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彩―隠し事 367

性的欲望 -2

週末を過ごす積りの部屋で、
「着替えが少ないなぁ、もう少し持ってくればよかった……今日はジーンズでいい??」
「好いんじゃないの、オレもこのままチノパンにジャケットを着るだけだから」
彩はジーンズにスタンドカラーの白シャツで清潔感と女性らしさを醸し、健志はオフホワイトチノパンに白シャツ、ジャケットを合わせて待ち合わせ場所に向かう。

待ち合わせの公園でベンチに座ることなく入り口を見たり、顔を見合わせたりと落ち着きのない様子で歩き回る二人は彩と健志を見ると顔を綻ばせ、紗矢は大きく手を振り、ケンちゃんは軽く会釈をする。
手を振りながら二人に近付いた彩は、
「ごめんね、待たせちゃって」と、言葉をかける。
「いいえ、紗矢が早く行こうと言うので、待ち合わせ時刻には早いのを承知でした」
「ごめんなさい。今日は朝からお姉さんと食事をするのが楽しみで我慢できなくて……家に帰らず、私はアルバイト帰り、ケンちゃんも仕事帰りなんです」
ケンちゃんはグレーのスーツ姿で紗矢はデニムミニスカに柄シャツを着けてデニムジャケットを羽織っている。
「クククッ、ケンちゃんは変。お姉さんと私はデニム、お兄さんはチノパンなのにケンちゃんは一人だけかたっ苦しい」
「しょうがないだろ。紗矢が着替えなくていいからすぐに行こうって連絡してきたんだろ」
「相変わらず二人は仲が良くていいね……紗矢ちゃんはデニムオンデニムが似合って可愛い。スタイルが好いから羨ましい」
「紗矢はまだまだですよ。お姉さんの清潔な色気が僕には眩しいです」
「ここで褒め合うのも好いけど空腹は言葉じゃ満たされないよ。近くの居酒屋を予約した時刻も近付いてきたし場所を変えようか」

「いらっしゃいませ。御四名様の予約を承っております。ご案内いたします」
石畳を模したような通路は居酒屋とは思えない静謐な雰囲気でビルの中の店だということを忘れてしまう。
案内された個室は寒くなれば堀こたつで供される作りになっているので席に着いた四人は、両手を背後について上半身を反らしたりテーブルを撫でたりとリラックスできる。
改めて再会を祝してビールで乾杯した後は冷酒やワインで喉を潤しながら料理に舌鼓をうち、アルコールが気持ちを隅々まで解してくれる頃には話題が性的なモノになってくる。

「僕たちは一緒に住んでいるのですが、実は僕の転勤が決まっているのです。で、紗矢にプロポーズしたのですが、転勤をきっかけということが気に入らないらしく、セックスの相性を確かめたいと言い出したんです。元々、僕も紗矢も嫌いな方じゃないし、毎日でもしたいと思っているのですがマンネリ気味というか、紗矢は不満に思うこともあるらしいのです」
分かるよう分からないような、話しの進む方向が見えないので彩も健志も相槌の打ちようもなく黙ってケンちゃんの話しを聞いている。
「ごめんなさい、聞いていただきたいことを上手く言葉にできなくて……結論を言います。聞いていただけますか??」
「例の公園であんなことをした仲だからね、どんなことでも聞くよ。なぁ、彩」
「うん、何でも言って。私たちも決して嫌いな方じゃないしね、大丈夫だよ」
「私が言います。ケンちゃんに我がままを言ったのは私ですから」
グラスのワインを飲み干した紗矢は思いのたけを彩と健志に告げようとして居住まいを正して口を開く。

