ホテル-バスルーム
伊丹空港からホテルまでタクシーにしようかとも思ったが見栄を張ることなくバスにする。
「タクシー乗り場に目をやったでしょう??でもバスに乗った。どうして??」
「イヤな人だなぁ。それに、男の心を読み過ぎると幸せになれないよ。男は好い女の前では見栄を張るし虚勢を張ることもある。でも、男の心理も読むらしい貴女を前にして見栄を張ることは止めた」
「わがままな女かもしれないけど、お金がかかる女じゃない。無理しなくてもいいよ、貴志さん……私は麻美」
免許証を見せた時に覚えた男の名前を呼び、自らも名乗る。
窓外を走る景色に見入る麻美の横顔は愁いを帯びてミステリアスな雰囲気を醸し出し、声をかけるのを躊躇わせる。
貴志は景色を見る風を装いながら麻美の横顔に見入る。
「何か付いてる??」
「ごめん、一目惚れしたかもしれない」
「雑、口説き方が雑だよ。減点1」
「減点かぁ……あっ、もう着くよ。ホテルまで5分ほど歩いてもらうよ」
空港バスは定刻に遅れることなく、ハービス大阪に到着する。
ハービスプラザエントとヒルトンプラザの間を通り、旧中央郵便局跡地の梅田スクエアを経て信号を渡り大阪駅構内に入る。
「電車に乗るの??」
「着いたよ、ここが予約してあるホテルだよ」
駅につながるホテルは構内に入り口があり、フロントでツインルームのシングルユースを通常の利用に変更する旨を告げてチェックインする。
専用キーで予約した部屋のフロア―に入り、部屋に入ると麻美の瞳が輝きベルボーイが去ると昂奮を隠そうともせず、角部屋のために二つある窓から見る大阪の景色に頬を紅潮させてバスルームでは歓声を上げる。
「すごい、ラブホみたい……あっ、友達に聞いたことがあるからで、私の経験じゃないからね、念のため言っとくね」
「オレにも想像以上の部屋だよ。値段を聞いた時はカプセルホテルにしようかと思ったけど、麻美さんとダウンライトに照らされた幻想的なバスルームを見ているとこの部屋にしてよかったと思う」
「ふ~ん、普段は自分の事をオレって言うんだ……そうだよね、カプセルホテル泊まりだと私を誘えなかったもんね。ものすごくツイていると思っている??それとも……どうなの??いや、返事は必要ない」
麻美は青いダウンライトに照らされた浴槽がスイッチ操作で緑やピンク、青や白など湯の色も変化することで満面に笑みを浮かべ、貴志は白い肌の麻美がライトに照らされて妖艶な姿に変身することを想像して口元を緩める。
「エロイ想像をしたでしょう??私のハダカンボを想像して昂奮した??」
「……想像したけど昂奮したかどうかは秘密」
「クククッ、聞かなくても貴志の身体が答えてくれるはず。お風呂に入っちゃおうよ」
物おじしない風で優位に立つ言葉を吐き続ける麻美の表情に羞恥の影が宿る。
「失礼かもしれないけど、可愛いな」
「ありがとう……先に入って、おねがい。恥ずかしいから、心の準備をしなきゃいけない」
ベッドルームに戻った貴志は下着姿になってバスルームに戻り、青いダウンライトが照らすバスタブに浸かり、バスタブの側面に設えられた照明の色をピンクから紫、白や青に変化させて幻想的な雰囲気の中で麻美に似合う照明を探す。
ダウンライトは昂奮を抑えるとされる青、それは知性や爽やか、誠実さも感じさせてくれるので麻美の印象を現している。
水中照明は白にする。
青い光に照らされて白い照明のバスタブに浸かる麻美の白い肌を想像すると、なぜか穏やかに気持ちになり目を閉じて全身をリラックスさせる。
「恥ずかしいから目を閉じてくれる??」
チャポン……目を閉じて伸ばした足を縮め麻美のためにスペースを作ると、囁くように静かな声で、ありがとうと言い湯に浸かる。
閉じた目を開けると左手で胸の膨らみを隠し、右手で股間を覆う麻美は下唇を噛んで俯いている。
「食堂で会って以来ずっと強がって憎まれ口をきいていたけど、今の姿が本当の私。男性の前でハダカンボになるのは久しぶりだから恥ずかしい」
「オレの前にいるから恥ずかしいんだろう??場所を変わろうか」
股間を隠すことなくその場で立ち上がり、麻美とバスタブの間に身体を滑り込ませて背後から抱きかかえる格好になる。
「オレの太腿を跨ぎなさい……これならオッパイもアソコも見えないから恥ずかしくないだろう??」
