彩―隠し事 112
萌芽 -8
まさか手をつないで退社することはないだろうが、栞と課長の夜の時間を付け回して覗き見たい気もするが優子にはそれ以上に大切な予定がある。
後ろ髪を引かれる思いで電車に乗り、精神的、肉体的な欲望を満たしてくれるはずの人に会いに行く。
他人の目には清楚で貞淑な人妻と映るらしいけれど、明日、部長とゴルフをすると言う夫を見送るどころか今日は実家へ無沙汰を詫びながら一泊し、土曜日は温泉宿で一泊して英気を養いたいと許しを請うた。
実家へ向かうどころか健志の元に急いでいる。
夫が浮気をしているから仕方なく私もと言い訳をする積りはない。
夫が浮気をしていない状態で健志と出会えばどうだっただろうと思わずにいられない……多分、嬉々として抱かれただろうと思う。
「もしもし……駅に着いたよ」
「迎えに行くから待っていてくれる??」
橋上駅の改札口を出てエスカレーターを降り、健志の部屋で抱かれてからどれくらい経ったのだろう、この街の景色は久しぶりと思い何気なく視線を巡らすと家を出たばかりのはずの健志が車の横に立って微笑んでいる。
急ぎ足で近付いた彩は、
「質問に答えてくれる??健志は彩に惚れているでしょう、ねぇ、どれくらい惚れているのか教えてくれる??」
「オレんちに着くまで迷子にならないかと心配だから迎えに来る程度かな」
「クククッ、いつから待っていたの??ねぇ、30分??1時間??どれくらい??」
「さぁ、待ちくたびれたから忘れちゃったよ」
「急に残業することになっていたらどうしたの??」
「夜中まででも待っていたよ、当然だろう」
彩の腰に手を回して抱き寄せ、鼻頭を擦り合わせて軽く唇を合わせる。
「お帰り、日曜の夕方まで彩の住まいはオレんちだろう??」
「ただいま……今、思いついたんだけど、お泊りセットを持ってきたけど彩の家って言ってくれたから最低限のモノを置いとこうかな、迷惑??」
「よし、決まり。駐車場に入れてくるからここで待っていてくれる??」
歯ブラシなどの日用品と下着などの衣類を買いそろえて駐車場に戻る。
「夕食は??」
「用意しているよ、何かはお楽しみってことで内緒」
5分ほどの車中での会話で夫に触れることなく、彩の私生活に及ぶような話題も出ることがない。
電車の中では夫の不実を責める資格は私にはないと自責の念に駆られることもあったが、健志と空間を共にするとそんな事は脳裏をかすめることも無くなり今の幸せにどっぷりと浸る。
テーブルには夕食の準備が整い、シンプルながら食欲をそそられる。
「ローストチキンと温野菜。この塩の塊は何??」
「鯛の塩釜、木槌を振るうのは彩の役目だよ。バゲットと白ワイン、彩り不足かもしれないけど勘弁してもらう」
「美味しそう。申し訳ないけどシャワーで汗を流したい」
「分かった。40度の設定でお風呂の準備はできている」
「ウフフッ、至れり尽くせりね、お姫様になったような気分」
スーツを脱いでハンガーに掛ける所作に無駄がなく、自分の女を隠そうとして無意識のうちに滲ませる恥じらいが健志の心を鷲掴みする。
「どうしたの??彩が上着を脱ぐだけで昂奮してくれるの??」
「おかしいか??……お姫様を抱っこするよ」
軽々と横抱きした彩の額にチュッと唇を合わせてバスルームに向かう。
40度の湯に浸かって背中を預けて寄りかかる彩を背後から抱きしめ、成熟した女性らしい肌の感触に酔う健志は髪に顔を埋めて匂いで胸を満たす。
「何度目かな、こうして健志に身体を預けるのって……仕事に集中している時は健志の事を意識することはなかったけど、一旦思い出すと気になってしょうがないの。夫の浮気に対する当てつけだという気はないし心の内に昔から棲みついていた卑猥な思いが現れたの。健志に会ったのがきっかけでね」
「クククッ、そうじゃないだろう。オレが彩に会ったのはSMショークラブ、今の話が本当ならオレに会う前に彩の淫らな思いは目覚めていたんだろう?」
「えっ、そうか、そうだよね……来週、会った時に学生時代からの親友のスゴイ経験を教えてあげるって言ったでしょう、憶えている??」
「憶えているよ、楽しみにしている」
「その彼女に連れて行ってもらったのが例の店。その彼女は新しいエッチ経験を積み重ねるらしいの、それも今日」
「想像できないけど、どんな事??」
彩は栞の名前や同僚であることを伏せて学生時代からの親友が浮気をしていることを夫に気付かれた事や、寝取られ願望を持つ夫に不貞の代償としてボイスレコーダーで記録することを求められて意のままに従ったことなどを話した。
しかも、その日はSMルームで女性従業員に素っ裸の身体を晒され、SMチェアに拘束されてアナルに怒張を迎え入れると同時に濡れそぼつオマンコにミニ電マを捻じ込まれた。
前後の穴を同時に責められて思うさま蹂躙されても彼女の淫蕩な身体は与えられる快感に震えて喘ぎ声を漏らし続けた。
そして疲れ果てた身体で帰宅した彼女が記録した音声を再生した夫は、卑猥な欲望を隠そうともせずに縄で縛り股間の恥毛を刈り取ったことなどを淡々と話した。
感情を込めると健志に寄りかかった彩の心の奥に潜む栞とは異質の性的欲望が姿を現し、自分自身でそれを制御する自信がない。