「結婚した後はケンちゃん以外の男性とセックスしちゃいけないでしょう。だから、ケンちゃんのことは大好きだけどプロポーズを受け止めて承諾する前に一度でいいから、ふぅっ~……変態っぽいセックスと言うか苛められてみたいなぁって。私は変ですか??」
「私も変態っぽいエッチに興味があるから変とは思わないけど……う~ん、紗矢ちゃんはエライな。ケンちゃんと結婚したら浮氣はしないって決めているんでしょう」
「一つ聞いてもいいですか??」
一瞬、健志に答えてもいいかと確かめた彩が視線を戻して頷くと、
「お姉さんとお兄さんは夫婦じゃないんですか??」
「私は夫がいるけど、この人は独身。浮気の理由は……聞かないでくれる」
「余計なことを聞いてごめんなさい……エロビデオを見るたびに羞恥責めって言うのかな、恥ずかしい姿を見られたいとか、SMチックに苛められたいと思うようになったんです。そんなことを考えれば考えるほど妄想は膨れ上がって、ついに先日、あの公園で……お姉さんたちに会って、この人たちなら信用できるし私のエッチな欲望を満足させてもらえるかなって……」
言葉を選びながら思いを告げた紗矢は、恥ずかしそうに視線を落として空になってグラスを弄る。
「そうなんです。嘘じゃありません。信用できそうな人がいればエッチなことをして誘ってみようって……それで、お二人にお願いしたんです。それに、紗矢のマゾッ気を一度でいいから満足させてもらわないと、プロポーズは承諾できないって言うんです。僕はそっち方面の経験がないので相手できないのです。お願いします、私たちの希望を叶えてください……だめですか??」

一瞬の間をおいて頭の中を整理した彩は健志を見つめて、
「私は構わないけど、どうする??」
「彩が好いならオレも構わないよ」
「紗矢ちゃん、ケンちゃん、私たちはいいわよ。私は彩、この人は健志って言うんだけど……もう一度確かめるわよ。いくつか質問するから答えてね」
紗矢とケンちゃんの希望や泊りでもいいのかどうかなど幾つか確かめた彩は、
「確認するね、紗矢ちゃんの望みはケンちゃんとの結婚前に膨らみ続ける性的な妄想に歯止めをかけたい。M気質だと自覚しているけど痛いことは嫌。他人に見られるか見られないかのスリルを味わい、羞恥責めをされたい……そんなことを経験してみたい。それでいいのね??」
「はい。彩さんの言う通りです。ケンちゃんのお嫁さんになって貞淑な妻になる前に私に染みついた垢を彩さんと健志さんに洗い流してもらいたいの」
「健志、引き受けるでしょう??」
「可愛い紗矢ちゃんが彩に悪戯されたりオレの腕の中で善がり啼くのを見たりして嫉妬に狂っても知らいないよ。その覚悟はあるんだね??」
健志に見つめられて返事を求められたケンちゃんは、ゴクッと唾を飲み、テーブルに置いた両手を固く握りしめて歯を食いしばりコクンと頷く。
「分かった、時間や場所を決める前に紗矢ちゃんと二人きりで一時間ばかりデートしてもいいかな??」
「えっ……」彩は驚いて健志の顔を見つめ、紗矢は驚くと共に怯んだような表情を浮かべてケンちゃんを見る。
「……分かりました……紗矢、健志さんとデートしてきなよ」ケンちゃんは、一瞬の緊張を解いて、無理やり笑みを浮かべて紗矢に話しかける。
「決まった。彩、ケンちゃんとこのビルの前にある喫茶店で待っていてくれるね」
「分かった、待っているけど可愛い紗矢ちゃんを泣かせるようなことをしちゃダメだよ」

彩―隠し事 366

性的欲望 -1

「おはよう、栞」
「おはよう、昨日はありがとう。改めて健志さんにお礼を言っといてね」
「うん、伝えとく……松本さん次第だけど今日のお昼は三人でどうかな??」
「プロジェクトの進め方の話し??」
「うん、栞が集めてくれたデータを松本さんが分析してくれたし、栞は私が考えをまとめるのを待っていてくれた。慎重すぎるのが欠点の私だけど二人とその他のメンバーの助けに応えないとね」
「分かった、それじゃあ、お昼は三人でね。愛美の都合を確かめて例の店の個室を予約しとくね」
「お願い、頼むね……」

