キス
「どうだった、驚いただろう??手を伸ばせば届く範囲に何人も人がいる場所で見せるセックスをするのは」
「はい、驚きました。それよりも、喘ぎ声というか悲鳴というかあの声は外に聞こえる心配はないのですか??」
「それは大丈夫って分かっているから、このスタジオへ来たんだよ。元の持ち主がピアノの練習をしても大丈夫なように、窓も二重だし防音は完全だからね」
「元の持ち主って??引っ越しされて貸しスタジオにしてるんですか??」
「いや、そこんとこは色々あって、訳アリなんだよ。訳アリのスタジオって案外と多いんだ。霊感の強い女優だと何も言ってないのに妖気が漂うとか何か変な感じがするとかね……夢がなくなるから、この話はオシマイ」
満足できる仕事を終えた監督は雄弁で、友人の昔の知り合いの男に飲物を持ってきてくれないかと言いつけて、時刻を気にしながら後片付けの様子を見て優子たちの相手をしてくれる。
「監督、片付けが終わりました」
「よしっ、撤収だ……俺たちは集合場所までバスで戻るけど、君たちはこの近くに住んでいるんだろ??これは、俺の個人名刺。スカウトはともかく、また見学したいとか何か用があればいつでも連絡してくれていいよ。それじゃぁ」
くどい事を言わず、台風が通り過ぎるようにあっという間に部屋を出る。
友人が昔付き合っていたという男は名残惜しそうに手を握り、
「浮気したくなったら俺の事を思い出せよ。色んなセックスを見て当時よりも上手になったからな、ヒィヒィ、啼かせてやるよ、元気でな……優子さん、AVに出る気になったら俺に連絡ください。条件やら何やら力になります、忘れないでください」
「えっ、そんな事を言われても、その気になりませんから。申し訳ございません」
「そうだよ、失礼だよ。そんなだから、私も別れることにしたんだからね」
「そうか、ゴメン。連絡してくれて嬉しかったよ、それじゃぁ」
「このまま帰る??それとも、身体の火照りを冷ますために飲みに行く??」
「今日は帰る。明日は朝一で会議があるから、その準備もしなきゃいけないし」
「ウフフッ、あんなのを見ても優子は優子、昂奮したはずなのに冷静さを忘れない。やっぱり、優子は浮気なんて絶対に出来ないね。セックスへの好奇心はないわけじゃないし、小柄だけどムッチリの身体は抱き心地が良さそうだし、勿体ない。そうだ、監督も男好きする身体だって言ってたよね」
「もう、怒るよ……ウフフッ、いいの。私は亭主に浮気されても健気に堪える女。いつか私を幸せの国に連れ去ってくれる男が現れる……なぁ~んてね」
「うん、優子なら、その気になれば男なんて掃いて捨てるほど集まるよ……ねぇ、キスしていい??」
通り過ぎる人たちを気にすることなく優子をショーウィンドーに押し付けるようにして抱きしめ、女性らしく柔らかな唇を重ねて舌を侵入させる。
ウグッ、ジュルジュルッ……フグフグッ、プファッ~……
「ウフフッ、怒らないでね……優子が好き。じゃぁね、私はタクシーで帰る」
通りでキスをする女二人に興味津々で視線を送る人込みに一人残された優子は、羞恥で顔を上げることも出来ずに俯いたまま小走りで駅に向かう。
「ウフフッ、あんな所でキスされちゃった。いつか二人で温泉宿に行きたいって言っていたけど……二人きりになれば、どうなるんだろう??」
電車の窓ガラスに映る自分を見ていると、卑猥な思いを抑えることが出来ずに股間が熱くなるのを意識する。
健志にAV撮影を見学してきたと言えば何と言うだろうかと思わずにいられない。
AV女優さんの在籍するお店もキャバクラなど幾つかあるらしいから会ったことがあるかもしれない。でも実際に撮影を間近で見た事はないだろう、羨ましがるだろうか……そんな事を想像すると、自然と口元が緩む。
そんな優子を見て一人の男が優しく微笑む。
ゴホンッ、大袈裟に空咳をして奥歯を噛み締め、緩んだ口元を元に戻して軽く会釈をする。
シュゥッ~、シュゥ~……電車が駅に滑り込むと前に立っていた男が、失礼と言葉を残して降りていく。
