-1
駅を出た男は時刻を確かめて待ち合わせ場所に急ぐ。
寒さと風のせいで肩をすぼめて前屈みになったり両手を擦ったりする人が多い中、男は背筋と膝下を伸ばして颯爽と歩く。
寒くないはずがないし頬をくすぐり遠ざかる寒風に背中を丸めたくなるけれど、久しぶりに会う人に格好好い姿を見せたいと思う気持ちが勝る。
目的地の手前でスキニーデニムにショートダウンを着けてスタイルの良さを際立たせる女性がイルミネーションを見つめる姿に足を止める。
すぐそばで同じようにイルミネーションを見るカップルの男性と同じくらいの身長があり、よく見ると腰から太腿に続くラインがパンと張り出して鑑賞に堪えるだけではなく抱き心地もよさそうだと手が伸びそうになる。
後姿しか見えないのをいいことに不躾な態度をとることも厭わず、震い付きたくなる気持ちを抑えて後姿を矯めつ眇めつ見ていると近くにいる待ち合わせらしい男性も涎を流さんばかりに見つめている。
「どうしたの、失礼よ……あの人にもだけど、待ち合わせする私に失礼でしょう。行くよ」
スキニーデニムが強調する尻や腰と手入れの行き届いた黒髪に見惚れていた男性が遅れてきた女性に肩を叩かれ、口を尖らせる抗議に言い訳をする。
「ゴメン、勘違いしないでくれよ。僕はイルミネーションを見ていたんだよ。さぁ、行こうか。何を食べる??」
男性は気恥ずかしさを取り繕うように男に軽く会釈して女性の手を掴んで歩き出す。
デートの待ち合わせ中に他の女性に気を惹かれるような態度をとっちゃだめだろうと二人の後姿を見ていると、くだんの女性が時計を確認して突然振り返り笑みを浮かべる。
後姿だけではなく……いや、正面から見ると後ろ姿以上に抱きしめたくなるほどの好い女だと思わずにいられない。
「時計を確かめたらどうなの、約束の時刻になったよ。それとも後姿を見るだけで満足しちゃったの」
「クククッ、桜子のように見えるけど待ち合わせ場所は此処じゃないから、オレの見間違いかなと思って後姿を見ていた、確認のためにね……後姿も小粋だけどタートルネックも似合っているよ」
「えっ、なんだ、そうなの??私と気付かずに後姿をみて好い女だなって一目惚れしそうになっているのかと思った。私だと分っていたんだ??」
その言葉には他人と自分を見間違えるはずがないという自負と自信に溢れている。
「クククッ、可愛いな……動いちゃダメ」
「えっ、恥ずかしい。人がいっぱいいるから後でね」
男が髪に手を伸ばすとこんなところでキスをするのかと勘違いしたような言葉を吐き、髪に付いた紙きれを摘まんで顔の前でヒラヒラさせると勘違いを恥じてばつが悪そうにはにかんで顔を赤らめる。
「可愛いよ。桜子よりも好い女は此処にはいない」
額にチュッと唇を合わせると、
「ほら、やっぱりキスした……どうせするなら、子供だましみたいなのは、イヤ」
場所も弁えず魅惑的な表情を浮かべる桜子に男の欲情を止める術はない。
桜子を抱きよせて唇を重ね、舌を差し入れて髪を撫でる。
「アンッ、いやっ……嫌じゃないけど此処じゃ恥ずかしいから後で……
今日は泊まってくでしょう??」
「その積りだよ」
「じゃぁ、時間はたっぷりあるね。歩きたい……」
青色に彩られた幻想的な通りを歩くと桜子は男の腕を掴んで身体を寄せ、漂う香りに魅せられてその横顔を見る男はドクドクと身体中を血が駆け巡るのを感じる。
「イルミネーションの青がきれい、ウフフッ……」
「どうした??思い出し笑いをしただろう??」
「フフフッ、分かる??この間、同伴で此処へ行こうって誘われたの。イルミネーションを見ながら歩いてフレンチレストランはどうだって」
