獣欲 -8
「タケ、今日はいつもよりも興奮するのが早いよ。勃起ボキ、彩さんが一緒だからなの??妬ける……硬いし熱い、こんなので突かれたらサクラの花弁は直ぐに散っちゃいそう」
「花の命は短くて、気持ち好いことのみ多かりき……満開のサクラは華やかで優美、散り際の潔さとはかなさ、美しい花は華麗に散る……だろ」
「苦しきことのみ多かりきよりも、気持ち好いことがいいけど……彩さんに真実を伝えてないでしょう??」
「ねぇ、健志、何を言っているの。どういうことなの??」
「言わなかったかなぁ。此処はエステや整体の他にそういうサービスもしてくれる店だよ。オレはサクラの花を散らす。その後で彩がアキラに可愛がってもらうところを見てあげるから安心していいよ」
「うそ、そんなことは聞いてないよ。困る……」
「僕じゃ不満ですか。交代は可能です。タケさんの指名なので指名替えを躊躇する必要はありません」
「いえ、そんなこと……誤解されるようなことを口にして、ごめんなさい」
自分の言葉が何を意味するか承知している彩は湧き上がる羞恥心で頬を桜色に染める。
彩の言葉で遠慮は無用とばかりに新たなローションを胸の谷間に垂らし、下腹部に向かって塗り広げていく。
ニュルニュル、グチュグチュッ……ウッウッ、クゥッ~、気持ちいい……手の平が肌を滑る感触に酔い、オリエンタルノートとは違う仄かに漂うローションの香りが緊張を解してくれる。
「彩さん、僕の言う通りにしてください。いいですか、息を吸って、吐いて。もう一度吸って、吐いて……好い感じです。緊張が解けたように感じます……何も考えず僕の手や指先に神経を集中してください。しばらくすると手や指が触れるのを感じなくなると思います」
腹部を這い回った手の平は脇腹を撫で上がり、乳房を麓から頂上まで揉みしだいて先端の突起を指の腹が弾く。
ローション効果とアキラの巧みな技で滑らかに動く手は彩の性感を呼び覚まし、秘めやかな悦びの声が間断なく漏れ始める。
「ウッウッ、イヤッ、どうして……アウッ、クゥッ~、たまんない……」
ヌチャヌチャ、クチュクチュ……ローションにまみれたアキラの手が柔肌をすべる音と静かなピアノ曲、密やかな喘ぎ声が見事なハーモニーを奏でてアキラと健志の股間をくすぐり、そんな様子に嫉妬するサクラは健志の怒張をパクリと頬張る。
グチュグチュ、ジュルジュルッ……激しく顔を上下するサクラはフェラチオを続けたまま施術着を脱ぎ下着姿になってしまう。
「サクラ、今日は激しいな。我慢できなくなっちゃうよ」
「ダメ、我慢しなさい。今日の私は激しいの、彩さんのように魅力的な女性と来るんだもん。妬けちゃう」
「よせよ、彩が本気にしたらどうしてくれるんだよ」
「彩さんに捨てられたら……そうね、その時は私が客と施術師との関係から恋人になってあげてもいいわよ」
「よしてくれ、サクラの言葉は冗談に聞こえないよ」
「冗談だと思っているの??タケは甘いね……アキラ、彩さんは任せたわよ」
「了解、彩さんは僕のタイプです。一見清楚で本当は淫乱、嬉し啼きさせて差し上げます」
「分かった、頑張りなさい。アキラ、始めるわよ」
ブラジャーを剥ぎ取られてペーパーショーツだけを着けた彩はローションまみれの上半身を這いまわるアキラの手で羽化登仙の境地に導かれる。
「ウッウッ、ウゥッ~、ダメッ……イヤァ~ン、気持ちいぃ、身体が熱いの……」
「我慢しちゃだめだよ、彩さん。考えちゃダメ、感じるまま身体も気持ちも解き放って自由になりなさい」
健志の手は脇腹を撫でて下腹部を擦り、彩の表情に喜悦が浮かぶと胸の膨らみを揉みしだく。
