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彩―隠し事 433

変転-11

「おはよう……朝食が出来たよ」
「ウ~ン……おはよう。起こしてくれれば良かったのに…二人で朝食を作るっていいと思わない??」
「今度はそうするよ。起きろよ……これでいいだろう??」
声を掛けると同時に気持ちよさそうに伸びをする彩に白いシャツを投げる。
「クククッ、誰もいない二人だけの部屋だよ。ハダカンボでもいいのに……彩の身体に飽きちゃったの??」
「今日は彩にとって大切な日。目の下のクマを作っちゃまずいだろう??」
「クククッ、ハダカンボの彩を見ると興奮して出かけるまで犯しまくるって言うの??……このシャツを着ないで挑発してみようかな……どう??昂奮する??」
上半身を起こした彩はシャツを着けることなく両手を精一杯伸ばして胸を突き出す。
「可愛いオレのウサギちゃん。挑発するとオレのモノは暴れん坊チンチンに変身してウサギちゃんのオンナノコが真っ赤に腫れあがるほど犯しまくるよ」

健志はベッドで座る彩を押し倒して右乳房を鷲掴みし、左胸の先端を口に含む。
「イヤァ~ン…赤く腫れあがったオマンチョになんかされたくない」
拒否する言葉を口にする彩は両手を健志の首に巻いて強く抱き寄せ、言葉とは裏腹に嫌がる気配を見せることがない。
「クククッ、ウサギちゃんはプレイボーイのロゴマークやバニーガールで有名。性欲の強い動物として有名なんだよね。彩はエッチでスケベ、セックス大好き女だって言うの??」
「お腹に赤ちゃんがいても妊娠できるらしいけど、ウサギは天敵が多いから子供をたくさん産んで子孫を残そうとするのだからえらいよ……オレがウサギちゃんって言ったのは彩がウサギと同じように可愛いからだよ。誤解しないでくれよ」
「以前、今と違うことを言ったような気がするけど…まぁ、いいわ。許してあげる……お腹が空いた」
首に巻いた手を解き、覆いかぶさる健志からするりと抜き出た彩は爽やかな笑顔でシャツを羽織る。。

「美味しそう。目の前に彩のために用意してくれた朝食、こんな暮らしは想像もしたことなかったけど、健志の部屋では時々……いつまでもここで暮らしたい」
「今の笑顔を想像しながら、燕麦中心の食事を用意したけど幸せだよ。ありがとう」
「燕麦なんて言われると牛か馬の餌みたい。オートミールって言ってよね」
「クククッ、可愛いなぁ……オートミールは牛乳だけだはなくメープルシロップを加えたけど、シナモンパウダーの方が良かったかな??」
「シナモンも好いと思うけどこれもいい……オムレツもフワフワで美味しい。ウフフッ…笑いたくなるほど幸せ」
食事を終え、清々しい朝がゆっくり時を刻む中で彩はコーヒー、健志はミルクティを飲みながら夜とは違うこの街の景色を見つめる
禍々しいほど煌びやかに輝いていた照明が無くなり陽光が真上から降り注ぐと、夜のこの街を訪れる人たちが目指した陰が消えて遠目に見ると猥雑さも感じられない

コーヒーカップを持ったままの彩が健志の足を指さすと座りなれた格好に太腿を揃えてくれる。
「ウフフッ、彩専用のレッグチェア。跨いで座って首に手を回すとキスも出来る……う~ん」
彩は口を尖らせて目を閉じる。
そんな彩の背中に手を回した健志は抱き寄せて唇を合わせ、二人は息をするのも忘れて舌先をつつき合い絡み合わせて苦しくなるとハァハァッと息を荒げて見つめ合う。
シャツの裾を捲り上げて下着を着けていない尻を撫でると彩の顔が綻び、
「どうするの??するの??」
「しないよ。今日は彩の大切な日、邪魔はしたくない…クククッ」
「がっかりだなぁ……プロジェクトを進めるかどうかの最終ミーティングは健志がプレゼントしてくれたエロ下着のお陰で大成功。今日も健志の力を借りようと思ったけど諦める。その代わり、今夜は……クククッ」
「荒垣さん相手のプレゼンの準備をするんだろう。オレはお金儲けに精を出すよ」
「日経先物取引だね。儲かったら豪華な夕食でしょう??」
「そのためのトレードに決まっているだろう……机を使っていいよ。オレは此処でやるから」

