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偶然 -6

ホテル-朝

ベッドで戯れて身体と気持ちを満足させた二人はシャワーで汗を流し、窓際のソファで二本目のワインを開ける。
ソファに座る貴志の両足の間で床に座り込んだ麻美は逞しい太腿の感触に安心感を抱き大阪の街の夜景に見入る。
駅前の高層ビルから洩れる整然とした灯りで気持ちが穏やかになり、阪急、阪神、曽根崎警察署前の交差点を行き来する車に感じる大阪のダイナミズムが貴志との未来を期待させてくれる。

「ハーフボトルのワインって二人で飲むには丁度いいね」
「そうだね。二人が一杯ずつ飲んで気持ちを昂らせて三杯目は身体に垂らしたりイロエロ楽しめる。ボトルは前戯の一部でディルドの代わりにもなるし」
「酷い言いかた。丹精込めてワインを作った人が怒るよ」
「一本目はセックスに誘うけど二本目のハーフボトルは人生を語らせる」
「これは二本目だけど人生を語るの??」
「当然だよ。今日はこれで寝るとして明日をどう生きるか、それが問題だ」
「そうだね、それは私も同感。私たちはどうするの??まさか、何もナシで解散とは言わないでしょう??ねぇ、どうなの??」

太腿に手を置いて振り返った麻美は本音を聞き出そうとして視線を逸らすことがない。
「……明日の夜までに帰ればいいんだろう??」
「うん、貴志が夜まで一緒にいたいとお願いすれば付き合ってあげるよ」
「麻美の明日を欲しい。麻美といられるなら大阪でも何処でもいい……帰りは羽田に車を置いてあるから、まずオレの家を教える。その後で麻美の家の近く、指定する場所まで送る。明後日以降の選択権は麻美が持つ、オレは麻美が決めたことに従うと約束する」
「私が貴志に連絡しなければ行きずりの関係で終わりってことなの??……自信家なのか、私の魅力不足なのか考えちゃう」
「オレといることで麻美が幸せだって感じてくれると嬉しいけど、幸せじゃないと思う麻美を見たくないからね」
「ふ~ん、そうなんだ。憶えとく……だけど、勘違いでなければ私の幸せは貴志の幸せと重なるはずだよ、違うの??」
「麻美……」
「な~に??」
「ここへおいで。麻美の顔を見たい」
「どうしたの??私のハダカンボを見たし、舐めたり揉んだりしたでしょう??」
こぼれんばかりの笑顔で見つめて小首を傾げる麻美の仕草に貴志は頬を赤らめてドキドキが止まらなくなる。
「どうしたの??顔が赤いよ、熱があるんじゃない??ウフフッ、フフフッ、幸せ」

背後から抱きしめて麻美の髪に顔を埋めて息を吸い込んだ貴志は、
「好い匂いがする」
「クククッ、シャンプーの匂い??それともトリートメント??」
「いやな女だなぁ、それでも嫌いになれない……眠くなったから寝ようか」
「貴志に抱かれて可愛い女になれるって信じていたのに、嫌な女のまま。ウソ吐き」
嘘吐きという言葉に棘がなく、楽しんでいるように聞こえる。
「可愛いな、麻美は……言っただろ、オレにとっての好い女は我がままな女でもあるって。麻美はイヤな女だけど好い女だよ」
「貴志はイヤな男……私を抱っこしてベッドに運びたいと思っているでしょう、違う??」

「そうだよ、麻美はオレの考えていることを何でも分かるんだな」
「惚れた男の事は何でも分かるの、貴志を逃がさない。可愛い女にするって約束を果たしてくれるまで離れてあげない」
寝かせた麻美にシーツを掛けて腕枕した貴志は、
「わがままな麻美にお仕置きをしなきゃいけないな」
「お仕置きされちゃうの??何をされるのか不安でドキドキする」
「おやすみ……麻美には腕枕だけで何もしないのが一番のお仕置きだろう」
「どうしようかな、腕枕されたままオナニーをしちゃおうかな……えっ、嘘でしょう。本当に寝ちゃったの??」
ス~スゥ~と落ち着いた息は眠ったとしか思えず、貴志の顔を覗き込んだ麻美は呆れたような顔をして次の瞬間には幸せそうに笑みを浮かべる。
腕枕をする貴志の腕を戻してシーツを掛け直し、静かに唇を合わせて身体を接するように仰向けになり目を閉じる。
眠ろうと意識すればするほど目が冴えて貴志の寝顔を見つめると自分だけが昂奮するのがバカバカしくなり、深呼吸して目を閉じるといつの間にか夢の中の住人になっていた。


