佐緒里と美香 -9
「クゥッ~……いやっ、気持ちいい。さおりさんの目の前で内藤さんのオチンポに可愛がられるなんて……恥ずかしい」
佐緒里の目の前で怒張を突き入れられて昇り詰める羞恥よりも、内藤は自分の男だと宣言する悦びで美香の心が震える。
佐緒里に見つめられるよりも、佐緒里に見られながらも昂奮の治まらないこの身体の反応を内藤に見せつけるのが恥ずかしい。
佐緒里が言ったエッチでドスケベ、私はそんな女だったのだろうかと思いながらも対面座位でつながる内藤の首に手を回してしがみつく。
そんな美香の頬に手を添えて正面から見据え、可愛いよと囁いた内藤は鳥が餌を啄むようにチュッチュッと何度も唇を合わせて美香の昂奮を誘う。
イヤンッ……焦らすような内藤に業を煮やした美香は首に回した手に力を込めて引き寄せ、唇を重ねて貪るように舌を挿入する。
挿入した舌を押し返されることもなく重ねて擦り合ったり吸い込んだりと自在に操られ、小鼻を膨らませてハァハァッと荒い息を漏らす。
「あふっ、クゥッ~……内藤さんの事を好きになってもいいの??ねぇ、もっと好きになってもいいの??」
そんな美香を愛おしく思う内藤は佐緒里の存在を忘れて再び唇を合わせ、唾液を交換するような濃厚なキスをする。
左手で美香の身体を支え、右手で髪を撫でて背中から腰を擦り尻を抱えて僅かに腰を突き上げると、ヒィッ~と悲鳴にも似た喘ぎ声を漏らす。
「美香、さおりさんに見てもらおうか??美香とオレが、どれくらい仲が好いか見てもらいたくないか??」
「さおりさんが見たいって言うなら恥ずかしいけど我慢する」
「見たい、偽チンポ姉妹の美香ちゃんが昇り詰めるのを見守ってあげたい」
「恥ずかしいけど見られるのは我慢する……内藤さんを欲しがらないって約束してください」
「可愛い美香ちゃんの大切な人。妹の邪魔はしないわよ」
「美香、身体を入れ替えてオレに背中を向けなさい」
「こうするの??つながったままじゃ大変……ハァハァッ、いやんっ、オチンポがアソコをグリグリする」
対面座位から背面座位に変化すると二人を見つめる佐緒里に結合部が丸見えになり、その表情に美香は羞恥する。
「イヤッ、さおりさんに見られている。内藤さんに貫かれてグジュグジュになっているオマンコを見られている……恥ずかしい」
ソファに座った内藤の太腿を跨いだ背面座位では剥き出しの股間を隠そうとしても足を閉じることはできず、両手で股間を隠そうとしても背後から抱きしめられてはそれも叶わない。
滴る花蜜が白い太腿を汚し、佐緒里に見せつけるかのように開ききった股間を少しでも隠そうとして身体を捩るとバギナを貫く怒張が予期せぬ刺激を与える。
「いやらしい……」
結合部を見つめる佐緒里のつぶやき声は、美香には呆れたという侮蔑の声に聞こえ、内藤はセックスの神秘のようなモノを感じ取ったのではないかと想像する。
「軽蔑しないで……さおりさんに嫌われたくない」
「軽蔑なんかしないよ。羨ましいの……別れた元亭主の事を懐かしく思うことはないけど、チンチンだけは置いていってほしかった。あの人のせいで男はこりごり、美香ちゃんが羨ましい」
「恥ずかしい、グチョグチョになっているのが分かるもん……アウッ、クゥッ~……いやんッ、そんな事をされたら……気持ち善くなっちゃう」
「見るだけじゃ申し訳ないから、好いものを持ってきてあげる」
立ち上がった佐緒里は別室に消え、再び姿を現した時はスタンドミラーを抱えている。
「美香ちゃん、よく見えるでしょう??ダラダラ嬉し涙を流して卑猥だね」