「クククッ、オッパイを見られることはないけどモミモミされちゃいそう……それよりも萎れたままのオチンチンを目の前で見せつけられたけど私に魅力がないの??」
「誤解だよ、言葉に出来ないほど感激するってことがあるだろ、チンチンが昂奮するのを忘れるくらい感激したよ、嘘じゃない」
「きれい……」
窓の外に広がる大阪の夜景に感嘆の言葉を漏らす麻美の横顔が薄っすらと窓に映り、貴志はこっそりと唾を飲む。
胸の膨らみを覆ったままの左手に貴志は自らの左手を重ねてはがし、右手を滑らせて乳房を優しく揉み始める。
「アウッ、クゥッ~……優しくしてね、ほんとに久しぶり……ハァッ~、気持ちいぃ」
「何かの予感で見知らぬ駅で降りて食事をしようと思ったら麻美さんがいた。予感にしたがって良かったよ。あの駅で降りて、あの食堂に入らなかったら飛行機の麻美さんは隣席の女性で終わるはずだった。オレは世界で一番幸運な男だな」
「私だって見ず知らずの隣席の男性に家に帰れないと愚痴ることもなかった……こんな素敵なツインルームで独り寝しようとしていた男性がストーカーだって冗談を言えたのは偶然が重なったから、私は世界一幸運な女かもしれない……貴志に寄りかかって優しく抱きしめられる。もしかすると偶然じゃなく、神様が私の運命ノートに書きこんでくれていたのかなぁ」
「そうかもしれないね、色んな偶然が重なり過ぎだよな」
首筋にチュッと音を立てて唇を合わせ、舌先が髪の毛の生え際から耳の裏側までなぞり、耳にハァッ~と息を吹きかけると麻美はイヤァ~ンと艶めかしい声で応える。
「麻美さん、身体の向きを変えてオレに可愛い顔を見せてくれるね」
「ダメッ、見せてあげない。麻美って呼んでくれたら考えるけど」
「麻美……」
「アンッ、貴志の声が私の耳や脳を愛撫する。ウフフッ、ゾクゾクするほど気持ちいい。もう一度、呼んでみて」
「あさみ……麻美、向きを変えて可愛い顔を見せてくれるね」
麻美が向きを変えて羞恥に染まった顔を背けようとすると両手を頬に添えて唇を重ねる。
チュッ、チュッ……鳥が餌を啄むように何度も唇を合わせたり離したりして愛おしいと思う気持ちを伝えあい、これ以上は我慢できないほど気持ちが昂ると隠すことなく素直に性的欲求に従う。
ハァハァッ……息の続く限り唇を合わせて互いを貪り、真っ赤に燃える瞳で見つめ合うと離れがたい思いが口と口を一筋の唾液がつなぐ。
貴志の手は麻美の頬を擦り、貴志の股間に伸びた麻美の手が性的昂奮の証に触れて笑みを浮かべる。
「良かった、もしも大きくなっていなければ泣いたかもしれない」
「クククッ、心にもない事を、オレが麻美の魅力から逃れられない事を知っているだろうに」
貴志の手が乳房を掬うように頂上に向かって揉み、顔を近付けて先端を口に含んでコリコリと刺激して甘噛みをする。
「アンッ、もっと強く噛んでみて……もっと……ウッウグッ、痛い、ハダカンボで抱き合っているのが現実だと分かる」
出会い
友人のお見舞いを終えての帰路、空港へ向かう電車の中で時計を見た男は何かを感じて見知らぬ駅で降りた。
商店街を歩く途中で見つけた小さな神社で友人の回復を願掛けし、来た道を駅に戻る。
駅前の食堂から漂う匂いに空腹を感じ、改めて時刻を確認して暖簾をくぐる。
夕食時ということもあり店内は混雑している。
食券を買ってカウンターに置くと半券を渡されて、
「できれば呼びますから座って待っていてください。お茶はその給湯器で淹れてください。セルフでお願いします」
湯のみを持って空席を探し、相席をよろしいですかと先客に声をかけて席に着く。
「失礼だけど、地元の人じゃないね??この店は夫婦でやっているんだが今日は奥さんが留守のようだね。普段は愛想の好い奥さんが接客をしてくれるんだが、残念な日に来ちゃったね」
「そうですか……」と、言葉を返したタイミングで、
「刺身定食のお客さ~ん」
失礼と相席の男性に声をかけてカウンターに向かうと、この店には似つかわしくない雛にも稀な美しい女性が半券をカウンターに置こうとしている。
「あっ、ごめんなさい。どうぞ……」
「いえ、私の方が後に入りましたから貴女が先です、もうしわけない」
「私が先で間違いありませんか??」
「間違いないですよ。貴女のような美しい女性が先客でいたかいないか間違えるはずがないですから」
「えっ、フフフッ、それではお先に……ありがとう」
