出会い
友人のお見舞いを終えての帰路、空港へ向かう電車の中で時計を見た男は何かを感じて見知らぬ駅で降りた。
商店街を歩く途中で見つけた小さな神社で友人の回復を願掛けし、来た道を駅に戻る。
駅前の食堂から漂う匂いに空腹を感じ、改めて時刻を確認して暖簾をくぐる。
夕食時ということもあり店内は混雑している。
食券を買ってカウンターに置くと半券を渡されて、
「できれば呼びますから座って待っていてください。お茶はその給湯器で淹れてください。セルフでお願いします」
湯のみを持って空席を探し、相席をよろしいですかと先客に声をかけて席に着く。
「失礼だけど、地元の人じゃないね??この店は夫婦でやっているんだが今日は奥さんが留守のようだね。普段は愛想の好い奥さんが接客をしてくれるんだが、残念な日に来ちゃったね」
「そうですか……」と、言葉を返したタイミングで、
「刺身定食のお客さ~ん」
失礼と相席の男性に声をかけてカウンターに向かうと、この店には似つかわしくない雛にも稀な美しい女性が半券をカウンターに置こうとしている。
「あっ、ごめんなさい。どうぞ……」
「いえ、私の方が後に入りましたから貴女が先です、もうしわけない」
「私が先で間違いありませんか??」
「間違いないですよ。貴女のような美しい女性が先客でいたかいないか間違えるはずがないですから」
「えっ、フフフッ、それではお先に……ありがとう」
笑顔と心地好く響く声につられて言わなくてもいい言葉を口にしたことを秘かに恥じる。
二度目の、刺身定食のお客さんという声に店内を見回して立ち上がる人のいない事を確かめて男は席を立つ。
思いのほか美味く、満足した男は食器をカウンターに戻して、ごちそうさまと言いおいて店を出る。
本屋に立ち寄り文庫本を買って再び電車で空港を目指す。
使用機、到着遅れため遅延。出発時刻は改めて案内しますと放送がある。
買ったばかりの文庫本を読みながら案内を待ち、1時間半ほどの遅れで搭乗口に向かう。
座席に近付くと女性が荷物棚にバッグを入れようとしているので、
「手伝いましょうか」と声をかけると、食堂で会った女性だった。
「あっ、食堂でお会いした方ですよね??」
「そうですね……まさか、ストーカーじゃないですよね……ごめんなさい、つまらない冗談です。お願いします」
相変わらずコロコロと弾むような声が心地好く、冗談と分かっているストーカーという言葉に頬が緩む。
バッグを受けとった男は荷物棚に入れて席に着き、残り僅かにページを残す文庫本をポケットから取り出す。
飛行機がエプロンを離れて誘導路から滑走路に向かう頃には読み終えた。
「読み終えたのはどんな本ですか……私のストーカーさんがどんな本を読んでいるのか興味があります」
「ストーカー確定ですか。そうですね、食堂、飛行機の座席が隣、ストーカーじゃなければ一生の内に一度有るか無しの偶然ですね」
「あれ、ストーカーだと認めちゃうんですか??困ったな、通報しなきゃ……ウフフッ、本のタイトルを教えてくれたら通報するのは止めときます」
「“紫苑”ですが、ご存知ですか??」
「“ダブルXしなやかな美獣”、嶋村かおりさん、遠藤憲一さんが出演のVシネマの原作。奥田英二さん、北村一輝さんと、あれっ度忘れしちゃった……」
「度忘れしたと困っている表情も見惚れちゃいます……ごめん。吉本多香美さんがヒロインの“皆月”ですか??」
「そうです、それ。花村萬月さんの本って他にも幾つか映画になっていますよね??」
「なで肩の狐、紅色の夢、他にも幾つかあったけど思い出せないな。度忘れしちゃった」
「暴力、セックス、恋愛、音楽、特にブルースですよね……花村萬月さんの小説、私も嫌いじゃないなぁ」
「う~ん……あなたの事をよく知らないので、とりあえず聞き流します」
「そうね、女が花村萬月さん著の小説を好きと言うとストーカーさんとしては相槌に困るかもね」
「その通りです。話は変わりますがお住まいは関西ですか??」
「東京の国立なんだけど、帰れるかどうか不安。この飛行機が遅れたから羽田行きの乗継便はないし、さっき電話したんだけど、大阪も神戸もホテルは満室。新大阪まで行って最終の新幹線に間に合うかなぁ??」