「イヤンッ、オッパイが気持ちいい。やめて、これ以上されると……ダメッ」
「彩さん、ダメなことなんてないよ。身体も気持ちも自由になるんだよ、余計なことを考えちゃダメだ……タケさんを見てごらん」
固く握っていた手から力を抜きアキラの言う通り健志を見た彩は、ゴクッと唾を飲み、身体の芯が熱くなり疼くような快感を一瞬とはいえ忘れてしまう。
施術着を脱ぎ捨てて何の飾りもない白い下着姿になったサクラは健志の股間で屹立する怒張を咥えて顔を上下し、自らの股間に指を伸ばしてクチュクチュと音を立てて掻きまわしている……ジュルジュル、ジュボジュボッ……
「ねぇ、気持ちいい??エステの学校に通ったけど私はこっちが得意、知っているでしょう??……」
「あぁ、気持ちいいよ。上になって入れてくれよ、サクラが善がる表情を見たい」
「クククッ、彩さんにタケの善がり声を聞かせてあげるように頑張っちゃおうかな」
施術台に乗ったサクラは健志の顔を跨いで腰を落とす。
「脱がせてくれるでしょう??」
中腰になったサクラが股間を突き出すと上半身を起こした健志はショーツを咥えて引っ張り、脱がせてしまう。
「アンッ、いやらしい。パンツを脱がされちゃった……彩さん、見ちゃいや、見ないで、恥ずかしい」
施術着姿のサクラはスタイルの良さに嫉妬するほどだったが、露わになった股間に彩は言葉を失う。
「びっくりしたでしょう??」
「えっ、いいえ……はいっ、ごめんなさい」
「ウフフッ、恥ずかしい。温泉の大浴場が好きなんだけどこれじゃぁね……あからさまに指さされことはないけど、ひそひそ話は私が話題になっているのかなんて考えちゃうし……な~んてね。ウソだよ、目立ってなんぼだから」
剛毛に指を添えて健志に突き出し、清楚な印象のある桜の花とは言い難い陰毛を掻き分けて濡れそぼつ真っ赤な花弁に舌を伸ばす。
獣欲 -7
いかがわしい看板が並ぶ通りには踏み込まず、そこに向かう欲望に満ちた人々の間をすり抜けて瀟洒な三階建ての建物に入りエレベーターに乗る。
館内案内板に書かれているのは会員制のレストランやバーがほとんどで、最上階に目的の店らしいマッサージと書かれた店が入っている。
三階で降りた健志は軽くキスをして、ここだよと指さすドアに“会員制・マッサージパーラー”と書かれたシルバーの看板があり、ノックするとドアが開けられる。
「ご予約ありがとうございます、お待ちしていました。ご案内いたします」
桜の花を連想させる可憐な淡いピンクの施術着で迎えてくれた女性の後姿は同性の彩が見ても羨ましくなるほどスタイルがよく、腰から太腿にかけて健志が好みそうな張りもあり無意識のうちに嫉妬心が沸き上がる。
「こちらの部屋を用意いたしました。お入りください」
女性の指示に従い入った部屋は人の表情が分かる程度の明るさしかなくオリエンタルノートの妖艶な香りが漂い、静かにピアノ曲が流れて二つ並んだ施術台の向こうに男性が一人立っている。
バタン……ハァハァッ、フゥッ~……女性がドアを閉めると訳もなく彩の動悸が激しくなって自然と息が荒くなり、落ち着こうとして目を閉じフゥッ~と息を吐く。
そんな彩を気にする様子もなく案内してくれた女性が、
「本日のご利用、ありがとうございます。お相手は、アキラと私、サクラが務めさせていただきます」
「えっ……」男性施術師がアキラと紹介されると一週間前の浜辺でのアキラ君とのことを思い出して思わず声を漏らしてしまう。
「どうかしましたか??」
「ごめんなさい。アキラさんとおっしゃる名が知り合いと同じなものですから、つい」