笑顔と心地好く響く声につられて言わなくてもいい言葉を口にしたことを秘かに恥じる。
二度目の、刺身定食のお客さんという声に店内を見回して立ち上がる人のいない事を確かめて男は席を立つ。
思いのほか美味く、満足した男は食器をカウンターに戻して、ごちそうさまと言いおいて店を出る。
本屋に立ち寄り文庫本を買って再び電車で空港を目指す。
使用機、到着遅れため遅延。出発時刻は改めて案内しますと放送がある。
買ったばかりの文庫本を読みながら案内を待ち、1時間半ほどの遅れで搭乗口に向かう。
座席に近付くと女性が荷物棚にバッグを入れようとしているので、
「手伝いましょうか」と声をかけると、食堂で会った女性だった。
「あっ、食堂でお会いした方ですよね??」
「そうですね……まさか、ストーカーじゃないですよね……ごめんなさい、つまらない冗談です。お願いします」
相変わらずコロコロと弾むような声が心地好く、冗談と分かっているストーカーという言葉に頬が緩む。
バッグを受けとった男は荷物棚に入れて席に着き、残り僅かにページを残す文庫本をポケットから取り出す。
飛行機がエプロンを離れて誘導路から滑走路に向かう頃には読み終えた。
「読み終えたのはどんな本ですか……私のストーカーさんがどんな本を読んでいるのか興味があります」
「ストーカー確定ですか。そうですね、食堂、飛行機の座席が隣、ストーカーじゃなければ一生の内に一度有るか無しの偶然ですね」
「あれ、ストーカーだと認めちゃうんですか??困ったな、通報しなきゃ……ウフフッ、本のタイトルを教えてくれたら通報するのは止めときます」
「“紫苑”ですが、ご存知ですか??」
「“ダブルXしなやかな美獣”、嶋村かおりさん、遠藤憲一さんが出演のVシネマの原作。奥田英二さん、北村一輝さんと、あれっ度忘れしちゃった……」
「度忘れしたと困っている表情も見惚れちゃいます……ごめん。吉本多香美さんがヒロインの“皆月”ですか??」
「そうです、それ。花村萬月さんの本って他にも幾つか映画になっていますよね??」
「なで肩の狐、紅色の夢、他にも幾つかあったけど思い出せないな。度忘れしちゃった」
「暴力、セックス、恋愛、音楽、特にブルースですよね……花村萬月さんの小説、私も嫌いじゃないなぁ」
「う~ん……あなたの事をよく知らないので、とりあえず聞き流します」
「そうね、女が花村萬月さん著の小説を好きと言うとストーカーさんとしては相槌に困るかもね」
「その通りです。話は変わりますがお住まいは関西ですか??」
「東京の国立なんだけど、帰れるかどうか不安。この飛行機が遅れたから羽田行きの乗継便はないし、さっき電話したんだけど、大阪も神戸もホテルは満室。新大阪まで行って最終の新幹線に間に合うかなぁ??」
「伊丹から羽田の予約はしていないのですか??同じ航空会社の予約であれば
1時間半の遅れは待ってくれないにしてもホテルの用意などしてくれると思うけど」
「こんな事になると思わなかったし、帰りの時刻が決まっていなかったので予約してなかったの……ホテルも取れないしどうしよう。あっ、ごめんなさい、ストーカーさんに愚痴ってもしょうがないよね」
「甲子園で高校野球をやっているからホテルが満室なのかなぁ??」
「そうか、そう言うこともありそうね。ストーカーさんは関西なの??」
「ストーカーさんって言われると、住んでいる処は言いたくないな」
「えっ、どうして??」
「私が住んでいるのは国立の隣……ほら、そんな顔をする」
「本当なの??国分寺??じゃあ、立川??……嘘でしょう??」
「嘘じゃないし、ストーカーじゃないから、これで確かめてくれる??」
「免許証??国が保証してくれるのね、拝見します……えっ、ウソ、私は東京女子体育大学近くのマンションに住んでいるんだけど、この住所だと2kmくらいじゃない??」
「そうだろうな、益々ストーカーの嫌疑が濃くなっちゃったね、申し訳ない」
「ストーカーさんだなんて冗談も言えないくらい怪しい。ごめんなさい……今日はどうするのですか??」
「大阪駅近くのホテルを予約しています……誤解されると困るから独り言を言いますね。友人のお見舞いだったので帰る時刻は不明、大阪までならってことでホテルを予約したんだけど、ツインルームしか空いていなくて、ツインルームのシングルユースです」