「伊丹から羽田の予約はしていないのですか??同じ航空会社の予約であれば
1時間半の遅れは待ってくれないにしてもホテルの用意などしてくれると思うけど」
「こんな事になると思わなかったし、帰りの時刻が決まっていなかったので予約してなかったの……ホテルも取れないしどうしよう。あっ、ごめんなさい、ストーカーさんに愚痴ってもしょうがないよね」
「甲子園で高校野球をやっているからホテルが満室なのかなぁ??」
「そうか、そう言うこともありそうね。ストーカーさんは関西なの??」
「ストーカーさんって言われると、住んでいる処は言いたくないな」
「えっ、どうして??」
「私が住んでいるのは国立の隣……ほら、そんな顔をする」
「本当なの??国分寺??じゃあ、立川??……嘘でしょう??」
「嘘じゃないし、ストーカーじゃないから、これで確かめてくれる??」
「免許証??国が保証してくれるのね、拝見します……えっ、ウソ、私は東京女子体育大学近くのマンションに住んでいるんだけど、この住所だと2kmくらいじゃない??」
「そうだろうな、益々ストーカーの嫌疑が濃くなっちゃったね、申し訳ない」
「ストーカーさんだなんて冗談も言えないくらい怪しい。ごめんなさい……今日はどうするのですか??」
「大阪駅近くのホテルを予約しています……誤解されると困るから独り言を言いますね。友人のお見舞いだったので帰る時刻は不明、大阪までならってことでホテルを予約したんだけど、ツインルームしか空いていなくて、ツインルームのシングルユースです」
「独り言か……もしよかったら、私をナンパしてくれると嬉しいんだけど。気が強くて生意気な女は嫌いですか??」
「さっきの食堂では地元のオジサンと相席したので、相部屋でもいいですよ。ナンパって事なら、あなたが今現在付き合っている男性がいるかどうか確かめてからですね、どうですか??」
「付き合っている男性は居ないけど、どうして??」
「人のモノを欲しがらない主義なので、念のための確認です……それでは改めて、気の強い女性が私の腕の中で可愛い女に変身するのを見るのが好きです。チャンスをくれませんか??」
「ハァハァッ、ドキドキする。一晩で私を可愛い女に変身させられるか、チャンスを差し上げます。私は我がままな女ですよ」
「好い女の条件の一つは我がままだと思っています。好い女は自分の理想や世界観を簡単に曲げない、それが我がままと見えることもある」
「クククッ、褒めてもらったと思うことにします。そしてナンパされた私はホテルという言葉にパクリと食いついた」
「すみません、ブランケットをください」
通りかかったCAさんに頼んだブランケットが届くと二人に掛け、その下で女性の手を握る。
「えっ、もう手を握るの??しかも、ブランケットで隠して、ドキドキする。暴力は嫌だけど、ワルイ男は好きよ。ここから先は、あなた次第……」
男に顔を向けることなく正面を向いたまま話す声はわずかに震え、つないだ手は汗ばんでくる。
ホテル-バスルーム
伊丹空港からホテルまでタクシーにしようかとも思ったが見栄を張ることなくバスにする。
「タクシー乗り場に目をやったでしょう??でもバスに乗った。どうして??」
「イヤな人だなぁ。それに、男の心を読み過ぎると幸せになれないよ。男は好い女の前では見栄を張るし虚勢を張ることもある。でも、男の心理も読むらしい貴女を前にして見栄を張ることは止めた」
「わがままな女かもしれないけど、お金がかかる女じゃない。無理しなくてもいいよ、貴志さん……私は麻美」
免許証を見せた時に覚えた男の名前を呼び、自らも名乗る。
窓外を走る景色に見入る麻美の横顔は愁いを帯びてミステリアスな雰囲気を醸し出し、声をかけるのを躊躇わせる。
貴志は景色を見る風を装いながら麻美の横顔に見入る。
「何か付いてる??」
「ごめん、一目惚れしたかもしれない」
「雑、口説き方が雑だよ。減点1」
「減点かぁ……あっ、もう着くよ。ホテルまで5分ほど歩いてもらうよ」