「良かったからオレにおすそ分けってことか……何とも言いようがないな」
「勘違いしないで、誘ってくれた人とは食事だけ……今日が初めて。誘われ時、あなたの顔が浮かんだの。そんな素晴らしい場所ならあなたと歩きたいって……迷惑だった??」
「そのお客様にお礼を言いたいね。桜子と素晴らしいデートをするきっかけを作ってくれてありがとうって」
エリア全体がキラキラ輝き宝石をちりばめたようなクリスマスツリーの前では興奮のあまり自然とつないだ手が痛くなるほど力が入る。
ひときわ豪華なバカラクリスタル製のシャンデリアを見ると思わず、ホォッ~、すごい、とため息が漏れる。
高さが数メートルもあり両手を広げたよりも遥かに大きなシャンデリアの存在感は圧倒的で周囲の煌びやかな光たちが添え物にしか見えなくなる。
バカラシャンデリアに照らされた広場で飲むバカラグラスに満たされたシャンパンの味は格別でワインに詳しくない男も満足で頬が緩む。
シャンデリアの輝きといたるところで宝石を散りばめた様な灯りで視覚を刺激され、イルミネーションを見る人々の歓声で聴覚を、手をつないで寄り添う桜子が触角を満足させてくれる。
漂う香りに導かれて近付くとウェスティンホテル東京の料理長が手掛けるフードトラックがあり嗅覚が味覚を呼び寄せてくれる。
「今日のディナーはフレンチにしようと思っていたけど、この格好だしここで食べなきゃ後悔することになるよね」
スキニーデニムとショートダウンを指さしてタートルネックセーターを摘まんだ桜子は悪戯っぽく微笑む。
ビーフカレーを食べてホットチョコレートを飲み終えると桜子は満足の笑みを浮かべ、動かないでと告げて指を伸ばし男の口元に付いたホットチョコを拭い取ってペロリと舐める。
「ありがとう」
「ウフフッ、どういたしまして……ホットチョコもいいけどカクテルを飲みたいな」
「あのホテルのバーはどうだろう??」
「ウェスティンはダメ。ドレスコードがあるからジーンズじゃ入れてくれない。うちの近くのバーじゃダメ??」
「いいよ。オレの知らない桜子が見えるかもしれないな」
-2
「いらっしゃいませ」
「こんにちは…マスター、約束を守りましたよ……どうですか??」
「この方ですか??……桜子さん、たぶん合格でしょうが太鼓判を押すのはお帰りまで待っていただきます」
店は開店直後らしく他に客がなく、桜子とバーテンダーは気安く言葉を交わす。
男は何やら自分の品定めをされているようだと察しがついても不快な感じはせず、二人の会話を聞きながら店内に視線を巡らす。
桜子の話から普通のバーだと思っていたが実はシガーバーらしくウィスキーボトルのそばに葉巻が飾られている。
タバコを嗜まない男は匂いが苦手だが葉巻の香りは嫌ではない。
落ち着いた雰囲気の店内は照明も明るすぎず、節度を弁えた客がカクテルや葉巻を楽しむのに相応しい店だと感じさせる。
「マスター、このイチゴを使ったフルーツカクテルをお願いします……あなたは??」
カウンターに盛られたイチゴを指さした桜子はバーテンダーに任せ、男を見つめて小首をかしげる。
「ウィスキーにも魅かれますが最初はジントニックをお願いします」
バックバーに並ぶウィスキーに未練を残しながらジントニックをオーダーする。
「かしこまりました」
「桜子さん、今まで見せたことのない可愛い表情でしたよ……熱い気持ちをほんの少し冷やして差し上げます」
バーテンダーは何種類かのリキュールとクラッシュアイス、生イチゴをブレンダーに投入し、ソーサーグラスに盛り付けて最後に生イチゴをトッピングする。