「よく見えるように、こうするとどうだ??」
内藤は両足をゆっくり開き、跨る美香の股間は真っ赤に濡れる花弁を蹴散らすようにして内藤の怒張が楔のように打ち込まれている。
「美香、顔を背けちゃダメだよ。鏡の中の自分を見なさい」
今でもキャバ嬢とは思えない清楚な魅力を湛える美香は鏡の中で白い肌を朱に染め、自らの痴態から目を逸らそうとしても身体の芯から湧き上がる妖しい疼きがそれを許してくれない。
鏡の中で赤く咲き誇る薔薇の花は別の命を宿しているように怒張を包み込んで妖しく蠢き、美香は自分のモノかどうか確かめるかのように指を伸ばして結合部に指を這わせ、指先に花蜜を掬い取って芳香の正体を探る。
「美香ちゃん、好い匂いがする??男を誘う妖しい香りを発散させている??ねぇ、どうなの??」
「私じゃないみたい。内藤さんに会うまではこんな事を想像したこともなかった……こんな恥ずかしい事をしているのは、さおりさんのせいなの??」
「美香ちゃん……女はね男で変わるの。好きな男が出来ると可愛く見られたい、尽くしたいと思うでしょう??それが女を磨くんだよ、幼虫が蛹になり、いずれきれいな蝶になる。男次第でどんな蝶になるか決まると言ってもいいと思うの……」
美香の腰に手を添えて身体を支え、ソファのクッションを利用して股間を突き上げると美香の表情は歓喜で歪み、佐緒里を気にする余裕もなくして憚りのない喘ぎ声を漏らす。
「ンッンッ、クゥッ~、すごい、子宮まで届いてる……ングッグッ、あうっうっ、そこ、そこ、もっと、奥まで、壊れちゃう……気持ちいい」
太腿を跨いで宙に浮く美香の左足を掴んでソファに乗せ、右足も同じように誘導した内藤は、
「美香、自分で動きなさい。出来るね??」
「いやっ、出来ない。力が入らないの……これでいいの??ヒィッ~、すごい……ハァハァッ」
ギシギシッ……「アウッ、クゥッ~、すごい。子宮が……奥まで届く……」
身体を支えてくれる内藤を信じてソファに乗せた両足に力を込めて身体を上下すると股間から脳天に突き抜けるような快感が襲い、あっけなく昇り詰めてしまう。
「クゥッ~、逝く、逝く、逝っちゃう、我慢できないの、ヒィッ~……」
「オレもだ、我慢できない……」
ギシギシッ……アウッ、アワワッ、気持ちいい……逝くよ、美香。受け止めてくれ……ギシギシッ……
「すごい、すごいっ……我慢できない、オモチャでもいいの。私を気持ち良くして、おねがい」
美香と内藤の激しい絡みを見つめる佐緒里は自らの股間に突き入れたバイブを激しく出し入れし、二人が昇り詰めるのを見つめながら絶頂に達する。
佐緒里と美香 -8
佐緒里の操る化粧筆は繊細な動きを続け、虫がモゾモゾ這うような甘美な刺激が本人も気付かず身体の芯で眠っていた性感を目覚めさせる。
心と身体の性的欲求を満足させようとして右手が操るバイブは荒々しく出入りを繰り返し、乳房を揉みしだく左手の動きも激しさを増す。
ヌチャヌチャッ、グチュグチュッ……ウググックゥッ~……溢れ出る花蜜は激しいピストン運動を繰り返すバイブに掻きまわされて白濁し、ヌチャヌチャ、ニュルニュルッと卑猥な音を奏でる。
「美香ちゃんはエロイ。オッパイの先端やクリちゃんが勃起するのは分かるけど乳輪もプックリ膨らんで物欲しげ……ここもクチュクチュして欲しいの??」
化粧筆が乳輪をなぞり、穂先で膨らみの先端をつつくとバイブを持つ手の動きが止まり、唇を噛んで眉間に寄せた皴を深くする。
「気持ちいぃ……自分の事じゃないみたい。こんな恥ずかしい格好で縛られて嬲られているのに気持ち良くなるなんて……」
