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彩―隠し事 437

変転-15

何かを避けようとするかのように不必要なほどの大音量でFMラジオを点けた健志はいつものように彩の横顔を見ることもなく正面を向いたまま運転に集中する。
「離婚するの。振られちゃった、相手の女性が妊娠しちゃったんだって……今ある財産は全て譲るから別れてくれだって。バカにするんじゃないと思ったので、何もいらない。いずれ生まれてくる子供のためにも必要だろうって言ったの。そうしたら、ローンの残債があるけどこのマンションを残して行くって、借金を残してくれたの……笑っちゃうでしょう??」
流れる音楽に負けないように大声を張り上げる彩を見つめて、音量を絞った健志は、
「笑えない。強がりを言わなくてもいいよ。泣きたくなればオレの胸を貸す。オレは彩の味方だよ……それと、オレは過去の記憶も想い出も一緒に彩を受け止める積りだ。だから強がることはない」
「それって、彩のことを嫌いにならないってことだよね。今まで通りに付き合ってくれるんだよね、そうでしょう??」
「正確には今まで以上に彩のことを愛するよ。彩のことを愛しても言い訳をする必要がなくなるんだろう……ごめん、オレにとって不幸なことじゃないから有頂天になり過ぎた。彩の気持ちを考えずに……ゴメン」
「ウフフッ、ありがとう。セックスライフも仕事でも健志は大切なパートナー。健志が守ってくれるから左右も後ろも気にせずに前だけを見て進むことが出来る」
「そうだ、それでいい。オレを信じろ……優子」
「えっ、これからは、彩じゃなくて優子なの??」
「これからはコソコソする必要はないだろう??もちろん、優子次第だけど。まぁ、エロイ妄想に取りつかれた時は彩と名乗る方が良いかもしれないな」
「ありがとう、健志がいてくれるから彩、じゃなかった、クククッ、優子は何があっても前を向いていられる……で、相談なんだけど、あの部屋には住みたくない。何処か住める場所を知らない??」
「そうだなぁ、少し狭いけど次が見つかるまでオレの処に居ればいいよ」
「……次が見つかるまでなの??期限付きなのね……」
「なるべく早く二人が住む部屋を探すよ。優子の専用部屋がなきゃ仕事に差し支えるだろう」
「今は独りになりたくないから専用の部屋なんて欲しくない。健志が見える場所に居たい」
「クククッ、嬉しいことを言ってくれるな…食事はまだだろう??途中で食べるか、真っすぐ帰るか、どうする??」
「帰る、用意してくれているでしょう??」
「おう、帰ってこないことも考えてビーフシチューを用意してある。二人で一日三食、二日は食べられるよ」
「仕事があるから朝と夜はともかく昼は必要ないよ……でも、嬉しい。健志が守ってくれるんだもん。食事付きでね……」

健志の部屋に戻った二人は夕食を済ませ、落ち着きを取り戻した優子がこれからどうするかを話し合う。

ここで暮らすことに決めたから今まで住んでいたマンションは売りに出すと優子は言い、健志は、案はあるけど分かったと応じる。
今日は水曜日なので、土曜日に身の回りの品物を運び、夫との想い出に関わる家具などは何れ売却することにする。
当面、不便を感じそうにないこの部屋に住みながら、もう少し広い家を探すことにする。
後は追い追いに処理すればいいと決めた二人は、世間のしがらみや道徳感から解放された悦びで瞳に淫蕩な光を宿す。

バスタブで足を伸ばす健志の腿を跨いで背中を預ける優子は、
「こんな風にするのはもう少し時間が掛かると思っていた……」
「……そうか、最期はともかく、それだけ幸せな時を過ごしていたってことだよ。それも、優子には大切な時間だった。忘れようとしなくてもいいよ……これまでのいろんな経験や付き合いで今の優子がいる。大切な節目の一つ一つで違う選択をしていれば優子の人生は全く別のモノになっていたかもしれない。そうすればオレは優子に会うことがなかっただろう。優子の想い出一つ一つがオレにとっても大切なモノなんだよ…尤も、そんなことは聞きたくもないし知りたくもないけどね。オレの本心だ、信じてくれるだろう??」
「うん、ありがとう……最後に一度だけ、訣別の意味を込めて口にさせてね。別れることになった彼が浮気をしなければ健志に会うことがなかったかもしれない。好いことも悪いことも、今までの経験のすべてが健志に巡り会うために必要だったのだと思う……スッキリした、ありがとう」

左手で彩を抱えるようにして右乳房を包み込み、右手を下腹部に伸ばして優しく擦る。
「イヤンッ、気持ち善くなっちゃう。今日は何も考えられないほど気持ち善くなりたい。健志だけを感じていたい」

汗と共に気持ちの奥に横たわる澱のようなモノを洗い流した二人は憂いを残すことなくスッキリした表情で浴室を後にする。
タオルを肌に巻いた優子をベッドに寝かせた健志は乱れ髪に手櫛を入れて頬に手を添え優しく微笑む。
「愛しているよ、優子。いつまでもオレと一緒にいてくれよ」
「離れてあげないから……大好きなんだもん」
「可愛いなぁ、オレの優子」
「ウフフッ、もう一度言って……はやく」
「オレの優子。頭の天辺から足の先までぜ~んぶ、オレのモノだよ」
言い終えた健志がタオルを剥がすと、いや~ンと可愛い声を漏らして身体をひねり、仰向けから俯せになって両手で胸を抱え込む。
「クククッ、可愛いなぁ……優子の顔とオッパイを見せてくれるだろう??」
「いやっ、恥ずかしいんだもん……無理やり力尽くで優子を思い通りにしちゃうの??」
「優子に乱暴なことはしないよ。いつまで、そうしていられるかな??北風と太陽の話を知っているだろう??」

健志を信じていても前日の想像もしていない唐突な話が棘のように刺さっている状況では全てを曝け出して素直になることが出来ず、そんな優子に降りかかる嵐のような試練を太陽の温かさと優しさで包み込もうとする健志は寝室の灯りを消してフットライトだけを残す。

首から肩に沿って指を這わせ、わき腹を腰まで撫で下りると優子の白い肌がブルッと震え、ウッと艶めかしい吐息を漏らして緊張を解く。
「ウッ……ウッ、クゥッ~、気持ちいぃ……健志が好き」
「オレも優子が大好きだ。お顔を見せてくれるだろう……」
「恥ずかしいんだもん、イヤッ……見せたくなるほど気持ち善くしてくれるんでしょう、太陽さん」
「クククッ、可愛いなぁ……」
健志の左手が優子の左手を握り、右手指が触れるか触れないかの繊細なタッチで背中を這い回り、顔を近付けてフゥッ~と髪の生え際に息を吹きかけるとキュッと力を込めて閉じていた尻が弛緩し、わずかに顔をのぞかせた茶色の窄まりさえもが愛おしい

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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