空港バスは定刻に遅れることなく、ハービス大阪に到着する。
ハービスプラザエントとヒルトンプラザの間を通り、旧中央郵便局跡地の梅田スクエアを経て信号を渡り大阪駅構内に入る。
「電車に乗るの??」
「着いたよ、ここが予約してあるホテルだよ」
駅につながるホテルは構内に入り口があり、フロントでツインルームのシングルユースを通常の利用に変更する旨を告げてチェックインする。
専用キーで予約した部屋のフロア―に入り、部屋に入ると麻美の瞳が輝きベルボーイが去ると昂奮を隠そうともせず、角部屋のために二つある窓から見る大阪の景色に頬を紅潮させてバスルームでは歓声を上げる。
「すごい、ラブホみたい……あっ、友達に聞いたことがあるからで、私の経験じゃないからね、念のため言っとくね」
「オレにも想像以上の部屋だよ。値段を聞いた時はカプセルホテルにしようかと思ったけど、麻美さんとダウンライトに照らされた幻想的なバスルームを見ているとこの部屋にしてよかったと思う」
「ふ~ん、普段は自分の事をオレって言うんだ……そうだよね、カプセルホテル泊まりだと私を誘えなかったもんね。ものすごくツイていると思っている??それとも……どうなの??いや、返事は必要ない」
麻美は青いダウンライトに照らされた浴槽がスイッチ操作で緑やピンク、青や白など湯の色も変化することで満面に笑みを浮かべ、貴志は白い肌の麻美がライトに照らされて妖艶な姿に変身することを想像して口元を緩める。
「エロイ想像をしたでしょう??私のハダカンボを想像して昂奮した??」
「……想像したけど昂奮したかどうかは秘密」
「クククッ、聞かなくても貴志の身体が答えてくれるはず。お風呂に入っちゃおうよ」
物おじしない風で優位に立つ言葉を吐き続ける麻美の表情に羞恥の影が宿る。
「失礼かもしれないけど、可愛いな」
「ありがとう……先に入って、おねがい。恥ずかしいから、心の準備をしなきゃいけない」
ベッドルームに戻った貴志は下着姿になってバスルームに戻り、青いダウンライトが照らすバスタブに浸かり、バスタブの側面に設えられた照明の色をピンクから紫、白や青に変化させて幻想的な雰囲気の中で麻美に似合う照明を探す。
ダウンライトは昂奮を抑えるとされる青、それは知性や爽やか、誠実さも感じさせてくれるので麻美の印象を現している。
水中照明は白にする。
青い光に照らされて白い照明のバスタブに浸かる麻美の白い肌を想像すると、なぜか穏やかに気持ちになり目を閉じて全身をリラックスさせる。
「恥ずかしいから目を閉じてくれる??」
チャポン……目を閉じて伸ばした足を縮め麻美のためにスペースを作ると、囁くように静かな声で、ありがとうと言い湯に浸かる。
閉じた目を開けると左手で胸の膨らみを隠し、右手で股間を覆う麻美は下唇を噛んで俯いている。
「食堂で会って以来ずっと強がって憎まれ口をきいていたけど、今の姿が本当の私。男性の前でハダカンボになるのは久しぶりだから恥ずかしい」
「オレの前にいるから恥ずかしいんだろう??場所を変わろうか」
股間を隠すことなくその場で立ち上がり、麻美とバスタブの間に身体を滑り込ませて背後から抱きかかえる格好になる。
「オレの太腿を跨ぎなさい……これならオッパイもアソコも見えないから恥ずかしくないだろう??」
「クククッ、オッパイを見られることはないけどモミモミされちゃいそう……それよりも萎れたままのオチンチンを目の前で見せつけられたけど私に魅力がないの??」
「誤解だよ、言葉に出来ないほど感激するってことがあるだろ、チンチンが昂奮するのを忘れるくらい感激したよ、嘘じゃない」
「きれい……」
窓の外に広がる大阪の夜景に感嘆の言葉を漏らす麻美の横顔が薄っすらと窓に映り、貴志はこっそりと唾を飲む。
胸の膨らみを覆ったままの左手に貴志は自らの左手を重ねてはがし、右手を滑らせて乳房を優しく揉み始める。
「アウッ、クゥッ~……優しくしてね、ほんとに久しぶり……ハァッ~、気持ちいぃ」
「何かの予感で見知らぬ駅で降りて食事をしようと思ったら麻美さんがいた。予感にしたがって良かったよ。あの駅で降りて、あの食堂に入らなかったら飛行機の麻美さんは隣席の女性で終わるはずだった。オレは世界で一番幸運な男だな」
「私だって見ず知らずの隣席の男性に家に帰れないと愚痴ることもなかった……こんな素敵なツインルームで独り寝しようとしていた男性がストーカーだって冗談を言えたのは偶然が重なったから、私は世界一幸運な女かもしれない……貴志に寄りかかって優しく抱きしめられる。もしかすると偶然じゃなく、神様が私の運命ノートに書きこんでくれていたのかなぁ」
「そうかもしれないね、色んな偶然が重なり過ぎだよな」
首筋にチュッと音を立てて唇を合わせ、舌先が髪の毛の生え際から耳の裏側までなぞり、耳にハァッ~と息を吹きかけると麻美はイヤァ~ンと艶めかしい声で応える。
「麻美さん、身体の向きを変えてオレに可愛い顔を見せてくれるね」
「ダメッ、見せてあげない。麻美って呼んでくれたら考えるけど」
「麻美……」
「アンッ、貴志の声が私の耳や脳を愛撫する。ウフフッ、ゾクゾクするほど気持ちいい。もう一度、呼んでみて」
「あさみ……麻美、向きを変えて可愛い顔を見せてくれるね」
麻美が向きを変えて羞恥に染まった顔を背けようとすると両手を頬に添えて唇を重ねる。
チュッ、チュッ……鳥が餌を啄むように何度も唇を合わせたり離したりして愛おしいと思う気持ちを伝えあい、これ以上は我慢できないほど気持ちが昂ると隠すことなく素直に性的欲求に従う。
ハァハァッ……息の続く限り唇を合わせて互いを貪り、真っ赤に燃える瞳で見つめ合うと離れがたい思いが口と口を一筋の唾液がつなぐ。
貴志の手は麻美の頬を擦り、貴志の股間に伸びた麻美の手が性的昂奮の証に触れて笑みを浮かべる。
「良かった、もしも大きくなっていなければ泣いたかもしれない」
「クククッ、心にもない事を、オレが麻美の魅力から逃れられない事を知っているだろうに」
貴志の手が乳房を掬うように頂上に向かって揉み、顔を近付けて先端を口に含んでコリコリと刺激して甘噛みをする。
「アンッ、もっと強く噛んでみて……もっと……ウッウグッ、痛い、ハダカンボで抱き合っているのが現実だと分かる」
ホテル-スパークリングワイン
青いダウンライトに照らされたバスタブで、ほんの数時間までは顔も名前も知らなかった二人が言葉を口にせずに愛を身体で感じ合う。
毎日のようにただすれ違うだけで名前も住む場所も知らない人がいる。
そんな事を誰も偶然とは呼ばないし、よほどの事でない限り記憶の片隅にも残らない。
通勤や通学途中で二度三度とすれ違った人がいるかもしれないけど、それらすべての人の記憶が鮮明に残るわけでもない。
麻美と貴志はたまたま行き会った食堂でなんとなく好意を抱き、飛行機の座席が隣り合った偶然で二人は急速に距離を縮め、住む場所が数キロしか離れていない奇跡を知って離れがたい思いで互いを求めあう。
唇を重ねて身体を擦り合い、両手は何から何まで互いを知ろうとして肌を這い回り、重ねた唇は唾液を啜る。
「ハァハァッ、どうして??今日、昼食を食べた時は顔も知らなかった人とこんな事をしているなんて」
「麻美が言っただろう。神様が運命ノートに二人の出会いを記してくれていたのかもしれないって、偶然を装って会わせてくれたけど奇跡のような出来事でオレのハートは直ぐに火が点いた」
「ウフフッ、私も直ぐに燃え上がった……男性としばらく縁がなかったけど、神様が貴志と会うまでは我慢できるかって私を試していたのかもしれない」
冷静さを取り戻した麻美は再び向きを変えて背中を貴志に預け、浴槽の照明の色を変化させて顔を綻ばす。
「ラブホに似てる??」
「いじわる。言ったでしょう、私の経験じゃなく友達に聞いたことだって」
「青い空と青い海、オレだけが知っている秘密の場所に可愛い人魚が現れてくれた、そんな気持ちになる」
「この青いバスルームは貴志の秘密の場所で私はそこに姿を現した人魚なの??……口説き方が雑だから減点1と言ったけど、加点が5で今は4点にしてあげる」
「満点は10点だろう。あと6点はどうすればもらえる??」
