軽トラデート
1
「フゥッ~、積み終えたから朱莉に連絡するね……もしもし、もうすぐ出発するよ……うん、気にしなくていい。15分くらいで着くと思うから、改めて電話する」
「冷たいモノを飲みたいけど、栞さんちまで我慢するか」
「うん、お茶も出さないってことはないだろうからね。でも、長居しちゃ嫌だよ」
「新しいベッドで早速……シノの相手をするのは大変だ」
「嫌だって言うの??」
「クククッ、可愛いなぁ…行くよ」
軽トラの荷台に積み込んだソファベッドを留めたロープを確かめた男はシノに声を掛ける。
バタンッ、バタンッ、ドアを閉めて朱莉の住むマンションをカーナビにセットした男はシートベルトを留めて軽トラを発進させる。
「タケに初めて会った時はこの軽トラに乗っていた。今日は軽トラデート、楽しいな」
「デート、違いねぇか。それじゃぁ、あとでドライブしようか??」
「軽トラドライブは今度、今日は午前中に届いたベッドの感触を試す約束だよ」
「クククッ、やっぱり、可愛いなぁ……」
「タケに可愛いって言われるとウキウキするけど、お店でお客様に可愛いとか美人って言われるとバカにされているような気がして、イラッとすることがある」
「おっ、怖いな……分かるような気がする。見た目だけじゃなく中身を見ろよって事だろう??」
「そうだよ……それはそうと、この間の電車、面白かったね」
「クククッ、オレはシノの言葉に大笑いしちゃったよ」
須磨シ―ワルドに行きたいというシノは帰りに寄りたい店があるから、車じゃなく電車が好いと言い、男はそれを承諾した。
つり革を掴んだ男に手を添えてシノは身体を支える。
ガタンッ……「きゃぁ~、あっ、ごめんなさい」
そばにいた女性が電車の揺れから身体を支えるために男の腕を掴む。
「大丈夫ですか??」
「ごめんなさい」
「どうしたの……」様子の分からないシノは言葉を交わす二人を覗き込むようにして男に声を掛ける。
ガタンッ……「きゃぁ~、二度もごめんなさい」
身体を支えようとして女性の手が男を掴むのを見たシノはニコッと微笑む。
「ごめんなさい。電車が揺れたので二度もご主人を借りちゃいました」
「えっ、いいのよ。私にとっても借り物ですから……」
「借り物って…えっ、あぁ、そういうことですか??」
「ハハハッ、オレは借り物か、ハハハッ、借りられモノなので気にしないでください」
「どうして、借り物なんて言ったんだろう??潜在意識が不倫ってことを気にしているのかなぁ??」
「着いたよ。ここでいいんだろう??」
「ありがとう。早かったわね」
「軽トラデートをもう少し楽しみかったけど、後の予定があるからね……早く運ぼうよ」
「後の予定って何??」
「ウフフッ、ひ・み・つ」
「このソファベッドを使ってみる??」
「新しいベッドを試してみたいの。それより早く運んで、なにか飲ませてよ。タケだけど喉が渇いたんだって」
「この部屋は3回目だけど来るたびに眺望のいい部屋も好いなって思う。便利さ優先じゃ味気ないかなぁ??どう思う??」
シノに見つめられたタケは、
「海と山、この街の良さが両方見える部屋も魅力的だけど、オレにとっては眺望よりもシノが大切だから窓がなくてもいいよ」
「嫌な男、朱莉が勘違いしちゃうよ。私の部屋では二人とも素っ裸でやりまくっていると思っちゃうよ…ねぇ、朱莉」
「えっ、そうなの??羨ましい。私なんか、My fingers are my lover」
「指が恋人かぁ……朱莉、もう一度、生田さんにお参りしようか」
「生田神社、二人でお参りした直後に葵はタケさんに出会って、今じゃ惚気まくり。今度は私のための願掛けだよ」
店での源氏名、葵と名乗るシノは破顔してタケを見つめ、
「分かっているって、幸せを独り占めするほど欲深くないよ、今度は朱莉の番……なにか飲ませてよ。早く帰りたいの」
「クククッ、欲求不満なの??タケさん、葵を満足させてあげてね……ショーレに凝っているんだけど、アプフェルショーレでいい??」
「タケはリンゴジュースが好きだからいいよ。車じゃない日は私ンチではシードルを飲んでいるし」
「リンゴのコンポートがあるけど召し上がりますか??」
「はい……いいえ、早く帰りたいらしいので遠慮します」
「ウフフッ、葵はやりたい光線出しまくり…ちょっと待って、コンポートとジャムを持って行ってね」
二つのガラス容器にリンゴのコンポートとジャムを詰めた朱莉は、シノに手渡しながら囁く。
「可愛いサクランボにリンゴジャムが似合うと思うよ……可愛がってもらうんでしょう??」
「あぁ~ぁ、セックスしか考えていないような言われかた……」
「じゃぁ、聞くけど他のことを考えている??」
「クククッ、タケとはいつでも会えるわけじゃないからなぁ…不満はないけど久しぶりに会うと、ねっ、分かるでしょう」
帰路に就いた軽トラの淫蕩な雰囲気を隠そうとするシノは窓を開け、風で乱れた髪に手櫛を入れる。
「うん、どうしたの??何かついている??」
「なぁ、今の髪をかきあげる仕種ってオレに見せようとしている??」
「ウフフッ、私はホステス。男性相手のお仕事で魅力をアピールする術も身に付いていると思うけど、惚れている男を相手にそんな余裕はないよ」
「そうか、リラックスしているってことか。今度、潮風を感じながらドライブしようか」
「うん、行きたい。お店の外での初デートは淡路島だった。ねぇ、軽トラじゃなく、私のフィアットでもなく、初デートの車でしょう??」
