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彩―隠し事 218

栞 新たな一歩 -7

月曜日、週末に片付けたままの席に栞の姿はなく、欠勤したことを不安に思いながらも目を閉じて自分の為すべきことは何かと考え頬を叩く。
「お休みの深沢さんの分も頑張ろうと気合を入れたんですね、本当に仲がいいですね」
「学生時代からの付き合いで両親や夫にも言えないことも相談する仲だから一心同体、今日は一人で頑張んなきゃ」
後輩の言葉に頬を緩めた優子は半ば本気で軽口をたたく。

昼休みになったのでキッチンカーで弁当を買うと、「今日はお一人ですか??」と
言われる。
後輩の言葉もあったし改めて栞とは切っても切れない仲だと思わずにいられない。
先週と同じ公園の同じベンチに座って弁当を開いたタイミングでスマホが着信を知らせてくれる。
「栞、元気なの??」
「病気じゃないって。今日は優子と顔を合わすのが恥ずかしいからズル休みしたの……内緒だよ」
「分かっている。そうだ、時々弁当を買うキッチンカーがあるでしょう。今日は一人ですかって言われたし後輩にも同じようなことを言われたよ」
「フフフッ、ねぇ、優子、一人じゃ寂しい??私がいないと元気が出ない??」
「うん、泣いちゃいそうなほど寂しい……冗談はともかく、明日はどうするの」
「ズル休みは今日だけ、明日は出社するよ。優子にイロエロ報告することがあるし……」
「えっ、うん。今日は何も聞かない。言いたくないことは隠し事にしてもいいよ。何があっても栞と私は離れることがない親友だから」
「うん、ありがとう。じゃぁ、明日ね」

そして火曜日、いつもよりも早く出社した栞は課長と優子が席についているのを確かめて、
「課長、おはようございます。昨日はご迷惑をおかけいたしました……おはよう、優子、今日は昨日の分も頑張んなきゃ……うちの課は仕事ができる順に出社するんだ、ウフフッ」
「おはよう、栞。元気そうで安心した」
「深沢さんはうちの課のムードメーカーだから期待しているよ。昨日の分も頑張ってくれると聞いて安心しました」
その後、出社してくる同僚に快活な挨拶をする栞に普段と変わったところは感じられず優子は安心する。

昼休みは弁当を買って先週と同じ公園に向かう。
「フゥッ~……気持ちいい。仕事をするのが勿体ないような好いお天気。いつだったか約束したでしょう、優子と二人で温泉に行こうねって、こんな気持ちの好いお天気の日に行きたいね」
空を見上げて南の空に湧き上がる真っ白な雲に目を眇めた栞は顔を合わせることなく独り言のように呟き、優子は言葉を返すことなく栞の膝についている糸くずを摘まんで弁当と包装紙の間に入れる。
「ありがとう。私なら小さなゴミだからってポイッと捨てちゃうな。捨てないところが優子らしくて好き。食べながら聞いてね……」
栞は日曜の撮影について話し始める。


「普通はしないのですが監督の指示でお迎えに上がりました。用意が出来ているなら出かけましょうか」
栞とバッグを持った夫は迎えに来てくれた雨宮の運転する車に乗り込みレンタルスタジオに向かう。
「雨宮君、当日になって逃げださないかと思って迎えに来てくれたの??大丈夫よ、大切な旦那様の希望だから逃げたりしないし正直楽しみにしているの。クククッ、昔の女がどんな風に変わったか興味あるでしょう??」
「えっ、そんなことはありません。今の深沢さんは人妻、僕はしがない助監督。揶揄わないでください。ご主人、申し訳ありません。今の僕は栞さんに対して邪な気持ちは一切ありませんから信じてください」
「残念だな、昔付き合っていた栞に魅力を感じなくなったとは……好い女だと思うけどな」
「はい、素敵な女性です。僕と付き合っていた頃よりも魅力を増しています」
「雨宮さんお言葉を信じます。妻を褒めてもらって、ありがとう……一つ思いついたことがあるから、その時が来たら監督に進言してみよう」

現場に着いた二人は監督や雨宮を交えて撮影の手順について説明を受け、改めて細かい台本はなく大まかな段取りに従って進めていくと確認する。
夫の進言で決めた英子の芸名を再確認し衣装やフェイスマスクなどの小物を受け取ると監督は、
「ご主人、これで奥さんに浣腸してきて下さい。アナルセックスのための浣腸シーンは予定していますが、身が出るのは僕の趣味ではないのでお願いします」

バスルームで浣腸を済ませ、用意された衣装に着替えて戻ると、
「始めましょうか」と言う監督の一声で撮影現場らしい緊張感に包まれる。

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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