「そうでしたか。アキラさん、こんなに魅力的な女性のお知り合いと同じ名前だって、よかったね……まずはシャワーで汗を流してください。シャワーは血行を良くするのでマッサージの効果を高めます。シャワーを終えたら用意してある施術着に着替えてください」
今日は何度目のシャワーだろうと指を折り、汗を流した彩は用意された施術着を手に取り顔を曇らせる。
「ペーパーショーツなんだ……ブラもペーパーで紐止め。破けたりしない??」
「耐水性、耐久性は十分だと思うよ。それより、誰が使ったか分からない使いまわしの下着と使い捨てのペーパー下着、使い捨ての方がいいだろう??」
「うん、そうだね。紐止めだからサイズを気にしなくてもいいしね。ウフフッ、彩のムッチリオチリにもサイズをぴったり合わせられる」
ペーパーショーツとブラジャーを着けてガウンをまとった彩は、同じように使い捨てパンツを穿いた健志の股間に手を伸ばし、
「帰ったら満足させてね。銀細工師さんには申し訳ないけど、身体中をまさぐられて興奮の高みにいたのに止めてって逃げ出しちゃったから……」
「火曜から昨日まで仕事を頑張っただろうに彩は元気だな」
「仕事や家事は本当の私に任せているの。彩は本当の私の心の奥に棲みつく妖しい思いを満足させるのが仕事……知っているでしょう??」
「そうだった。魅力的な彩を見ていると、つい現実を忘れそうになる。戻ろうか」
薄明りだった施術室の明かりは全て消されて何か所かにローソクが灯され、妖艶な香りが漂う部屋は一層艶めかしい雰囲気に包まれている。
「お名前をお聞きしてよろしいですか??」
彩に問いかける落ち着いたサクラの声もこの部屋の雰囲気に相応しく気持ちの奥にまで優しく届く。
「彩でよろしいですか??」
「はい、結構でございます……彩さんは奥の施術台でアキラがお相手いたします。タケはこちらにどうぞ」
男性に任せることとマッサージや施術するとは言わず相手をするという言葉に違和感があるけれど健志をタケと呼ぶことや同部屋であることを安心の拠り所にする。
「背中のマッサージから始めますのでうつ伏せになってください」
アキラの言葉に従いガウンを脱いで施術台に乗ると一瞬緊張した身体にバスタオルを掛けられて、マッサージを受けることにだけを考える。
同じようにうつ伏せの身体にバスタオルを掛けられた健志に向けて手を伸ばすと何も言わずに握ってくれて口元を緩めて微笑んでくれる。
マッサージは足から始まり、包み込むように足の甲や土踏まずを揉まれて足指を一本一本撫でたり伸ばしたりされるとプロジェクトリーダーとして緊張を強いられる仕事の疲れも解されるほど気持ちいい。
「彩さん、血液型占いと同じように足指の長さで性格診断することをご存じですか??」
「聞いたことがあるけど、詳しいことはどうだったかな??」
「親指が一番長く小指に向かって短くなるのをエジプト型と言い、ロマンチストとされています。親指と人差し指、中指が同じ長さの人はローマ型と呼ばれてシャイで粘り強い。中指が長いのをギリシャ型と言って行動力があるらしいです。まぁ、根拠があるかどうか分かりませんけどね……」
脹脛から太腿、腰の順にマッサージされて背骨に沿って揉み解される頃にはブラジャーの紐が邪魔になるから外しますと言われても猥褻な感じはせず、当たり前のように、ハイと答えて心地好さから眠気を催し、BGM代わりのピアノ曲やアキラの声が遠ざかる。
「彩さん、仰向けになっていただけますか」
「えっ、はい。分かりました」
うつ伏せから仰向けに姿勢を変えた彩が手を伸ばせば届きそうな隣のマッサージ台を見ると健志はすでに仰向けになってパンツ姿の身体をサクラにマッサージされている。
