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彩―隠し事 262

愛欲 -8

木曜日の想い出の店でのデートや土曜日は終日のんびり過ごしたことで優子が栞と一緒に同僚を訪ねると伝えても、夫は笑顔で同意してくれた。
栞もまた、飽きたわけでもないだろうが夫に執着されることもなく過ごしているので優子と出かけたいと伝えると、僕のことを忘れるのは困るけど楽しんできなさいと優しい言葉と共に額にチュッと音を立ててキスされた。

日曜日、優子と栞を迎える松本は隠し切れない緊張でぎこちない笑みを浮かべ、それは優子に伝染して、
「こんにちは。今日はお招きいただいてありがとうございます」と、この場に相応しくない定型句で挨拶する。
「えっ……いえ、こちらこそ、お出でいただいて光栄です」
「クククッ、ハハハッ、どうしたの……二人とも何か悪いことをする積りなの??緊張感がすごすぎ」
「えっ、そうね。松本さんチって初めてだから緊張する」
「ごめんなさい、どうぞ中へ。暑かったでしょう、部屋はコートが必要なくらい冷やしときました……」

ワンルームとは言え独り暮らしには十分な広さがあり、家具などは必要最小限のものしかなくデータ分析が得意な松本に相応しくムダのない部屋だと思う。
コートが必要なくらい冷やしといた言う言葉が大げさではないほど部屋は冷え、優子と栞は肩をすぼめ松本は口を尖らせて手を握る。
「ごめんなさい、やりすぎでした。尊敬する先輩が二人お見えになるし、ワインを用意してくれるということは車じゃなく電車だろうから快適な室温にと思ったのですが……」
「さすがに分析屋さん。松本さんを相手にするときは本音を悟られないようにしなきゃいけないね」
「えっ、冗談ですよね、本気じゃないですよね??私は鍬田先輩を尊敬しているのに信じてもらえないなんて……」
「松本さん、優子がそんなことを思うわけがないでしょう。冗談だよ……せっかく美味しそうな料理が並んでいるのに見るだけじゃ我慢できない。バケツと氷を用意してくれる」

松本の用意してくれたサラミやポルチーニ茸ソテー、アサリの酒蒸しに焼きトマトなどテーブルいっぱいに並べられたつまみに栞の瞳が輝き、クーラーバッグから二本のロゼワインを取り出して一本を氷入りのバケツに入れ、残る一本を開栓して乾杯する。
「フゥッ~、夏はやっぱり冷えたワインが美味しいよね、焼きトマトの甘さが際立ち美味しくて幸せ、料理が得意なんだね……好きな男が酒を飲むときはサッサッとつまみを用意するのは好い女の条件」
優子は栞の言葉に心の内で同意しながらも口にはせず、ポルチーニの香りと食感に頬を緩める。

美味いワインと料理があれば幸せな気分になり饒舌になる。
松本は優子と栞が親しく付き合うことになった切っ掛けや結婚に至る過程を聞きたがり、心地好いワインの酔いで目元を朱に染めて自らの恋愛遍歴を語る。
「ねぇ、知ってる??一杯目のワインは健康のため、二杯目は愛と喜びのために飲むんだって」
誰にともなく呟いた優子の言葉はこの場にいる二人に向けてなのか、それとも健志を思ってのものなのか自分でも分からない。
「へぇ、二杯目は愛のためなんだ。三人とも二杯目だから飲み干したら愛と悦びを実感しなきゃいけないね」
淫蕩な笑みを浮かべた栞はワインを口に含み、驚きと淫靡な期待で声も出さずにいる松本の頬を撫で耳朶を擦りながら唇を合わせてワインを流し込む。
「ウッ、いやんっ、恥ずかしい」
「ウフフッ、可愛い……覚えているでしょう??可愛い後輩と交わした約束は守らなきゃね」
栞の指は松本の唇をなぞり、じっと見つめたままその手は首から胸に触れながら下りていき膨らみを鷲掴みする。

「ウッウッ、クゥッ~……ハァハァッ、イヤンッ……」
眉間に皺を刻んだ松本は息を荒げ、栞の肩越しに焦点があっているのか分からない瞳を優子に向けて唇を噛む。
「どうしたの、松本さん。両手に力を込めて私を抱きしめるからオッパイをモミモミしてあげることもできないでしょう??……ウフフッ、口を開けなさい」
言われた通りにしどけなく開いた口に栞は唾液を垂らす。
ツツツゥ~と一筋の唾液が二人をつなぎ、松本は嫌がる素振りを見せることなく嚥下して目元を朱に染める。
緊張感を残していた身体か弛緩して松本の身体は栞の愛撫を受け入れる準備が整う。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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