夜景を楽しみながらスパークリングワインを飲み、そのままベッドに入ったためにカーテンを開け放ったままの窓から陽光が入り込んで麻美の顔を優しくくすぐる。
身体を起こした麻美が窓外に目を向けると、あちこちのビルの窓に反射してキラキラ輝き乱反射する。
目を眇めてこの街の朝の景色と気持ちの好い一日の始まりに頬を緩めた麻美が貴志に視線を向けても目覚める気配がない。

貴志と出会った食堂の町で育ち、たまたま帰省した実家から今住んでいる国立に戻ろうとしたときに母に引き留められて予定より遅くなって電車に乗り遅れた。
母のせいで一便遅れ、それがまた遅延したために伊丹空港で羽田行に乗り継ぐことが出来なくなった時は呪いたくなったが、貴志の寝顔を見ていると神様と母に感謝の言葉、ありがとうと呟く。
ウフフッ……誰に見られることなく微笑んだ麻美はシーツに潜り、ナイトウェアの裾をまくって半立ちの股間に、不満の言葉を漏らす。
「つまんない、朝立ちしてない……フフフッ、大きくなぁ~れ」
ペニスに指を添えておまじないをするように上下に擦った麻美はパクッと口に含む。
口に唾液を溜めて舌を絡ませるとペニスは口の中でムクムク育ち、シーツの中で頬を緩ませた麻美は顔を上下する。
ジュルジュル、ニュルニュルッ……口の中で勃起するペニスに愛おしさを覚えてフェラチオは熱を帯びる。

「おはよう。気持ちいいけど許してくれないかなぁ」
「ウフフッ、気付いた??だって、可愛いんだもん。半立ちのチンチンが私の口の中でズンズンって大きくなるんだよ。愛おしくなっちゃう」
「おいで、可愛いお顔を見せてくれよ」
プファッ~……口元を拭こうともせずにシーツを剥いで姿を現した麻美を抱きかかえ、舌先で汚れを拭いながら挨拶代わりのキスをする。
「アンッ、おはようのキスで元気を注入してもらった。貴志の先走り汁も混じっているかもしれないよ」
「かまうものか」
「ねぇ、私の提案を聞いてもらえる??」
「もちろんだよ」
「昨日、羽田から貴志の家を教えてもらって私の家の近くまで送ってくれるって言ったでしょう。そうじゃなく、私ンチで明日の通勤着を用意して貴志の家に泊まるってダメかなぁ??」
「オレはその方が嬉しいけど、いいのか??」
「住所を見ると貴志ンチの方が会社に近いしね……そうだ、これからは雨っぷりの日は泊まっちゃおうかな、ダメ??」
「それも嬉しいな。益々麻美との距離が縮まるような気がする」
「好い事を教えてあげようか……男と女が本当に理解し合うのに大切なのは言葉じゃなくセックス。そうでしょう??」

嫣然と微笑む麻美は貴志に覆いかぶさり唇を重ねる。
濃厚なキスをしながら偶然の重なりに思いを巡らし、二人の幸せな明日に思いを馳せる。
食堂で会ったこと、飛行機の座席が隣席だったこと、飛行機が遅れて羽田まで帰れなくなったこと、今の住まいが2㎞程しか離れていないこと、貴志がツインルームのシングルユースだったこと、一つ一つは何でもない偶然でも積み重なると神様に導かれた必然としか思えない。
窓から侵入した陽光に包まれてつながり、幸せな明日を与えてくれた偶然に感謝する。


<<< おしまい >>>
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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