「うわぁ、イチゴのかき氷。美味しそう」
「口当たりがいいからと油断しないでください。フローズンカクテルですからね……ジントニックでございます」
「ありがとう……いただきます」
「イチゴの花言葉はキリスト教由来の“尊重と愛情”、親株から多数の蔓が出るということで“幸福な家庭”というのもあります」
バーテンダーは博識で話は芸術やスポーツにまで及び、時間はあっという間に過ぎていく。
桜子がストロベリー.マティーニ、男は勧められたウィスキーをロックで飲み干すと、
「もうこんな時間、もう一杯頂いて帰ろうよ」
他の客の相手をするバーテンダーを見ながら桜子は瞳に淫蕩な思いを宿らせて囁く。
「分かった……マスター、最後の一杯をください。お任せします」
持ち手のついた脚付きグラス、アイリッシュウィスキーのジェムソン、コーヒー、砂糖、生クリームを用意したバーテンダーは、グラスにブラウンシュガーとジェムソンを入れてグラスごと温め、熱いコーヒーを加えて生クリームを浮かべる。
「店を出ても二人で歩くと12月の寒さも気にならないでしょうがアイリッシュコーヒーで温まってください」
「お気遣い痛み入ります。いただきます……身体の芯から温まります」
「美味しい……マスター、どうですか??」
「桜子さん、私の太鼓判が欲しいですか??」
「はい、マスターは経験豊富なようだし今までも折に触れ色々と相談させていただきました」
「お客様、お名前も知らないのに失礼ですが一つ質問させていただいてよろしいでしょうか??」
「どうぞ……美味しいお酒を飲ませていただいたお礼に分かる範囲でお答えいたします」
「失礼なことをお聞きしますが、桜子さんになめられて立つモノってありますか??」
「ハハハッ、どちらをお答えすれば合格なのか……そうですね、彼女には少々なめられても腹は立たないですよ」
「ユーモアも理解するし私の話も退屈せずに聞いていただいて気持ちのいい相槌もいただきました。ウィスキーを気にしながらジントニックをオーダーするいい意味での頑固さもある。桜子さんに相応しい男性だと思いますよ……今の質問の答えから夜にも自信があるとお見掛けしました」
「フフフッ、そうなの、見掛け倒しではなく夜も満足させてもらっています。なかなか会えないのが不満だけど……」
話し終えた桜子にねっとり見つめられると股間が反応しそうになる。
「美味い酒だけではなく楽しい時間をありがとうございました。彼女が自信をもって誘うわけですね」
「マスター、ありがとう。ストロベリー・フローズンカクテルもアイリッシュコーヒーも美味しかったです。ごちそうさまでした」
「私こそバーテンダー冥利に尽きる時間を過ごすことができました。また、お二人をお迎えするのを楽しみにしています」
手袋をしたままつないだ手をコートのポケットに引き入れて離そうともせず、チュッと唇を合わせる。
「ウフフッ……」
「また思い出し笑いかよ。可愛いな」
「だって……クククッ、マスターが私になめられて立つモノってあるかって聞くんだもん、びっくりしちゃった」
「なめられて腹以外に立つモノってあるか??相手が桜子なら腹も立たないよ」
「私もあなたなら、なめられても立たない」
「嘘だろ、桜子を舐めるとオッパイの先端が立つし、クリもボッキッキ~しちゃうと思うよ」
「自分だけ……フンッ、そんなことを言うと今日は寝かせないよ。私がもう止めてって言うまで可愛がってもらっちゃうからね」
「今日は変態チックに責めちゃうぞ……興奮を高めるために桜子を抱っこしちゃおう」
「クククッ、恥ずかしい。ほら、笑っているよ」