「独り言か……もしよかったら、私をナンパしてくれると嬉しいんだけど。気が強くて生意気な女は嫌いですか??」
「さっきの食堂では地元のオジサンと相席したので、相部屋でもいいですよ。ナンパって事なら、あなたが今現在付き合っている男性がいるかどうか確かめてからですね、どうですか??」
「付き合っている男性は居ないけど、どうして??」
「人のモノを欲しがらない主義なので、念のための確認です……それでは改めて、気の強い女性が私の腕の中で可愛い女に変身するのを見るのが好きです。チャンスをくれませんか??」
「ハァハァッ、ドキドキする。一晩で私を可愛い女に変身させられるか、チャンスを差し上げます。私は我がままな女ですよ」
「好い女の条件の一つは我がままだと思っています。好い女は自分の理想や世界観を簡単に曲げない、それが我がままと見えることもある」
「クククッ、褒めてもらったと思うことにします。そしてナンパされた私はホテルという言葉にパクリと食いついた」
「すみません、ブランケットをください」
通りかかったCAさんに頼んだブランケットが届くと二人に掛け、その下で女性の手を握る。
「えっ、もう手を握るの??しかも、ブランケットで隠して、ドキドキする。暴力は嫌だけど、ワルイ男は好きよ。ここから先は、あなた次第……」
男に顔を向けることなく正面を向いたまま話す声はわずかに震え、つないだ手は汗ばんでくる。
期待
熱い迸りを受け止めた桜子は何かが身体の中で爆ぜるような気がして、めくるめく悦びに浸り緊張していた身体が弛緩する。
柏木は満足の証が出口を求めて狭い通路を走り出る快感で桜子を愛おしいと思う気持ちを再確認する。
「クククッ……抱きしめられるのは嬉しいけど、強すぎる。私は女の子だよ、壊れちゃうよ」
「ごめん、桜子にオレの気持ちを上手く伝えられなくて、つい抱きしめる手に力が入ってしまう」
「ウフフッ、ほんとう??嬉しい……あっ、また笑ってた。あなたといると素直な気持ちでいられる。迷惑??」
「迷惑なわけがないだろう。オレの気持ちを分からないかなぁ??」
桜子の乱れ髪に手櫛を入れて髪を擦り、じっと見つめる。
「もう、見つめられるのは恥ずかしいし、慣れていないって言ったのに……何かついてる??それとも変な顔をしてる??」
「桜子の虜になっちゃったようだよ。桜子を見ているだけで幸せな気持ちになる」
「嬉しい、そんな風に言われても見つめられるのは恥ずかしい。ねぇ、キスして」
萎れ始めたペニスが抜け落ちないように意識しながら唇を合わせて濃厚になることなくキスをする。
「イヤンッ、抜けちゃう」
柏木はナイトテーブルに手を伸ばしてティッシュを取り、結合部に押し当てる。
「抜くよ」と告げて、腰を引き、新たなティッシュでペニスを覆ってバスルームに向かう。
じゃれ合うようにして汗を流し、窓際のソファに座る柏木に抱きかかえられるようにして窓外の景色に見入る。
国分町や仙台駅など華やかな夜の景色は見えず、青葉山公園の静かな夜景を目にして自然と心が落ち着く。
背中越しに抱きかかえてくれる柏木の腕に手を添えて目を閉じる。
170㎝の身長のせいもあって男性にとっつきにくいと言われることもあり、店でもプライベートでも自然と笑うことを忘れていたような気がする。
幼少期は明るいと言われていた記憶があるものの学生時代に付き合っていた男性から、身長が同じくらいの桜子がヒールの高い靴を履くと僕が貧相に見えて嫌だと言われた。
それが原因で目立たない服装や話し方などを意識するようになり、独りで行動することが多くなった。
夜の仕事に就いた早い時期に、デケェ女だなぁと言われた事が切っ掛けで笑うことが無くなった。そのお客様は決して否定的に口にしたわけではなく、背が高いからスタイルも好いしモテルだろうと言ってくれたのだが、いつまでも忘れることなく
気持ちのどこかに引っかかっていた過去のトラウマがデケェという言葉に過剰反応してしまった。
そんな時、柏木の友人でもある高浜が、美人でスタイルの好い桜子ちゃんに笑顔を忘れたような表情は似合わないよと言われたので、好い男を紹介してよと話して口を尖らせた。
「その表情は可愛いな。桜子ちゃんにサイズ負けしない好い男を連れてきてやるよ」と言って、紹介してくれたのが柏木だった。