「フフフッ、恥ずかしがらなくてもいいのに、感度が好い証拠。言葉を変えればスケベでドエッチ、こんな事をされて善がる子は美香ちゃんだけだろうな……内藤さんもそう思うでしょう??私がこんな事をされたら……美香ちゃんのような反応はあり得ない、絶対に」
「いやっ、もう言わないで。私はお店を止める……私の事をスケベでドエッチって言う、さおりさんと一緒に働けない。恥ずかしすぎる……内藤さんとも二度と会わない。もう会えない」
「ごめん、じゃぁ私を見てね。美香ちゃんを見ていたら、こんな事をしたくなっちゃった」
美香の痴態で自らの性感を昂らせた佐緒里は内藤と美香の三人が正三角形になるように移動したガラステーブルに座り、すでにしとどに濡れている股間に指を伸ばす。
「エッチな美香ちゃんを見て火照った身体がガラステーブルに座ると気持ちいい。冷たくてホッとする」
言葉遊びの度が過ぎたかなと反省し、美香の羞恥を和らげるために素っ裸のままオナニーを始める。
ニュルニュル、ヌチャヌチャッ……「いやっ、気持ちいい。美香ちゃんを見て昂奮しちゃったから私のエッチが止まらない」
ゴクッ……正面のソファでは両足をM字の恰好で拘束された美香が自由な両手でバイブを操り乳房を揉みしだく。
視線を右に向けると大股開きでガラステーブルに座った佐緒里が股間に指を伸ばし、左手を割れ目に添えて大きく開き真っ赤な花弁をあからさまに晒す。
「美香ちゃんと一緒、私もスケベでドエッチな女。大好きな美香ちゃんと……美香ちゃんと内藤さんに見られながら独りエッチするのって刺激的」
つまらない男に惚れてバツイチとなってからも朝露に濡れた朝顔の花のように可憐な姿を残したバギナは、オモチャ遊びをする美香に感化されて妖艶で毒々しい花弁と艶めかしい芳香を撒き散らし、虫を誘う食虫植物のように淫らな姿で内藤を誘う。
「きれいだよ。美香も佐緒里さんも美しい。何も身に着けず何も隠すことなく生まれたままの姿で貪欲に性欲を満たそうとする……生まれたままの姿と言っても、生まれたときから股間に毛が生えていたわけじゃないだろうけどね」
「見ちゃダメ。内藤さんは私だけを見るの、さおりさんは同性の私が見ても魅力的だけど、私だけ……」
「大丈夫よ、美香ちゃん。内藤さんは美香ちゃんが好きなの、私には分かる。安心しなさい……オモチャを頂戴」
命じられるままバギナから抜き取ったバイブを佐緒里に手渡すと、
「美香ちゃんの匂いがする、あらっ……ここに縮れっ毛が付いてるけど、美香ちゃんのマン毛なの??クククッ、食べちゃおう……ゴクッ、美味しい。これで美香ちゃんは私の中にもいる」
黒光りするバイブにまとわりついた花蜜を矯めつ眇めつした佐緒里は、内藤が良く見えるように股間を突き出しながらも視線は美香から外すことなくバイブを飲み込んでいく。
「ウッ、いつもより太い……これで美香ちゃんと私は、黒バイブ姉妹。内藤さん、美香ちゃんを抱いてあげて。生殺しじゃ嫌だって言ってたでしょう」
「そうだな……美香、オレのズボンを脱がせてくれるね」
足を縛られたままでは上半身も自由に動かせるわけもなく、手の届く範囲に近付いた内藤を待ちわびたかのようにベルトを外し、下着もろとも引き下ろすとピョンと跳ねるようにペニスが飛び出す。
まさしく我慢汁と呼ぶに相応しく、宙を睨むほどに昂奮した怒張は先端と言わず竿と言わず、ヌラヌラと滑りをまとっている。
「すごい、オチンポがベチョベチョに濡れて私の中に入りたいと言ってる」