栞と立ち話をする愛美が優子に視線を向けてニコッと微笑み、人差し指と親指で円を作って見せる。
前日、悠士の店で栞が股間を守ることを放棄したゴールドチェーン下着を注文したことをおくびにも出さず仕事に集中する。

栞が予約した個室は、以前、三人で卑猥なことをしながら昼食を摂った同じ部屋で案内された三人は顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
「先に言っとくけど、今日は変なことはナシだよ。いいわね、栞」
「は~い、優子の命令は絶対です。美味しそう、さぁ、食べよう……いただきます」
いつも通り、栞の音頭で食事を始めることに優子と愛美は違和感がない。
優子は交互に二人に視線を移し、物怖じすることなく二人をリードする栞と一歩引いた場所で全体を俯瞰する愛美を頼もしく見つめてこんな二人に信頼される自分を改めて奮い立たせるために、ゴホンと空咳をする。
「うん??どうかしたの、優子??」
「たぶん、鍬田さんは私たちに大切なことを話そうとしているのだと思います」
「いつも通りの二人で安心した。私たちを先導してくれる栞と冷静に状況分析してくれる愛美。大切な二人とその他のプロジェクトメンバーに支えられて私がいる。私の役割はなんだろうって思うこともあるけど、悩まないことにした……今日、課長にプロジェクト独立の相談をして、賛成してもらえれば資料をまとめて来週早々に常務に話すつもり。これまで通り同じ道を歩みたいけど、どうかな??」
顔を見合わせた栞と愛美は破顔して、その結論を待っていた。優子に付いていくと声をそろえる。

課長にプロジェクト独立の考えを伝えると、
「その言葉を待っていたよ。常務や部長には私が離したがらないんじゃないだろうなと嫌みを言われていたからね」
課長の幾つかの質問に答えると、
「私は了とします。あとは上を納得させるプレゼンを用意することだね。尤も、私に嫌味を言うほど鍬田さんの決断を待っているのだから反対するはずがない。中身によって予算や人員に影響するだろうから、鍬田さんだけではなく深沢さんや松本さんなどメンバーのためにも頑張りなさい……妻に話すとびっくりするだろうな」
その後は意識してゆっくりと仕事にあたり高揚する気持ちを抑えることに努めた。

その日の午後は三人で常務などに対するプレゼン内容を確認し、栞はプロジェクトメンバーに優子の結論と覚悟を伝え、愛美は改めて資料に誤りがないかを確かめた。
水曜日のこの日と木曜、金曜はプレゼンの準備と並行して課長の下、通常業務に就いて滞りなく終業時刻を迎えた。

「今日は急ぎの用があるからゴメン。先に帰らせてもらうね」
翌週早々の重要な要件は栞と愛美を中心にプロジェクトメンバーの頑張りもあり、結果は優子次第というところまで漕ぎ付けたので、やり残したことも思い残すこともない。
「優子、デートなの??羨ましいな。私も早く帰って旦那さまとまったりしよう」
水曜以降は仕事の忙しさにかまけて性的な話をすることなく週末を迎えた栞は明るく見送ってくれる。
「鍬田さんも深沢さんも優しいご主人がいていいですね。私はお気に入りの抱き枕と一緒に恋愛映画を見て過ごそうかな」
「吉田君、魅力的な女性にこんなことを言わせていいのか??」
「えっ、はい……松本さん、よろしければ僕と映画を見に行っていただけませんか??」
「えっ、なに??デートの誘い??そうなの??誘ってくれるの??」
「秋が近づいて恋の季節だねぇ。深沢さんも松本さんと吉田君も帰った、帰った……私も愛する妻の元へ帰ることにしよう」
週末は愛する人やこれから愛することになるかもしれない人と過ごすために帰路に就く。