「ねぇ、私の第一印象はどうだった??」
「容姿端麗、座る姿勢も好いし水割りを作ってくれる所作も無駄がないし、見ているだけで気持ちが好い。こんな女性と付き合う男は幸せだろうなと思った」
「ウフフッ、じゃぁ……もう一度、連れてきてほしいって高浜さんにお願いした時はどう思った??」
「何かを期待したわけじゃないけど嬉しかったよ」
「期待しなかったんだ。私の片思いだったんだ……じゃあ、連絡が欲しいって書いたメモを渡した時は??」
「ほんの少し期待したし嬉しかったよ。だから翌日電話した」
「もう少し待っていれば、あなたが誘ってくれた??」
「多分、誘わなかったと思う。桜子は高嶺の花だと思っていたからね」
「そうか、はしたないかなと思いながら誘ったのは間違いじゃなかったんだ。そうだよね」
「申し訳ないけど、その通りだよ……桜子とオレ、住む場所などで交わることのなかった二人が今、こうしているのは桜子のお陰だよ。ありがとう」
手を添えるだけだった柏木の腕に頬を押し当ててうっとりと目を閉じる桜子は、ニヤッと笑みを浮かべて振り返る。
「明日、帰る前に持ちきれないほど買い物をしようかな……車じゃなく新幹線だから荷物が多くて困っている私を東京駅で放り出したりしないでしょう。当然、私の部屋まで送ってくれる……この間はコーヒーを淹れると言ったのに部屋に来てくれなかった。そうだ、そうしよう」
「えっ、そうだなぁ……」
「イヤなの??私とこれ以上親しくなりたくないの??そうなんだ、私は都合のいい女、身体だけが目当てなんだ」
「可愛いな、桜子は。何をしても何を言っても可愛いとしか思えない」
「もう、真面目に答えてよ。あなたにとって私は都合のいい女なの??」
「分かった、桜子は明日もう一泊する。但し仙台ではなく、オレの部屋だよ……明後日、桜子の家に送る。これで納得してくれないかなぁ」
「クククッ、大好き。約束だよ……それじゃぁ、寝ようよ。眠っちゃうと今日が終わるから嫌だなぁって思っていたけど、あなたの家に行けるなら明日が待ち遠しいもん。早く寝ようよ」
翌朝はモーニングエッチは許してあげるという桜子の言葉に苦笑いを浮かべ、仙台の街をのんびり散策して12時頃の新幹線に乗車した。
柏木の気が変わると嫌だから早く行こうと急かされて15時半頃に到着した。
「着いたよ。このマンションだ」
「ふ~ん、予想通り。装飾が少なく必要最低限の家具しかないシンプルな部屋」
「この部屋に彩りが必要と言うなら桜子がいれば解消できるだろう??」
「本気??名案だと思うよ、私が住みやすい部屋にしてあげる」
「毎日じゃなくてもいいから、来てくれると嬉しい。桜子の家にも店にも高速利用で1時間もあれば大丈夫だろう……深夜でも平気だよ」
「クククッ、あなたは私に惚れている。そうでしょう??正直に言っちゃいなよ」
「あぁ、オレは桜子に惚れている。文句ある??」
「クククッ、正直な人が好き。ご褒美をあげる……殺風景な部屋に彩りを与えてあげる」
留守にしていた部屋の換気で窓を開けっぱなしなのも気にせず、頬を紅潮させた桜子は下着まで脱ぎ捨てて素っ裸になってしまう。
「きれいだよ。殺風景な部屋に色気が加わった」
クローゼットを開けて品定めしながら、
「あなたのシャツをルームウェアにしてもいいでしょう??」
光沢のあるブルー系のシャツを身に着ける。
背の高い桜子は袖を3回まくりでリラックスした雰囲気と可愛さを醸し出す。
「どう??似合う??」
「可愛いよ。オレの息子に昂奮するなって必死に諭しているよ」
確かめるよと言い、股間に手を押し当てて破顔する。
焦ることなく、穏やかな気持ちで互いを理解する時間はたっぷりとある。
「お腹空いてないか??食べに行こうよ」
<<< おしまい >>>
正常位から横臥位
「プファ~……ぶっといチンチンが私の口の中で弾けそうになるくらい大きくなって暴れるの、舌も唇も顎もすべてが性感帯になったようで気持ち善かった。ファラチオってあなたを悦ばせるだけじゃなく、私も気持ち善くなれるんだよ」
「オレのモノをオシャブリしてもらって気持ち善くなってくれる、こんなに嬉しいことはないよ……おいで」
抱き上げた桜子の頬を両手で挟んで口の周囲に滴る汚れを舐めとり、そのままキスをする。
「チンチンを舐めた汚れだよ、舐めとってもいいの??」