健志の勧めで机に向かう彩はPCを開き、二人の時間に見せることの少ない真剣な表情になる。
そんな彩を見て頬を緩める健志もまたPCを持って机の正面で腹這いになる。

「ねぇ、真面目にお金儲けに励んでいる??健志の視線を股間で感じるんだけど、勘違い??」
「えっ…彩の言う通りだけど、しょうがないだろう。美味しそうなオンナノコがチラチラ見えるんだから」
「クククッ、朝食が足りなかったの??彩も食べちゃう??」
白いシャツだけを身に着けた彩は両足を閉じたり開いたりを繰り返して健志を挑発する。
「よし、約定した。お金儲けは終わり。ナイトセッションでエントリーしたポジションと合わせて決済で目標完了……以前と違って、保証金が200万近いからエントリー枚数が大変だよ」
「ウフフッ、荒垣さんとの打ち合わせが成功すれば久しぶりに鯛の塩釜焼きを作ってね」
「お祝いは腕によりをかけて作ると約束するよ」
「期待しているよ……資料確認は終わり。そばに行ってもいい??それとも健志が来る??」
「もうしばらく観察していたい」
言葉を終わるや否やPCを脇にやり、横たわったまま肘枕で彩の股間を見つめる。

「なに??どうしたいの??……ウフフッ、バカね……」
机の陰で寝転がって足は見えるものの顔は見えない健志に向かって嫣然と微笑む彩は思わせぶりに両足をしどけなく開く。
ゴクッ……そんな色っぽい仕草に健志は唾を飲み、気配でそんな様子を知った彩は挑発を止めることがない。
シャツ越しに股間を右手で擦り、イヤァ~ンと艶めかしい声を漏らすと、またもや健志はゴクッと唾を飲み両脚を蠢かす
「ウフフッ、彩のオンナノコを想像して興奮しているでしょう……好い子にはご褒美を上げる。見てね……」
ボタンを下から順に一つ、二つと外した彩は宙を睨んでフゥッ~と息を吐き、微かに震える指で三つ目のボタンを外して股間を露わにする。
「これで終わりじゃないだろう??」
「いじわる…彩に恥ずかしいことをさせたいの??いいよ、荒垣さんにアポを取ってくれたお礼だからね」
股間に添えた右手は秘所を隠すようにして動くことはなく、机に隠れて見えることのない左手が胸の膨らみを揉みしだく。
「ウッウッ、気持ちいい。健志の前でオナオナすると全身が性感帯になっちゃう…イヤァ~ン」
自らの指と言葉で性感を昂ぶらせる彩の右手は股間を覆うだけでは飽き足らず、ついには割れ目の縁を擦り、膝が震えながら左右に揺れて意識しないまま足指が床を刷くように曲がる。
「彩、可愛いよ。顔もオッパイも見えないけど悩ましい声がオレを刺激する」
「アンッ、恥ずかしい……お終い、続きは夜ね。彩の指じゃなく健志の指や舌で可愛がってくれるでしょう??」

