彩―隠し事 111
萌芽 -7
栞の浮気を知ったご主人は不貞を責めるどころか、抱かれて悦ぶ喘ぎ声をボイスレコーダーに記録して来いと命じたと言う。
離婚を切り出されるのではないかと怯えていた栞はその話に易々と従って課長とのSMプレイを録音し、それを再生したご主人は嫉妬と寝取られ願望を露わにして縄模様が残るほど縛り上げて恥毛まで剃ってしまったらしい。
そんな話を聞いた優子は、ご主人と課長に責められて悲しむ様子もなく二人を巧みに操って自らの性的好奇心と欲望を満足させる栞を羨ましく思ってしまった。
優子は夫の浮気を知っても直接責めることもできず、鬱々と過ごしていたが性的に奔放な処のある栞に連れて行かれたSMショークラブを切っ掛けにして健志と知り合い彩と名乗って付き合っている。
栞を中心にして互いに知らないご主人と課長との性的遊戯を聞かされてモヤモヤした気持ちを持て余した優子は彩となって前日食事をしたばかりの健志に連絡した。
健志は突然の電話を嫌がる風もなくテレフォンセックスで彩の被虐心を刺激して満足させてくれた。
今朝の目覚めは何のわだかまりもなく爽やかに迎えることが出来た。
健志としばらく会っていないために知らず知らずに溜め込んでいた性的欲求不満を解消し、課長の転勤は寂しいものの新任課長も優子に期待していると聞かされて安堵した。
清々しい気持ちでベッドを離れてルーチンワークともいえるヨガをこなし、キッチンに立って朝食の用意が出来たタイミングで、
「おはよう、コーヒーの香りで目が覚めたよ。優子も仕事をしているのに、いつもありがとう」
「どうしたの??結婚して直ぐのころに言ったでしょう。愛する人の朝食を用意しながらどんな顔で起きてくるのかと想像するのが楽しいって、今も変わってないよ」
「そうか、そんな風に言ったよな、憶えているよ……ごめん」
夫は浮気を指してなのか、ごめんと言ってコーヒーを飲み苦渋に満ちた笑みを浮かべ、それを見た優子は自分の不貞は知られていないと確信する。
「美味しい。いつものコーヒーの味だ、ありがとう……こんな時に申し訳ないけど出張とゴルフの予定が入っちゃったんだよ。今週末は部長のお供で一泊ゴルフ、土曜の朝、部長が迎えに来てくれる。来週の三連休は工場視察を兼ねて出張が入ったんだ」
「大変だけど仕事だもんね、ムリは身体と相談しながらにしてよ。私は気分転換で温泉にでも行ってこようかな」
「そうしてくれると気持ちの負担が少し軽くなる。束の間、仕事を忘れてリセットするのもいいんじゃないか」
「うん、そうする」
「ごちそうさま。先に行くよ」
「行ってらっしゃい」
浮気をしている現実を知った今でも顔も見たくないほど嫌いじゃない夫を笑顔で送り出した優子はスマホを手に取る。
「おはよう……彩の事が嫌いになった??」
「どうして??」
「電話で……恥ずかしくて言えない。ねぇ、嫌いになった??」
「なるわけがない。正直に言うとオレは夜の彩しか知らないけど、大好きだよ。昼間の彩も知りたいと思う……誤解しないでくれよ。彩の本名や住んでいる処、勤務先を知りたいというわけじゃない。セックスを離れた彩も素敵だろうなと思っているからだよ。この間も言っただろ、仕事着と言うかスーツ姿の彩は格好いいって、そう言うことだよ」
「ふ~ん、彩のすべてに惚れているんだ。そうなんだ。来週の三連休は会えるから楽しみにしている……それと、これはお願いなんだけど金曜に行ってもいい??」
「ほんとう??夕食を用意して待っているよ」
健志と二週連続で一緒に過ごせると決まったことで夫に対する感謝の念が浮かんだことに驚き、もしかすると栞よりも悪妻かもしれないと苦笑いを浮かべる。
「おはよう、栞」
「おはよう……んっ、何かいいことがあった??ウキウキしているし昨日の優子よりもきれいに見える」