「構うことはない。可愛い桜子をお姫様抱っこするんだからオレは幸せだよ」
「抱っこされるのって記憶も定かでないほど昔、両親に抱っこされて以来、ウフフッ……二日前だけど、高浜さんが後輩の方と一緒にお店に来てくれたの。それでね、付き合っているだろうって聞くから、ご想像にお任せしますって答えちゃった。怒る??」
「古い付き合いだから嘘は吐けないよ。桜子がオレと付き合ってくれるなら話しても構わないよ」
「クククッ、付き合っていると思ってもいいんだね」
-3
マンションのエントランスに入ると桜子が前に立って歩き、男はその後ろ姿に見惚れる。
スキニーデニムとショートダウン、足元のヒールがスタイルの良さを強調し、過度に飾り立てずシンプルな恰好ながら桜子の魅力を損なうことがない。
オートロックを解錠した桜子に続いて中に入ると男の動悸が激しくなる。
今日は桜子の部屋で性的昂奮を抑えられるかどうか自信がない。
「あなたの視線が背中にビシビシ突き刺さる」
エレベーターに向かう桜子は振り返って嫣然と微笑み、
「店がはねたあとで連絡すれば迎えに来てくれるって言ったけど一度もしなかった。もし迎えに来てって言えばどうしたの??」
「簡単な夜食を作って家を出る時に風呂の用意をする積りだった」
「そうだったの、ざんねん……酒の匂いをプンプンさせる私を迎えに来てもらうのが嫌だったの。あなたの前では清楚とは言えなくてもそれなりに見てもらいたいから」
「気にしなくていいよ。酒を飲む店で桜子と会った……」
「そうだった、今更気取ることもなかったね」
「そうじゃない。自棄になった女は好きじゃない。いつものままで居てくれればいいんだよ」
バタンッ……部屋に入ると背後で音を立ててドアが閉まり、二人を邪魔するものが何もなくなる。
男は抱き寄せた桜子を壁に押し付けて動きを封じ、言葉を口にすることなく唇を合わせて右手だけで上着を剥ぎ取る。
タバコの匂いと過度なアルコール臭のする女を好まない男も桜子が放つアルコールの匂いを好ましく思う。
侵入した舌が桜子の匂いを通じて気持ちが交差するのを感じ、ジーンズ越しに腰や尻を撫でる手が身体の相性が好いと教えてくれる。
舌が互いの口腔を行き来して唾液を貪り、密着させた身体が体温を感じて鼓動さえもが同調し、二人だけの時間と空間に酔いしれる。
「ハァハァッ、ドキドキが止まらないし身体が燃えそうなくらい熱い……外の空気で火照りを冷ましたい。その前に風呂の用意をしとくね」
カーテンを開けると無数の宝石を撒き散らしたように猥雑ながら煌びやかな夜景が広がり、ベランダに出ると12月の夜の寒気が二人の火照りを冷ましてくれる。
男はキラキラした夜景に見入り、桜子はフェンスに寄りかかって男の視線を追い見慣れた景色も好きな男のそばにいると一層華やかに見えることに気付く。
「変態チックなエッチをするんでしょう……今日の私は変なの」
桜子の言葉に触発された男は背後から抱きかかえるようにしてタートルネックセーター越しに胸の膨らみを揉み、黒髪に顔を埋めて息を吸う。
「いやっ、変な匂いがしない??恥ずかしい……」
「今日の桜子は変態なんだろう」と、言いながらデニムのファスナーを下ろして右手を侵入させ、開いた手で股間を覆う。
「アンッ、濡れているかもしれない。会うのが久しぶりなんだもん」
「温かい……言葉通り、密やかに興奮する桜子がオレにもうつったらしい」
「クククッ、お尻に押し付けられた熱い棒で火傷しちゃいそう」
カチャ……シュゥ~……シュッシュッ……ベルトを外す音に続いてファスナーが下がる音が続き、衣擦れの音がすると桜子は平静ではいられない。