「ベッドが5点、あと1点は、ウフフッ、秘密。ヒントは、そうね……やっぱり秘密」
背中越しに抱きしめて耳に息を吹きかけると、アンッと艶めかしい声と共に身体をすくめて含み笑いを漏らす。
「クククッ、くすぐったい。貴志はもっとクールな人かと思っていたけど悪戯好きな人だった。私はどんな印象だったか教えて」
「オレも麻美はクールな人で男を寄せ付けないのかなと思った」
「私は男嫌いな女に見えるの??」
「言いかたが悪かった、ごめん。オレが思う好い女の条件は、自分の理想や世界観を簡単に曲げない人でそれが我がままと見えることもあるって言ったけど、お世辞やおべんちゃらで口説こうとしても効果がないどころか相手にされない……そんな意味だよ」
「そんなに肩肘を張って生きている積りはないけど安売りはしたくない……でも、そんな私も貴志の胸に抱かれて可愛い女にされちゃうんでしょう??」
「えっ、そうか、そんなことを言ったね。大言壮語だったよ、先に謝っとく。ごめん」
「ウフフッ、謝らなくてもいいのに。私は貴志に抱かれて可愛い女になりたいの、そんな女に変身させて……男性に甘えたいし頼りたいの、そんな風に思える人を待っていた」
麻美は貴志に背中を預けて身体も気持ちもリラックスして夜景を見つめ、貴志は背中越しに抱きかかえる女性特有の柔らかい感触に酔いしれる。
穏やかな気持ちで身体を接していると鼓動や呼吸さえもが同調し、言葉を交わさなくても気持ちが通じ始めるのを意識する。
「ねぇ、私が何を考えているか分かる??」
「分かるよ。オレが何を考えているか分かる??」
「えっ、クククッ、いやらしい……じゃぁ、アレを取って、おねがい」
貴志がボディソープを手渡すと再び向かい合う格好に変化して二人の間に垂らし、身体を擦り合って泡だらけになる。
「アレで分かってくれるって、やっぱり神様が引き合わせてくれたに違いない」
「分かるよ、早くエッチしたい、チンチンが欲しいって顔に書いてあったよ」
「もう、怒るよ……ウフフッ、先に出て、女はイロエロとすることがあるの……あっ、その前にチンチンを洗っとかないと、動いちゃダメ」
泡だらけの両手でペニスを包み込み優しくスライドする。
「ウッ、気持ちいい。このまま続けられたら出ちゃうよ、ウッ」
「ダメッ、おしまい」
シャワーをかけて泡を洗い流し、パクッと口に含んでジュルジュル音を立てて顔を前後する。
「プファッ~……チンチンは久しぶり。ドキドキしてる。続きはベッドでね」
バスルームを出た貴志はショーツやブラジャーと一緒に自分の下着も洗ってあるのを目にする。
「麻美、ありがとう」
「私も女だし今日中に帰る積りだったから着替えの用意をしてなかったし、ついでだから気にしないで」
ナイトウェアを着けた貴志はスパークリングワインを飲みながら夜景に見入り、密やかに背後に近付いた麻美は両手で貴志の目を覆い、
「だ~れだ??わかる??」
「う~ん、好い匂いがする……え~っと、名前は何だっけ。すごく大切な人の様な気がする」
「大切な人の名前を忘れちゃったの??思い出させてあげようか……ヒントはね……ほら、思い出した??」
目を覆った手を離して貴志を覗き込み、
「思い出した??まだダメ??」
「うん、あなたは麻美さんだろ??私の大切な人はなんて言ったかなぁ、思い出しそうで……ダメだなぁ」
「いじわる。この部屋に私以外の誰かがいるの??……暑い。暑いなぁ、暑いから脱いじゃおう」
わざとらしく怒りを滲ませた表情の麻美はナイトウェアを脱ぎ捨てて貴志の膝を跨ぐ。
麻美の白い肌は風呂上がりと抑えきれない性的昂奮の火照りを抑えきれずに赤みを帯び、胸の内にある妖しい思いが肌を通して伝わってくる。
素っ裸の麻美を抱きかかえてベッドに運び、唇を合わせて火照る肌をまさぐる。
「ハァハァッ、熱いの、身体の火照りが止まらない」
ベッドで仰向けに寝かされたまま剥き出しの乳房や股間を隠そうともせずに挑むような視線で貴志を見つめる。
ワイングラスを手にした貴志は口移しで麻美に流し込む。
「冷たくて美味しい……暴力は嫌いだけど、ワルイ男は好きって言ったでしょう。憶えている??」