まさか手をつないで退社することはないだろうが、栞と課長の夜の時間を付け回して覗き見たい気もするが優子にはそれ以上に大切な予定がある。
後ろ髪を引かれる思いで電車に乗り、精神的、肉体的な欲望を満たしてくれるはずの人に会いに行く。
他人の目には清楚で貞淑な人妻と映るらしいけれど、明日、部長とゴルフをすると言う夫を見送るどころか今日は実家へ無沙汰を詫びながら一泊し、土曜日は温泉宿で一泊して英気を養いたいと許しを請うた。
実家へ向かうどころか健志の元に急いでいる。
夫が浮気をしているから仕方なく私もと言い訳をする積りはない。
夫が浮気をしていない状態で健志と出会えばどうだっただろうと思わずにいられない……多分、嬉々として抱かれただろうと思う。
「もしもし……駅に着いたよ」
「迎えに行くから待っていてくれる??」
橋上駅の改札口を出てエスカレーターを降り、健志の部屋で抱かれてからどれくらい経ったのだろう、この街の景色は久しぶりと思い何気なく視線を巡らすと家を出たばかりのはずの健志が車の横に立って微笑んでいる。
急ぎ足で近付いた彩は、
「質問に答えてくれる??健志は彩に惚れているでしょう、ねぇ、どれくらい惚れているのか教えてくれる??」
「オレんちに着くまで迷子にならないかと心配だから迎えに来る程度かな」
「クククッ、いつから待っていたの??ねぇ、30分??1時間??どれくらい??」
「さぁ、待ちくたびれたから忘れちゃったよ」
「急に残業することになっていたらどうしたの??」
「夜中まででも待っていたよ、当然だろう」
彩の腰に手を回して抱き寄せ、鼻頭を擦り合わせて軽く唇を合わせる。
「お帰り、日曜の夕方まで彩の住まいはオレんちだろう??」
「ただいま……今、思いついたんだけど、お泊りセットを持ってきたけど彩の家って言ってくれたから最低限のモノを置いとこうかな、迷惑??」
「よし、決まり。駐車場に入れてくるからここで待っていてくれる??」
歯ブラシなどの日用品と下着などの衣類を買いそろえて駐車場に戻る。
「夕食は??」
「用意しているよ、何かはお楽しみってことで内緒」
5分ほどの車中での会話で夫に触れることなく、彩の私生活に及ぶような話題も出ることがない。
電車の中では夫の不実を責める資格は私にはないと自責の念に駆られることもあったが、健志と空間を共にするとそんな事は脳裏をかすめることも無くなり今の幸せにどっぷりと浸る。
テーブルには夕食の準備が整い、シンプルながら食欲をそそられる。
「ローストチキンと温野菜。この塩の塊は何??」
「鯛の塩釜、木槌を振るうのは彩の役目だよ。バゲットと白ワイン、彩り不足かもしれないけど勘弁してもらう」
「美味しそう。申し訳ないけどシャワーで汗を流したい」
「分かった。40度の設定でお風呂の準備はできている」
「ウフフッ、至れり尽くせりね、お姫様になったような気分」
スーツを脱いでハンガーに掛ける所作に無駄がなく、自分の女を隠そうとして無意識のうちに滲ませる恥じらいが健志の心を鷲掴みする。
「どうしたの??彩が上着を脱ぐだけで昂奮してくれるの??」
「おかしいか??……お姫様を抱っこするよ」
軽々と横抱きした彩の額にチュッと唇を合わせてバスルームに向かう。
40度の湯に浸かって背中を預けて寄りかかる彩を背後から抱きしめ、成熟した女性らしい肌の感触に酔う健志は髪に顔を埋めて匂いで胸を満たす。
「何度目かな、こうして健志に身体を預けるのって……仕事に集中している時は健志の事を意識することはなかったけど、一旦思い出すと気になってしょうがないの。夫の浮気に対する当てつけだという気はないし心の内に昔から棲みついていた卑猥な思いが現れたの。健志に会ったのがきっかけでね」
「クククッ、そうじゃないだろう。オレが彩に会ったのはSMショークラブ、今の話が本当ならオレに会う前に彩の淫らな思いは目覚めていたんだろう?」
「えっ、そうか、そうだよね……来週、会った時に学生時代からの親友のスゴイ経験を教えてあげるって言ったでしょう、憶えている??」
「憶えているよ、楽しみにしている」
「その彼女に連れて行ってもらったのが例の店。その彼女は新しいエッチ経験を積み重ねるらしいの、それも今日」
「想像できないけど、どんな事??」
彩は栞の名前や同僚であることを伏せて学生時代からの親友が浮気をしていることを夫に気付かれた事や、寝取られ願望を持つ夫に不貞の代償としてボイスレコーダーで記録することを求められて意のままに従ったことなどを話した。
しかも、その日はSMルームで女性従業員に素っ裸の身体を晒され、SMチェアに拘束されてアナルに怒張を迎え入れると同時に濡れそぼつオマンコにミニ電マを捻じ込まれた。
前後の穴を同時に責められて思うさま蹂躙されても彼女の淫蕩な身体は与えられる快感に震えて喘ぎ声を漏らし続けた。
そして疲れ果てた身体で帰宅した彼女が記録した音声を再生した夫は、卑猥な欲望を隠そうともせずに縄で縛り股間の恥毛を刈り取ったことなどを淡々と話した。
感情を込めると健志に寄りかかった彩の心の奥に潜む栞とは異質の性的欲望が姿を現し、自分自身でそれを制御する自信がない。