「大きな声じゃ言えないけど、思いっきりオナニーをして子宮に残っていた澱みを流しちゃったの。ウフフッ、秘密だよ」
「えっ、ウソ。優子が朝一でそんな事を言うなんて、熱があるんじゃない??それとも欲求不満が昂じておかしくなったとか??」
「そうかもね……それより、課長を誘うって本当なの??」
「うん、旦那様が乱交プレイで滅茶苦茶にされるのを楽しみにしているんだもん。愛する旦那様の望みを叶えてあげるのが良き妻の務めでしょう??」
「ご主人よりも付き合いが長く、誰よりも栞の事を理解している積りの私の頭が痛くなりそう。ほどほどにね」
課長の送別会は火曜日と決まり、金曜日の仕事も無事に終わって優子と栞は顔を見合わせる。
「今日でしょう??」
「そうだよ。昨日なんか旦那様が昂奮して大変だったの。僕の栞がオモチャにされる、オマンコとアナルと口、三つの穴に汚いチンポをぶち込まれて善がり狂うんだろう。ちゃんと録音して来いよって言いながらチンポをビンビンに大きくして突きまくるの……もしかすると、オマンコが腫れているかもしれない、ウフフッ」
優子は栞の言葉に呆れ、書類に目を通している課長の如何にも紳士然とした仮面の下に隠されたもう一つの顔を想像して人間の持つ業の深さと自業自得という言葉が脳裏をよぎる。
優子も彩と名乗って不貞を働いている。
夫が浮気をしているから私もして良いということはないだろう。
健志との付き合いの報いが不幸なモノになるのか、幸せをもたらしてくれるのかは分からない。
将来は分からないけれど今は健志と過ごす時間が楽しいし待ち遠しい、何よりも健志と付き合い始めてから夫との関係にぎくしゃくしたところが無くなったような気がする。
書類から目を上げた課長は栞に向かって目配せし、それは栞以外では優子しか気付かなかっただろう。
「お先に失礼します」
優子は一礼して退社する。
栞の浮気を知ったご主人は不貞を責めるどころか、抱かれて悦ぶ喘ぎ声をボイスレコーダーに記録して来いと命じたと言う。
離婚を切り出されるのではないかと怯えていた栞はその話に易々と従って課長とのSMプレイを録音し、それを再生したご主人は嫉妬と寝取られ願望を露わにして縄模様が残るほど縛り上げて恥毛まで剃ってしまったらしい。
そんな話を聞いた優子は、ご主人と課長に責められて悲しむ様子もなく二人を巧みに操って自らの性的好奇心と欲望を満足させる栞を羨ましく思ってしまった。
優子は夫の浮気を知っても直接責めることもできず、鬱々と過ごしていたが性的に奔放な処のある栞に連れて行かれたSMショークラブを切っ掛けにして健志と知り合い彩と名乗って付き合っている。
栞を中心にして互いに知らないご主人と課長との性的遊戯を聞かされてモヤモヤした気持ちを持て余した優子は彩となって前日食事をしたばかりの健志に連絡した。
健志は突然の電話を嫌がる風もなくテレフォンセックスで彩の被虐心を刺激して満足させてくれた。
今朝の目覚めは何のわだかまりもなく爽やかに迎えることが出来た。
健志としばらく会っていないために知らず知らずに溜め込んでいた性的欲求不満を解消し、課長の転勤は寂しいものの新任課長も優子に期待していると聞かされて安堵した。
清々しい気持ちでベッドを離れてルーチンワークともいえるヨガをこなし、キッチンに立って朝食の用意が出来たタイミングで、
「おはよう、コーヒーの香りで目が覚めたよ。優子も仕事をしているのに、いつもありがとう」
「どうしたの??結婚して直ぐのころに言ったでしょう。愛する人の朝食を用意しながらどんな顔で起きてくるのかと想像するのが楽しいって、今も変わってないよ」
「そうか、そんな風に言ったよな、憶えているよ……ごめん」