自宅が見える場所になっても部屋は真っ暗で夫が帰宅している様子がなくて安堵する。
私の帰宅が遅くなると連絡したから浮気相手と遊んでいるのだろうかと思っても、以前のように気持ちが騒めくこともなく、明日の準備と次はいつ健志に連絡しようかと考えると自然と気持ちが高揚する。
「あなた、浮気相手とお泊りしてもいいよ。私は優しいの、黙って許してあげる」
友人に連れられて行ったSMショークラブや今日のAV撮影見学を思い出し、健志と過ごす時間に思いをはせながら嫌味な言葉を無人の部屋で吐き出す。
翌日の準備も終わり、大好きなバスタイムを早めに切り上げてベッドに入ったタイミングで夫の帰宅を知らせるドアの開閉音が聞こえたけれど、気付かぬ振りでオナニーもせずに目を閉じる。
「おはよう。昨晩は優子の帰りが遅くなるって連絡もらったから残業に熱を入れ過ぎたよ、ごめん。用意しといてくれたお茶と和菓子を食べてゆっくり寝ることが出来た。忙しいだろうに、ありがとう」
「いいわよ、私は遊びであなたは仕事。謝られるとかえって恐縮しちゃう」
「優しいな、優子は。申し訳ないけど、先に言っとくね。決まったわけじゃないけど金曜から出張が入るかもしれないんだ。出張と言っても接待ゴルフなんだけど、断れないしさ」
「最近、出張が多いようだけど大変だね。気にしないで良いよ、私も仕事をしているからよくわかる……私に出張はないけどね」
「ごめんね、決まったら直ぐに言うよ」
夫を見送った優子は、浮気相手がわがままを言うようになったのか、それとも夫が女に溺れているのか分からないけど、健志の存在があるから外泊が多くなってもイライラする事はなく、出張という言葉が心地良く響く。
健志と過ごす時間を思うと、今日も出張だと言われても腹が立たないのにとさえ思う自分に苦笑いを浮かべる。
栞
今日も満員の通勤電車に乗る優子は前日のように痴漢にあうこともなく、波間に漂う木の葉のように電車の揺れに身を任せて楽しむ余裕さえある。
電車の揺れを不快と思うか心地いいと感じるかは自分次第。
足早に遠ざかる景色を見ながら心の内に意識を向ける。
優子を知る人は仕事も出来る清楚で上品な人妻と言ってくれる。
同世代の女性と同じ程度の異性経験があると思っているものの、不倫や浮気を許せない性格だと思っていた。健志と付き合うようになってからは夫の浮気も気にならないし、周囲の微妙な変化を楽しむ余裕が生まれた気がする。
彩だから健志と付き合える。
優子のままでは自分に対してさえ不倫を許せない。
優子は自分の事を人見知りする質だけど、何かのきっかけで自分でも驚くほど大胆な事をすると自己診断していた。それは微妙な勘違いで、実は心の奥深い処に潜んでいた彩のせいなのかもしれないと思うようになっている。
今まで稀にしか姿を現さず優子さえ存在を気付かなかった彩は、健志と知り合って頻繁に姿を見せるようになった。
「鍬田君、今日の会議も君のリードで私たちが望む結論を得ることが出来た。ありがとう……特に付属資料のこの部分、あっ、ごめん……この部分が良かったよ。説得すべき上司が意見を付け加える余地を残しながら外堀を埋める。上司のプライドを保ちつつ味方に付ける。見事としか言いようがない」
「課長に褒めてもらうのは嬉しいですが、偶然です」
「謙遜しなくても分かっているよ。専務は自分より利口な人の存在を許せない人だからな。私の若い頃は上司も含めて言い負かすことしか考えていなかったよ」
資料に伸ばした指が優子に触れたとたん、不自然に顔を背けて、ごめんと謝った課長が可愛い。
「じゃぁ、課長、昼食をごちそうしてください……だめですか??」
「いや、それで鍬田君の頑張りに報いる事になるなら喜んでごちそうするよ」
「じゃぁ、さっそく今日、いいですか??」
「いいよ、普段、付き合いの悪い私が鍬田君と二人だと誤解される恐れもあるから、深沢君も誘ってくれよ。仲が良いんだろ??」
「はい、大学時代からの親友で、就職も同じ処がいいねと約束した仲です。気を遣っていただいてありがとうございます」
「優子、今日の昼食はどうする??」
「どうしようか??私と栞、こんなに好い女が二人もいるんだから誰か男におねだりしようか??」
「えっ、良いけど、本気なの??昨日は優子のような真面目人間を変なところに連れてっちゃったかなぁ??今更だけど、ごめんね」
「そうだよ、栞には昨日のAV撮影見学やSMショークラブなど私には無縁な場所を教えてもらった……人間の幅が広くなるってヤツだね」
「クククッ、やっぱりできる女は言うことが違う。それで、誰におごらせるの??」
「誰だと思う??……課長だよ。課長に栞と私の昼食をごちそうしてもらうの、嬉しい??」
「優子、あなた、まさか昨日のAVに感化されたわけじゃないよね??浮気相手なら私が見つけてあげるから課長は止めなさい」
「そうじゃないよ、今朝の会議が上手くいったからお礼代わりにご馳走してくれるって……ぜひ、栞も呼んでくれって課長のご所望だよ」
「いつも君たちには世話になっているからね。こんな店しか知らないけど満足してくれるかな??」
「やっぱり課長はカッコ好いです。おしゃれなイタリアンが女子受けするからって無理することなく、ご自分が知ってるお店に案内してくれた。そんな男性が私は好き……優子のおまけで誘われた私が言うのは厚かましいですが、居酒屋に誘ってほしいです」
「えっ、本気にするよ。私は真面目だけが取り柄で面白みのない男だと思っているけど、それでも良ければ案内するよ」
「嬉しい、約束ですよ、課長。指切りしましょう……指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます……優子、証人になってくれるでしょう??」
「栞、よしなさいよ。課長が困ってるよ」
「いや、そんな事はないよ。深沢君のような魅力的な女性と居酒屋に行けるなんて想像もしてなかったよ」
「ごめんなさい、言い出したら聞かないんです、栞……いえ、深沢さんは」
「そうか、らしいな……フフフッ、その時は鍬田君も一緒だろ??」
「課長、優子がいなきゃダメですか??そりゃ、優子は仕事も出来るし女としての魅力も私よりあるだろうけど……そんな事を言われると寂しいな」
「……はははっ、いや、困ったな」
隣に座る栞が優子の足を軽く蹴って、居酒屋には私と課長の二人で行くのを邪魔しないでと伝えてきたので焼き魚に箸を伸ばして無言を通す。
「課長、善は急げって言うでしょう。今日連れて行ってください……奥様に連絡しないと返事を頂けないですか??」
「深沢君がこんなせっかちだとは思わなかったよ。今日は早朝会議の結果について専務と協議する予定だから駄目だよ……明日にしてくれないか??」
「うわぁ~、嬉しい。絶対に約束を守ってくださいよ」
上司として信頼できるし尊敬しているものの男性として意識したことはない優子は、二人のやり取りを聞いて微笑まずにいられない。
課長のはにかんだような笑顔を可愛く思うし、食事する時の姿勢や箸の使い方などの所作に洗練された美しさを感じ、栞が二人で居酒屋に行きたいというのも判る気がする。
夫がプロポーズしてくれた時に同じような言葉で私を褒めてくれ、大切に育ててくれたご両親から結婚の承諾を得たのだから、これからは俺が優子に愛情を注ぐと言ってくれたのはいつの事だったろうと思うと苦い気持ちがこみ上げる。
昨日、見学したAV撮影の課長は専務の愛人である部下の社員にそそのかされて3Pをした挙句、上司の派閥に入って意のままに動くことを誓った。
目の前の課長は残業で専務と打ち合わせをするらしい。
楽しそうに話す栞の横顔を見ると、昨日のAV女優さんに似ているような気もする。
「なによ、優子。私が課長と二人で居酒屋に行くのが気に入らないの??」
わざとらしく怒ったような栞の剣幕に課長と優子は顔を見合わせて笑みを浮かべる。
優子と栞 淫ら遊び
午後の栞はいつも以上に積極的に取り組み、同僚たちを驚かせる。
「深沢さん、お昼は何を食べたんですか??そんなに元気になる食事、私にも教えてください」
「あれっ、心外だなぁ。いつもの私は仕事をしてないような言われ方」
わざとらしく頬を膨らませて心外だという栞の表情が問いかけをした後輩だけではなく、その場にいる人たちの表情を緩めて場が和み、厳しさの中に和気あいあいとした雰囲気を作る。
事情を知る課長と優子は顔を見合わせて苦笑いを浮かべ、優子は栞のはしゃぎように危険な匂いを感じ、課長は妙な期待で胸を高鳴らせる。
「優子、泊めてくれない??」
「ご主人と喧嘩でもしたの??それで無理してはしゃいでいるんじゃない??」
「今日はみんなして私の事をからかう。怒るよ……私の可愛い旦那様は出張なの」
「ふ~ん、そうなんだ、いいよ。今日はうちの旦那の帰りが遅いから外で食べようか??」
和食が良いという栞を、
「栞、相当重症だよ。お昼の焼き魚定食が気に入ったの、それとも課長が気になるの??」
半ば呆れながら、わずかに朱に染めた栞の表情を覗き込むと否定も反論もせずに、うん、と意味不明の言葉を漏らす。
「ただいま……優子、どなたかお客様なの??」
「おかえりなさい。栞が来てるの」
「今晩は、今日は泊めてもらう積りでお邪魔してます」
「いらっしゃい、深沢さん。優子がいつもお世話になっているようでありがとうございます。私は明日も早いし、二人の邪魔をするのもなんだから先に寝ませてもらうよ……おやすみ、優子」
栞に軽く会釈しながら優子に夜の挨拶を済ませた夫は自室に入る。
「ねぇ、優子。酒の匂いはしないけど香水の香りはする……そうなの??」
「多分ね……せめて、アルコールの匂いでもすればホステスさんの移り香かなって思えるけどね……もっとも、お客様の事を気に掛けるホステスさんなら帰宅後にもめるようなことをするはずもないと思うけど」
「浮気相手の香水でしょう??仕事帰りに香水をつけるOLもどうかと思うよね」
入浴も終わり優子の部屋に入った二人はベッドを見て、どちらともなく、一緒に寝ようかと声を弾ませる。
小柄な優子のパジャマを着けた栞は裾を捲り上げて匂いを嗅ぎ、短めの袖を引っ張って口を開く。
「優子の好い匂いがする。どう、ツンツルテンで可愛い??
「新品じゃないけど、洗ってあるから私の匂いがするわけがないでしょう……先に言っとくよ、変な悪戯はしないでね」
「どうしようかな??だって、優子の事が好きなんだもん」
呆れたような表情を浮かべた優子は、しょうがないなぁと独りごちて先にベッドに入る。
「お邪魔します……ウフフッ、シングルベッドに二人だと自然にくっついちゃうよね」
背中を向けて横たわる優子を背後から抱きかかえるようにした栞は楽しそうに優子の身体を擦る。
「もう、ダメだって言ったでしょう。明日も早いんだから何もしないで寝ようよ」
「そんな事を言ったって、こんなに美味しそうな優子が目の前にいるんだもん、興奮して眠れない……ねっ、少しだけ」
「じゃぁ、その前に課長と飲みに行ってその後どうするのか聞かせて??」
「ウ~ン、言わなきゃダメ??……いじわる、優子が想像している通りだよ。でも一度でいいの。好きなタイプだけど不倫相手が身近にいると色々と拙いこともあるでしょう」
「クククッ、それは栞の経験から導き出したことなの??」
「知っているでしょう、浮気はするけど引きずらないように気を付けてる。私が愛しているのは旦那様だけ……その旦那様が今でも私にべた惚れで、ときには辟易することも。たまには口直しで違ったモノも食べたくなっちゃうの、ほんの少し屈折した旦那様への愛情表現なの」
「いいなぁ、栞は……そんな風に割り切れるんだから」
「そうね、優子はまじめすぎる。たとえ、ご主人が浮気しても優子は止めた方がいいかもしれない」
「そうだね、分かってる。優子では止めた方がいいかもしれない」
「うん??何、今の言い方は??……まぁ、いいわ、問い詰めるのは今度にしてあげる。課長とのデートは話したよ」
栞の左手は肩を抱くようにして乳房を揉み、右手はムッチリとした感触を確かめるように腰を擦り、内腿を撫でる。
「アンッ、やめて。栞の手の動きがいやらしい……」
「気持ちいい、優子の肌ってムチムチして撫でるだけで昂奮する……こんなに素晴らしい身体を相手にしないご主人はバカ。そのうち誰かに取られて後悔することになるのに……」
「ウッ、イヤンッ……栞にかかると……ウッウッ……私は今にも浮気しちゃいそうだけど……アウッ、クゥッ~……そうなの??」
振り向きもせず、栞が与えてくれる甘い刺激に切ない吐息を漏らしながら身体を仰け反らせて切れ切れの声で問いかける。
「こんなにいやらしい身体をしているんだよ。独りエッチだけで我慢できる??優子だって気付いているでしょう??」
「自分でも浮気は許せないと思っているけど、正直に言うと自信ないな」
「えっ、そうなの??優子は絶対に浮気をしない人だと思ってた……ねぇ、どれくらいエッチな身体か調べてあげるね」
内腿を撫でていた右手がパジャマのボトムを脱がそうとすると優子は突き出した尻を持ち上げて協力し、栞は大好きと耳元で囁く。
「アゥッ、クゥ~……気持ちいぃ、鳥肌が……すごい、女の人としたことないから……どうしていいか分からない」
「いいの、優子は何もしなくて。私が優子を好きになっただけ、優子の浮気相手はどんな人がいいか調べてあげる」
ボトムを抜き取り、トップスのボタンを一つ、また一つと外すと優子の息はハァハァッと荒くなり両手で栞の手を掴む。
背後から優子を抱きしめたまま栞の舌が首筋を這い、このまま止めてもいいのと囁くと、ハァハァッと一層息が荒くなって掴んだ両手を離す。
パジャマは肩を滑り、身体を守るモノが何もなくなっても抗う様子もない。
「優子のすべてを見せて」
バイキュリアス-1
「優子のすべてを見せて……ねっ、好いでしょう??」
優子は自らの中に彩が姿を見せ始めたことを意識するものの、そのことを栞には伝えず、
「栞と一緒は二度目だよね」
「そうだね、大学の卒業旅行で慣れない酒を飲んで、酔っ払った私を介抱してくれた優子が同じ布団に入ってくれたんだよね……」
「そう、暑いの、苦しいのと駄々をこねて脱がせてって栞が言うから脱がせてあげた」
「クククッ、憶えているよ。私は火照る身体を持て余してオナニーをしちゃった。優子に見てって、大股開きでエロイことをしちゃった……今日は優子が私にオナオナを見せる番だよ」
「イヤッ、そんな事できない」
「クククッ、オナニーは許してあげるから優子のすべてを見せて、好いでしょう??」
「しょうがないなぁ。栞のわがままに付き合うのは大変だ……ハァハァッ」
優子の声は上擦り、背中を見せる格好から仰向けになって栞にすべてを見せると胸を上下して荒い息をする。
目を閉じて乾いた唇に舌を這わせ、形よくプリンと盛り上がった胸を曝したまま両手は股間を覆う。
栞の唇が手の甲にキスをしてそっと剥がすと、抗うことをせずに無毛の股間を晒して、恥ずかしいと羞恥の声を漏らす。
「ウフフッ、可愛い……記憶の中の優子の股間は儚げに恥毛が生えていたような気がするけど、白い肌にツルツルマンコ。似合ってる、動いちゃだめだよ」
右手で左乳房を左手で右乳房をヤワヤワと揉みながら徐々に覆いかぶさって唇を重ねる。
チュルチュル、フグフグッ……栞の右手は乳房から離れることなく、左手は髪を撫でて頬を擦る。
「ウグッ、フゥッ~……栞は女の人も好きなの??バイセクシャルなの??」
「違うよ、私が好きなのは堅くて長いチンチン。優子は特別。優子には性的な思いがムラムラするの。今日だけでいいから……一度でいいの、だから嫌いにならないでね」
言葉を口にせず黙って頷いた優子は静かに目を閉じ、栞の背中に回した両手に力を込める。
瞼の裏にSMクラブで彩を縛ったカヲルの姿が鮮明に浮かぶ。
見ず知らずの人たちの前でブラジャーを剥ぎ取られて股間を守る下着一枚の姿にされ、縄で縛られたときの昂奮が蘇る。
尻を打たれ、身体中を這い回るカヲルの手で気が遠くなるほどの快感を得た。
栞の愛撫でカヲルに可愛がってもらった時のような快感を得るのだろうか??
優子を愛撫してキスをする栞のお陰で健志と出会い、彩と言うもう一人の自分を発見することが出来た。
邪念をすべて追い払い、栞との時間を大切にするために自ら舌を挿入して絡ませ、唾液を送り込んで両手は背中と脇腹を撫でさする。
栞は優子に覆いかぶさり、二つの乳房を揉みしだいて先端を口に含み、舌先で叩いて転がし甘噛みをする。
「ウッウッ、クゥッ~……オッパイがいいの、気持ちいぃ……」
「優子が気持ちよくなってくれると嬉しい。ねぇ、私も脱がせて」
抱き起した優子と向かい合って座り、妖しい光を宿す視線を絡ませる。
素っ裸の優子の手が伸びてボタンを外し、姿を現した乳房を掴んでゆっくりと力を込めていくと栞の表情は歪み、自らの手でパジャマを引き剥がすように脱ぎ捨てる。
パジャマを脱ぎ捨てた二人の身体は白い肌であることを除いて好対照で、優子の肌は日頃の手入れもあって肌理が細かい上に染み一つなく、成熟した女性らしく要所要所のムッチリ感が与える上品な印象から一見してマリンスポーツを好むとは思えないほど清楚な色気がある。
それに対して色白ながらスレンダーな体形の栞は活動的に見えて、性的な好奇心とアクティブさを感じさせる。
密かに優子を思い焦がれていた栞は何も隠すことなくすべてを曝け出す姿を前にして、普段の積極性をどこかに置き忘れたように頬を朱に染めて半開きの唇から洩れそうになる吐息を必死に堪える。
どちらからともなく身体を寄せて舌先を触れ合わせてつつき合い、狂おしいほどの気持ちを舌に込めて先端を吸い甘噛みをして、見つめ合う瞳に色欲の情を宿らせる。
小柄な優子に覆いかぶさるようにした栞は唾液を垂らし、優子は口を開けてそれを受ける。
二人の唇が糸を引く唾液でつながり、啜るように近付いていく栞は唇を合わせる。鳥が餌を食べるように互いの唇をついばみ、舌を絡ませて互いの口に出入りを繰り返す。
二人の唇はバギナと化し、出入りする舌はペニスのような快感を与えてくれる。
舌先が刺激を受けると身体の芯を熱い血潮がドクドクと渦巻き、乳房の奥と子宮が熱を持つのを感じる。
優子の手が栞の乳房を揉み、腿を股間に押し当てて妖しく蠢かす。
「アンッ、私が優子を啼かせる積りだったのに……」
押し倒すようにして優子に覆いかぶさった栞は両手で胸の膨らみを揉みしだいて、顔を股間に埋める。
ジュルジュルッ……大陰唇を指先で開いて舌を押し当てた栞は音を立てて滴る蜜を激しく啜る。
「アンッ、イヤァ~ン、気持ちいぃ……」
「シィッ~、ご主人に聞こえちゃうよ。思った通りだけど優子は感度が良すぎ」
「大丈夫、あの人の部屋には聞こえない……心配しなくていいから、もっと」
ジュルジュルッ、チュルチュルッ……優子の股間に張り付くようにして蜜を啜っても、とめどなく滲み出て泉は涸れることがない。
「クククッ、マン毛がないからナメナメしやすい。啜っても、啜っても涸れることのない泉、優子っていつもそうなの??」
「そんな事を聞かないで、答えたくない……恥ずかしいもん」
股間から顔を上げた栞は泉の縁から下腹部に舌を這わせ、上目遣いに優子と視線を合わせて優しく微笑み、右手で脇腹を撫でながら添い寝する位置までずり上がる。
「ウフフッ、可愛い……ねぇ、優子。バイキュリアスって言葉を知ってる??」
「聞いたことがあるけど、よく分からない」
「普段は異性が好きなんだけど、誰でもって事じゃなく特定の同性が気になる人の事……私はチンチンが好きだけど、優子に胸をキュンとさせていたの。今日の経験で優子以外の女子も好きになればバイセクシャルになるかも」
「そうなの??じゃぁ私もバイキュリアスかなぁ??栞とこんな風にエッチな事をしても嫌じゃないもん」
「良かった。優子とこんな風に一度でいいから遊びたかったんだけど、嫌われたらどうしょうって不安だったの……」
バイキュリアス-2
全身を這い回る栞の手が与えてくれる刺激で白い肌をさざ波のようにうねらせる優子は、胸と腹部を上下して息を弾ませ、シーツを掴んで顰めた顔を仰け反らせて唇を噛む。
そんな苦悶に似た悦びの表情を上目遣いに盗み見た栞は、優子の左足を右肩に担ぐようにして大きく足を開かせ、再び股間にむしゃぶりつく。
ピチャピチャ、クチュクチュッ……左手で身体を支えて右手で左乳房を揉みしだき、ピチャピチャと卑猥な音を立てて無毛の股間を舐めまわす。
「ハァハァッ、たまんない……栞とのエッチがこんなに気持ちいいなんて……」
「好き。大好きな優子に、もっと気持ちよくなってもらいたいの」
乳房を揉んでいた右手は脇腹から腰へと撫で下り、唇と舌は股間から内腿を経て膝裏に這わせて脹脛を足首に向かって舐めていく。
膝立ちになった栞は優子を見下ろして嫣然と微笑み、左足を捧げるように支えて足指を口に含む。
「イヤンッ、やめて、そんな処を……恥ずかしい……アァ~ン、ドキドキする」
「恥ずかしい事なんてないよ。唇も足指も優子のすべてが好き」
指を一本ずつ口に含んで舌を絡ませて指の間をベロリと舐める。
学生時代から密かに焦がれていた優子の足指を舐める行為に酔いしれる栞は子宮が熱くなるのを感じてオシャブリに熱が入り、反対の足を手に取り舐めたりしゃぶったりを繰り返して甘噛みする。
「栞のアソコを見せて、ねぇ、好いでしょう??」
身体を入れ替えた栞は、優子の顔の前に股間を晒し、
「舐めてくれるの??優子が私を気持ちよくしてくれるの??ねぇ、そうなの??」と、隠しきれない昂奮で声を上擦らせる栞は膝立ちになった身体をベッドのヘッドボードに両手をついて支える。
横たわったままの優子は頭上に左手を伸ばして割れ目に添え、舐めて滑りを与えた右手の親指でクリトリスを優しくこする。
「いやらしい、何もしてないのに栞のココは涎をダラダラ垂らして物欲しげ……クリちゃんをクチュクチュしちゃおう」
「あうっ、ヒッ、クゥッ~、上手……優子に大切なところをクチュクチュされて気持ちいいの」
優子の口を塞ぐように股間を押し付けた栞は自らの手を割れ目に添えて大きく開き、それに応える優子は舌を伸ばして膣口からクリトリスへと所かまわず舐めまくる。
「ハァハァッ……こんな風に優子の顔にアソコを押し付けてベロベロしてもらうのが夢だったの。アァ~ン、もう少し……」
アッアァ~ン、いぃ、気持ちいい……フグフグッ、いいの??気持ちよくなってね……割れ目に指を添えて大きく開いたままで腰をグラインドさせる栞はしどけなく開いた口から喘ぎ声を漏らし、舌を突き出したまま腰の動きに合わせて愛撫を続ける優子は腿に手を添えて息を弾ませる。
「ねぇ、優子。オモチャを持っているでしょう??こんなにスケベな身体なのに最近エッチしてないんでしょう??指だけじゃ我慢できないはず」
「えっ、そんな……」
「持っていないって言うの??……出しなさい」
叱声にも似た栞の声に優子の視線は宙を舞い、クローゼットを見ると同時に俯き、それを確かめた栞は口元を緩める。
「好い子で待っているのよ」
軽く唇を合わせて乳房を揉んだ栞は立ち上がりクローゼットに向かう。
「優子、こっちを見なさい」注意を促して、いくつかの小箱を順に指差し、優子が視線を躍らせて、アァッ~と諦めの声を漏らすと、ここにあるのと言葉をかけてベッドに戻る。
「いじわる、栞の事を嫌いになっちゃうよ」
「私の事を嫌いになる前にどんなオモチャを持っているか見せてもらうね」
箱を空けられまいとする優子の動きは言い訳含みのポーズに過ぎず、栞が両手を掴んで縛ろうとすると息を荒げて易々とされるがまま従う。
「ダメよ、今は優子と私だけ。優子の秘密は私の秘密、私の秘密は優子の秘密でもあるの……私が課長に抱かれたら、どんな風だったか教えてあげる」
「縛られちゃった……栞に弄ばれても抗うことも出来ない、可哀そうな私」
声は上擦って震え、昂奮で乾く唇にしきりに舌を這わせて滑りを与え、太腿を擦り合わせて自然と刺激を求めてしまう。
「あれっ、アナルグッズが多いようね、優子はお尻をクチュクチュするのが好きなんだ……ふ~ん??」
「お願い、今日はオチリを弄んないで、ネッ。独りでオチリ遊びするときも準備をしないと嫌なの。だからお願い、今日はやめて」
「分かった、バッチイのを見られると嫌だよね。その代わり二人で温泉にお泊りするときは、このオモチャたちを持っていくんだよ、約束できる??」
「えっ、うん、約束する……私は何を言っているんだろう。こんなにスケベな女だと思っていた??」
「クククッ、洋服の上からでも腰回りのムッチリ感を見るとね……その前にニップルクリップをつけようか……可愛い、もっと締めてあげる。痛いのが良いんでしょう??」
「うん、痛痒いのが気持ちいいの。アンッ、いぃ……栞はエス、私はMッコだから相性がいいのかなぁ」
「クククッ、どうだろうね。Sだなんて言われると課長のお尻を苛めたくなっちゃう……アァ~ン、どうしよう。優子のせいだよ」
「課長が可哀そう、真面目に仕事一筋で生きてきたはずなのに栞に目をつけられたばかりに……」
「そんな事はないよ。私はアゲマン女、私を抱いたら課長は出世するよ。課長が仕事で頼りにしている優子もね……お尻に入れないって約束するから四つん這いになって、ねっ」
四つん這いになって尻を突き出した優子の背後で膝立ちの栞は、同性であることも忘れて頬ずりしたくなるような柔らかな曲線に見入り手を伸ばす。
愛おしさのこもった手の平で腰を撫で、尻を擦って割れ目を開き、窄まりをベロリと舐めてスイッチを入れる前の電マで内腿を撫でる。
「アンッ、最初は優しくしてね」
ヴィ~ンヴィ~ン……アウッ、イィッ、笑っちゃ嫌だよ……優子が気持ち良くなってくれているんだよ、笑ったりしない……ヴィ~ンヴィ~ン……
電マは腿を擦り、ぷっくり膨らんで赤く腫れたような割れ目に沿って上下する。
腿の付け根に早くもキラキラ輝く水滴が滲み、縛られた両手で身体を支える優子は尻を突き上げてクネクネうねらせ、濡れそぼつバギナにバイブの挿入を待ちわびる。
ヒクヒクと息をしてバイブの挿入を期待するアナルを約束通り無視して、膣口の周囲を馴染ませるように撫でまわし、手に力を込めるとズブリと姿を消してしまう。
拘束を解かれた優子の手にするバイブが栞の身体を這い回り、いつ果てるともなく白い身体を絡み合わせて競うように喘ぎ声を漏らす。