佐緒里の存在を忘れたかのように、亀頭部に滴る我慢汁を指先で塗り広げ、精一杯身体を曲げて竿部に舌を伸ばす。
内藤が佐緒里を見ると、振動音で二人の邪魔をしないようにスイッチを切ったままのバイブを激しく出し入れしながらコクンと頷く。
焦点が合わないようで力ない視線ながら内藤の股間を見つめ、何度も頷いて見せる。
内藤の手が拘束を解くと、足に残った痕も気にすることなくソファから降りて跪き、子供が好きなオモチャで遊びように一心不乱にペニスにむしゃぶりつく。
「ハァハァッ、ねぇ、入れて。我慢できないの……さおりさん、ごめんね。このままだと気が狂っちゃいそうで我慢できないの」
「入れてもらいなさい。美香ちゃんが善がりなく姿を見てあげる。エッチでドスケベな美香ちゃんの本当の姿を見てあげる……クゥッ~、気持ちいい。スイッチを入れちゃう」
ヴィ~ンヴィ~ン……さおりの股間でバイブがくぐもった音を響かせ、視線は美香のバギナから離れることがない。
ソファに浅く座った内藤が美香の腰に手を添えて引き寄せると、唇を噛んだ美香はペニスを摘まんでバギナに擦りつけて馴染ませ、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「うっうっ、クゥッ~……入った、つながりたかったの。幸せ……」
佐緒里の存在を忘れたかのような美香は両手を内藤の背中に回して肩に顎を載せ、穏やかな表情で目を閉じる。
佐緒里と美香 -7
「美香ちゃんは、鈴蘭の花のように可憐な女性だと思っていたけど間違いだったようね。豪華絢爛な赤い薔薇の花や芍薬のような艶やかさがある」
「美香、よかったな。佐緒里さんのような素晴らしい女性に褒めてもらって嬉しいだろう??」
「褒めてもらった気がしない。揶揄われているだけ……オモチャや化粧筆で遊ばれて可哀そうな、私」
「揶揄ったりするわけがないよ、それは誤解。大人の男女にとってセックスは大切なコミュニケーションツール。性的感度の好い女性になって美香ちゃん自身も気付いていない魅力に磨きをかけてほしいの……私はそのお手伝いをするだけ」
「分かるような気がするけど……」
「内藤さんのような素晴らしい男性と親しくなって好い女になってほしいの。でも誤解しないでね、枕営業を勧めているんじゃないのよ。見た目だけじゃなく内から滲み出る魅力を評価される女性になってほしいの」
言い終えた佐緒里は再び美香に背中を向けて内藤に片目を瞑って見せ、唇を丸く窄めて丸めた舌を出し入れする。
バギナに出入りするペニスを想像させる佐緒里の淫蕩さに目を細める内藤は、覗き込むようにして自分に向けられる美香の視線に唇を尖らせてキスを連想させる。
「私を無視して二人で何をしているの??」
内藤のキス顔を見て振り向いた佐緒里は、穏やかで優しい表情を美香に向ける。
「たとえ、さおりさんでも内藤さんと変な事をしちゃ嫌だからね」
「佐緒里さん、鈴蘭の花言葉をご存知ですか??」
女性の直感は時として神憑り的に当たることがあるので内藤は話題を変えようとする。
「鈴蘭の花言葉は見た目とおりに純潔、純粋。薔薇は花束の本数や色によって違うというけど、赤い薔薇は愛情、情熱。芍薬も色により違うけど赤い花は誠実……昼間の美香ちゃんは可憐な鈴蘭、内藤さんと過ごすベッドでは情熱的な愛情と誠実さを持つ理想の女性。内藤さんは美香ちゃんをどう思っているのか聞きたい」
「佐緒里さんに聞いた花言葉を美香の花弁に当てはめると……昼は淑女、夜は娼婦と理想の女性になれるということだね」
