように頑張るしかないか、クククッ」
デザートを食べる彩の瞳は妖しく光り、切子グラスに残る冷酒を飲み干した健志はそんな彩の横顔を盗み見て顔を綻ばす。
「ごちそうさま……まだしなきゃいけないことがあるから、早く部屋に戻ろうよ」
「彩は可愛いなぁ。よし、戻ろう」
「ちょっと待って……ごめん、電話みたいなの」
「じゃぁ、先に戻っているよ」
「嫌じゃなきゃ、此処で待っていて……もしもし、どうしたの??」
席を立とうとした健志を止めた彩はスマホを取り出して話し始める。
「うん……そうなんだ。しょうがないよ、仕事だもんね……分かった。あなたも身体に気をつけてね。無理をするなって言っても、責任を果たそうとするのがあなただって分かっているから……それじゃぁ、帰りは週末になっちゃうんだね……うん、あなたの好物を用意するから楽しみにね……うん、私も一週間、全力を尽くすよ。愛している……」
スマホの向こうの夫と話す彩は最後に健志を見つめて、愛していると言葉をつないでウインクする。
「出張中の夫からだった。明日、帰ってくる予定だったけど進捗状況がはかばかしくなくて、工場に居残るんだって……寮に戻って夕食を摂っている最中だと言ったけど、食器らしい音がカチャカチャしていた。たぶん一人じゃないと思う……いいの、何も言わないで。浮気している夫を嫌いになれないし、彩に変身して健志と楽しい時間を過ごしている。ウフフッ、愛していると言った言葉は夫と健志、どちらに伝えたかったかなんて聞かないでね」
話し終えた彩を抱き寄せた健志は頬に手を添え、瞳を見つめて表情を緩め、
「一つ提案だけど、月曜日はオレんちから出勤しなよ」
「クククッ、これから部屋に戻った健志が彩を満足させてくれるかどうかで決める。明日の夜、退屈な時間を過ごすくらいなら帰ってセルフプレジャーグッズに慰めてもらった方がいいもん」
チュッ、頬に手を添えたまま額に唇を合わせると、彩はクゥッ~ンと艶めかしい声を漏らして濃厚なキスをせがむ……ヌチャヌチャッ、ニュルニュルッ、二人の舌先が宙で絡み互いの想いを探り合う。
ニュルニュルッ、ジュルジュルッ、ウッウゥ~ン……つつき合い絡み合わせていた舌を丸めて口腔に押し入ると、迎え入れると同時にフェラチオのように舌を絡めて唇が前後し、温かい粘膜に包まれる感触に身体だけではなく心までブルッと震える。
ハァハァッ、早く部屋に戻ろうよ……言葉にせずとも二人の瞳が妖しく燃えて欲情の昂ぶりが伝わる。
ドサッ……シュッシュッ……ジュルジュルッ、ヌチャヌチャッ……ベッドに倒れ込んだ二人は剥ぎ取るように衣服を脱がせ、思いのたけを確認するように唇を合わせて唾液を交換するような濃厚なキスをする。