「おかえり」
健志は車に乗り込んだ彩を引き寄せて唇を合わせる。
「ウフフッ、ただいま。悪いけど此処を早く離れて……ごめんね。キスで迎えてもらうのは嬉しいけど、彩は人妻。知り合いに見られちゃうと困ったことになっちゃう」
「ごめん、彩を困らせるつもりはないんだけど、つい……」
「そんな風に言われると困っちゃう。キスは嫌じゃないもん……帰って着替える時間はある??」
「大丈夫だよ」
「食事はどんな店でするの??」
「堅苦しくなく、周りを気にすることなく落ち着ける部屋を予約した……紗矢ちゃんとケンちゃんは来るよな??」
「絶対に来ると思うよ。もう約束の場所にいるかもしれない……それと言っとくことがあるんだけど、これからしばらくの間、夫は週末、金、土、日と帰って来ないの。工場に不都合があって稼働しながらなので休日に色々とすることがあるんだって……毎週、毎日とは言えないけど一緒に、ウフフッ」
「喜んでもいいのかなぁ??」
「いいわよ、夫は彼女を連れて行くはずだから。寮に入れば好いのにホテルにするらしいから、絶対に二人だと思う……彩は寂しい週末なんか、イヤ、ねっ……」

彩―隠し事 365 

余波 -22

カーテンを開け放った窓から忍び込む9月の陽光が好きな男の匂いに包まれて眠る彩の顔をくすぐる。
「うぅぅ~ン、眩しい……えっ??」
手を伸ばしてもあるはずの感触はなく、眠気眼で男を探してもベッドはおろか寝室の何処にも姿がない。
ベッドを降りた彩はドア越しに気配を確かめ、わずかに開いた隙間から覗くと鼻歌交じりで楽しそうに朝食を作る健志の後ろ姿が見える。
「おはよう」と、声を掛けそうになるのを両手で口を塞いで防ぎ、満面の笑みでベッドに戻る。
「フフフッ、やっぱり彩に惚れているな、あれは……クククッ」
忍び笑いは堪えようもなく、漏らすまいとすればするほど嬉しさと幸福感がこみ上げてくる。
健志が使っていた枕を顔に押し付けて漏らしそうになる笑い声を堪えていると突然ドアが開く。

「おはよう。食事の用意ができたよ。持ってこようか??」
「朝なの??まだ早いよ、真っ暗じゃない」
「クククッ、可愛いなぁ、彩は。枕を顔に押し付けたんじゃ真っ暗なはずだよ」
枕を外した健志は、チュッと音を立てて額に唇を合わす。
「これで明るくなっただろう。追い出すわけじゃないけど大切な仕事があるんだろう??」
「そうだ、起きなきゃ……ウ~ン、タマゴの好い匂い、あとはなんだろう??」
小首を傾げて考える彩の可憐な様子にドキッとする健志は、
「昨晩からベランダではハダカンボになるルールになったような記憶があるけど、朝はルール外ってことにしようか、どう??」
「うん、彩もそう思っていた」
「ベランダに運んどくよ……チュッ」
頬に両手を添えて、鼻頭に唇を合わせると健志は背中を見せて遠ざかる。
もう少し遊んでくれてもいいのにと後姿に口を尖らせた彩は、ヨシ、と自らを励ます声をかけて起き上がる。

ベランダのテーブルには寝室の開け放ったドア越しに匂っていたオムレツ、塩代わりに塩昆布を加えてネギやソーセージがたっぷりのオートミール、温野菜と湯気と香りが食欲をそそるミルクティなどが並んでいる。
立ったままテーブルを見つめて舌なめずりする彩は健志の視線を意識して頬を緩め、両手をついて突き出した尻を健志に見せつけてリズムよく左右に揺する。
出勤前に相応しくない姿の彩は白い短パンで腰の辺りのラインに視線を惹きつけてムッチムチの太腿を見せつけ、ピンクのノースリーブは脇チラと柔らかな二の腕を強調して成熟した女性らしい清潔な色気を醸し出し健志の性感を刺激しようとする企みは十分に果たしている。
「イヤな女だな、彩は……時間がないのにオレをその気にさせるようなことをして。その挑発に反応してしまうオレもどうかと思うよ」
「どうして??好い女を見て色っぽいな、抱きたいなと思うのは男として当然の反応だし、何も感じないとすれば、それはそれで失礼だと思うよ……ウフフッ、美味しそう、いただきます」