「フゥッ~、積み終えたから朱莉に連絡するね……もしもし、もうすぐ出発するよ……うん、気にしなくていい。15分くらいで着くと思うから、改めて電話する」
「冷たいモノを飲みたいけど、栞さんちまで我慢するか」
「うん、お茶も出さないってことはないだろうからね。でも、長居しちゃ嫌だよ」
「新しいベッドで早速……シノの相手をするのは大変だ」
「嫌だって言うの??」
「クククッ、可愛いなぁ…行くよ」
軽トラの荷台に積み込んだソファベッドを留めたロープを確かめた男はシノに声を掛ける。
バタンッ、バタンッ、ドアを閉めて朱莉の住むマンションをカーナビにセットした男はシートベルトを留めて軽トラを発進させる。
「タケに初めて会った時はこの軽トラに乗っていた。今日は軽トラデート、楽しいな」
「デート、違いねぇか。それじゃぁ、あとでドライブしようか??」
「軽トラドライブは今度、今日は午前中に届いたベッドの感触を試す約束だよ」
「クククッ、やっぱり、可愛いなぁ……」
「タケに可愛いって言われるとウキウキするけど、お店でお客様に可愛いとか美人って言われるとバカにされているような気がして、イラッとすることがある」
「おっ、怖いな……分かるような気がする。見た目だけじゃなく中身を見ろよって事だろう??」
「そうだよ……それはそうと、この間の電車、面白かったね」
「クククッ、オレはシノの言葉に大笑いしちゃったよ」
須磨シ―ワルドに行きたいというシノは帰りに寄りたい店があるから、車じゃなく電車が好いと言い、男はそれを承諾した。
つり革を掴んだ男に手を添えてシノは身体を支える。
ガタンッ……「きゃぁ~、あっ、ごめんなさい」
そばにいた女性が電車の揺れから身体を支えるために男の腕を掴む。
「大丈夫ですか??」
「ごめんなさい」
「どうしたの……」様子の分からないシノは言葉を交わす二人を覗き込むようにして男に声を掛ける。
ガタンッ……「きゃぁ~、二度もごめんなさい」
身体を支えようとして女性の手が男を掴むのを見たシノはニコッと微笑む。
「ごめんなさい。電車が揺れたので二度もご主人を借りちゃいました」
「えっ、いいのよ。私にとっても借り物ですから……」
「借り物って…えっ、あぁ、そういうことですか??」
「ハハハッ、オレは借り物か、ハハハッ、借りられモノなので気にしないでください」
「どうして、借り物なんて言ったんだろう??潜在意識が不倫ってことを気にしているのかなぁ??」
「着いたよ。ここでいいんだろう??」
「ありがとう。早かったわね」
「軽トラデートをもう少し楽しみかったけど、後の予定があるからね……早く運ぼうよ」
「後の予定って何??」
「ウフフッ、ひ・み・つ」
「このソファベッドを使ってみる??」
「新しいベッドを試してみたいの。それより早く運んで、なにか飲ませてよ。タケだけど喉が渇いたんだって」
「この部屋は3回目だけど来るたびに眺望のいい部屋も好いなって思う。便利さ優先じゃ味気ないかなぁ??どう思う??」
シノに見つめられたタケは、
「海と山、この街の良さが両方見える部屋も魅力的だけど、オレにとっては眺望よりもシノが大切だから窓がなくてもいいよ」
「嫌な男、朱莉が勘違いしちゃうよ。私の部屋では二人とも素っ裸でやりまくっていると思っちゃうよ…ねぇ、朱莉」
「えっ、そうなの??羨ましい。私なんか、My fingers are my lover」
「指が恋人かぁ……朱莉、もう一度、生田さんにお参りしようか」
「生田神社、二人でお参りした直後に葵はタケさんに出会って、今じゃ惚気まくり。今度は私のための願掛けだよ」
店での源氏名、葵と名乗るシノは破顔してタケを見つめ、
「分かっているって、幸せを独り占めするほど欲深くないよ、今度は朱莉の番……なにか飲ませてよ。早く帰りたいの」
「クククッ、欲求不満なの??タケさん、葵を満足させてあげてね……ショーレに凝っているんだけど、アプフェルショーレでいい??」
「タケはリンゴジュースが好きだからいいよ。車じゃない日は私ンチではシードルを飲んでいるし」
「リンゴのコンポートがあるけど召し上がりますか??」
「はい……いいえ、早く帰りたいらしいので遠慮します」
「ウフフッ、葵はやりたい光線出しまくり…ちょっと待って、コンポートとジャムを持って行ってね」
二つのガラス容器にリンゴのコンポートとジャムを詰めた朱莉は、シノに手渡しながら囁く。
「可愛いサクランボにリンゴジャムが似合うと思うよ……可愛がってもらうんでしょう??」
「あぁ~ぁ、セックスしか考えていないような言われかた……」
「じゃぁ、聞くけど他のことを考えている??」
「クククッ、タケとはいつでも会えるわけじゃないからなぁ…不満はないけど久しぶりに会うと、ねっ、分かるでしょう」
帰路に就いた軽トラの淫蕩な雰囲気を隠そうとするシノは窓を開け、風で乱れた髪に手櫛を入れる。
「うん、どうしたの??何かついている??」
「なぁ、今の髪をかきあげる仕種ってオレに見せようとしている??」
「ウフフッ、私はホステス。男性相手のお仕事で魅力をアピールする術も身に付いていると思うけど、惚れている男を相手にそんな余裕はないよ」
「そうか、リラックスしているってことか。今度、潮風を感じながらドライブしようか」
「うん、行きたい。お店の外での初デートは淡路島だった。ねぇ、軽トラじゃなく、私のフィアットでもなく、初デートの車でしょう??」