シャワーで卑猥な思いを洗い流した彩はパンツスーツで身支度を整え、色を合わせた紺色のスーツとノーネクタイの白いシャツ姿の健志が運転する車で待ち合わせ場所に向かう。

ホテルのロビーに荒垣を見つけた健志が彩を従えて近付くと席を立ち軽く会釈をする。
「お久しぶりです。急な連絡にも拘らず早速にお時間を頂いてお礼を申し上げます。ありがとうございました…こちらがご紹介したい方です…」
振り返って手招きで彩を荒垣に近付け、自らはこの場から去ろうとする健志を制した彩は、
「今日はお時間を頂きありがとうございます。鍬田優子と申します……」
と、名乗り名刺を差し出して軽く会釈をし、隣で唖然とする健志に視線を向けてニコッと微笑む。
「荒垣由惟と申します。健志さんを介しての打ち合わせなので初対面とは言え不安はありません」
荒垣もまた健志に視線を移してニコッと微笑む。
苦い顔の健志を意に介する様子もなく二人は平然と席に着く。


凸と凹

2/2
ハードパンが自慢の店でバゲットを買った二人は自然な風で手をつないで帰路に就く。
「理沙と雅之って、すれ違う人にはどんな関係に見えるのかなぁ??恋人??もしかすると夫婦に見えるかなぁ??」
「オレが理沙に相応しい男に見えるといいな。理沙は好い女だよ」
「クククッ、私は両手を目一杯広げても抱えきれないほど雅之のことが好き」
「オレは宇宙の端から端までにある全ての星の数ほど理沙のことを愛している」
「じゃあ、私は世界中の砂浜にある砂の数ほど健志のことを愛している」
「ウフフッ、春風駘蕩。春らしい天候に誘われて散歩をしようと思ったけど、天気を司る神様に感謝するよ」
「天気を司る神様がいるの??その神さまは憎からず思っているのにウジウジしている私たちに切っ掛けを与えてくれたのかもしれないね」
春の日差しは心地好く、頬を撫でる微風は二人の気持ちを解して距離を近づけていく。

「ただいま。今日は素晴らしいお客様をお連れしたよ」
迎える人のいない部屋に向かって雅之は声を掛ける。
「お邪魔します……ウフフッ、想像していた通り見栄や衒いのないシンプルな部屋でよかった。お腹が空いた……パンの準備をするけど焼くだけでいいでしょう??」
「ガーリックトーストは後のこともあるしね。オレはオニオンサラダの用意をするよ」
「後のことって……ウフフッ、いやらしい」

ビーフシチューをメインにして昼食を終えた二人は微かな緊張感の中で無言になり、堪えきれなくなった理沙が口を開く。
「これまでの、会釈するだけの関係から部屋に招いてもらったし、昼食もごちそうになった。ぼつぼつ部屋に戻ろうかな……」
それを聞いた雅之は言葉もなく理沙を抱き寄せて唇を合わせる。
「ウッウッ、クゥッ~……フゥッ~、やっぱり、私が切っ掛けを作らないと進展しない。強引でもいいから雅之が…ねっ」
「ごめん、何度も言うけど、好い女だから気後れしちゃうんだよ……勇気を振り絞って抱き寄せたから冷汗を掻いちゃったよ。シャワーで汗を流したい。理沙も一緒にいいだろう??」
「フフフッ、無茶ぶりで強引。私も汗を流してスッキリしたい……着替えを持ってないけど、なにか貸してくれる??」
青いシルクシャツを取り出した雅之は、
「一番のお気に入りシャツ。この部屋では理沙のルームウェアとして使ってほしい」
「ありがとう。雅之のパンツを借りるわけにはいかないからノーパンだね。ウフフッ、悪戯をしちゃイヤだよ」
「えっ、悪戯はダメなの??シャツ一枚だけを着けた理沙を前にして我慢できるかなぁ、自信がないよ」
「悪戯はダメ。私の肌に触れる時は……ねっ、これ以上は言えない。分かるでしょう」

「クククッ、くすぐったい。女を抱くのは初めてじゃないでしょう??……イヤァ~ン」
ボディソープにまみれた肌をまさぐり、唇を合わせても照れや恥じらいが残りオッパイをクチュクチュ、下腹部をサワサワしてもくすぐったさが残る。
汗を流した二人は羞恥を残したままリビングに戻る。