サクラは健志の頭側に立ち、女性らしく細い指先で小さな乳首を撫でて腹部に息を吹きかけている。
オリエンタルノートの妖艶な香りとローソクの灯り、静かなピアノ曲と心地好いマッサージのせいでウトウトしている間に健志とサクラは何をしていたのだろうと心が騒めく。
「彩さん、ここから先はローションを使いますのでバスタオルは外させていただきます」
偶然なのか故意なのか彩には分からないけれどバスタオルと一緒に結び目を解かれたバスタオルも剥ぎ取られて胸の膨らみが露わにされる。
突然の予期せぬ出来事で乳房を両手で覆う彩に、
「彩さん、お話した通りローションを使いますので手を退けてください」
アキラの声に抗うこともできずに手を下ろすと胸の膨らみの谷間に温められたローションが垂らされる。
ニュルニュル、ジュルジュルッ……アンッ、ウッウッ、ウゥッ~……断りもなく乳房を揉まれても止めてと言わずに喘ぎ声を漏らしてしまう。
両手指を握りしめ、唇を噛んで与えられる快感を堪える彩が健志を見るとパンツを膝まで下ろされ、ローションまみれにされたペニスはサクラの手の中で宙を睨んでいる。
獣欲 -6
タクシーが健志の住むマンションに近付くにつれ、早く会いたいと思う気持ちとこのまま会わずに帰りたいと思う気持ちが交錯して彩の心臓は早鐘を打ち全身の血が逆巻く。
坂道を上りつめてマンションの全景が見えると、外に出て待ってくれている健志の姿が見える。
白いチノパンとピンクのTシャツを着けていかにも夏らしく軽やかに見えるのが腹立たしく、普段と変わらない様子を嬉しいとも思い何もかも相反する気持ちが葛藤の元となる。
足早に運転手側に回って料金を支払い、下車した彩に「おかえり」と囁いて頬に唇を合わせる。
「ただいま……怒ってない??」
「怒るわけがないだろ。寄ってく??それともすぐに家の近くまで送ろうか??」
「泊めてくれないの??」
「えっ、いいの??先週も家を空けただろう」
「夫は実家に急用が出来たからいないの」
「そうか、嬉しいな。二週連続で彩と過ごせるなんて思いもしなかったよ」
健志は何も言わないが彩は内股になり歩幅も狭く、股間に違和感があるような歩き方をする。
窓辺に立つ彩の背後に近付いた健志はTシャツの襟から覗くゴールドチェーンに触れ、全容を確かめるように指を這わせてホルターネック部分から胸の膨らみで戯れ、乳房と股間をつなぐチェーンを一本ずつなぞる。
「オッパイを弄られたりアソコを舐められたりして彩のオンナノコはグジョグジョに濡れたのに、止めてって言っちゃった。健志以外の人に抱かれたいと言ったのに、ごめんなさい。お友達に恥をかかせちゃった……」
「しょうがないよ。アキラ君と経験した彩が、もう一歩踏み出そうとしたんだけど、二度目は逡巡した。勢いですることじゃないからいいんじゃないの。彼から彩がそっちに向かったって連絡がきたけど怒ってなかったよ」
「ほんとう??怒ってないの??よかった……安心したけど、健志に腹が立ってきた。見たくないの??ねぇ、焦らさないで脱げって命令して。早く……」
開封前のシードルとグラスを持ってベランダに出た健志は椅子に座り困惑する彩を手招きする。
夕方とはいえ七月の太陽はまだまだ夏の暑さ残し、誘われるままベランダに出た彩は手をかざして眩しさを避ける。
「彩、脱ぎなさい」
「えっ、ここで??」
「そうだよ、海が好きな彩には眩しい太陽が似合う。此処でゴールドチェーンに飾られた彩を見たい」
「いじわる……いいよ、今日の彩は悪い子だったから……フフフッ、本当は興奮する」
隣との隔壁に目をやり見えるはずのない真下の通りを確かめた彩はTシャツの裾に指をかけ、見えないよねと呟く。