温野菜を頬張り、オムレツにスプーンを入れた彩は、
「チーズオムレツだ。フワフワ、トロットロで美味しそう……パセリもいい感じ。パンに乗っけて食べたかったな」
「ごめん、今度はオートミールじゃなく、パンを用意しとくよ」
「いいの、欲には限界がないから我慢しなきゃね。色っぽい彩を見てもオチンチンを出さずにチンポウしている誰かさんみたいにね、クククッ」
「ヒデェ駄洒落だな」
本気とも冗談ともとれる会話も楽しく、残暑の気配を残す朝も苦にせずに朝食を摂る。

出勤準備をする彩を鏡の中に見つめる健志が、
「会社の近くまで送るからね」と言うと、
「駅まで歩きたいから送ってもらわなくてもいい。ベランダで手を振って見送ってくれる健志の視線を背中に受けて駅に向かうって、アソコがジュンとするほど幸せな気分になると思うから試したいの」
「クゥッ~、たまんない。彩の言葉でオレの息子はビンビンダラダラになりそうだ」
化粧を終え、前日のスーツに替えて健志の部屋に置いてあったビジネススーツを着けた彩は鏡を離れて健志の前に立つ。
「どう、きれい??それとも可愛い??……下着を着け忘れたから穿かせてもらえる??」
「ウ~ン、上品で可愛い。彩を見るだけ水割りを2杯は飲めるよ。1杯目でドキドキして2杯目で猛獣になる。とびっきり強いオスの獣にね」
「アンッ、そんな言葉を聞かされると我慢できなくなる。今日は休んじゃおうかな」
「クククッ、休んじゃいなよ。仕事着のスーツを脱いで、この部屋での制服のスッポンポンになろうか」
「魅力的な誘いだけど……いつまでも彩のままではいられない」
「そうだね……どっちにする??右手それとも左手??」
右手に白いショーツ、左手にプラチナチェーン下着を持って意地悪な笑みを浮かべる。
「どうしようかな??そうだ、彩は目を閉じるから、右手と左手の下着を持ち換えて分からなくしてくれる??」

左手を揺すって、ガチャガチャとプラチナチェーンの擦れる音を立てる。
「右手のパンツを穿かせてくれる」
右手のショーツをテーブルに置き、プラチナチェーン下着を右手に持ち替えると同時に彩は閉じた目を開く。
「残念、オマンコ丸出しパンツを選んじゃった」

カチッ……アンッ……導かれるままプラチナチェーン下着に足を通した彩は、鍵をかけられると艶めかしい声を漏らして両足がフルッと震える。
「行ってくるね。金曜日は食事前に着替えたいから早めに帰ってくるようにする」
「連絡してくれれば迎えに行くよ」

下り坂を駅に向かって歩きながら振り返ると、満面の笑みで手を振る健志に胸が熱くなる。
再び歩き始めて背中に感じる視線は予想したように股間を刺激するほど性的なモノではなく、自然と顔が綻び、歩幅が長くなり清々しく気持ちになってくる

彩―隠し事 364

余波 -21

「ミルクティを淹れるけど飲む??」
風呂上がりの火照った身体にバスローブをまとい、ベランダで煌びやかに輝く夜景に見入る彩に声をかける。
「うん、彩も欲しい。眠れなくなると困るからミルクをたっぷり入れてね」