夫は浮気を指してなのか、ごめんと言ってコーヒーを飲み苦渋に満ちた笑みを浮かべ、それを見た優子は自分の不貞は知られていないと確信する。
「美味しい。いつものコーヒーの味だ、ありがとう……こんな時に申し訳ないけど出張とゴルフの予定が入っちゃったんだよ。今週末は部長のお供で一泊ゴルフ、土曜の朝、部長が迎えに来てくれる。来週の三連休は工場視察を兼ねて出張が入ったんだ」
「大変だけど仕事だもんね、ムリは身体と相談しながらにしてよ。私は気分転換で温泉にでも行ってこようかな」
「そうしてくれると気持ちの負担が少し軽くなる。束の間、仕事を忘れてリセットするのもいいんじゃないか」
「うん、そうする」
「ごちそうさま。先に行くよ」
「行ってらっしゃい」
浮気をしている現実を知った今でも顔も見たくないほど嫌いじゃない夫を笑顔で送り出した優子はスマホを手に取る。
「おはよう……彩の事が嫌いになった??」
「どうして??」
「電話で……恥ずかしくて言えない。ねぇ、嫌いになった??」
「なるわけがない。正直に言うとオレは夜の彩しか知らないけど、大好きだよ。昼間の彩も知りたいと思う……誤解しないでくれよ。彩の本名や住んでいる処、勤務先を知りたいというわけじゃない。セックスを離れた彩も素敵だろうなと思っているからだよ。この間も言っただろ、仕事着と言うかスーツ姿の彩は格好いいって、そう言うことだよ」
「ふ~ん、彩のすべてに惚れているんだ。そうなんだ。来週の三連休は会えるから楽しみにしている……それと、これはお願いなんだけど金曜に行ってもいい??」
「ほんとう??夕食を用意して待っているよ」
健志と二週連続で一緒に過ごせると決まったことで夫に対する感謝の念が浮かんだことに驚き、もしかすると栞よりも悪妻かもしれないと苦笑いを浮かべる。
「おはよう、栞」
「おはよう……んっ、何かいいことがあった??ウキウキしているし昨日の優子よりもきれいに見える」
「大きな声じゃ言えないけど、思いっきりオナニーをして子宮に残っていた澱みを流しちゃったの。ウフフッ、秘密だよ」
「えっ、ウソ。優子が朝一でそんな事を言うなんて、熱があるんじゃない??それとも欲求不満が昂じておかしくなったとか??」
「そうかもね……それより、課長を誘うって本当なの??」
「うん、旦那様が乱交プレイで滅茶苦茶にされるのを楽しみにしているんだもん。愛する旦那様の望みを叶えてあげるのが良き妻の務めでしょう??」
「ご主人よりも付き合いが長く、誰よりも栞の事を理解している積りの私の頭が痛くなりそう。ほどほどにね」
課長の送別会は火曜日と決まり、金曜日の仕事も無事に終わって優子と栞は顔を見合わせる。
「今日でしょう??」
「そうだよ。昨日なんか旦那様が昂奮して大変だったの。僕の栞がオモチャにされる、オマンコとアナルと口、三つの穴に汚いチンポをぶち込まれて善がり狂うんだろう。ちゃんと録音して来いよって言いながらチンポをビンビンに大きくして突きまくるの……もしかすると、オマンコが腫れているかもしれない、ウフフッ」
優子は栞の言葉に呆れ、書類に目を通している課長の如何にも紳士然とした仮面の下に隠されたもう一つの顔を想像して人間の持つ業の深さと自業自得という言葉が脳裏をよぎる。
優子も彩と名乗って不貞を働いている。
夫が浮気をしているから私もして良いということはないだろう。
健志との付き合いの報いが不幸なモノになるのか、幸せをもたらしてくれるのかは分からない。
将来は分からないけれど今は健志と過ごす時間が楽しいし待ち遠しい、何よりも健志と付き合い始めてから夫との関係にぎくしゃくしたところが無くなったような気がする。
書類から目を上げた課長は栞に向かって目配せし、それは栞以外では優子しか気付かなかっただろう。
「お先に失礼します」
優子は一礼して退社する。