「よその男じゃなくオレのチンポをナメナメしてくれたんだろう、汚いなんて思うわけがないよ」
桜子を横抱きにしてベッドに運び、そっと横たえる。
「クククッ、お姫さま抱っこって記憶の中では初めて、あなたは何もかも私にぴったり嵌る。凸と凹やボルトとナットのように……ウフフッ、こんな事を言うと重い??」
「重いなんて思わないどころか嬉しいよ。アソコがどうなっているか見せてもらうよ」
「見てもらいたいけど、入れてほしい。もう我慢できないの……何回か大きな波に飲み込まれる悦びを与えてもらったけど、あなたが吐き出した満足の証を受け止めたいの。いいでしょう??」
柏木は体重をかけないように気遣いながら恥ずかしそうに見つめる桜子に覆い被さり乱れ髪を整えて頬を擦る。
唇を重ねて唾液を交換するような濃厚なキスをする。
「キスが好き。何度もキスをしてくれる、あなたはもっと好き」
「桜子が食事をしたり話をしたり息をすることもある大切な口だろう、その口に挨拶するのは幸せだよ」
「フフフッ、アッ……最近、こんなに笑ったことはなかったかもしれない。鴨川に行った時もそうだったし、インフルエンザで寝込んでいたときもシャチのショーでビショビショに濡れたことを思い出して独りで笑っていた。あなたといると楽しいの」
「桜子が喜んでくれるとオレも楽しい。桜子の笑顔を見ると気持ちが和むし幸せな気分になる」
「もっと、もっと私を気持ち善くしてほしい……入れて」
頬を擦り、額を撫でてキスをする。
アフッ、ウッ、イヤンッ……唇を合わせて甘噛みし、舌を絡ませて唾液を交換する。
四本の手が肌をまさぐり、息を弾ませる。
「もう我慢できない、入れるよ」
「私も我慢の限界、これ以上待たされたら噛みついちゃいそう」
自らのペニスを摘まんで膣口に擦りつけ、十分に馴染ませて腰を突き出すとあっけなく姿を消していく。
「アウッンッ……クゥッ~、入ってくる……窓際で立ったまま背後から入れられるのもいいけど、これが好い。あなたの顔が見えるから安心できる」
割れ目の縁を巻き込むようにしてペニスが侵入を続けると柔和に見えた桜子の表情が険しくなり、両手を背中に回して柏木を抱き寄せ、狂おしい気持ちを露わにして両足も妖しく絡ませる。
「スケベな桜子が身体を密着させるだけで満足できるのか??」
「アンッ、いじわる……まだ足りない、もっと気持ち善くなりたい」
正常位でしがみつくように抱きつく桜子の首に左手を回し、右手を尻に回して抱き寄せ恥骨をぶつけるように股間を押し付ける。
小刻みに腰を蠢かしてバギナの入り口を刺激し、桜子の口がしどけなく開いて喘ぎ声を漏らし始めると唇を重ねる。
狂おしい思いを込めて貪るようにキスする桜子は上気して瞳は赤く燃える。
子宮口をつつくほど奥深くまで挿入していたペニスをゆっくりと引き抜いていく。
ペニスのカリ部が膣壁を擦り、内臓まで引き出されるような快感で桜子は白い喉を見せて仰け反る。
膣壁を擦りながら全容が見える寸前まで引き抜かれたペニスは、大陰唇を巻き込むようにしてゆっくりと押し込まれていく。
「クゥッ~、激しく出し入れされるのもいいけど、内臓が抉りだされるように、ゆっくりされるのはもっといい」
「桜子がオレと二人だけの時に気持ち善くなってくれるのは嬉しいよ。もっと、もっと気持ち善くなろうな」
激しくはなく、ストロークも大きくはなく静かに出し入れを繰り返す。
リズムを変えることなくゆっくり出し入れされると桜子の身体は柏木に同調し、性的欲求を満たすことだけを意識する。
拍動や呼吸も同調して身体だけではなく気持ちも満たされて表情が柔和になってくる。
「アァッ~、気持ちいい……変化をつけて激しくされるのも昂奮するけど、ゆっくり同じリズムで出し入れされると身体の芯がじんわりと熱くなってくる」
アゥッ、アッアッ、いぃっ、たまんない……ヌチャヌチャ、グチュグチュ、ニュルニュルッ……ゆっくりと同じリズムで膣壁を擦る内に子宮は堪えがたいほどに熱く疼き、
「イヤッ、何とかして。熱くて我慢できない、狂っちゃう……」
柏木を見つめる桜子の瞳は妖しく濡れて焦点が合わなくなり、うっとりするほど悩ましい。
両手から力が抜けてシーツに投げ出され、絡めていた両足も弛緩して顔は嫌々をするように左右に揺れる。
股間を押し付けて優しく円を描くように蠢かし、負担をかけないように気遣いながらも身体を密着させて鎖骨の窪みを舌先がなぞり、肩をハムハムと甘噛みする。
「可愛いよ……」
温かい息を吹きかけながら唇が肩から首を這い、耳元で優しく囁く。
ゾクゾクするような快感で桜子の身体がブルッと震えると、柏木は手をつなぐ。
シーツに投げ出されていた右手に指を絡められると宙を彷徨い焦点が合わずにいた桜子の瞳に光が宿り、羞恥を宿して柏木を見つめる。
「イヤッ、そんなに見つめられると恥ずかしい」
桜子の左足を抱え込んで腰を突き出すとペニスの進入角度が変化して予期せぬ快感に襲われる。
抱え込んだ左足を跳ね上げて肩にかけ、桜子の右足を跨いで奥深くまで突き入れる。
「桜子の中は温かくて優しく包み込んでくれる。うっとりするほど気持ちいいよ」
「ウッ、クゥッ……口から内臓が飛び出ちゃうほど突かれてキツイ。ウグッ、クゥッ~」
桜子に苦痛の色を感じた柏木は肩に掛けた足を外して背面即位に変化し、乳房を手の平で包み込む。
「アァ~ン、気持ちいい。あなたに背後から抱きかかえられると安心できるし、このまま逝かせてほしい」
自在に出し入れできる体位ではないものの、髪に顔を埋めて桜子の香りを吸い込み、耳元で愛を語り甘噛みをする。
「こんなに可愛い人がオレの腕の中にいる。オレの桜子だよ」
「アウッ、クゥッ~、小さな波が何度も何度も私のハートをくすぐっていく……熱いの、身体が熱いし、ドキドキが止まらない」
「桜子がドキドキするのが伝わって逝っちゃいそうだよ。温かくて気持ちいい」
「逝くときは一緒だよ、私も逝っちゃいそう……ねぇ、もう少し奥を突いてみて、あなたを子宮で感じながら満足したいの」
柏木は桜子の腰を掴み、身体の密着感を解いて腰に自由を与えて奥深くまで突き入り、
「逝くよ、出ちゃうよ、いいんだね」
「あぁ~、すごい。子宮であなたを感じる。クゥッ~、逝く、逝っちゃう。一緒に、ねっ、一緒だよ」
最後に突き入れた柏木は、ウッと呻いて快感を解き放つ。
「ヒィッ~、アウッ、アゥアワワッ……熱いのがピュッときた。嬉しい……」
ハァハァッ、腹部を上下して身体が鎮まるのを待った柏木は桜子を抱きかかえ、
「気持ち善かったよ……もう少しこのままで……」
と、囁いて抱きかかえる両手に力を込める。
「イヤンッ、そんなに強く抱かれたら壊れちゃう。ウフフッ、もっと強く抱きしめて……」
座位
抑えきれない欲情の昂ぶりを桜子の右足を抱え上げた背面立位でつながることで満足したはずの柏木は、あまりの気持ち善さでさらなる満たされない感情が沸き上がり、荒々しく出し入れを繰り返す。
「ウググッ、グゥッ~……きつい、壊れちゃう」
片足立ちの桜子を支えて背後から子宮めがけて突き入れる不安定な体位でペニスの出し入れを続けることもできず、つながったまま椅子に腰を下ろして背面座位に変化する。
「昂奮を抑えることが出来なかった。乱暴すぎたかなぁ、ゴメン」
背中越しに身動きできないほど強く抱きしめられて柏木の鼓動を感じ、吐く息と共に囁き声で耳をくすぐられるとこの上ない幸福感に包まれる。
幸せだと思えば思うほど、柏木の言葉に嘘はないかと確かめたくなるのはどうしてだろう。
「私の魅力に堪えがたい衝動が芽生えた??それなら嬉しいんだけど……ウフフッ、冗談だよ。そんな自惚れ屋さんじゃないから」
「桜子は自惚れ屋さんじゃないよ。桜子にどんどん惹かれていくのを感じる」
「本当??ねぇ、私のことが好きなの??」
「オレが桜子の事を好きだって気付いているだろう??手の拘束を解くよ」
自由になった両手を背中に回して柏木を確かめるようにアチコチ撫でまわす。
「手の自由を奪われるのは、あなた色に染められるようで嫌じゃないし、背後から貫かれて身動きできないほど抱きすくめられると幸せな気持ちになる」
顔は見えなくても身体はつながり、心は通じていると実感する。
柏木の手が乳房の麓から頂上に向かって掬うように揉みしだき、首筋から耳に温かい息を吹きかけながら、
「薄っすらと窓ガラスに映っている桜子を見ると幸せな気持ちになるよ」
「恥ずかしい……ウフフッ、私のアソコがこんなに貪欲だと知らなかった。あなたのモノを美味しそうに飲み込んでいる」
乳房を揉み上がり先端をクチュクチュ摘まむと身体を捩り、いやぁ~ンと艶めかしい言葉を漏らす。