「ハァハァッ、昂奮する……こんなの初めて」
美香の表情を窺うこともなく股間やオッパイを見ながら楽しそうに話す内藤と佐緒里に腹を立てるどころか、拘束された両足の指を曲げたり伸ばしたりして昂奮を隠そうともせず肩と腹部を上下して荒い息を漏らす。
「分かったわよ、美香ちゃん」
ヴィ~ンヴィ~ン……美香が落としたまま、啼かせる獲物を求めて床で震えるバイブを拾い上げた佐緒里は、
「美香ちゃん、正直に答えるのよ。いいわね??」
「はい、内藤さんと親しくならないって約束してくれるのなら、何でも答えます」
「美香ちゃんにここまで惚れられて内藤さんは幸せね……この偽チンポは好き??周りに蛇が巻き付いたよようでグロテスクだけど膣壁を擦られると気持ちいいでしょう??」
「オモチャで気持ち良くなると内藤さんのオチンポを思い出して善くなっちゃう……怒らない??嫌いにならないでね」
「嫌いになんかならないよ。淑女の美香も、娼婦の美香も好きだよ。本当の娼婦になって誰でもってのは困るけどね……好きだよ」
美香に近付いて頬に唇を合わせてチュッと音を立てると頬が赤らみ、股間からドロッと花蜜が滲み出るのを佐緒里は見逃さない。
「黒々としてグロテスクな偽チンポでマンチャンを掻きまわしなさい。内藤さんの前でとびっきりスケベな娼婦になってごらんなさい」
バイブが抜け落ちた後、愛撫される事もなく放置されたバギナは花蜜が枯れることもなく伏流水が滾々と湧き出る泉のように白い太腿にまで滴らせる。
「ハァハァッ、恥ずかしいけど止められない。こんな事をすると嫌われるかもしれないのに……ウッウッ、ウググッ、クゥッ~」
ズブズブッ……黒光りする偽チンポをバギナに擦りつけると力を込める必要もなく、花蜜の源泉に吸い込まれるように姿を消していく。
「アウッ、だめっ……内藤さんのぶっといオチンポが私の中に入ってくる。すごい、思いだしちゃう……もっと奥まで突いてぇ」
眼を閉じて右手で掴むバイブを子宮に向かって突き入れる美香は、内藤に抱かれた夜を思い出して新たな蜜を溢れさせる。
「すごいわね、美香ちゃん。女の子と遊んだことって何度もあるわけじゃないけど、すごいよ美香ちゃんは……こんなにスケベでセックスに貪欲な女だったなんて」
美香の背後に立って左耳に囁き、舌を耳穴に捻じ込み右手に持った化粧筆で右乳房をサワサワと撫で上がっていく。
「アウッ、アワワッ……気持ちいい、狂っちゃう」
全身の毛穴が開いて性的興奮を撒き散らし、何も気にすることもなく、何も見ようともせずに目を閉じたまま右手でバイブを操り左手で自らの乳房を揉みしだく。
良質な自然毛が繊細な感触で女性の美しさを際立たせる化粧筆が美香に妖艶な魅力を加えていく。
乳房や脇腹を触れるか触れないかの繊細な刺激を与え続けると美香は全身を虫が這いまわるような感触に襲われ、性虫に苛められる悲劇のヒロインになったようで被虐感を募らせる。
グジュグジュッ、ヌチャヌチャッ……クゥッ~、いぃの、たまんない……化粧筆で美香を羽化登仙の境地に追い込もうとする佐緒里の存在を忘れ、内藤への思慕を募らせて荒々しくバイブを操り続ける。
想い出そうとしても蘇ることのない記憶もあれば、忘れようとしても未練が残り捨てきれない想い出もある。
酒が悲しい想い出を忘れさせてくれると信じて飲んでみても、酔いから醒めると苦い思いが一層鮮明になり二度と酒は飲むまいと思う。
昼間は仕事に追われ仲間や友人と過ごす事で忘れたい記憶が姿を現すことはない。
