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不倫 ~immorality~

想いを巡らす 13

「イチゴがあるという事は、シャンパンは・・・そうなの??」
健はワインクーラーに戻したボトルを手に取って彩に示し、
「そうだよ。映画プリティウーマンでジュリアロバーツがイチゴと共に飲んだモエエシャンドンだよ。モエエシャンドン・ブリュットアンぺリアル。ジュリアロバーツよりも彩の方が似合うシャンパンだよ・・・もう一度、乾杯」
顔の前でグラスを捧げた健は、一瞬眉を吊り上げて口元を緩める。
「ジュリアロバーツと比べられて・・・ウフフッ、信じる。健にとっては彼女よりも彩がタイプなんでしょう??二人の内どちらをベッドルームに誘うかって言うと彩だって知ってるよ」
「うん、間違いない」
「イチゴとシャンパン、バラの花が一輪。もう一度言うね、ありがとう・・・バラの花言葉って、愛に関係あるよね??」
「花屋さんで聞いたんだけど赤いバラの花言葉は、あなたを愛します、だって。受け取ってくれる??」
「待っていたんだもん、喜んで。一輪って言うのが好いね・・・お礼は、これで」
頬にチュッと唇を押しあてて、見る者を幸せな気分にさせる笑みを浮かべる。

健は港が見える位置に座り、彩は港を背にするソファに座ってイチゴを味わいシャンパンの香りを楽しむ。
埠頭に停泊する船の窓から洩れる明かりがきらびやかに輝き、その先には真っ黒な海が広がり、そのまた先にはベイブリッジや高速道路の街路灯がそこを通る人が迷わないように道標となっているように思える。

船の窓から洩れる明かりが不倫の二人を照らすものの、好奇心に誘われて知らない道を歩くと真っ暗な海に迷い堕ちることを暗示しているのかと思う。
闇夜の中の二人は、船から洩れる明かりで足元を照らし、遠くに見える明かりを頼りに歩いて行けば、やがて街路灯が明るく照らすベイブリッジに行きつき、無事、向こう岸に渡る姿を想像して安堵する。
「どうしたの??何か心配事でもあるの??」
「なんでもないよ、彩の目にはそんな風に見えたのか・・・埠頭やそこに停泊する船の灯り、ベイブリッジのイルミネーションや高速道路の街路灯。明かりが周囲を囲っているのに、海は底なしの闇のように真っ暗だろ。何かを象徴しているのかなぁって想像した」
「で、答えが判ったの??」
「分からない・・・」
「そう、それならいい・・・彩の場所からは海が見えないからつまんない」
「気付かなかった、場所を替わろうか」
「健はそこにいて良いよ。彩がそっちに行くから」
健の足を跨いで座った彩は、邪気のない笑顔で覗き込む。

「イチゴが食べたい・・・あぁ~ん・・・ウフフッ、美味しい。今度はシャンパン」
フルートグラスを彩の口に近付けると、
「どうして??口移しでしょ・・・そうか、口移しじゃシャンパンの良さがなくなっちゃうね。ざんねん・・・」
一度満足した身体は気持ちにも余裕を与え、屈託なくじゃれ合うことが出来る。

「彩は海が好きだろ、今まで見た中でどこが一番良かった??」
「沖縄・・・青い海、海には色とりどりの魚。青い空に真っ白な雲。真っ赤なハイビスカス、黄色、オレンジ、原色があんなに似合う場所は他にないよ・・・彩は行動も発言も慎重な方だけど沖縄では、普段の彩ではなく別の彩になったような気がする・・・おかしい??」
「おかしくないよ。沖縄に行った事はないけど分かる気がする。オレが生まれた県は、北に日本海、南に瀬戸内海があるんだけど、海の色が違うんだよな、同じブルーでも。南の海は青くて北の海は蒼いって印象がある。どっちが好いって言うんじゃなく、その時の印象だけどね」
「うん、分かる。彩は泳いだりダイビングしたりが目的だから、青い開放的な沖縄の海が好いんだけど、何か考えたいときは北の海の方が良いかもしれない」
「クククッ、冬の北の海で独り佇む彩を想像しちゃったよ。空には大きな鳥が円を描いて滑空し、コートの襟を立てた彩が蒼い海の彼方を見つめる・・・そそられるね」
「うん??なんか、いやらしい想像してるでしょう??・・・その場にいても、襲わないでよ」
「冬の海辺に一人でいる彩を想像した事はないけど、彩と一つ屋根の下に住んでる生活を想像したことあるよ」
「本当に??聞きたい、ねぇ、聞かせて・・・エッチな妄想を聞きたいな。ウ~ンとね、土曜日から日曜まで、休みの日にどうするか聞かせて」
「彩と一緒に住んだら、こんな生活になるんだろうなって想像の話・・・いいよ、聞かせてあげる」

土曜日の朝。
カーテンが風に揺れ、その隙間から忍び込む陽光が彩の顔をくすぐる。
うんっ??・・・前夜の激しいセックスの余韻を残す身体を横たえたまま彩が窓に視線をやると、
「ごめん、起こしちゃった・・・もうすぐ朝食の準備が出来るよ」
「うん、起きようかな・・・起きようかな。彩も起きようかな」
クククッ・・・面白そうに彩を見つめる健は満面に笑みを浮かべて、額にチュッと唇を合わせる。
「ダメッ、それじゃ目が覚めない・・・彩の好きなモーニングキスは、そんなじゃない。嫌いになっちゃうよ」
口元は緩めたままで、しょうがないと呟き、唇を合わせて、おはようと囁くと、おはようと言葉を返して身体を起こす。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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