わずかに朱を帯びた肌を青いシャツで包んだ理沙が上気した表情で雅之を見つめると、隠しきれない色っぽさに股間は明らかに反応する・
「イヤンッ、反応してくれないのも困るけど……ハァハァッ、ねぇ、どうすればいいの??」
「理沙は何もしなくていいよ。今日はオレが理沙にサービスする日」

ハァハァと息を荒げ、立っているのも辛そうなほど興奮を露わにする理沙を抱きかかえた雅之はベッドに横たえる。
静かに目を閉じる理沙の髪に手櫛を入れて頬を撫でると、
「優しくしてね。雅之を好きなままで居たいの」
「可愛いよ……大切な人だから嫌なことはしない。信じてくれるね」
閉じた目を開いて恥ずかしそうに見上げる理沙に顔を近付けると再び瞳を閉じてキスを待つ。
鳥が餌を啄ばむように唇や舌をつつき合い、這い出た舌が絡み唾液を啜る。

雅之の手がシャツ越しに胸の膨らみに触れると、ウッと声を漏らして顔を背け、右手の親指の付け根を噛んで声を漏らすまいとする。
膨らみの大きさと形を確かめるような動きをすると目を閉じたまま眉根を寄せて顔を仰け反らせて白い喉を見せる。
「艶のある黒髪と顰めた表情が色っぽい、知れば知るほど理沙を好きになる」
「アンッ、ほんとう??気持ち善くしてくれるでしょう??」

雅之の手はシャツ越しに肌を這い、焦燥感に捉われる理沙は、ウゥッ~ンと鼻を鳴らして身体をくねらせる。
肌を合わせるのが初めての理沙を相手に焦ることなく感触を楽しみたいと思っても、密かに焦がれていた雅之は逸る気持ちを抑えることが出来ずに愛撫に熱がこもる。
胸の膨らみを揉み、腰を擦り下着を着けていない鼠径部を撫でると、アンッ、イヤァ~ンと艶めかしい声を漏らして腰を突き上げ、女の急所への愛撫をねだる。
雅之の手は股間に伸びることなく再びシャツ越しに乳房を揉み、先端を摘まんで揺する。
「アンッ、イヤッ、気持ち好いけどオッパイばかり可愛がるから私のオンナノコが拗ねている……分かるでしょう??確かめて??」
雅之の右手を掴んで下着を着けていない股間に押し付ける。

「すごいな、理沙のオマンコはヌチャヌチャでドッロドロになっているよ」
「イヤッ、そんなことを言わないで。雅之に抱いてもらうのを待っていたんだから……私が嫌いなの??」
「一目惚れした理沙の後をつけるほど好きだって言っただろう。嘘じゃないよ」
「ウフフッ、その言葉を聞きたかったの……ねぇ、こうなることを長い間、待っていたから我慢できない…入れて、おねがい」
瞳を潤ませて懇願する理沙と同じように我慢の限界に達していた雅之は左手でシャツ越しに胸の膨らみの先端を摘まみ、右手でボタンを一つ、また一つと外して大きくはだけ、白い肌をあからさまに晒す。
「オレも爆発しそうなほど興奮している。入れるよ……」
自らの分身を摘まんで溢れる花蜜の源泉に押し付けて馴染ませた雅之は左手で身体を支え、右手で理沙の頬を擦りながら突き入れる。