「駅近くのマンションから望遠鏡でも使わない限り見えないよ」
「そうだよね……」
ゴクッ……Tシャツを脱ぐとゴールドチェーンが飾る乳房が姿を現し見つめる健志はその美しさに唾を飲み、自然と伸びそうになる手を握りしめて腿に載せる。
「ウフフッ……興奮する??」
「あぁ、想像以上の美しさ。プラチナもいいけど彩にはゴールドも似合うって言った彼の言葉を信じてよかったよ」
「でも、これは普段使いできない。身体を動かすと微かにだけどカシャカシャ音がするし襟から見えるから特に夏は着けたくない。健志と彩、二人だけの隠し事……」
「分かったよ、彩を苛める趣味はないから着けたいって言うまで待つことにする……ジーンズも脱いでくれるだろう」
慣れた手つきで開栓したシードルをフルートグラスに注ぎ、興奮を隠そうとしてゴクゴクと喉を鳴らして飲み干す。
「シュワシュワが美味しそう、彩も飲みたい。アルコールは強くないよね」
3%の辛口だよと告げてグラスに注いだシードルを手渡すと、白い喉を見せてグラスを空にする。
「美味しい、ビールよりも好きになりそう。青リンゴの香りがする」
「そうだよ、青リンゴのシードルだよ……青くなく成熟した彩を見せてくれるね」
「フフフッ、ジーンズを脱がせたいと思っているでしょう??」
健志の腿を跨いで突き出した胸を顔に近付けた彩は後頭部に手を添えて引き寄せ、ゴールドチェーンに飾られた汗が滲む乳房を押し付ける。
苦しいとも言わず、膨らみの中ほどを口に含んで吸い込むと、
「ダメッ、キスマークをつけてもいいけど後でね、今はジーンズを脱がせてくれるでしょう??」と、囁く。
ジーンズを下ろした健志は怪訝な表情で彩を見る。
「彩、パンツを穿いているのはいいけどウンチを漏らしたんじゃないだろうな??」
「変なことを言わないで。冗談は後にして早くジーンズを脱がせて……」
頬を朱に染めて抗議する彩を愛おしく思いながらも姿を見せたショーツが何かの重みに耐えるように垂れ下がり、タクシーを降りた後の内股で歩幅も狭く歩いた様子を思い出して小首を傾げ、唇を尖らせる。
「早くジーンズを脱がせてパンツを下ろして確かめればいいじゃない。堪えるのは大変なんだから早くして」
彩の剣幕に恐れをなした健志はジーンズを下ろし、垂れたパンツを支えるように手の平を添えて、
「クククッ、そういうことか。へんな歩き方をしていると思ったけど落とさないように頑張っていたんだ……オレ以外のチンポに犯されたい。複数のチンポに襲われたいという妄想を忘れられないようだな」
ショーツを引き下ろすと割れ目からプラチナチェーン製下着が姿を現し、健志が覗き込むとズルッと滑り落ちる。
「彩のが緩いってことじゃないからね。落ちたのはマンちゃんのせいじゃないよ」
「分かっているよ。オレのモノを咥えるとクイクイ蠢いて奥へ奥へと飲み込もうとするのを忘れてないよ」
「そんなことより似合っている??ねぇ、どうなの??」
「うん、似合っているよ。さっきも言ったけど、彼の言うことは間違いなかった。染み一つなく大理石のようにしっとりした白い肌はシンプルなプラチナも好いけど、輝きのあるゴールドがよく似合う……普段使いしたくないと言われたのはショックだけど……」
言葉ほどガッカリした様子も見せず、彩に注ぐ瞳は穏やかで優しさにあふれている。
「ウフフッ、プラチナチェーンを落とさないように頑張っていたから疲れちゃった」
「そうか、そうだね……本当の彩は仕事を頑張っているだろうし、気持ちは二人でも身体は一人、疲れているだろう。マッサージしてもらおうか、オレもコリを解してもらおうかな、二人並んでマッサージしてもらおうか??」