「可愛い桜子、オレのチンポに犯されて気持ち好いんだろう??ダラダラ嬉し涙を流したオマンコが精一杯頬張っているのを確かめなさい……手を伸ばしなさい。窓に映るのを確かめながらオレのモノを触ってごらん」
そんなことは出来ないとでも言いたげに桜子は手を握り締めたものの、性的好奇心を抑え続けることもできずに手は結合部に向かい、握った手が解けてくる。
ハァハァッと息を荒げて人差し指が伸び、ぬらつくペニスの竿に触れて蛇が巻き付いたようにゴツゴツする血管をなぞる。
「ハァハァッ、すごい……こんなのが私の中に入ってくるの??」
「そうだよ、指を触れたままにして確かめてごらん。目も逸らしちゃダメだよ」
結合部が良く見えるように跨がせた足をわずかに開き、桜子の尻に手を添えて身体を支えゆっくりと出し入れを繰り返す。
「アウッ、ウッ……ベチョベチョのオチンポが私の中に入ってくるとき、アソコの縁が巻き込まれていく……クゥッ~、抜かれる時はオマンコ汁が掻き出されてニュルッとする。アソコが貪欲な底なし沼になっちゃった……」
「オレの男エキスを吸い取ってますます好い女になるんだな……オッパイはオレが可愛がるから桜子はクリを弄りなさい」
「イヤンッ、窓ガラスに映るでしょう??そんな恥ずかしいことはしたくない……どうしてもって言うなら、命令してほしい。自分の意思でそんな恥ずかしいことは出来ない」
「桜子、もっと気持ち善くなりたいだろう??チンポを触りながらクリも弄りなさい」
「アンッ、大好きなあなたの言葉だから逆らえない。恥ずかしいけれどクリちゃんをクチュクチュしちゃう……見える??」
「あぁ、見えるよ。窓ガラスの中に桜子によく似たドスケベな女性がいるのが見える。いやらしいなぁ……クチュクチュ、ニュルニュルって卑猥な滑り音が聞こえ始めた。桜子も聞こえるだろう??」
「ウッウッ、イヤンッ、ハァハァッ……いやらしい音が聞こえる。あなたの言う通り、窓の中にスケベな女がいる……こんなにすごいオチンポがスケベ女の中に入っている。クゥッ~……」
結合部を指で確かめ、クリトリスを弄って上半身を仰け反らして柏木にすべてを預けて寄りかかる。
柏木は右手を乳房に添えてヤワヤワと揉みしだき、左手は桜子の手を掴む。
「マンチャンはぶっといモノを突き入れられることに慣れてきたけど……ウフフッ、あなたの男と私の女がつながり、手をつないでくれる。身体も心もつながっている……もう限界、子宮がドクドクしてきた」
背面座位から対面座位に変化し、こみ上げる欲情を抑えて静かに長いキスをする。
「後ろから突き入れられると私の身体で満足してくれたようで嬉しい。顔を見ながらつながると愛されていると感じられて幸せ」
「桜子が幸せになるのは分かったけど、オレはどうすれば幸せになれるんだ??」
「私とつながったまま抱き合ってキスしても満足できないの??欲張りね……これで満足できる??」
結合を解いた桜子は椅子に座ったままの柏木の足元に跪き、上目遣いに見つめながら両足の付け根から膝まで撫でてクルリと反転して内腿をゆっくりと撫でていく。
舌が唇を舐め、見つめる瞳は獣欲で妖しく揺れる。
内腿を付け根まで撫でた指は鼠径部を上下し、愛撫を催促するようにペニスがピクンと反応すると、
「どうしてほしいの??舐めてほしいの??言葉にしないと分からない」
「舐めてほしい。マン汁まみれになったオレのモノをナメナメしてほしい。桜子のフェラチオで気持ち善くしてくれ」
「クククッ、いやらしい。男性不信になりかかっていた私に愛する悦びを思い出させてくれたから、ナメナメしてあげる」
宙を睨んで猛々しいペニスを摘まみ、ジュルジュルと音を立てて根元から先端へと滑りを舐めとっていく。
上目遣いに見つめて怒張に舌を這わせる妖艶さにペニスの反応は止まる事を知らず、ピクピク、ヒクヒクと震え、柏木はゴクッと唾を飲んで襲い来る快感を堪える。
「可愛い、オチンポの竿に舌を這わすだけでヒクヒクしてくれる……タマタマをコロコロすると気持ちいい??」
滑りを舐めとった竿を握って上下にしごき、反対の手の平で陰嚢をヤワヤワと刺激する。
ジュボッ、ジュルジュル、ジュボジュボッ……陰嚢に手を添えたまま竿をパクリと口に含み、顔を上下して味合うようにフェラチオに興じる。
柏木は両足の力を抜いてだらしなく投げだし、得も言われぬ快感に酔いしれて目を閉じる。