ティーカップを持って近付く健志の気配とミルクティの香りに彩は振り返り、
「前にも言ったけど、ここから見る景色が好き。好いも悪いも人々の欲望を全て飲み込んでしまう懐の深い街。夜景が華やかなのは色々な目的を持ってこの街に集う人が多いことの証明。集まる人が増えて明るくなればなるほど影も濃くなり、陰に巣食う妖しい魅力を求める人たちも集まってくる」
「駅の向こう側は近代的な建物が立ち並ぶオフィス街で昼間は彩も来ることもあるんだろう??」
「うん……新規プロジェクトを任されていて、その関係で何度かね。これからも来ることになると思う」
「すごいなぁ。彩なら成功する。詳しいことは聞かないけど応援しているよ。プロジェクトが順調に進行しないとオレと会う気にもならないだろうしね」
「ウフフッ、どうかな……上手くいかない時は抱いてもらって気分転換しようとするかもよ……」
「今の言い方だと仕事は順調なようだね。オレが夜の彩を支えられればいいな」
「昼間はもう一人の私が仕事で訪れる街、夜は彩になって健志と性的な欲望を満足させる場所」
「彩の身体と心のバランスを保つのに必要な街だね。クククッ、彩と出会えたのはこの街の影のお陰だった、そうだろう??」
「そうだよ。学生時代からの付き合いで親友の英子に連れられて行ったのがカヲルさんの店だった。後日、英子に黙って独りで行って、パンツだけを着けてオッパイを縄で強調される緊縛姿を見たのが健志だった。オチンポがビンビンになった??」
「ビンビンどころか爆発しそうだったよ。だからこそ、後日、ホテルで彩を見た時に一目で分かった」

「公園で紗矢ちゃんたちと、あんなことがあったのに、今日は彩がそばにいてもエッチな気持ちにならないの??」
「今日は止めとくよ。彩と食事できただけで幸運なのに、オッパイを吸ったりアソコを舐めたりしたんじゃ運を使い切るような気がする」
「ウフフッ、彩とは刹那的な付き合いはしないと受け取っていいんだね」
「昼間の彩を知ると厄介ごとが増えるだけだろう。オレにとって大切なのは知ることではなく、彩を失わない事だよ」
「ありがとう……もしも、私が彩に変身しなくなったらどうするの??」
「そこまでは考えていないな。すっぱり諦めるか、ご主人と別れてオレン処に来いと言うか、あるいは拉致するか……その時の気持ち次第としか言いようがない」
「そうなの??彩が健志に望むのは……ウフフッ、ヒミツ」
「好い女は秘密を持っている。女性の謎を解きほぐそうとするのが男のサガ」
「健志は彩の隠し事を知りたい??本当の名前、住んでいる処、仕事の内容……夫のことも知りたい??」
「知りたくないし、知ろうと思わない。オレにとっては目の前にいるのが彩のすべて。今、触れることのできる彩が大切」

「隠し事のある彩をあるがままに認めてくれてありがとう。健志は大切だけど、健志が知らない本当の私を捨てることはできない……ねぇ、見て。これが何も隠しごとのない本当の姿」
ベランダにいることを気にかける様子もなくローブを肩から滑らせると夜目にも白い肌が露わになる。
肩を中心に上半身は競泳やマリンスポーツに興じた証を残し、胸の膨らみは大きすぎず、かといって小さくもなく手の平にすっぽり収まる好ましい大きさで乳輪と先端はクスミのない可憐な様子でツンと上を向く。
ウエストの括れからパンと張り出した腰を経てムッチリと艶めかしい太腿に至るラインは垂涎もので見つめる健志はゴクッと唾を飲む。

「コカ・コーラのコンツァーボトルのように滑らかで優美な曲線だって褒めてくれるんでしょう??その後はウサギさんのように可愛いって言うのも知っているよ」
「先に言われちゃあ、しょうがねぇな。彩の身体が作る曲線はそばにあると触れたくなるコンツァーボトルのように色っぽいし手の平にピタッと馴染む。ウサチャンは可愛いとか用心深いってことだけではなく、性欲でウサギさんに敵う動物はいない」
「ウサチャンが精力絶倫で一年中発情しているからこそ、プレイボーイのマスコットキャラクターになった。お茶目でピョンピョン走り回る快活さが可愛いから彩にそっくりって言いたいの??」
「そうだよ……おいで、精力絶倫でお茶目な彩に触れたい」
「彩はハダカンボなのに健志はバスローブを着けたまま、ベランダでは隠し事のない素の自分になるのがルールって今、決めた……どうする??」
「クククッ、可愛いなぁ……彩が今、決めたルールが有効なら、オレもルールを作った。ベランダでローブや下着は自分の手で脱いじゃダメって言うルールだよ。どうする??」
「守ってこそのルール。いいよ、決め事に従って彩が脱がせてあげる」