「ウッウッ、クゥッ~、きつい……いぃ、やっと……」
「気持ちいい……動かないでくれよ。そんなことをされると夢が叶って理沙とつながった悦びで逝っちゃいそうだよ」
「何もしていないよ。アソコが熱くてヒクヒクするの……私じゃないみたい、イヤッ、震えが止まらない。ねぇ、覆いかぶさって。雅之の体重をすべて私に……フゥッ~、雅之を感じる……」
「重いとか痛いとか感じたら直ぐに教えてくれよ」
「うん…でも、今は雅之を感じているのがいいの。つながっていると実感できるもん…ウフフッ」
「理沙の凹とオレの凸がぴったり嵌まって気持ちいいよ。その上、白くて艶めかしい肌がオレに吸い付いて離れることがない。オレと理沙は離れようとしても離れられない…そうだろう??」
「クククッ、嬉しいことを言ってくれる。明日は休みでしょう……このまま月曜の朝までくっついている??」
「いいなぁ、食事もお風呂もつながったまま。トイレに行くのも一緒…理沙だからオシッコの匂いは我慢するよ」
「クククッ、いやらしい……アンッ、笑ったら身体が震えて気持ち善くなっちゃった。イヤァ~ン、ダメ」
「オレも我慢の限界だ。逝くよ、出ちゃう…ゴメン」

シャワーでセックスの残滓を流し、互いの肌をまさぐりながら唇を合わせて気持ちを確かめた二人は晴れ晴れした表情で窓際に立つ。
白い雲が穏やかに流れる空と土曜日のデートをするカップルや家族連れ、普段は気にすることもない景色が穏やかな気持ちにしてくれる。

「理沙んちはエレベーターに乗ればすぐだけど、明日の夜までここにいろよ」
「いいけど、下着など必要なモノを持って来たい」
「ハダカンボのままでもいいけど、散歩も出来ないのは辛いな……鍵を渡しとくよ」
「うん、うちの鍵は私の部屋に来たときに渡すね。自由に出入りできるのっていいね。ウフフッ……」


凸と凹

1/2
温かい微風に誘われるように目的もなく住み慣れた街の小川沿いに整備された遊歩道を散策する男は若葉の匂いを胸いっぱいに吸い込んで春を満喫し、清流のせせらぎが気持ちの奥に澱のように溜まった邪念を流してくれるような気がして清々しい気持ちになる。

東屋は散策途中に休憩する人たちで席はなく男はわずかに通り過ぎた場所の切り株に腰を下ろしてミネラルウォーターで喉を潤し、歩いてきた方向に視線を向ける。
アイボリーのビッグスェットに黒いスキニーパンツを合わせ、スニーカーを履いた女性が歩いてくる。
腰の位置が高く膝下を伸ばして颯爽と歩く姿に見惚れる男は女性の意を想像することもなく頬を緩め、目の前を通り過ぎても視線を逸らすことなく後姿を追う。
突然、立ち止まった女性は振り返ってきっと男を見つめ、踵を返すと切り株に腰を下ろしたままの男の前に立つ。
「ごめん、何度かお見掛けしただけの女性を見つめるのは礼を失していました。ごめんなさい」
「えっ、そんなことを言われるとお願いできなくなっちゃいます。私こそ、ごめんなさい」
「……私にお願いとは、なんでしょうか??」
不安を表すことはなく、笑みを浮かべたままの男は興味津々といった表情で女性を見上げる。
緑陰に差し込む一条の木漏れ日が女性の頬を照らし、通りすがりに会釈を交わすたびに、魅力的な人だなぁと思ったことを改めて意識する。
「フフフッ、何度か会釈を交わしたことがあったけど、そんなに見つめられると恥ずかしくなっちゃう」
「ごめんなさい。近くで見ると魅力が倍増です」
「ウフフッ……それでは思い切って言っちゃいます。厚かましいお願いですが、お水をお裾分けして頂けませんか??」
「えっ…ハハハッ、新しいのを持っていないので口をつけた残り物でよろしければ、どうぞ……」
男が差し出したミネラルウォーターを受け取った女性は男が飲んでいたことを意に介する様子もなく、ゴクゴクと喉を鳴らして渇きを癒す。
「フゥッ~、美味しい……」

