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彩―隠し事 89 

期待 -2    

チンッ……エレベーターが一階に着いてドアが開く。
「一階に着いたよ、今からどうするの??二時間くらいは大丈夫って言ったよね」
「ラブホで久しぶりに彩の白い肌を舐め回そうかと思ったけど今日は止めとく。オレが彩に求めるのはムッチリとした白い肌だけじゃないって知って欲しいからな。勿論、エロイこの身体は欲しいよ、でも今日は我慢する」
「ふ~ん、遊んでほしい気もするけど嬉しいかも……ウフフッ、彩の身体だけじゃなく心も欲しいと思っている??」
「そうだなぁ、本音は隠しといて、彩の心を欲しいとは言わない。彩にはご主人がいる、心はアッチ、身体はコッチが長く関係を続ける条件だろう」
浮気をしている亭主に心を許す気はないけど、今はそんな会話をする場面じゃないと自分に言い聞かせる。

「本音は隠したって言ってくれたから嬉しい……えっ、こんなに人がいるって気付いていた??」
「見られているし、すべてじゃないけど聞かれていたよ。ここにいる人たちに、彩にはご主人がいるのにセックスに飢えた悪い人妻だって知られちゃったね」
「いやっ、ねぇ、早く行こうよ。どこでもいいから連れてって、恥ずかしい」

エレベーターを降りた時には誰もいなかったので安心した彩は壁に背中を預けて小柄な身体を健志の胸に埋め、久しぶりに吸い込む匂いと逞しい男の感触に酔いしれて卑猥な会話を楽しんでいた。
ふと顔を上げた拍子に見えた健志の向こうには、いなかったはずの人たちが興味深げに二人を見ている。
「この人には亭主がいるけど、その亭主よりもオレの方がこの人を好きだ……不倫は好いか悪いか分かんないけど、浮気はダメだ。オレはいつも本気。浮ついた気持ちじゃなく亭主のいるこの人を本気で好きなんだよ。あんたらも幸せにな……騒がせたな」
ワインを二杯ほど飲んだだけで酔っぱらっているはずのない健志が長広舌をふるい、久しぶりに会った彩を前に本音をぶちまける。
「行こう、走ろうよ」
武志の手を握って通りへ出た彩は長い夜を楽しもうとする人たちの間を縫うようにして走り、健志は笑顔で後を追う。

「ハァハァッ……びっくりした。あんなことを急に大声で叫ぶなんて、ハァハァッ、気が触れたかと思っちゃうよ。久しぶりに走ったけど気持ちいい」
「彩を驚かせようとしたんだから目的は達成できた。クククッ、でも嘘は言ってないよ……着いたよ、この店に入ろう」
BARと書かれた木の扉を引くとカウンターとバックバーが目に入り、バーテンダーが、いらっしゃいませの言葉で迎えてくれる。
視線を巡らすと窓を背にしてゆったりとしたテーブル席があり、食事を楽しむカップルもいる。
「入口の扉には、BARの表示があったよね。バックバーも充実しているけど食事も美味しそう」
「特に自家製の燻製が美味いよ……席に着こう、変な人たちと思われちゃうよ。テーブルとカウンター、どっちがいい??」
「今日の健志は十分に変だもんね……テーブル席が好いな」

「いらっしゃいませ。今日はきれいな方とご一緒で輝いていますよ」
「あれっ、いつもと違って随分と軽口をたたくね」
「この間のカクテルコンペテションで金賞を頂いたんです。こちらの女性に幸運のおすそ分けです」
「えっ、事情がよく呑み込めないけど、ありがとうございます」
「今日はテーブル席にするよ……彩、この店のバーテンダーは皆、腕に自信のある人たちだよ……食事を済ませてきたから、ピーチツリーフィズとジントニック、ピクルスとオリーブ。燻製はお任せでお願いします。フィラージュは二杯目で頂きます」

「ねぇ、今の女性バーテンダーさんはすごいの??」
「カクテルコンペで何年も連続で金賞を取っている人だよ。二杯目に今年のオリジナルカクテルを飲もう」

チーズや砂肝の燻製は美味く、冷えたカクテルが身体中に染みわたる。
「美味しい。ピーチツリーフィズの甘い桃の香りとスモークの香りがよく合う。
ピクルスやオリーブも美味しい。この店の食事を食べたいけどフォンデュでお腹がいっぱい、残念だな」
「次の機会には必ず、約束する」
淡い色と甘酸っぱいオリジナルカクテルを堪能した彩は満足の笑みを浮かべる。
「一つ聞いてもいい??」
「どんなこと??」
「エレベーターを降りた時に叫んだこと」
「なにを言ったっけ、憶えてないよ」
「オレはこの人が好きだ。浮ついた気持ちじゃなく、本気で好きだって言ったでしょう……ねぇ、どうなの??彩を好きって本当なの??……本当の名前も知らないのに」
「名前なんかどうでもいい。目の前の彩は触れることも抱くことも出来る。それが事実だよ」
「ウフフッ、信じる。彩も健志が好き、大切な人だよ」

店を出て駅に向かうには目の前にあるペデストリアンデッキに上がればいいのに健志は彩の手を引いて路地に入る。
速足で歩く健志に合わせる小柄な彩は小走りになり、飲んだばかりのカクテルのせいもあって握られた手の平が汗ばんでくる。
目の前にラブホらしい看板が見えると健志の歩みは落ち着き、彩の心臓は口から飛び出さんばかりに早鐘を打つ。
私には主人がいるの、今日は帰らなきゃいけないのと言おうとした瞬間、狭い横道に引き入れられる。
数メートル歩けば行き止まりになるこの場所は他の誰も入ってくる可能性はなく、木の陰で隠れるようにして壁に押し付けられ、唇を合わせられると抗うことなく背中に手を回してしがみつく。
アルコールの匂いをさせてキスされると、これはジンの匂いなのかなぁと彩自身が何を考えているのかと不思議な気持ちになる。

息を荒げる健志は彩が着るブラウスのボタンを引き千切るように外し、ノーブラの乳房を剥き出しにする。
路地のそのまた奥の場所には街路灯の灯りが届かず、薄暗い中で妖艶な姿を晒す白い乳房を鷲掴みして先端にむしゃぶりつく。
スカートを捲り上げられて泥濘に指が伸びると、ヒィッ~と悲鳴にも似た喘ぎ声を漏らして、
「ダメッ、もうダメ、我慢できない。入れて、健志のオチンポで彩を気持ち善くして……はやく、おねがい」

右手で彩の左足を抱え上げて押し付けたペニスを馴染ませ、
「入れるよ……ウッ、温かくて気持ちいい。ごめんな、彩。我慢できなかった」
「アウッ、クゥッ~……いいの、これが欲しかったの、つながりたい気持ちを紛らすために仕事を一生懸命してたの。イィッ~、気持ちいぃ……」
ヌチャヌチャッ、ニュルニュルッ……健志は彩の左足を抱えて股間を突き上げ、彩は喘ぎ声を漏らすまいとして手の甲を口に押し付ける。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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