「ハァハァッ、えっ、なに??どうしたの??……ハァハァッ」
「分かっているだろう。変態の桜子が何をするかも分かるね」
「こんなところで……」
振り向いた桜子は上気して瞳は潤み、仁王立ちの男の股間に聳える男根に恐る恐る手を伸ばす。
「嫌ならパンツの中に片付けるよ。どうする??」
「いじわる……」
怒張から視線を外すこともできずにその場でしゃがみ、上目遣いに見つめる桜子の口は閉じることを忘れたようにしどけなく開いてハァハァッと荒い息を漏らし、視線を合わせた男が頷くとゴクッと唾を飲んで指を伸ばす。
「すごいっ、血管が膨れ上がって今にも破裂しそう」
「爆発する前に優しくなだめてくれるね」
言葉を発することなくコクンと頷いた桜子は宙を睨む怒張の先端を指先で撫でて滲み出る先走り汁を塗り広げ、竿に添えた指が撫で降りて根元を摘まみ、再びゴクッと唾を飲んで意を決したように舌を伸ばして先走り汁を舐めとりそのままパクリと口に含む。
ジュルジュルッ、ジュボジュボッ……羞恥を捨て去るように荒々しく顔を上下してフェラチオに興じるさまは男の嗜虐心を刺激する。
手を伸ばしてセーターを引っ張り上げようとすると意を汲んだ桜子はペニスに添えた手をそのままにして、空いた片手で自ら捲り上げる。
男がセーターを脱がせようとすると桜子は怒張を吐き出して万歳の格好になり上半身はブラジャーを残すだけになる。
「脱いじゃいなよ。素っ裸の桜子に咥えてもらいたい」
「ここで??寒いのに……いいよ、あなたがハダカンボになれって言うなら」
セーターとジーンズを脱いで下着だけを残す桜子は寒さで肩を丸めて首をすくめ、握って両手を口に近づけて息を吹きかける。
「フゥッ~、寒い……震えが止まらない」
全身の震えが止まらず、部屋から漏れる灯りでも全身が総毛だっているのが分かる。
「ごめん……寒かったね」
桜子を抱き上げてバスルームに向かう。
下着を着けたままの桜子にシャワーを浴びせた男は身に着けたものを全て脱ぎ捨てて二人でずぶ濡れになり、ボディソープを振りかけて泡にまみれた身体を擦り合い、唇を重ねる。
ウッウッ、クチュクチュ、ニュルニュルッ……外したブラジャーで桜子を後ろ手に縛り、乳房にむしゃぶりついて先端を甘噛みする。
「アウッ、クゥッ~……気持ちいい、もっと、もっと激しく」
ショーツを着けたままの股間を男の太腿にこすりつけ、見つめる瞳は赤く燃える。
桜子を壁に押し付けてシャワーの水量を調整して乳房に浴びせ、快感で表情が歪み甘い吐息が漏れるとショーツを脱がせて口に押し込む。
「ウグッ、フグッ……グゥッ~、ウゥッ~、ウッウッ」
-4
ブラジャーで後ろ手に縛られて両手の自由を奪われ、下着を咥えさせられて言葉を発することもできない桜子の乳房にシャワーを浴びせると切ない表情を浮かべて欲望を露わにする。
胸の膨らみを刺激するシャワーが腹部伝いに股間に移動すると、ウグッ、フグッとくぐもり声を漏らして両足をゆっくり開いていく。
飾り毛に隠された秘所に右手に持ったシャワーを向けて左手で割れ目を開くと足はフルフル震え、滴る湯とは違う粘度の強い花蜜が溢れ出る。
男はシャワーヘッドをフックに掛けて右手中指を立てて桜子に見せつけ、両足の間に下ろすと意図を汲んだ桜子は足を踏ん張りゆっくり腰を下ろしていく。
粘膜に指が触れると表情を見なくとも桜子が一瞬躊躇するのを感じ、立てた指を離そうとすると逃がすまいとして太腿を閉じて動きを封じようとする。
「桜子、指を咥えたいんだろう??」
「フン、フグッ、フグッ……」
