依存
―1
「課長、どうでしたか??」
「私たちの企画書に沿って事業計画が作成されることになりました。皆さんのご尽力のお陰です。ご苦労様でした」
「課長のリーダーシップとご指導の結果です…いろいろ勉強させて頂きました。これで部長昇進がほぼ決まりですね、おめでとうございます」
「桑原さん、その気にさせるようなことは言わないでよ。勘違いしてしまいます…今回も桑原さんが仲間を励まし、叱咤してくれたお陰です。皆さん、ご苦労様でした。そしてありがとうございました」
「課長、おねがいがあります」
「牧さん、どのようなお願いでも聞く積りです。どんなことでしょうか??」
「なんでもお聞き届け頂けるのですか…結婚はともかくお付き合いして頂けると嬉しいです……あっ、ごめんなさい。冗談が過ぎました。私たち、いえ、私もお役に立てたのでしたら食事会のようなモノをお願いできませんか??」
「私からも提案しようと思っていました。皆さんの都合がよければ来週末でどうでしょうか??慰労会ということで私の主催です……桑原さん、なんでしょうか??」
「私たちに異存はありません…みんな、そうだろう??課長の奢りで腹一杯食べてオエッとなるほど飲ませてもらおうぜ」
「課長の指導のお陰で今の俺たちがあるんだろう。桑原さんに逆らう積りはないけど俺は割り勘の会費制でもいいよ」
「ウフフッ、宮崎さんありがとう…皆さんにお礼がしたいの。私自身、今回のアプローチを通じて勉強させてもらいました。気にしないで奢らせてください」
「宮崎くん、ゴチになろうぜ…その上で課長のご指導に対するお礼をそれぞれがお金で表すってことにしよう」
「さすが、桑原さん。梶原課長の女房役の言葉として最高です。みんな、それでいいよな??」
桑原に続く宮崎の言葉に全員が拍手し、1週間後の金曜日に飲み会をすることが決まった。
「ただいま」
「お帰りなさい。遅かったわね、雅之と私の退社時刻はそれほど違わなかったはずなのに……」
「シャンパンやおつまみを買ってきたからだよ…梶原課長の仕事に対して部下である桑原雅之がおめでとうを伝えるためにね」
「ありがとう……そうだ、荷物が届いていたよ。テーブルに置いてあるでしょう」
「……やっと届いたか。今日、届いてよかったよ…洸希が欲しがっていたモノだよ」
「なにかなぁ、期待しちゃうよ……」
「オレはいつでも洸希のことを考えているのを知っているだろう」
「クククッ、スケベで悪い男……食事の準備が出来ているけど食べるでしょう??」
食事を終えた二人は週末の過ごし方など他愛のない会話をしながら後片付けを済ませる。
「お風呂の準備が出来ているよ。どうする??」
「食べたばかりだからもう少し後でもいいだろう??」
「お茶を淹れようか??」
「オレが淹れるよ…帰宅後、夕食の準備で休む間もなかっただろう??座っていていいよ」
「優しいね。クククッ、忘れているでしょう??お帰りチュウをしてもらってないよ」
「ごめんね……チュッ、ただいま」
スパイシーなフレーバーティを飲みながら肩を寄せる洸希を抱き寄せる雅之はほのかに漂う香りを胸いっぱいに吸い込む。
「いやっ、8コも年上だから雅之が普段と違うことをすると気になる…嫌われないかなって」
「あの日のことを覚えているだろう??オレが付き合ってくださいって言ったんだよ、何があっても嫌いになるわけがない」
「覚えている。課長に昇進して移動になったけど、若い課員を前にして頑張らなきゃと意識過剰で空回り。不甲斐なさと申し訳なさで涙ぐみながら酒を飲んでいた私のそばに……ねぇ、もう一度聞くけど、あれは本当に偶然だったの??」
「一目惚れした女が傷心しているのが心配であとをつけた。バーの片隅で肩を震わせながら酒を飲んでいるのを見て声を掛けた…あの時に話したことは全て本心だったよ」
「本心だった……今は違うの??」
「オレたちを前に初対面の挨拶をする洸希を見てドキドキした。オレはこの女に惚れると予感したよ。あの頃と違って今は洸希のすべてとは言わないけど色々なことを知って惚れ直した。オレの直感は間違っていなかったと確信している」
「ウフフッ、ありがとう。仕事では雅之が皆と私の間でつなぎ役になってくれたので意思疎通がうまく出来たし、相談できたし適切な助言ももらえた……ナイトライフも満足させてもらっているし離れたくない」
「そうか、オレこそ、ありがとうとお礼を言うよ…一緒に住んでいると公表しちゃおうか。それとも突然、結婚式の招待状を送ってびっくりさせようか…どう思う??」
「いいの??私でもいいの??…本気にしちゃうよ」
「心外だなぁ、こんなことは冗談で口にしないよ……梶原洸希さん、結婚してください。あなたを幸せにする自信はありませんが、洸希さんと結婚すれば私は幸せになれます」
「どっかで聞いたような科白だけど、本気にしていいの??冗談だったら冗談だと言って……」
「本気だよ。返事は直ぐでなくてもいい、いつまでもとは言わないけど待つよ」
「待ってもらいたくない。返事を直ぐにさせて……フゥッ~、ゴクッ……梶原洸希から桑原洸希になれればいいなと淡い期待を持っていたから喜んでお受けいたします……みち子さんはハマちゃんに言わなかったけど、私は言います。雅之と結婚できれば私は幸せになれます。ウフフッ」
「課長、どうでしたか??」