椅子に座った健志に近付きバスローブの紐を解こうとする彩は股間部分のローブが盛り上がっているのを見て頬を緩める。
「彩を可愛いなって思っているでしょう??彩に惚れていると言ってもいいよ」
「そうか??正直過ぎるのはつまらないだろう。隠し事や謎が妖しい魅力になることもあるだろう??」
「惚れていると言えばいいのに……正直じゃないと嫌いになっちゃうよ。いつまでも待ってあげないから、クククッ」
思い通りの言葉を聞けなくても彩の表情は綻び、楽しそうにバスローブの紐を解いて前をはだけると予想通り宙を睨んで股間で聳え立つモノがピョンと跳ねるように姿を現し、聳え立つオトコを避けるようにして健志の太腿を跨いだ彩は、
「ウフフッ、コノコは彩に惚れていると態度で示しているのに正直に言わないの??」指先は先走り汁を亀頭に塗り広げる。
「明日はいつまでも寝ているわけにはいかないだろう??寝ようか??」
太腿を跨がせたま尻を抱えるようにして彩を抱きかかえた健志は歩き始め、彩は健志の首に手を回して身体を支える。

彩―隠し事 363

余波 -20

想像もしない紗矢の言葉に彩は言葉を失い、健志の手に重ねた左手はジットリ汗ばむ。
「やっぱり、ダメですか……そうですね。どこの誰だかわからない男と女、しかも夜の公園で他人に見られながらセックスするような変なカップル。でも信じて、さっきも言ったけどエロビデオで触発されたけどこんな事をするのは初めてなの」
「紗矢ちゃんたちを信じるとか信じないということじゃないの。あまりに唐突な申し出ででびっくりしちゃったの」
「そうですよね、変なことを言ってごめんなさい。忘れてください」
「ねぇ、紗矢ちゃん。私からの提案だけど、今日はムリだけど一緒に食事をしようか??いや??」
「いいえ、イヤじゃないです。ケンちゃんもいいでしょう??」
「紗矢が望むなら僕に異存はないです。いえ、ぜひ、お願いします」
「よかった。私は色々事情があるから、一か月、いえ、今週末三日後の金曜にしてもらえると都合を合わせるけど、大丈夫??」
「大丈夫です。一か月でも待てるけど今週末なら嬉しい限りです。ねぇ……」
紗矢とケンちゃんは見つめ合った顔を綻ばせ、週末にこの場所で会うことを約束する。

手をつなぎ何事もなかったかのように遠ざかる紗矢たちの後ろ姿を見つめる彩と健志も手をつなぎ、公園の出口で振り返って会釈する二人に手を振り見送ると帰路に就く。
「ごめんね。食事の約束をしちゃって……怒っている??」
「怒るわけがない。急な願い事を収めるには、好い提案だったと思うよ。もしかすると、今っ頃、思い付きを口にしたことを後悔しているかもしれないしね」
「フフフッ、もしも、二人の思い付きが食事をするときに、もっと強固な思いになっていたらどうする??」
「その時に彩がどうするか、任せるよ」
「彩に責任を押し付けようって言うの、ふ~ん、そうなんだ……ケンちゃんのオチンポは立派だったなぁ、クククッ……まだ時間があるから、じっくり考えとく」
夜の歩道を歩く人たちを気にする様子もなく、小柄な彩を抱きしめて覆いかぶさるようにして唇を合わせた健志は唾液を交換するような濃厚なキスを交わして背中を擦り、尻を揉む。
「アンッ……ハァハァッ、身体中の力を吸い取られちゃったみたい。足がへなへなして歩けない」
ニコッと微笑んだ健志は彩の前で背中を見せて蹲り、両手を腰の辺りでヒラヒラさせる。
「負んぶしてくれるの??ウフフッ、らくちん、らくちん」