「えっ、うん……いいよ」
「よし決まり。行ってからダメって言われるのはシャクだから予約しとこう」
スマホを手に取り、二人で同室の施術を予約した健志はシードルをシャンパンストッパーで封をして冷蔵庫に戻し、シャワーで汗を流してマーサージの後、食事をすることにして繁華街を目指す。
獣欲 -5
上気して脚の震えが止まらない彩を殊更に思いやる様子もなく男は胸の膨らみを飾るチェーンに指を這わせて乳輪をなぞり、緩みを確かめて膨らみの先端を指先で撫でる。
「ウッ、クゥッ~、イヤンッ……」
秘めやかに漏らす声を気にかけることなく男の指は乳首を撫で続け、彩の背後に位置を変える。
「フゥッ~……いやっ……きれい」
乳首を弄る指が離れたことに安堵の吐息を漏らした彩は、目の前に位置するスタンドミラーに映る自分の姿に驚きの声を漏らす。
マネキンが着けていた時と同じように股間と胸の膨らみはゴールドが飾り、明かりを反射して煌びやかに輝く。
恥毛を刈り取られたツルツルの恥丘から割れ目の縁に沿ってゴールドチェーンが背後につながり、胸の膨らみの麓と乳首をゴールドリングが飾り、大小二つのそれは四本のチェーンでつながりホルターネックで支えられている。
強度とエレガントさを強調するために太めのチェーンを使ったと男がいう通り、身体につけると重厚感がある。
サイズ合わせと言いながら男の指は悦びのツボを捉え、強い刺激を与えられるわけでもないのに芸術家らしい繊細な動きで乳房に青筋が浮かび、先端は恥ずかしくなるほど勃起して股間は花蜜が滲み出るのを感じる。
「鏡の中の彩さんもきれいでしょう、見なさい……」
サイズ確認だと言われれば、そうですねと答えざるをえない卑猥さを感じさせない指の動きに抗議もできずにいるうちに性感は高まり、快感を求めて自然と背後に立つ男に背中を預けるようになっていることに彩は気付かない。
鏡の中の自らの裸身に見入っていた瞳が閉じて唇がしどけなく開き、赤い舌が這い出て滑りを与えると男の指は乳首を摘まむ。
「ウッ、イヤッ、そんな……サイズ合わせをするのでしょう??違うの??」
囁くような彩の声を無視して乳首を摘まむ男の指は妖しく蠢き、首筋に舌を這わせて温かい息を吹きかける。
「彩さん、白い肌にゴールドが良く似合っています。ご自分でもそう思うでしょう??」
耳元で囁く男の声は脳を愛撫して緊張が解され、身体も心も弛緩する。
「アンッ、立っているのが辛い。脚に力が入らないの……」
「無理することないですよ。私に体重を預けてください」
鏡の中の自分を見ることを放棄して目を閉じ、真っすぐに立とうという気持ちを捨て去り身体も気持ちも背後の男に預ける。
乳房で戯れていた指が胸と股間をつなぐチェーンに沿って降りていく。
サイズ合わせと関係のなさそうな動きで飾り毛のない恥丘を撫で、腰から尻や太腿に続く肉感を確かめるように手の平が這い回る。
「ムッチリしているでしょう。油断すると直ぐに……大変なの」と、言わなくてもいいことを口にする。
「そうかなぁ……大抵の男は好きだと思いますよ。彩さんも本当は自信があるんでしょう」
衣類をすべて脱ぎ捨ててゴールドチェーンだけが飾る肌を曝し、サイズ合わせとは思えない動きで快感を与えられる彩は拒否するどころか甘えていると勘違いさせるような口調になり、それに合わせて男の手の動きが大胆になる。
開かれた割れ目に指が侵入し、言い訳もできないほど滲ませる花蜜を掬い取り彩の眼前で見せつけるように指を擦る。
「こんなになっちゃって、恥ずかしい……笑う??」