「私たちの企画書に沿って事業計画が作成されることになりました。皆さんのご尽力のお陰です。ご苦労様でした」
「課長のリーダーシップとご指導の結果です…いろいろ勉強させて頂きました。これで部長昇進がほぼ決まりですね、おめでとうございます」
「桑原さん、その気にさせるようなことは言わないでよ。勘違いしてしまいます…今回も桑原さんが仲間を励まし、叱咤してくれたお陰です。皆さん、ご苦労様でした。そしてありがとうございました」
「課長、おねがいがあります」
「牧さん、どのようなお願いでも聞く積りです。どんなことでしょうか??」
「なんでもお聞き届け頂けるのですか…結婚はともかくお付き合いして頂けると嬉しいです……あっ、ごめんなさい。冗談が過ぎました。私たち、いえ、私もお役に立てたのでしたら食事会のようなモノをお願いできませんか??」
「私からも提案しようと思っていました。皆さんの都合がよければ来週末でどうでしょうか??慰労会ということで私の主催です……桑原さん、なんでしょうか??」
「私たちに異存はありません…みんな、そうだろう??課長の奢りで腹一杯食べてオエッとなるほど飲ませてもらおうぜ」
「課長の指導のお陰で今の俺たちがあるんだろう。桑原さんに逆らう積りはないけど俺は割り勘の会費制でもいいよ」
「ウフフッ、宮崎さんありがとう…皆さんにお礼がしたいの。私自身、今回のアプローチを通じて勉強させてもらいました。気にしないで奢らせてください」
「宮崎くん、ゴチになろうぜ…その上で課長のご指導に対するお礼をそれぞれがお金で表すってことにしよう」
「さすが、桑原さん。梶原課長の女房役の言葉として最高です。みんな、それでいいよな??」
桑原に続く宮崎の言葉に全員が拍手し、1週間後の金曜日に飲み会をすることが決まった。
「ただいま」
「お帰りなさい。遅かったわね、雅之と私の退社時刻はそれほど違わなかったはずなのに……」
「シャンパンやおつまみを買ってきたからだよ…梶原課長の仕事に対して部下である桑原雅之がおめでとうを伝えるためにね」
「ありがとう……そうだ、荷物が届いていたよ。テーブルに置いてあるでしょう」
「……やっと届いたか。今日、届いてよかったよ…洸希が欲しがっていたモノだよ」
「なにかなぁ、期待しちゃうよ……」
「オレはいつでも洸希のことを考えているのを知っているだろう」
「クククッ、スケベで悪い男……食事の準備が出来ているけど食べるでしょう??」
食事を終えた二人は週末の過ごし方など他愛のない会話をしながら後片付けを済ませる。
「お風呂の準備が出来ているよ。どうする??」
「食べたばかりだからもう少し後でもいいだろう??」
「お茶を淹れようか??」
「オレが淹れるよ…帰宅後、夕食の準備で休む間もなかっただろう??座っていていいよ」
「優しいね。クククッ、忘れているでしょう??お帰りチュウをしてもらってないよ」
「ごめんね……チュッ、ただいま」
スパイシーなフレーバーティを飲みながら肩を寄せる洸希を抱き寄せる雅之はほのかに漂う香りを胸いっぱいに吸い込む。
「いやっ、8コも年上だから雅之が普段と違うことをすると気になる…嫌われないかなって」
「あの日のことを覚えているだろう??オレが付き合ってくださいって言ったんだよ、何があっても嫌いになるわけがない」
「覚えている。課長に昇進して移動になったけど、若い課員を前にして頑張らなきゃと意識過剰で空回り。不甲斐なさと申し訳なさで涙ぐみながら酒を飲んでいた私のそばに……ねぇ、もう一度聞くけど、あれは本当に偶然だったの??」
「一目惚れした女が傷心しているのが心配であとをつけた。バーの片隅で肩を震わせながら酒を飲んでいるのを見て声を掛けた…あの時に話したことは全て本心だったよ」
「本心だった……今は違うの??」
「オレたちを前に初対面の挨拶をする洸希を見てドキドキした。オレはこの女に惚れると予感したよ。あの頃と違って今は洸希のすべてとは言わないけど色々なことを知って惚れ直した。オレの直感は間違っていなかったと確信している」
「ウフフッ、ありがとう。仕事では雅之が皆と私の間でつなぎ役になってくれたので意思疎通がうまく出来たし、相談できたし適切な助言ももらえた……ナイトライフも満足させてもらっているし離れたくない」
「そうか、オレこそ、ありがとうとお礼を言うよ…一緒に住んでいると公表しちゃおうか。それとも突然、結婚式の招待状を送ってびっくりさせようか…どう思う??」
「いいの??私でもいいの??…本気にしちゃうよ」
「心外だなぁ、こんなことは冗談で口にしないよ……梶原洸希さん、結婚してください。あなたを幸せにする自信はありませんが、洸希さんと結婚すれば私は幸せになれます」
「どっかで聞いたような科白だけど、本気にしていいの??冗談だったら冗談だと言って……」
「本気だよ。返事は直ぐでなくてもいい、いつまでもとは言わないけど待つよ」
「待ってもらいたくない。返事を直ぐにさせて……フゥッ~、ゴクッ……梶原洸希から桑原洸希になれればいいなと淡い期待を持っていたから喜んでお受けいたします……みち子さんはハマちゃんに言わなかったけど、私は言います。雅之と結婚できれば私は幸せになれます。ウフフッ」
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