下着を咥えたままでは意味不明の声を漏らすしかなく顔を左右に振って拒否し、挟まれた指を強引に引き抜こうとすると激しく首を上下に振って卑猥な気持ちを伝えようとする。
吐き出そうと思えば吐き出せるはずのショーツを咥えて被虐心を募らせ、潤んだ瞳で男を見つめて腰を下ろしていく。
グゥッ~……ニュルニュルッ……ウッ、ウグッ……指を付け根まで飲み込むと桜子の動きは止まり、動くのが辛そうに顔を歪める。
二度三度と出し入れした男は一旦指を引き抜くと桜子は名残惜し気な表情をし、欲しいかと聞くと、首を縦に振る。
後ろ手に縛ったままの格好で桜子の身体の向きを変えて壁に向かって立たせると、何かを期待して額を壁に押しつけて両足を踏ん張る。
両足の間から手を伸ばして親指を花蜜が滴る源泉に挿入し、中指でクリトリスを刺激すると、またもや両脚は震えを帯びて額だけでは支えることができずに胸を壁に押し付けて崩れそうになる身体を支えようとする。
花蜜を滾々と溢れさせる源泉は膣壁が蠢いて指を奥へ誘い込もうとし、中指でクリトリスを弄ると親指の付け根が膣口を刺激することにもなり、突き出した丸い尻がプリプリ揺れて可憐な窄まりがヒクヒク揺れる。
息を吹きかけると窄まりがキュッと締まり、もう一度吹くと締まったアナルの緊張が解ける。
桜子は咥えたままのショーツを吐き出し、
「いやっ、入れて。我慢できないの、おねがい」
ピシッ……手首の拘束を解いた桜子の尻を打つと両足を開いて下半身を突き出し、白くて丸みを帯びた尻をウネウネ蠢かして無言のうちに挿入をねだる。
桜子の足の付け根には飾り毛に隠れていたはずの花弁が綻びを見せて姿を現し、摘まんだペニスを押し付けると桜子は下半身を振って挿入を促す。
「早く、焦らしちゃ嫌……ほしいの、あなたが欲しい」
花弁とペニスが馴染んだのを確かめた男がわずかに腰を突き出すとニュルニュルと音を立てて吸い込まれる。
「アァッ~、これが欲しかったの……あなたのモノが私を押し開いて入ってくる……気持ちいい」
「オレも気持ちいい。温かい襞がウネウネ蠢いて吸い込もうとする感触がゾクゾクするほどいいよ」
出しっ放しのシャワーが二人の頭や身体に降り注ぐことも構わず、快感を貪り欲望を満足させる。
二人の仲を裂こうとするかのようなシャワーを気にすることなく男は桜子の腰を掴んで怒張を打ち込み続ける。
「ウグッ、グゥッ~……もっと、激しく……ヒィッ~、気持ちいぃ」
獣じみた喘ぎ声で悦びを訴える桜子がキスをねだり振り返る顔にはシャワーで濡れた髪がへばりつき凄惨な色気を撒き散らす。
男は挿入を解いて桜子を抱きしめ、唇を重ねて唾液を啜り唇や舌を甘噛みして抑えきれない気持ちのまま獣欲をぶつけ合う。
ハァハァッ……ヌチャヌチャ、グチュグチュッ……ハァハァッ……ようやく落ち着きを取り戻した二人は互いの顔に張り付く髪を整えてシャワーを止める。
「ごめん、我慢できなかった」
「謝ったりしないで……謝られると今の激しさは嘘になっちゃう。私を欲しくて性欲をぶつけてくれたと思いたいの」
「そうだ、たまにしか会えない桜子にオレの気持ちをぶつけたかった。感じてくれた??」
「うん……ウフフッ、恥ずかしい」
「店がはねた桜子を迎えに行ってもいいか??」
「嬉しい、連絡する。週末はあなたの部屋で過ごしてもいい??」
「そうして欲しいと言うつもりだった。オレに言わせろよ」
「クククッ、言って。私にしてほしいことがあるんでしょう??」
「店が休みの週末は桜子と一緒に過ごしたい」
「アァッ~、ダメ。言葉の愛撫で立っているのも辛いほどゾクゾクする」
「ベッドに行こうか」