「喉の渇きを癒しただろうけど、もしも疲れているなら跨いでもいいよ……勘違いしないでよ。座って休憩したいんじゃないかと思っただけだよ」
膝を揃えた男は満面の笑みで両手を開いて女性を迎える準備をする。

「その前に、一つ質問に答えてもらえる??」
「いいよ、何でも聞いてよ。真面目に答えます」
「あのマンション住まいだから結婚していないのは想像できるけど、付き合っている女性はいないの??」
「いないよ。私の膝を椅子代わりに使ってくれる人を待っていた」
「クククッ、それでは安心して疲れたから膝を貸してもらうことにする」
「どうぞ……」
周囲を気にする様子もなく太腿を跨いだ女性は嫣然と微笑み男の首に手を回す。
「貴女とは、通りがかりに会釈をする程度の付き合いだったけど、これで進展すると思ってもいいのかなぁ??」
「それを望むなら、これまで何度も会ったのにどうして誘ってくれなかったの??私は声を掛けてくれるのを待っていたんだよ……待ちくたびれて、はしたない真似をすることになったんだから……」
「ごめん、自信家じゃないから断られた時のショックを考えると声を掛けることが出来なかった」
「ほんとう??……それより周囲の人たちの視線が気にならない??私は堪えられない、あなたは??」
吐く息が耳の周囲にかかり、男の緊張を煽るほど顔を近付けた女性が男に囁く。

男が視線を巡らすと、散歩途中にミネラルウォーターを回し飲みし、膝を跨いで座り親し気に話す様子に周囲の人たちは好奇の視線を向けている。

ブルっと震えを帯びた男は、
「ウッ、クゥッ~……」と、女性の頬を緩ませるような声を漏らす。
「ウフフッ、可愛い……あなたのことが前から気になっていたの。あなたは??」
「フゥッ~、貴女に初めてお会いしたのは引っ越した翌日の帰宅時、改札を出たところで前を歩く女性に心惹かれた。後をつけるという意識はなかったけど、同じマンションだったので何か因縁のようなモノを感じた。三か月前のことです」
「私も自信家じゃないけど、信じることにする。さっさと誘えばよかったのに、待っていたんだよ……ねぇ、あなたの手の動きは嫌じゃけど気になる」
「えっ、ごめん。変な気持ちじゃないと言ったら信じてくれるかな??」
「腰やお尻を撫でているけど、がっかりした??見かけよりもムチムチしているなと思ったでしょう??」
太腿を跨いだ女性の背中に左手を添え、腰に回した右手の感触に酔う男は知らず知らずのうちに腰や尻を撫でていたことを指摘されて苦笑いを浮かべる。
「そんなことは思わないよ……駅であなたを見かけたときは容姿と雰囲気に一目惚れしたけど、今は腰や尻のムッチリ感に惚れ直しました。昼食に付き合ってもらえますか??」
「こんな格好だから洒落たお店は無理だろうけど、お誘いにお礼を言います」
「オレ、いや、私の部屋ではダメですか??一人じゃ食べきれないほどのビーフシチューを作ってあるんです」
「いいわよ。食事の後、あなたの部屋に誘ってくれなければ私の部屋に連れ込もうと思っていたの……急に体調が悪くなったから送ってほしいとかなんとかね、ウフフッ。私って悪い女なの、知っていた??」
「嘘を吐かれても嫌いになるどころか可愛いなぁと思える人がいる。悪い人だと承知で好きになることもある……貴女に惚れていると確信しました」
「ウフフッ、私があなたに惚れているかどうかは今日という日が終わるまでに応えるって約束します。それでいいでしょう??」
「十数時間ももらったのか、十数時間しかないのか……善は急げ、さっそく私の部屋に行こうよ」
「いいわよ……それと、オレでいいよ。もう一つ、あなたじゃ他人のように感じるから名前で呼びたい。私は理沙」
「私…オレは雅之。理沙、行くよ」
「うん……なんか照れちゃうな。そうだ、パンはある??」
プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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