夜の帳が下りて人工的な明るさが人々を照らし始めると陰が出来る。
明るさは人々の幸せの証、陰は思いだしたくない記憶の象徴。
夜になると人間の本性が露わになる。
「いらっしゃいませ。お久しぶりでございます」
「こんにちは。想い出に誘われてやってきました」
バーテンダーは懐かしい女性に挨拶をして、以前、好んで座っていたカウンター席に視線を移す。
女性の座るはずのカウンターチェアの隣には、あの頃と同じ男が物憂げな表情でグラスを揺すりカラカラと音を立てる氷を見つめている。
「お隣に座ってもよろしいですか??」
女は明らかに緊張を感じられる声をかける。
「えっ……あぁ、えっ??……どうぞ」
急に声を掛けられて振り向いた男は見覚えのある女の姿を確かめて、えっ、と驚きの表情になり、少し間をおいて立ち上がると同時にチェアを引き、どうぞと声をかける。
「ありがとう。失礼します」
カランカランッ……ジントニックを飲み干した男はバーテンダーに向けて音を立て、
「マスター、ギムレットをください」
「承知いたしました。お客さまも何かお作りしますか??」
「お願いします……シュワシュワで赤いカクテル、なんだったっけ??」
「キールロワイヤル。シャンパンを使うのは失礼だから辛口のスパークリングワインでお願いします……それで好いですよね??」
「いつもあなたがオーダーしてくれたから名前を憶えてなかったの。シャンパンに失礼って懐かしい表現……」
「君は、シャンパンに失礼って言い方はシャンパン以外のスパークリングワインに失礼だって言ったよね」
「そんなことも覚えてくれているんだ……ごめんなさい。話は変わるけど、あの日の私はどうかしていた。何も言わずに別れてくれって、我がままだし理不尽な言い方だよね」
「君の人生は君のモノでオレのモノじゃない。オレと一緒に居られないと思ったんだろうから誰も責めることはできないし、君は間違っちゃいないよ」
「腹水盆に返らずか、謝らせてもらえなくてもしょうがないね。もう少し、ここにいても好いですか??」
「好いけど……今はどうしているか聞いてもいいかな??」
「あなたの部屋を出てからは……その日は……」
言いにくそうに言葉を濁す女を見ようともせずに男は言葉を絞り出す。
「……そうか、君は好い女だからな。付き合っている男がいても不思議じゃないな……マスター、チェックお願いします。この人の分も一緒に、キールロワイヤルの後のスプモーニも加えといてよ」
「いいのか??最後まで飲んでけよ、ギムレットが悲しむぞ」
バーテンダーのぞんざいな言葉はカウンターに座る二人の過去を知り、それなりに親しい事を示している。
「そうだな。マスターの言う通りだ」
立ち上がりかけた男はカウンターチェアに座り直し、カクテルグラスを手に取ってギムレットに口をつける。
「あなたの部屋を出た日は友達の部屋で一泊して翌日からマンスリーマンションで1か月暮らした。契約切れの今日は帰る部屋もなく、楽しい想い出のあるこのバーに足が向いたの」
「私の作るカクテルを飲みたくなりましたか??それとも、目当ての人が来店しているとでも思いましたか??」
「マスターが作ってくれるカクテルも飲みたかったけど……ごめんなさい、涙が出ちゃう」
「いいのか、このままで??忘れられないから毎日のように来ていたんだろう??その席で誰かを待っていたんじゃないのか??」
マスターは男を見つめて叱咤する。
「そうだな、追憶の中のこの人を忍ぶにはこの席が一番いい。オレの部屋は辛すぎる。ここは好いよ、マスターの作る美味い酒が悲しい想い出を麻痺させてくれるから好い想い出しか残らない」
