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彩―隠し事 104 

期待 -17  

「おはよう」
優子は健志に抱かれる夢を見ながら栞の身体をまさぐり、栞は優子に話しそびれた夫の責めを夢の中でたどりながら朝を迎えた。
「おはよう……スッキリしたのかしないのか何だか怠い」
「栞もそうなの??私もスッキリしない」
「クククッ、私がスッキリしないのは優子が私の身体を撫でまわすから昂奮して眠れなかった。優子はオチンポに飢えているから夢の中の本当の自分と現実の自分とのギャップを感じているからだろうね……性能の好いオチンポ男子を紹介しようか??」
「言ったでしょう。私はチンチンに飢えていない、だから必要ないの」
「ふ~ん、浮気相手がいるのか、それとも独り寝の友達はバイブなのか、それが問題だ」
「もう、怒るよ。それより出勤の準備をしなきゃ。シャワーを使うでしょう??お先にどうぞ」

出勤準備が整うと昨夜の優子と栞ではなく、仕事に臨むに相応しくキリッとする。
出勤後の優子は余計な事を考えないようにと意識して栞と課長から目を逸らす。
仕事の途中でふと顔を上げると書類を読み、PCに見入る課長が目に入り視線は自然と栞を追ってしまう。
栞は何事もなかったかのように仕事に集中しているようで、夫に気付かれたとはいえ浮気をするには精神的強さが必要なのかと苦笑いが浮かぶ。
「なに??どうしたの??私の顔に何か付いている??」
「えっ、ごめん。仕事に集中している栞ってカッコいいなと思って見惚れていた」
「クククッ、怪しいけど信じることにする」
栞と課長の痴態を妄想して二人に視線を移す回数が多くなったことに気付いた優子は席を離れて廊下に出る。
周囲に誰もいない事を確かめてスマホが示す健志の名前を見つめて躊躇する。
「ダメだ、我慢はよくない」独り言ちた優子はスマホをプッシュする。

「もしもし、お久しぶりです。少し話せる??」
「大丈夫だよ、どうした??」
「連絡しなかったから怒ってる??」
「怒っちゃいないさ。忘れられたか、それとも振られたかと思って元気をなくしてたけどね」
「ほんとう??……そんなことないよね。でもそう言ってもらうと冗談でも嬉しい。彩のわがままでご無沙汰だけど声を聞きたくなったの、迷惑??」
「迷惑なんてことはないさ。それに二人の関係は彩の気持ちを優先するって最初に決めただろう、何も気にすることないし、連絡はいつでも大歓迎だよ」
「ウフフッ、よかった、電話して」
「オレからのお願いだけど一時間でいいから時間をくれないか??食事しようよ」
「うん、いいよ。面倒だけど待ち合わせは、あなたと私の中間の駅でもいい??」
「そうだね、帰りの時刻や人目を避けるにはいいね。連絡を待っているよ」
「ありがとう。電話してよかった、後で場所と時刻をメールするね」
「それじゃ、楽しみにしているよ」
独身の健志は誰と食事をしても何も問題ないのに、待ち合わせ場所も夫がいる優子を慮ってくれるのが嬉しい。
健志と食事をする約束を取り付けた彩はモヤモヤした気持ちを吹っ切って仕事に集中する。

「優子、ごめんね。昨晩の話の続きは今度にしてね、今日は旦那様と待ち合わせをしているから付き合えないの」
「そうなんだ、ザンネン。ご主人としばらくお会いしてないけど、よろしく言っといてね」
栞に気付かれずに待ち合わせ場所に行く算段をしていた優子は安堵の気持ちを封じ込んで、いかにも残念という表情を作る。
栞を気にする必要がなくなった優子は待ち合わせ場所と時刻を連絡し、終業まで何の憂いもなく仕事に没頭する。

「お疲れさま、先に帰るね。明日の昼食は静かな場所が好いと思わない、場所は私に任せてくれるでしょう??いいでしょう??」
意味深長な言葉を残して栞は席を立ち、課長に向かって一礼して颯爽と部屋を出る。
一段落した優子も席を立って課長や席にいる同僚に挨拶し、化粧室で身支度を確かめて待ち合わせ場所に向かう。
連絡を絶やしたことを詰られる事はないだろうが、どう言い訳をしようかと考えるうち目的の駅に着いた。

「今日は誘ってくれてありがとう」
「やっぱ、カッコいいな。ビジネススーツが似合っている。スポーツでも仕事でも制服が似合うってのがその道で一流の条件だと思っているから彩は間違いなく出来る女性だろうな……何を食べようか??時間が限られているからグズグズできないだろう」
連絡しなかったことの言い訳をする暇も与えず彩の腰に手を添えたのは、そんな事を言う必要ないという意思表示なのか、単にエスコートするためなのか知る由もないが健志との食事が楽しい時間になる予感で心が弾む。

他人が仲を羨むほどだった頃に夫と食べた個室居酒屋を想い出した彩は健志を誘う。
久しぶりの食事でぎこちなかった二人も美味い料理を口にすると気持ちも穏やかになる。
「ごめんね、仕事が忙しかった事もあるけど少し考える時間も必要だったの。知り合う切っ掛けがあの店だったでしょう……」
SMショーを見せる秘密クラブで出会った付き合いをこのまま続けて好いものかどうかを考える時間や夫との関係を考える時間が欲しかった。
与えられた仕事に集中し、夫との将来を考える中で健志との付き合いに自分なりの結論を得るに至った。

「いろいろ考えたんだけど、健志が嫌じゃなかったら今の関係を続けたい。以前の私だと口にするはずもなかった、セフレって関係もいいかなって……」
自分にも他人にも厳しく考える優子は夫の浮気を知り深く傷ついた。
健志と出会って自分も不倫という立場に身を置くと夫に対して優しく接することが出来た。それは自分もしているから夫の浮気もしょうがないという諦めではなく、夫婦とは言え別人格だと思えるようになったからだ。
好きで一緒になった夫を今でも愛している。
全てを許せるわけではないが、これからも焦らずゆっくりと時間が経過する中で雪が解けるように自然解ける昔に戻るのがいいと思っている。
優子として夫を愛し仕事に集中する。健志と過ごす時間は心と身体の奥に秘かに隠れ棲んでいた彩として正直に生きる。

「来週末に三連休があるでしょう。夫の浮気ムシがそろそろ蠢きだす頃だと思うの、どこか遠くに行きたい……ダメ??」
「いいよ、彩と一緒なら楽しい時間を過ごせそうだ。連絡を待っているよ」
「うん、待っていて。その時にスゴイことを教えてあげる学生時代からの親友なんだけど性的に奔放で想像もできないような経験をしたんだって」
「ふ~ん、それも楽しみにしているよ……今日はありがとう。楽しかったよ」
「彩も楽しかった。ありがとう」
電車に乗った彩に手を振る健志に最後まで夫と食事をした店だとは言わずに別れた。
健志と新たな経験が出来そうだと期待で気持ちが昂ぶり自然と笑みが浮かぶ。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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