「憶えているよ」
ワイングラスを傾けて白い肌にスパークリングワインを垂らす。
ワインは白糸となってグラスと白い肌をつなぎ、見つめる麻美はしどけなく開いた口からハァハァッと荒い息を漏らして腹部を上下する。
「麻美の肌は大理石のように艶めかしい」
「ハァハァッ、焦らされて昂奮する私はエッチな女??」
「そうだよ、オッパイにもアソコにも唇も指も触れていないのに息を荒げているだろう。想像以上にスケベな女だよ麻美は……麻美の肌はオレだけのグラス」
白い肌に広がるワインを舐めとり、再び垂らすと息はますます荒くなり苦しそうに顔を顰め、グロスを塗ったように艶めかしい唇に舌を這わせる。
ホテル-ベッド
胸の谷間に垂らしたワインを舐めとり、舌と唇は肌理が細かく大理石のように妖しい滑りを帯びる肌を這い回る。
「久しぶり……オナニーよりも貴志の愛撫が気持ちいい。もっと気持ち善くして、おねがい」
「重くない??」
「大丈夫、貴志を感じられて幸せ」
貴志は麻美に覆いかぶさり、額に掛かる髪を整えてチュッと音を立てて唇を合わせる。
「子供じゃない。今はそんなキスを欲しくない」
貴志が伸ばした舌を瞳に近付けると目を閉じる。
閉じた瞼に舌を這わせて唇を合わせると、アンッと艶めかしい吐息を漏らして突き上げた股間を押し付ける。
麻美の両手首を掴んでベッドに押し付け、密着させた下半身で動きを封じてキスをする。
ジュルジュル、ヌチャヌチャッ……舞うように舌を絡ませて麻美が動きに合わせようとすると吸い込んで甘噛みをする。
ウッ、クゥッ~、ヌチャヌチャ、ハァハァッ……瞳を真っ赤に染めて欲情を露わにする麻美はしがみつこうとしても両手を掴まれていては叶わず、突き上げて擦りつける股間をウネウネと蠢かす。
「麻美が股間を押し付けるオレの下半身が濡れているような気がするけど気のせいかな??」
「そんなはずはないけど確かめてみれば……」
「じゃぁ、ここはどうした??」
貴志の舌が乳輪をなぞり、先端の膨らみを口に含んで舌を躍らせ、ギュッと吸い込んで甘噛みをする。
「アンッ、痛痒い刺激でアソコがジュンとなった……ねぇ、オッパイがどうかした??」
「血管が透けるほど白くて薄い肌で清楚な感じがしたけど今はオッパイに血管が浮き出ているし、上品なピンク色だった乳輪がプックリ膨らんでエロっぽい」
「ほんとう??貴志にそう言われると嬉しい……気持ちだけじゃなく身体もあなたを求めている証拠だもん。貴志は??」
「これが可愛い麻美を欲しいと思う証拠だよ」
押し付けていた下半身を浮かせて男の象徴を麻美の内腿に擦りつける。
「イヤンッ……クククッ、ベチョベチョ、ニュルニュルして気持ち悪い」
胸の膨らみの麓を鷲掴みして先端を弾くように舌先を上下に動かし、両方の乳房を掴んで中央に寄せる。
「オッパイはもっと大きい方が好い??」
「オレには丁度いい大きさだしバランスも好いよ。見ても触れても飽きない」
乳房を揉む手に力を込めてひしゃげるほど揉みしだく。
「痛いっ……どうしてだろう、優しく愛撫されるのは勿論だけど痛くされても気持ちいい。言葉は脳が震えるほどだし……一目惚れから本当に惚れちゃったみたい、迷惑??」
麻美の問いには答えず、両手が乳房を離れて脇腹を擦りながら腰に至り唇と舌は鳩尾から臍に向かって螺旋を描くように跡を残していく。
触れるか触れないかの繊細なタッチで肌を這う十本の指と唇や舌先が麻美の昂ぶりを増幅し、快感に火が点いた身体は新たな悦びを求めて身悶える。
ウッウッ、イヤッ、アァ~ン……しどけなく開いた口から間断なく喘ぎ声が漏れ始め、麻美の手は貴志の髪を掴んで自らの下腹部に押し付ける。
ウグッ、ウッ……息も出来ないくらい押し付けられた貴志は恥毛を噛んで顔を左右に振ると髪を掴む麻美の手から力が抜けていく。
「いじわる、気持ち善さに堪え切れず、つい髪を掴んだのに力ずくで逃げた」
「ごめん……ワルイ男は好きだけど、暴力は嫌いだって言ったよな」
「私の言葉を真面目に聞いてくれた証拠。優しいだけの男はつまらない。狡い男は言葉で女を騙す、悪い男は暴力で女を泣かす、ワルイ男はセックスと言葉で女を悦ばせる……あなたはワルイ男、舌や指を使って私を啼かせようとする」