何か好いことがあって自分へのご褒美で飲んだ酒が過ぎて酔っぱらった妻を負ぶう夫だと思ったのか、追い越しながら微笑ましい笑顔で二人を覗き込む人がいる。
そんな風に笑顔と共に見られる彩は、恥ずかしさに勝る幸福感で身体が熱くなる。
「坂道になるけど大丈夫??」
上り坂になると分かっても降りようともせずに大丈夫かと問う彩の我がままが愛おしく、可愛いと思う健志もまた幸福感に包まれる。

「フゥッ~、着いたよ。負んぶを続ける??」
「下りる。このままじゃ折角のエレベーターなのにキスできない」
自分の足でエレベーターに乗り込んだ彩は壁を背にして目を瞑る。
健志は直ぐに唇を合わせることなく彩の両脚の間に右足をこじ入れて股間を刺激する。
「ウッ、イヤンッ、気持ちいいけど、こんなじゃなくキスが欲しいのに……」
「キスが好きだな……」
「嫌いじゃなかったけど、駅の改札口近くや街角、どこでも人目を気にすることなくキスをする誰かの影響だと思う。その人は家の中で近くに居る時やすれ違いざまにツルンとお尻を撫でるのも好きらしい」
「フ~ン、オレと似ているような気がするな……」
言い終えるや否や健志は彩の唇を奪い、尻を撫でブラウス越しに胸の膨らみを揉みしだく。
「クゥッ~、イヤンッ、彩に変身すると激しいのが好きになる。もっと、気持ち善くして……」
チンッ……シュッ~……二人に嫉妬するエレベーターは濃厚なキスをさせまいとして目的のフロアに着くと直ぐにドアを開く。
「キスとオッパイを揉まれて力が抜けた。歩けない」
甘えと拗ねたような表情を交えて見上げる彩を横抱きした健志はエレベーターを背にして歩き始める。

部屋着に着替えた彩が口を開こうとすると健志はそれを遮るように話しかけたり風呂の用意をしたりと性的な言葉を口にさせない。
「風呂の用意ができたから先に入っているよ」

当たり前のように健志の太腿を跨いで背中を預けた彩は朝からの出来事を想い出そうとして目を閉じる。
「やっぱり確かめておこう」と、身体の向きを変えて、正面から健志の瞳を覗き込む。
「英子のヌードを一瞬も見ていないんだね。信じてもいいの??」
「彼女が上着を脱ぐ前に部屋を出たのは本当だよ。DVDの中でセックスするのを見るのは平気だったけど、目の前で一糸まとわぬ姿を見る気になれなかった」
「彩の親友だからなの??」
「多分、そうだろうな」
「分かった……紗矢ちゃんたちとはどうする??」
「決まっているのは夕食を共にする。その後のことは成り行き次第でいいんじゃないか??」
「そうだよね。私もそう思っていた。紗矢ちゃんたちは任せてくれるだろうから、健志も彩に……ねっ、いいでしょう??」
「任せるよ。スケベな彩がどんな筋書きを用意しているか興味がある」
「ザンネン、まだ決まってないよ。その時の気分次第ね、ウフフッ……最近、カヲルさんと会った??」
「先週、会ったよ。出勤前のカヲルと二人で食事をしたけど、それ以上のことはしていない」
「カヲルさん以外の女性とエッチした??」
「ノーコメントで許してくれるかな??
「う~ん、彩がいつでも会えるわけじゃないし、カヲルさんとエッチしてないようだから特定の相手じゃなければ許してあげる」
ピチャピチャッ……股間のイチモツを確かめるように腰を蠢かす彩の動きに合わせて湯が波立つ。

プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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