「どうですか、あなたが彼にお別れを言った理由は知らないけど今は悔やんでいるんでしょう??だから今日、ここへ来た。彼に会うためにね、違っていたら、長年、カクテルの飲み過ぎで私の頭は酔っぱらったままなのでしょう」
「はい、マスターの言う通りです。スマホやPCの履歴を消しても記憶を消すことが出来なかった……悔やむ気持ちが日を追うごとに募って、ついに今日……」
「答えにくいと思うけど、彼に代わって私が質問するよ……急に別れることになったのはどうして??店に来てくれるカップルの中では最高の組み合わせだと思っていたのに??」
「あの時の私は幸せに慣れすぎて……別れるって言えばどんな風に引き留めてくれるか、どんな愛の言葉を聞かせてくれるかってバカな事を考えたの。とんでもない過ちをしたって気付いた時は取り返しのつかない事態になっていた……」
「どうだ、彼女は後悔している。改めて何か言葉をかけるか、謝る時間を与えてやれないか??バーテンダーの私がこんな事を言うのは行きすぎだけど、二人が好きなんだよ……どうだ??」
男の前に立ち、穏やかな声をかける。
「オレも悔やむことがある。別れるって言われる前は楽しい食事を終えて何気ない話の途中だったし、食事前も週末の予定を話し合っていたんだから唐突さにびっくりして売り言葉に買い言葉のような反応をしてしまった。言葉の真意はともかく、どうして引き留めなかったんだろうと1か月考え続けていたよ」
「そうか、それじゃぁ、謝る時間をあげるんだな??」
「謝る必要ないよ……だいたいの事は分かったし、人は失敗から学ぶことが多いから今回の事も二人にとって無駄じゃない。今日寝る場所もないなら、オレん処へ来るか??」
「好いの??許してくれるの??……ありがとう」
「すべて、そのまま置いてあるからマンスリーマンションよりも暮らし易いと思うよ」
「よし、今日は帰れ。早く二人っきりになって愛を確かめろよ。男と女、理屈じゃないだろう」
立ち上がった男は右手を女の左手とつなぎ、そのままポケットに手を入れて、
「マスター、ありがとう。二人だけだと意地の張りっこをしたかも分からないけど、マスターのお陰で素直になれたよ」
「おう、以前のように飲みに来てくれよ」
男はポケットの中で固く手を握り、女は安堵の気持ちを隠すことなく寄り添って歩く。
通りでタクシーを待つ男が空を見上げると、手を伸ばしても届くはずのない高い処を飛行機が飛んでいる。
「あっ、流れ星だ。願い事をしよう」
雲一つない空で消えることのない流れ星に二人は願い事を唱え続ける。
<< おわり >>
佐緒里と美香 -6
「美香ちゃんは歯ブラシよりも化粧筆の方が好きでしょう??遊んであげる」
美香の背後に立った佐緒里は手に持つチークブラシで自らの頬を一撫でして感触を確かめ、気持ち好いわよと耳元で囁いて息を吹きかける。
アンッ……ヴィ~ンヴィ~ン……くすぐったさを伴う快感で身体を竦めた拍子にバイブから手が離れ、ボトンと音を立てて落ちてしまう。
「筆に熱中したいからおもちゃを捨てちゃったの??筆と遊びたいんだね、好いわよ」
ボトンッ……ゴクッ……エロっぽい裸女二人を前にして身じろぎすることなく見惚れていた内藤はバイブが落ちた音で我に返り、照れ隠しのように宙を睨んで息を整える。
「アンッ、いやんっ……」
チークブラシが臍の周囲をなぞり、脇腹を一気に撫で上がると美香の口から艶めかしい声が漏れる。