貴志はハムハムと恥毛を噛み、こんもり盛り上がった恥丘を撫でる。
綻びを見せる割れ目は赤く濡れそぼつ花弁を露わにして貴志に悪戯されるのを待っている。
割れ目の縁を舌先がベロリと舐めると強い刺激を求めて両足を開くだけでは飽き足らず、両膝も開いて股間を突き上げる。
「いやらしいな、麻美は……オマンコをジュルジュルに濡らしても満足でできずに、もっと気持ち善くしろと催促する」
「そうだよ、私は我がままな女。ワルイ男とのセックスは貪欲になるの……男は久しぶり、ガッカリさせないでね」
痩せすぎることなく適度な膨らみを持つ下腹部に手を這わせて割れ目に息を吹きかけ、恥毛をハムハムして指を絡ませる。
「ウフフッ、私の身体で遊ばれるのって嫌いじゃない」
「やっぱり麻美は好い女だな。普段はきつめの好い女、裸になればセックスを楽しむ淫乱女」
「あらっ、淫乱女って褒め言葉なの??ウフフッ……気持ちいい」
下腹部を擦っていた手が鼠径部から内腿を撫でて舌が真っ赤に濡れそぼつ花弁をベロリと舐め上がる。
ウッ、クゥッ~……眉間に深い皺を寄せた麻美はシーツを掴み、唇を噛んで顔を仰け反らす。
麻美の指の動きに気付いた貴志は顔を綻ばせて割れ目を大きく開き、口を押し付けてズズズッと音を立てて溢れる蜜を吸いとる。
「ヒィッ~、気持ちいい、内臓まで吸い込まれちゃう……もっと、もっと気持ち善くなりたい」
ジュルジュル、ニュルニュル……割れ目に指を添えて開いたまま舌を膣口に潜らせて残った蜜を舐め取る。
「美味い、好い女のマン汁は味も違う」
丸めた舌を出し入れするとシーツを掴む指が白くなる力がこもり、貴志が手を重ねるとシーツを離して握り返す。
膣壁を削ぐように舐めた舌は小陰唇が作る溝の奥をベロベロと舐める。
「クゥッ~、そんな、ウググッ、ビラビラの溝まで、アンッ、気持ちいい」
溝を舐め、ビラビラを甘噛みして左右に振ると自然と鼻頭がクリトリスを刺激する。
「ウッウッ、クゥッ~、気持ちいい……ねぇ、オチンポちょうだい。オチンポをオシャブリしたい」
ホテル-挿入
2㎞程離れて住む二人は数百㎞離れた場所で偶然が重なり、今はホテルのベッドで絡み合っている。
男は食堂で初めて見た時、雛にも稀な美しい人との印象を持ち、その後、機内で二度目に会った時は神様の悪戯に感謝した。
女は初めて会った時の屈託のない笑顔に心惹かれ、機内で手助けをしようと言われた時は照れ隠しもあってストーカー呼ばわりした。
ストーカーと呼ばれることを男は楽しみ、女はその様子から距離を縮める材料になると考えて口にすることを止めなかった。
ストーカーという言葉遊びを止めざるを得ないほど住む場所が近い事を知り、二人は自分の気持ちを正直に伝えることが出来た。
大陰唇に指を添えて大きく開き、膣口に侵入させた舌を出し入れしたり膣壁を擦ったりして麻美の喘ぎ声を引き出し、小陰唇が作る溝を舐めたり甘噛みしたりすると自然と鼻頭がクリトリスを擦る。
予期せぬ快感で麻美はペニスを欲しがる言葉を口にする。
「ウッウッ、クゥッ~、気持ちいい……ねぇ、オチンポちょうだい。オチンポをオシャブリしたい」
貴志が身体の位置を変えて横臥位でシックスナインの恰好からクリトリスに舌を伸ばし、麻美は目の前のペニスを摘まんで亀頭に滲む先走り汁を掬い取った指先を舐める。
「オチンポから滲み出る透明の液体が美味しい……もっと舐めちゃおうかな」
竿を摘まんで根元から先端に向かって絞りだし、亀頭をベロッと舐めて先走り汁を舐めとる。
「ウグッ、気持ちいい。麻美にしごかれると自然に声が出ちゃうよ」
「ウフフッ、絞りだそうとするとオチンポがピクピクするから可愛い……お風呂で見た時よりも大きいし熱い。ビクビクしているよ、気持ちいいの??」
「麻美の可愛い指に包まれているんだよ、気持ちいいに決まってる」
「ほんとう??ご褒美上げなきゃね」
竿の根元を摘まんで亀頭に向かってベロリと舌を這わせ、先端を包み込むように口に含んで鈴口を尖らせた舌先でつつく。