「ウフフッ、ここで興奮を煽ってベッドで楽しむの??」
腰にバスタオルを巻いて先に出た男は部屋の明かりを消して窓際に立ち、イルミネーションのような街の灯りを見つめる。
ビルの窓から煌々と灯りが漏れ、家族や恋人の許に急ぐ車のヘッドライトやテールランプが延々と続きブレーキランプが規則正しく点滅する。
ネオンサインやライトパネルが夜の街に彩りを添え、寂しい人たちに妖しい魅力を撒き散らす。
「何を見ているの??……窓の外に私よりも魅力的なモノがあるの??」
振り返ると薄明りの中で糸くず一本身につけず素っ裸で立つ乳白色の肌が艶めかしく、腰に巻いたバスタオルを外して陰毛に隠れて萎れたペニスを見せる。
「クククッ、頭から足までシャワーでずぶ濡れになっても元気だったのに独りになるとこんなになっちゃって……二人でなきゃダメみたいね」
膝立ちになった桜子は萎れたペニスを口に含んで元気を取り戻させ、上目遣いに嫣然と微笑み、男は押し倒した桜子に覆いかぶさり所かまわず舌を這わせて両手は肌をまさぐる。
窓は街の灯りを映して変幻自在に色を変え、床で絡み合う二人を優しく照らす。
<< おしまい >>
―1
車を降りた男は四方を見渡して待ち合わせの相手を探し、手を振りながら近付いてくる女に向けて手を挙げる。
白パンツに黄色いオーバーサイズセーターを羽織る女が満面の笑みで小走りに近付くと、周囲の男たちは二人を見比べて男に羨望の眼差しを向け、女たちはスタイルの良さと華やかな雰囲気に嫉妬混じりの視線を向ける。
男は手が届く距離に近付いた女を抱き寄せ、チュッと音を立てて唇を合わせる。
「一年半ぶりだけど桜子は変わらないどころか女っぷりが上がったようだね。オーバーサイズのモコモコが可愛いよ」
「ウフフッ、ありがとう。一年半も連絡しなかったことを後悔している??」
「今のご時世じゃしょうがないだろう。それに何度も言ったけど、オレは自信家じゃないから連絡するのを躊躇っていたよ」
桜子の言葉を待つことなく車のドアを開けた男は視線と手の動きで誘導する。
ハイヒールは、おでこにキスされた女性が唇にキスされたくて発明した。
誰が言ったのか知らないが、ハイヒールについてこんな洒落た言葉があると聞いたことがある。
長身の桜子はキスのためにハイヒールを履く必要がないのに、なぜか好む。
スタイルの好い桜子と一緒にいると、男たちの羨望ややっかみ、女性の嫉妬交じりの視線を浴びるのも心地好いが、当の桜子は気にする様子もない。
男の記憶の中と同じように優雅な身のこなしで車に乗り込んだ桜子は、口元を緩めて男を蕩かさずにおかない笑みを浮かべる。
「誘拐されてホテルに連れ込まれるの??」
「こんな好い女を逃したくないからな。とは言え先ずは腹ごしらえ」
「今は閉店時刻が早いし、あなたが予約したホテルを聞いたからレストランを予約しといたけど怒る??」
それには答えずドアを閉め、運転席に座った男の横顔を見る桜子は困惑の表情を浮かべる。
「ごめんなさい。善かれと思ったけど余計なことだったね、ごめんなさい」
「クククッ、ありがとう。この街のことは全く知らないから助かるよ」
「もう……怒っているのかと思って心配しちゃった。触ってみて、ドキドキしているでしょう」
桜子は男の左手を掴んで左胸に押し付ける。
「セーターがモコモコで可愛いと言ったけど、オッパイもモコモコで興奮する」
「クククッ、夜が楽しみ。お腹が空いた、ホテルへ行こうよ」
チェックインを済ませて部屋に案内され、二人きりになると桜子は凛として颯爽とした仮面を脱ぎ捨てる。
