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彩―隠し事 13

岐路    

日曜日に帰宅した夫は接待ゴルフと称して二泊の不倫旅行の後ろめたさがあるのか、お土産は勿論の事、優子に対する言葉遣いや態度もいつもと違って仲の良かった頃に戻ったような優しさがある。
夫が明日以降も今と同じように接してくれればセックスがなくても二度と健志に会う事はないだろうと一縷の望みに期待する。

前夜の夫は昔と同じく優しかったし優子も健志と疚しい行いをしたことでもあり、月曜日は早起きをして心を込めた朝食を用意すると、今日は早く帰れると思うけど、外で会わないかと誘ってくれる。
不倫する夫と離婚を考えたこともあったが、今はそのようなことを全く思っていない。
何より、離婚というのは一大事業でこれほど面倒な事はないと言った友人の言葉を思い出し、惚れて一緒になった男、未練もあったし面倒な作業は一時棚上げすることにした。
優しさが一時の事で不倫を続けるようなら、結婚生活を続けるけれど私は私の幸せや楽しみ方を探せばいいと割り切ることにする。

月曜の出勤前、夫とデートすることを約束して待ち合わせ時刻は改めて確かめる事にする。
夫を見送った優子はノーパンのスカートスーツは止めて、いつものパンツスーツで出社すると仲のいい友人が、
「優子がどう思っているか分からないけど、パンツスーツの方が似合っている。活動的で男性に伍しても負けない出来る女に相応しい装いだよ・・・男を誘う時はスカートの方がいいけどね。金曜はすごく色っぽかったけど何かあった??」
「あるわけないよ・・・そんな事より仕事、仕事」

夫と待ち合わせての食事は二人とも隠し事を抱えていることでささやかな緊張感が漂い、不満や不安を口にするまいと決めているので新鮮な感じさえして穏やかな時間を過ごすことが出来た。
能弁とは言えないものの、これまでのぎくしゃくした関係にわずかな変化が出たことを夫は戸惑っているように見えたが、改めてお土産のお礼を口にすると納得したようだ。
付かず離れず、この緊張感は優子にとって心地良く、密かに隠れている彩が姿を現して秘めた想いを発散させる口実にもなるので都合がいい。
そんな優子の思いを知る由もない夫は上機嫌で久しぶりにカクテルを飲もうと誘う。
翌日は火曜日でもあり早めに切り上げ、帰宅後は互いの部屋に別れたがこれまでのような苛立ちは微塵も起こることがない。

週末まで仕事も夫との関係も含めて何事もなく時を刻み、これまでよりも互いを思いやる気持ちが強くなったと思うものの、距離が縮まる事はなく付かず離れずの関係が続く。
夫は二週続けて週末に出かける事はなく一つ屋根の下で淡々と過ぎ行く時間を穏やかに過ごす。

何事もなさそうに過ごしていた夫だったが、火曜日の出勤前、
「今日は遅くなるかもしれない」と視線を泳がせた。
「そうなの??大変ね、気をつけてね。夕食は??」
「多分食べてくると思う。ごめんね」
「うぅうん、仕事じゃしょうがない。私も働いているからよく分かるよ」
浮気を秘密にする大変さは私にも少しだけど分かるよ、と言いたくなるのを堪えて笑顔で送り出す。
恐らくは二泊の不倫旅行で盛り上がった二人が翌週を何事もなく過ごしたことでフラストレーションをため込み、どちらからともなく誘って平日のデートに至ったのではないかと想像する。
今のところは抑え込んでいるものの、彩が姿を現すことになっても夫の注意が不倫相手に向き、優子の行動を見るのが散漫になり悪い話ではないと思う。

夫とのセックスは勿論の事、10日近くも健志との淫猥遊びを思い出すことを恐れてオナニーを控えていた優子は、不倫相手とのデートを想像させる夫の言葉に刺激されて、久しぶりにスカートスーツで出勤することにする。
キャミソールを合わせて、前回と同じようにガーターベルトでストッキングを留めて姿見にスーツを着る前の姿を映してみると、ノーパンのせいもあってウェストの括れから腰を経て太腿に続くラインが強調されて艶めかしく、私は何を考えているんだろう、彩が姿を現すのを待っているのかなと思わずにいられない。

鏡の中の健康的な女性らしく適度な丸みを帯びた姿は密かな自慢でもあり、健志の言葉が蘇る。
重苦しく感じないようにシャギーを入れた髪や悪戯心を宿した瞳と意志の強さを示す顎のライン。水泳などマリンスポーツを好む証拠のような上半身、ウェストの括れから腰を経て太腿に続くムッチリとしたライン、後ろ姿も凛として格好いい。オレが一目惚れする要素を形にすれば、彩がそれだよ。
どちらかと言えば太りやすい体質だと思うけど、それはヨガやバスソルトを愛用するバスタイムで自制心を働かせている。
「ウフフッ・・・なかなかのものだよ、優子。あなたの分身、彩が優子の素晴らしさに改めて気付かせてくれた」
仕事やほとんどの人間関係などは優子、成人した人間にとって重要なセックスライフは彩。許される範囲で二人を自在に使い分けようと心に決める。
先日と違って下着を穿くもののスカートスーツで出勤するのは決意の証。

「どうしたの、優子。昨日は淑やかで優雅なパンツスーツで今日は男を求めてアソコを濡らすスカート姿」
「えっ、バカな事を言わないで・・・クククッ、下着を穿いてないから昂奮すると滴る蜜が腿を伝って気持ち悪~い」
「キャハハッ、優子のエロイ冗談は久しぶり・・・男が見つかんない時は私がホテルに付き合ってあげようか??女同士もいいかもよ、優子と一緒ならうちの亭主は許してくれるだろうし・・・ベロベロ、ジュルジュル舐めてあげるよ」
「今日、会う予定の男がダメな時はお願いしようかな・・・舐めるだけじゃダメ、満足できない。クリもいいけど、最後は中でしっかり決めてくれないと」
「まさか??・・・ほんとうなの??男ってご主人じゃないでしょう??優子も??・・・そうなの??浮気してるの??」
「そんなわけないよ。私にそんなことが出来ると思う??」
「そうか、そうだよね、安心した・・・いつか二人で旅行したいと思わない??」
「いいね、約束だよ。忘れたら怒るよ」
いつか、優子と彩を自在に操れるようになれば、女二人のエッチな旅行をするのもいいかなと思う。

「もしもし、私の事が分かる??」
「分かるよ。今日か明日かって一日千秋の思いで連絡を待っていたよ」
「この間のホテルのロビーにいるんだけど、今日はあまり時間がないの」
「分かった、10分ほどで行くよ」
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ちっち

Author:ちっち
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