「可愛い。竿がピクピクするだけじゃなく、会陰部って言うのかなタマタマ袋からお尻に続くこの辺りもがキュッとなった。クククッ、おもしろい。こんなオモチャが欲しいな」
何もせずに女性らしい細い指で弄られる感触を楽しみたい気持ちもするが、目の前でダラダラ嬉し涙を流してクンニリングスを待ちわびる麻美の女の子を見ては何もせずにいられるはずもない。
麻美の太腿を抱えるようにして動きを封じ、割れ目の縁に添えた指で左右を互い違いに上下に動かす。
「アンッ、いやっ。変な感じ……もっと、色んなことをして遊んで。貴志に嬲られて気持ち善くなるのも好き」
「オレが麻美の身体で遊んでも、悪い男だと思わないでいてくれるか??」
「イヤンッ、そんな事を言わないで。あなたになら騙されても苛められても嬉しいと思うかもしれない……忘れられるのが嫌」
「麻美、オレは騙したり暴力を振るったりしないと約束するよ。麻美はオレの大切な人だから」
「嬉しい、私は貴志の事を信じている……ウフフッ、あなたに抱いてもらうときは苛められたい。啼かせて、おねがい」
知り合ったその日に身体を求めるはしたなさや照れ隠しもあって二人は能弁になる。
割れ目を開いて滲み出る花蜜をズズズッと音を立てて啜り、膣口を覆って内臓を吸い込むように頬を窄める。
「クゥッ~、ダメ、だめっ……そんなに強く吸われたら壊れちゃう。ヒィッ~」
膣口をベロベロ舐めまわし、侵入させた舌を出し入れして指先がクリトリスを摘まむ。
「麻美の内腿はムチムチして気持ちいいから触るだけで昂奮する」
「すごいよ、破裂しそうなほどパンパンに膨らんでる。ゴクッ……ハァハァッ、こんなのが目の前にあるんだもん、見るだけで昂奮する。ねぇ、オシャブリしてほしい??」
「あぁ、オシャブリしてほしい。可愛い麻美が食事をしたり愛を語ったりする口でオレが小便をするチンポをナメナメしてくれ」
「イヤンッ、小便じゃなくてオシッコ。それにオシッコするためじゃなく私を啼かせるためにあるの……久しぶりだから上手じゃないかもしれない。してほしいことがあったら教えてね」
根元を摘まんだ竿に舌を這わせパクッと咥えたものの横臥位では思ったようにフェラチオが出来ず、
「アンッ、この格好じゃ嫌。上になる……ハァハァッ、美味しそう」
貴志は麻美の希望通りに横向きの身体を仰向けにして跨るのを待ち、目の前で濡れそぼつ花弁に舌を伸ばす。
性的昂奮で昂ぶりを抑えきれない麻美は両手で貴志の内腿を擦りながら、宙を睨むペニスをパクリと口に含んで顔を上下する。
フグフグッ、ジュルジュルッ……ウグッ、グゥッ~……ジュルジュル、ニュルニュルッ……自らの昂奮のペニスを飲み込み過ぎて喉の奥を突いて涙を滲ませながらも吐き出すことはなくフェラチオに興じる。
そんな麻美に性感を刺激される貴志もまた昂ぶりを抑えることが出来ずに両方の太腿を抱え込んで首を伸ばし、クンニリングスは激しさを増していく。
ジュルジュルッ、ニュルニュルッ……フグフグッ、ウグッ……ウググッ、グゥッ~、気持ちいい。
「ダメ、もう我慢できない。入れるよ、我慢できないんだもん」」
麻美は仰向けで横たわる貴志の腰に手をついて身体の向きを入れ替え、騎乗位の恰好でペニスを摘まんで膣口に擦りつける。
「アンッ、大きい、入るかなぁ??」
貴志に聞かせようとするわけでもなく、独り言のように呟いた麻美は唇を噛み、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「入ってくる、ウッ、クゥッ~……くる、奥まで」
「ウッ、気持ちいいよ。麻美のオマンコは温かくて落ち着く」
「イヤンッ、そんな、いやっ……そんな事をされたら、すぐに善くなっちゃう」
尻に力を入れてペニスをピクピク動かすだけで麻美は髪を振り乱し、それが胸を刷いて貴志もまた限界が近いことを悟る。
「ダメだ、逝っちゃいそうだよ。麻美が相手だと我慢できない」
「もう少し、私も気持ちいいの。逝くときは一緒だよ、私だけ満足するのは嫌だし、残されるのも嫌、一緒に逝くの、もう少し……クゥッ~、ダメ、逝っちゃう」