2ntブログ

偶然 -3

ホテル-スパークリングワイン

青いダウンライトに照らされたバスタブで、ほんの数時間までは顔も名前も知らなかった二人が言葉を口にせずに愛を身体で感じ合う。
毎日のようにただすれ違うだけで名前も住む場所も知らない人がいる。
そんな事を誰も偶然とは呼ばないし、よほどの事でない限り記憶の片隅にも残らない。
通勤や通学途中で二度三度とすれ違った人がいるかもしれないけど、それらすべての人の記憶が鮮明に残るわけでもない。
麻美と貴志はたまたま行き会った食堂でなんとなく好意を抱き、飛行機の座席が隣り合った偶然で二人は急速に距離を縮め、住む場所が数キロしか離れていない奇跡を知って離れがたい思いで互いを求めあう。

唇を重ねて身体を擦り合い、両手は何から何まで互いを知ろうとして肌を這い回り、重ねた唇は唾液を啜る。
「ハァハァッ、どうして??今日、昼食を食べた時は顔も知らなかった人とこんな事をしているなんて」
「麻美が言っただろう。神様が運命ノートに二人の出会いを記してくれていたのかもしれないって、偶然を装って会わせてくれたけど奇跡のような出来事でオレのハートは直ぐに火が点いた」
「ウフフッ、私も直ぐに燃え上がった……男性としばらく縁がなかったけど、神様が貴志と会うまでは我慢できるかって私を試していたのかもしれない」
冷静さを取り戻した麻美は再び向きを変えて背中を貴志に預け、浴槽の照明の色を変化させて顔を綻ばす。
「ラブホに似てる??」
「いじわる。言ったでしょう、私の経験じゃなく友達に聞いたことだって」
「青い空と青い海、オレだけが知っている秘密の場所に可愛い人魚が現れてくれた、そんな気持ちになる」
「この青いバスルームは貴志の秘密の場所で私はそこに姿を現した人魚なの??……口説き方が雑だから減点1と言ったけど、加点が5で今は4点にしてあげる」
「満点は10点だろう。あと6点はどうすればもらえる??」
「ベッドが5点、あと1点は、ウフフッ、秘密。ヒントは、そうね……やっぱり秘密」

背中越しに抱きしめて耳に息を吹きかけると、アンッと艶めかしい声と共に身体をすくめて含み笑いを漏らす。
「クククッ、くすぐったい。貴志はもっとクールな人かと思っていたけど悪戯好きな人だった。私はどんな印象だったか教えて」
「オレも麻美はクールな人で男を寄せ付けないのかなと思った」
「私は男嫌いな女に見えるの??」
「言いかたが悪かった、ごめん。オレが思う好い女の条件は、自分の理想や世界観を簡単に曲げない人でそれが我がままと見えることもあるって言ったけど、お世辞やおべんちゃらで口説こうとしても効果がないどころか相手にされない……そんな意味だよ」
「そんなに肩肘を張って生きている積りはないけど安売りはしたくない……でも、そんな私も貴志の胸に抱かれて可愛い女にされちゃうんでしょう??」
「えっ、そうか、そんなことを言ったね。大言壮語だったよ、先に謝っとく。ごめん」
「ウフフッ、謝らなくてもいいのに。私は貴志に抱かれて可愛い女になりたいの、そんな女に変身させて……男性に甘えたいし頼りたいの、そんな風に思える人を待っていた」

麻美は貴志に背中を預けて身体も気持ちもリラックスして夜景を見つめ、貴志は背中越しに抱きかかえる女性特有の柔らかい感触に酔いしれる。
穏やかな気持ちで身体を接していると鼓動や呼吸さえもが同調し、言葉を交わさなくても気持ちが通じ始めるのを意識する。
「ねぇ、私が何を考えているか分かる??」
「分かるよ。オレが何を考えているか分かる??」

「えっ、クククッ、いやらしい……じゃぁ、アレを取って、おねがい」
貴志がボディソープを手渡すと再び向かい合う格好に変化して二人の間に垂らし、身体を擦り合って泡だらけになる。
「アレで分かってくれるって、やっぱり神様が引き合わせてくれたに違いない」
「分かるよ、早くエッチしたい、チンチンが欲しいって顔に書いてあったよ」
「もう、怒るよ……ウフフッ、先に出て、女はイロエロとすることがあるの……あっ、その前にチンチンを洗っとかないと、動いちゃダメ」
泡だらけの両手でペニスを包み込み優しくスライドする。
「ウッ、気持ちいい。このまま続けられたら出ちゃうよ、ウッ」
「ダメッ、おしまい」
シャワーをかけて泡を洗い流し、パクッと口に含んでジュルジュル音を立てて顔を前後する。
「プファッ~……チンチンは久しぶり。ドキドキしてる。続きはベッドでね」

バスルームを出た貴志はショーツやブラジャーと一緒に自分の下着も洗ってあるのを目にする。
「麻美、ありがとう」
「私も女だし今日中に帰る積りだったから着替えの用意をしてなかったし、ついでだから気にしないで」

ナイトウェアを着けた貴志はスパークリングワインを飲みながら夜景に見入り、密やかに背後に近付いた麻美は両手で貴志の目を覆い、
「だ~れだ??わかる??」
「う~ん、好い匂いがする……え~っと、名前は何だっけ。すごく大切な人の様な気がする」
「大切な人の名前を忘れちゃったの??思い出させてあげようか……ヒントはね……ほら、思い出した??」
目を覆った手を離して貴志を覗き込み、
「思い出した??まだダメ??」
「うん、あなたは麻美さんだろ??私の大切な人はなんて言ったかなぁ、思い出しそうで……ダメだなぁ」
「いじわる。この部屋に私以外の誰かがいるの??……暑い。暑いなぁ、暑いから脱いじゃおう」
わざとらしく怒りを滲ませた表情の麻美はナイトウェアを脱ぎ捨てて貴志の膝を跨ぐ。

麻美の白い肌は風呂上がりと抑えきれない性的昂奮の火照りを抑えきれずに赤みを帯び、胸の内にある妖しい思いが肌を通して伝わってくる。
素っ裸の麻美を抱きかかえてベッドに運び、唇を合わせて火照る肌をまさぐる。
「ハァハァッ、熱いの、身体の火照りが止まらない」
ベッドで仰向けに寝かされたまま剥き出しの乳房や股間を隠そうともせずに挑むような視線で貴志を見つめる。
ワイングラスを手にした貴志は口移しで麻美に流し込む。
「冷たくて美味しい……暴力は嫌いだけど、ワルイ男は好きって言ったでしょう。憶えている??」
「憶えているよ」
ワイングラスを傾けて白い肌にスパークリングワインを垂らす。
ワインは白糸となってグラスと白い肌をつなぎ、見つめる麻美はしどけなく開いた口からハァハァッと荒い息を漏らして腹部を上下する。
「麻美の肌は大理石のように艶めかしい」
「ハァハァッ、焦らされて昂奮する私はエッチな女??」
「そうだよ、オッパイにもアソコにも唇も指も触れていないのに息を荒げているだろう。想像以上にスケベな女だよ麻美は……麻美の肌はオレだけのグラス」
白い肌に広がるワインを舐めとり、再び垂らすと息はますます荒くなり苦しそうに顔を顰め、グロスを塗ったように艶めかしい唇に舌を這わせる。
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード