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行きずりの男と女

3の2

ベルボーイが部屋を出て二人きりになると、酔っているはずの女は瞳に淫蕩な光を宿し、スーツを脱ぎ始める。
「風呂に入っても大丈夫??……分かった、用意してくるよ」
酔いの残る女の入浴を不安に思いながらもこの場を離れる好機と思う男は、測りかねる女の意図に戸惑いながらバスルームに向かう。
名前も知らない初対面の女とホテルの部屋で二人きりになった今、事ここに至る経緯を思い出すとタクシーに乗せてやってくれと言ったバーのマスターの顔が思い出される。
とは言え、酔っちゃいるけど好い女だと思ったオレにも原因があると苦笑いを浮かべながらバスタブに湯を張る。

「用意できたよ……」
「ありがとう。先に入っているね」と言う女は白い総レース下着姿のままバスルームに向かう。
「うわぁ~、さすがセミスイート。バスルームも広いしシャワーブースは独立している……えっ、すごい、ねぇ、来て……はやく」
女が呼ぶ声にいかにも渋々と言う風で男はバスルームのドアを開けると、素っ裸の女がバスタブの中に立ち、カーテンを開け放って煌びやかな夜景を指さしている。
「なに、どうした??あっ、ごめん」
「何じゃないでしょう。早く脱いで入ってきなさい。女に恥をかかせるような野暮天じゃないでしょう……待っているから、そこで脱いじゃいなよ。脱がないと痴漢って騒ぐよ」
「勘弁してくれよ。脱げばいいんだろ」

洗面台の前に用意された椅子にジャケットとズボン、シャツを置き、靴下、パンツの順に脱いで素っ裸になりバスタブで立ったまま夜景に見入る女性に近付いていく。
「窓の方を向いてくれよ。そのままじゃオレが入れないだろう」
「えっ、うん、これでいいの??」
バスタブを跨いだ男が背後から抱きしめると女はビクッと震え、そんなことを気にする様子もなく抱きかかえたままで腰を下ろす。
左手を下腹部に添え、右手は自然な風で左乳房を包み込む。
「アンッ、久しぶり。男の人に抱きかかえられるのって守られているようで安心できる……こんなことを言うと迷惑??」
「今更そんなことを聞かれても返事のしようがない、オレも男だよ」
「クククッ、マスターも俺も男だって言ってた。こんな好い女と二人きりだとか何とか……あなたもそう思ったの??だからジャケットを着けたままだったの??ねぇ、そうなの??」
この街の夜の景色を見通すガラス窓に薄くはあるけど二人が映り、それは初対面なのに裸で肌を合わせる羞恥を適度に和らげてくれる。

「初めて会ったのにこんなことをする女って嫌い??」
「そうだな、あまり好きじゃない」
「そうか、そうだよね。変な女だと思った??それとも嫌な女かな、あるいは迷惑な女……バカな女、仕事の失敗で自分のすべてを否定したくなる」
「自分のすべてを否定したくなるほどの失敗でここにいるなら嫌だな。オレが今こうしているのは、好い女に一目惚れしたから。酒に逃げようとする人は好きじゃないけど魅力から逃れることができなかった」
「ウフフッ、酔っていたのは本当だけど実は私もあなたに一目惚れ。あなたの気を惹こうとして精一杯頑張ったんだよ……途中からは冷静、だからあなたがこのホテルの常連だってことも気付いた」
「うん??どうして??」
「夜の飛び込み客なのにデポジットを要求されなかった。酔った女と一緒だから信用が剥げ落ちたかもしれないよ、かまわない??」
「チェックアウトの際の好い女っぷりを見れば趣味が好いなって評価が上がると思うよ……夜景もいいけど、顔を見せてくれよ」
「恥ずかしいけど、いいよ……これでいい??」
十分な長さのあるバスタブでゆったりと伸ばした男の足を跨いだ女は正対し、眩しそうに見つめて目元を朱に染める。
「可愛いというより美人で好い女……キスさせてくれる??」
「今はイヤ、許して……行きずりの関係かもしれないけど一目惚れした男。酒臭いキスはしたくない」
「そうか、分かった……緊張が解けたら何か食べたいな。お腹が空いてない??」
「実は私も何か食べたいなって思っていたけど、一目惚れした男に大食い女って思われないかと我慢していた」
「じゃあルームサービスを頼もうか」
「うん、オーダーは任せる。サンドイッチが好いな」
ボディシャンプーで泡まみれにした身体の汗を流した男は先に出るよと告げると、
「下着や靴下は置いといて、洗っとくから」

アメリカンクラブハウスサンドとビーフシチュー、オニオンリング、コーヒー、ミネラルウォーターを頼んだ男は窓のそばに立ち、バスルームで見たのと同じ夜景を見ながら女が眠るのを確かめたら帰ろうと思っていたのに、バスタイムを共有して下着まで洗ってもらうことになったことに、「まぁ、いいか」と独り言を漏らす。

白いバスローブを着けた女の上気した表情に浮かぶ羞恥を隠そうとするさまがいじらしく、抱きしめたくなるのを我慢するために再び窓際に立ち夜景を見ていると近付いた女が横に立ち、
「灯りの数だけ新しい想い出が作られているんだろうな。仕事の失敗で嫌な記憶が残る日になりそうだったけど、今日の終わりに新しい想い出が何もかも包んでくれると嬉しい」

ルームサービスが届くとアメリカンクラブハウスサンドとビーフシチューを分け合って食べ、ビールやワインのないことに不満を感じることもなく満足する。
食べ終えた二人は互いの顔を見ることも出来ない気まずさの中で言葉もなく、食べ終えた食器をワゴンに戻すのも音を立てるような刺激を避けようとする。

「ねぇ、こんな雰囲気でも平気なの??……私には堪えられない。何でもいいから話して」
「何でもって、何を言っても怒らないと約束してくれるなら」
「約束する。一目惚れした男の言葉だから怒るはずがない」
「安心したから正直に言うよ。一目惚れした女性と一発やりたくなったんだけど、どうだろう??」
「えっ、そんなことを聞かれても答えようがない。酔っぱらっていた私に親切にしてくれたし、好きなタイプだから嫌とは言えないけど……」

立ったままの女は目を閉じてハァハァッと息を荒げ、息を感じるほどに近付いた男は揺れる身体を支えて洗い髪に手を添え、優しく撫でて自然な振る舞いでバスローブの紐を解くと女の身体がビクッと強張る。
「ハァハァッ、いつもこんなことをしていると思わないでね。あなただからなの、信じて」
「信じるよ。もう言葉は必要ない」
男がバスローブと肩の間に両手を入れて滑らせると白い肌が露わになり、決して大きくはないもののバスルームで背後から抱きかかえた時に手の平にすっぽり収まった形の好い胸の膨らみが姿を現し、先端でプックリ膨らむピンクの突起と愛おしさを感じさせる乳輪から視線を外すことができない。
「下着を着けてないのはホテルに泊まるなんて思ってもいなかったから替えを用意していないからで、こうなることを期待したんじゃないからね」
「分かっているよ。オレも下着を洗ってもらったからローブの中はスッポンポンだよ。見てごらん」
はらりとバスローブを脱ぎ捨てると半立ちのペニスが姿を現す。
「半立ち、私の身体に不満があるのかな??……恥ずかしい。ベッドに連れて行って、おねがい……」

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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