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彩―隠し事 366

性的欲望 -1

「おはよう、栞」
「おはよう、昨日はありがとう。改めて健志さんにお礼を言っといてね」
「うん、伝えとく……松本さん次第だけど今日のお昼は三人でどうかな??」
「プロジェクトの進め方の話し??」
「うん、栞が集めてくれたデータを松本さんが分析してくれたし、栞は私が考えをまとめるのを待っていてくれた。慎重すぎるのが欠点の私だけど二人とその他のメンバーの助けに応えないとね」
「分かった、それじゃあ、お昼は三人でね。愛美の都合を確かめて例の店の個室を予約しとくね」
「お願い、頼むね……」

栞と立ち話をする愛美が優子に視線を向けてニコッと微笑み、人差し指と親指で円を作って見せる。
前日、悠士の店で栞が股間を守ることを放棄したゴールドチェーン下着を注文したことをおくびにも出さず仕事に集中する。

栞が予約した個室は、以前、三人で卑猥なことをしながら昼食を摂った同じ部屋で案内された三人は顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
「先に言っとくけど、今日は変なことはナシだよ。いいわね、栞」
「は~い、優子の命令は絶対です。美味しそう、さぁ、食べよう……いただきます」
いつも通り、栞の音頭で食事を始めることに優子と愛美は違和感がない。
優子は交互に二人に視線を移し、物怖じすることなく二人をリードする栞と一歩引いた場所で全体を俯瞰する愛美を頼もしく見つめてこんな二人に信頼される自分を改めて奮い立たせるために、ゴホンと空咳をする。
「うん??どうかしたの、優子??」
「たぶん、鍬田さんは私たちに大切なことを話そうとしているのだと思います」
「いつも通りの二人で安心した。私たちを先導してくれる栞と冷静に状況分析してくれる愛美。大切な二人とその他のプロジェクトメンバーに支えられて私がいる。私の役割はなんだろうって思うこともあるけど、悩まないことにした……今日、課長にプロジェクト独立の相談をして、賛成してもらえれば資料をまとめて来週早々に常務に話すつもり。これまで通り同じ道を歩みたいけど、どうかな??」
顔を見合わせた栞と愛美は破顔して、その結論を待っていた。優子に付いていくと声をそろえる。

課長にプロジェクト独立の考えを伝えると、
「その言葉を待っていたよ。常務や部長には私が離したがらないんじゃないだろうなと嫌みを言われていたからね」
課長の幾つかの質問に答えると、
「私は了とします。あとは上を納得させるプレゼンを用意することだね。尤も、私に嫌味を言うほど鍬田さんの決断を待っているのだから反対するはずがない。中身によって予算や人員に影響するだろうから、鍬田さんだけではなく深沢さんや松本さんなどメンバーのためにも頑張りなさい……妻に話すとびっくりするだろうな」
その後は意識してゆっくりと仕事にあたり高揚する気持ちを抑えることに努めた。

その日の午後は三人で常務などに対するプレゼン内容を確認し、栞はプロジェクトメンバーに優子の結論と覚悟を伝え、愛美は改めて資料に誤りがないかを確かめた。
水曜日のこの日と木曜、金曜はプレゼンの準備と並行して課長の下、通常業務に就いて滞りなく終業時刻を迎えた。

「今日は急ぎの用があるからゴメン。先に帰らせてもらうね」
翌週早々の重要な要件は栞と愛美を中心にプロジェクトメンバーの頑張りもあり、結果は優子次第というところまで漕ぎ付けたので、やり残したことも思い残すこともない。
「優子、デートなの??羨ましいな。私も早く帰って旦那さまとまったりしよう」
水曜以降は仕事の忙しさにかまけて性的な話をすることなく週末を迎えた栞は明るく見送ってくれる。
「鍬田さんも深沢さんも優しいご主人がいていいですね。私はお気に入りの抱き枕と一緒に恋愛映画を見て過ごそうかな」
「吉田君、魅力的な女性にこんなことを言わせていいのか??」
「えっ、はい……松本さん、よろしければ僕と映画を見に行っていただけませんか??」
「えっ、なに??デートの誘い??そうなの??誘ってくれるの??」
「秋が近づいて恋の季節だねぇ。深沢さんも松本さんと吉田君も帰った、帰った……私も愛する妻の元へ帰ることにしよう」
週末は愛する人やこれから愛することになるかもしれない人と過ごすために帰路に就く。

「おかえり」
健志は車に乗り込んだ彩を引き寄せて唇を合わせる。
「ウフフッ、ただいま。悪いけど此処を早く離れて……ごめんね。キスで迎えてもらうのは嬉しいけど、彩は人妻。知り合いに見られちゃうと困ったことになっちゃう」
「ごめん、彩を困らせるつもりはないんだけど、つい……」
「そんな風に言われると困っちゃう。キスは嫌じゃないもん……帰って着替える時間はある??」
「大丈夫だよ」
「食事はどんな店でするの??」
「堅苦しくなく、周りを気にすることなく落ち着ける部屋を予約した……紗矢ちゃんとケンちゃんは来るよな??」
「絶対に来ると思うよ。もう約束の場所にいるかもしれない……それと言っとくことがあるんだけど、これからしばらくの間、夫は週末、金、土、日と帰って来ないの。工場に不都合があって稼働しながらなので休日に色々とすることがあるんだって……毎週、毎日とは言えないけど一緒に、ウフフッ」
「喜んでもいいのかなぁ??」
「いいわよ、夫は彼女を連れて行くはずだから。寮に入れば好いのにホテルにするらしいから、絶対に二人だと思う……彩は寂しい週末なんか、イヤ、ねっ……」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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