「食事に来たことはあるけど部屋に入ったのは初めて……駅に近いからこの街の賑わいが見えるし海も見える……ふ~ん、シャワーブースが独立しているんだ」
弾むような足取りで窓に近付いて景色に見入り、バスルームを覗く。
「今の桜子を知るには住む街を見ればいいと思ったから、このホテルにした」
「で、感想は??」
「桜子のような好い女がこの街の中学生を相手に塾の先生をしているんだろう。オレも中学生に戻りたいよ」
「この街の感想じゃないよ、採点は落第……それはそうと、どうしてベッドが二つあるの」
「一つは身悶える桜子がグチャグチャにするベッド、もう一つはオレの胸の中で可愛い寝顔を見せるためのベッド。ダブルベッドルームが良かった??」
「う~ん、満点に近い合格点をあげる。ハナマルだよ、嬉しい??」
「頑張った生徒にはご褒美があるんだろう、桜子先生」
「いつもは頑張った生徒に言葉で褒めるだけ、あなたはそれで満足しない。どうすればいいの??」
「桜子先生は何もしなくていいよ……」
男が桜子を抱き寄せて唇を合わせると、それを待っていたかのように赤い舌が這い出て迎える。
ヌチャヌチャ、ジュルジュルッ……「フゥッ~、落ち着いた。食事にしようよ。予約した時刻にちょうどいい」
エレベーターで最上階に昇り、予約したのは此処だと桜子が指さす鉄板焼きの店に入る。
案内されたカウンター席に座ると鉄板の向こうの窓に月明りが波に反射して煌びやかな海と行動制限のせいで抑制された夜景が広がっている。
「私がこの街に帰ってくる前はもっと華やかな夜景が広がっていたのに、なんだか寂しい」
「しょうがないよ……それはそうと、中学生に教えるのは楽しいだろう??世の中の人のほとんどが何かを諦めたり犠牲にしたりすることになったけど、そのお陰で得るモノもある」
「そうね、大抵の人は家族で過ごす時間が増えただろうね。私は教師になるのが夢だったし、教育実習も単位取得済み。塾の講師も好いかもしれない……オミズを経験して東京タワーが見える部屋に住むことも出来たし、クククッ、あなたに会えた」
「光栄だね。桜子が馴染みだったバー、今日の約束をした翌々日、近くに行く用があったので立ち寄ったよ。機会があれば二人で来てくれって伝言を預かってきた」
「お店はどうだった??」
「ランチタイム営業やコーヒー提供で頑張っているらしい」
「そうなんだ、行きたいなぁ。マスターには色々相談に乗ってもらったり、話し相手になってもらったりお世話になったから……」
「桜子の都合も聞かずに、直ぐにとは約束できないけど必ず来ますって返事しちゃったよ」
「お世話になったマスターだから、あなたが勝手にした約束でも守らないとね。指切りしようよ」
「クククッ、可愛いな……必ず行こう。指切りするよ」
「ワインでございます……トマトとモッツァレラチーズでございます」
紗矢はロゼワイン、健志は白ワインで乾杯しオードブルやコンソメスープを食べながらアワビをソテーする様子に見入る。
鉄板とコテが奏でる音や食欲をそそる匂いが卑猥な思いを忘れさせ、アワビに続き和牛のソテーを生わさびで胃袋に収め、ガーリックライスを炒める音や匂いに魅せられる頃には屈託のない笑顔で見つめ合う。
デザートを食し、桜子はコーヒー、男がミルクティーを飲み終えると食事を堪能し、雰囲気も含めて満足しましたと礼を述べて店を出ると桜子は男の腕を抱えるようにして身体を寄せてくる。
「カクテルを飲みたいけどマスターのバーに行くときのためにとっとく。部屋に戻ろうよ、ねっ、いいでしょう」
忘れていた欲情が蘇り、腕を掴んだ桜子の胸の膨らみを感じて男は股間に力が漲るのを意識する。