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彩―隠し事 440

変転-18

「おはよう」
眩しそうに健志を見上げる優子の額に唇を合わせた健志は、
「食事の用意が出来ているよ」
「おはよう……こんな日が来ると想像もしなかった。ウフフッ、幸せ……起こしてくれないの??」
「甘えん坊の優子も可愛いな……早く顔を洗ってきなよ。それとも抱っこがいいか??」
「抱っこが好いけど自分の足で歩かなきゃね。健志に頼ってばかりじゃ嫌われちゃうかもしれないもん……」
朝日を受けて顔を紅潮させる優子に前日の憂いはなく、健志の知る成熟した女性の魅力を溢れさせる彩が居た。
その彩は一昨日、昨日と想像もしていなかった試練を乗り越えて幾つかの隠し事を捨て去り、優子として目の前にいる。

「優子……」
「えっ、なに??どうしたの??」
「呼んでみただけだよ。ウフフッ、その姿は眩しいな……」
「クククッ、惚れた女が手を伸ばせば触れる距離にいるのは嬉しいでしょう??健志のことは何でも知っているもん……ちゃんとした、おはチュウ~をして……」
健志のシャツをパジャマ代わりに着けた優子は胸の膨らみが見えているのも気にすることなく清潔な色気で琴線を刺激する。

キスに満足した優子は洗面所に向かう。
食事を済ませて出社準備を終える頃には任された仕事に向かう毅然とした表情になっていた。
「送ろうか??」
「駅まで歩いて電車に乗って行く。健志との隠し事の必要ない生活が始まることを実感したいの……」
「そうか、行ってらっしゃい。夕食を作って待っている」
「ウフフッ、本当に健志との新しい生活が始まるんだね…夢じゃないよね」

「栞、おはよう。今日も頑張ろうね」
「おはよう、優子……ふ~ん、昨日と違って生気が溢れている。健志さんの胸に…でしょう??」
「そう、私にとって最後の砦。無事に砦の中に駆けこんで、いい子いい子してもらったし、元気の出る注射もしてもらった」
「クククッ、表現が適切かどうかわからないけど災い転じて福となす。別れることになったご主人とは相思相愛でお似合いの夫婦だと思っていたけど、 禍福は糾える縄の如しって言うけど本当だね」
「難しいことを言うのね……でも、本当にそう思う。一昨日から昨日、そして今日の私を表現するのにピッタリ……あっ、課長、おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう。今日も張り切っているね」

昼食は打ち合わせを兼ねて、優子、栞、松本愛美、吉田君の4人で摂る。
それぞれが担当する仕事の進捗状況を確認し、荒垣との窓口役の優子が翌週の早い時期に、この場にいる全員と顔合わせを兼ねて会食の場を設けると話す。その際に、もしかすると、荒垣との面談をアテンドしてくれた人も同席すると告げて栞を驚かす。

「健志さんをみんなに紹介する積りなの??完全に吹っ切れたようね。ねぇ、今日、新しい家に行ってもいい??」
「えっ、ウ~ン……確かめてみるね……もしもし、相談なんだけど、栞が私の新しい家に行きたいって言うの……いいの??怒ってないよね??……うん、ありがとう」
「好いって??」
「うん、夕食を用意して待っているって。でも、変なことを言うと怒るよ」
「優子の邪魔をするはずがないでしょう。優子のことをよろしくお願いしますって伝えるだけ」
「ありがとう」
「旦那様に連絡しなきゃ……もしもし、私。今日、優子ンチに行ってもいいでしょう??……引越ししたんだって……ウフフッ、ありがとう。優子次第でね。詳しいことは帰ってから話します」
「私次第ってなんなの??」
「泊ってきなさいだって、優しい旦那様」
「それは健志に確かめてみないと……正式に結婚していないから今の私は居候の立場なんだもん」
「クククッ、優子が甘い声でおねだりすれば直ぐに結婚できるのに……うん、ダメか。女子は半年経過しないと入籍できないんだったっけ??不公平、男女差別」
「2024年4月の民法改正で女性の再婚禁止期間が撤廃されて直ぐに結婚できるようになったんだよ」
「そうなの……クククッ、優子は直ぐに結婚したくて調べたんでしょう??」
「そうじゃないけど、念のためにね。健志は今のプロジェクトが成功裏に終わって、私が公私ともに落ち着けばプロポーズしてくれるんだって……プロジェクトの成功が条件だから今以上に力を貸してね……」

「ただいま。栞が一緒だよ……」
「お帰り……いらっしゃい。栞さん、大歓迎します」
「ありがとうございます。優子の新しい家を見たくて厚かましく付いて来ちゃいました」
「狭い部屋ですが隅から隅まで納得のいくまで見てください……家は狭いですが眺望は優子も気に入ってくれています。それと、決して優子を泣かせたりしないと約束しますよ」
「ウフフッ、良かったね、優子……学生時代からの親友で今は仕事も優子のお手伝いをする立場。優子の幸せは私の幸せでもあります。優子のことをよろしくお願いします」
「優子の笑顔を見るのが私の幸せ。栞さんのようなお友達がいてくれて心強いです……食事にしましょう。準備をするから汗を流してきなよ」
優子に視線を移した健志を見て栞は頬を緩める。

汗を流した優子はオフホワイトのパンツに健志の青いシャツを合わせて腕まくりし、栞は借りたラセットブラウンのスウェットの上下を着けて現れる。
溌溂として健康的な魅力に溢れる栞と視線が合った健志は頬を緩め、それを見た優子は頬を膨らませる。
「栞にはご主人がいるんだからね……あっ、主人がいた私は健志と付き合っていたんだ……」
「誤解だよ。優子の親友だと知っているから、これからも公私ともに仲良くしてくださいって伝えたいだけだよ。お腹が空いているだろう??」

「筑前煮、ほうれん草の白和え、タコマリネにさつま芋ご飯。これは、キャベツと竹輪を塩昆布で和えてあるの??味噌汁もついて、全部、健志さんの手作りなの??」
「いいでしょう??帰ってくると夕食の準備が出来ている……ウフフッ、今朝は食事の用意が出来たよってキスで起こされちゃった。ねぇ……」
「優子の笑顔を見るのがオレの幸せだからね」
「いいなぁ、うちの旦那様は私が男優に犯されるのを見て至福の表情。えっ、なにを言っているんだろう……いただきます」

夕食を終え、馬刺し、タコ刺し、キャベツと塩昆布の和え物などで冷酒を飲み始めると栞は一層能弁になり、自らのAV出演について話し始める。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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