佐緒里の言葉を思い出す……美香ちゃん、あなたの持つ美しくしさや溌溂とした感じがこの商売で成功する元になると思う。
でも安心しちゃダメよ、店だけではなく普段も化粧や衣装、姿勢に気遣いを忘れないようにしなさいと言って、化粧筆のセットをプレゼントしてくれた。
天然毛のそれは、それまで美香の使っていた人口毛の筆と違い毛先が肌にしっとり馴染み、自然な感じで艶のある仕上がりになった。
その筆が美香の肌を這い、天然毛の精細な刺激と佐緒里の手による大胆な動きで男の愛撫とは違う心地良さに包まれる。
「ウッウッ、アウッ、イヤンッ……気持ちいぃ」
佐緒里にプレゼントされた化粧筆を使うときに感じていたしなやかで優しい感触が、今は快感を高めることを目的としたかのように上半身や首筋を這い回る。
どんなに繊細な男性の愛撫よりも柔らかなタッチで刺激されると身体の芯が疼き、自然と喘ぎ声が漏れて全身の火照りに苛まれる。
「どうしたの、美香ちゃん。随分と可愛い声を漏らすのね……苦しいの??やめようか??」
チークブラシが肌を離れると美香の意思に関係なく身体が後を追い、イヤッと声が漏れる。
「やめると嫌なの??そうなの??美香ちゃん、答えてくれないと分からないでしょう」
「はい……止めないでください。生殺しのような止め方には堪えられない……恥ずかしい姿を見られても好いです。このままじゃ、いやっ」
「クククッ、可愛いわね、美香ちゃん……」
ソファに拘束した美香の背後に立つ佐緒里は、耳に息を吹きかけながら声のトーンを落として囁く。
佐緒里に操られたチークブラシが優美なタッチで耳朶を刷き、耳穴を撫でるとその刺激は脳にまで伝わり、めくるめく悦びで可憐さを残した美香は妖しい魅力を湛えた女へと変化していく。
M字に拘束されて露わに晒すムッチリとした白い内腿は大理石のような肌理の細かさとしっとり感を漂わせ、見つめる内藤は震い付きたい衝動に駆られる。
チークブラシは耳の裏から首筋を刷き、鎖骨の窪みをなぞって乳房の麓から頂上に向かって撫で上がる。
筆は乳輪をなぞり穂先が先端をつつき、クゥッ~、得も言われぬ気持ち良さに身体を捩ると乳房の谷間から下腹部まで一気に撫で下りる。
「アウッ、アワワッ、どうして??オッパイが気持ちいいのに……」
「ウフフッ、私は意地悪なの。意地悪でなきゃ足を縛ったりするはずがないでしょう??」
操る筆は産毛を一本一本起こすかのように下腹部や脇腹を逆撫でし、身を任せる美香は全身が総毛だつような快感に震える。
くすぐったさを感じることはなく筆の与えてくれる快感に身を任せ、唇に舌を這わせたり握ったり開いたりする内藤の両手を見つめていると抱かれたことを思い出す。
内藤の愛撫はチークブラシほど繊細ではなかったが、与えてくれた快感は何物にも勝る。
内藤の手や股間を見ているとチークブラシやそれを操る佐緒里の存在は気にならなくなり目を閉じる。
自ら視線を捨て去ると気持ちも身体もわずかに残っていた緊張を忘れて快感に身を任せる。
「ウッウッアウッ、クゥッ~……気持ちいぃ、内藤さんに可愛がってもらうのがいいの、ハァハァッ……」
「あらあら、困った美香ちゃん。私の愛撫を忘れて内藤さんの事しか考えられなくなっちゃたようね」
耳に口をつけて囁き、乾いた舌先を耳穴に捻じ込んだ佐緒里は美香の前に陣取り、チークブラシで鼠径部や内腿を撫でて息を吹きかける。
「アンッ、いやっ……そんな事をされたら……クゥッ~」
しどけなく開いた割れ目は花蜜にまみれた花弁をあからさまに晒し、責めを催促するかのように腰を突き出そうとする。