「どうして??美しい女性が私の腕の中で嬉し涙を流してくれる。男にとってこんなに嬉しいことはないよ……鏡の中の彩さんを見なさい」
男の両手が鏡の中の彩の股間に伸びて割れ目を開き、泣き腫らしたように赤く染まって涙を溢れさせるオンナをあからさまにする。
「この涙は悲しいから??それとも嬉し涙なの??彩さん、教えてくれるね??」
「イヤンッ、そんなことは口にできない……いじわる」
「これでも教えてくれないの??」
割れ目の左右を飾るチェーンでクリトリスを挟み、指先を妖しく蠢かす。
「アンッ、ダメッ、そんなことをされると気持ち善くなっちゃう。ウッウッ、クゥッ~」
股間を指に押し付けようとすると上半身がのけぞり、背後から抱きかかえて鏡の中の彩を見つめる男の顔を黒髪がくすぐり股間が反応する。
彩の身体に触れる男の指や手の平、吐く息やゴールドチェーンが性具と化すように、彩が漏らす吐息や甘い声、触れる肌の感触や髪の毛さえも男の性感をくすぐる。
男の指は遠慮と謙虚さを忘れて肌を這いまわる。
恥毛を刈り取られて産毛さえない赤ちゃんのような肌の感触を味わい、割れ目に姿を消した指は花蜜を溢れさせる源泉を掻きまわす。
「ウッウッ、クゥッ~、ダメ、もうダメ。こんなことをされたら我慢できなくなっちゃう」
「我慢をすることはないよ。鏡から目を逸らさないようにしなさい」
彩の身体から外したプラチナチェーンを手に取り、白い肌に冷たい金属の感触を味合わせるために撫でたり垂らしたりと淫猥遊戯に耽り、割れ目を開いて一部を残して押し込んでしまう。
鏡の中で膣口からプラチナチェーンの先端を垂らす姿は卑猥で、優子として生きる清楚で上品な女が本性を剥き出しにした彩に変身した象徴のように思えて昂奮が止まらない。
「立っているのが辛い。横にならせて……」
鏡の中の彩と視線を絡ませた男はフゥッ~と息を吐き、目を閉じて意を決したように抱き上げてドアの向こうの隣室に向かう。
寝室と思しき部屋も芸術家と思えないほど飾り気がなく、ベッドに寝かされた彩は気を紛らせる術もなく落ち着きを取り戻せない。
「ハァハァッ……彩はどうすればいいの??」
「何もしなくていいですよ。彩さんはそのまま横になって目を閉じてください」
目を閉じて胸で両手を組む彩の身体は震えを帯び、歯を食いしばって堪える。
「そんな顔をしないでください。彩さん、いいですか??息を吐いて…吸って…吐いて……落ち着いたでしょう」
目を閉じたまま深呼吸を繰り返した彩の表情から緊張が消えて穏やかになる。
「可愛い……そのまま目を閉じていてください」
乱れ髪に手櫛を入れた男はチュッと音を立てて額に唇を合わせ、胸で組んだ彩の手を解いて胸の膨らみに手を伸ばす。
「アッ、いぃ、気持ちいいの……クゥッ~、もっと……」
繊細な指の動きに秘めやかな喘ぎ声を漏らし、堪えようとしても身体の疼きが止まらず両手は自然と男の身体に伸びる。
ズボンの上から股間を擦って昂奮しているのを感じると自然と気色が浮かび、声が上ずる。
「オッパイだけじゃいや。アソコをお願い、我慢できそうもないの」
男の指が股間に伸びると温泉が噴き出したように熱い花蜜が溢れ、
「恥ずかしい、笑っちゃイヤよ」と、艶めかしい声で男の性感を刺激する。
「笑ったりするはずがないじゃないですか」
間抜けた言葉で顔を赤らめた男は羞恥を隠そうとして股間に移動して顔を埋める。
ジュルジュル、ヌチャヌチャッ舌が泉の源泉に出入りして膣壁を舐め上げると彩の両手は男の髪を掴み、両足は胴体に絡む。
「クゥッ~、イヤッ……気持ちいい、気持ち善くて身体がドロドロに蕩けちゃいそう」
襲い来る快感に酔う彩が目を閉じると悲し気な健志の顔が浮かび、男から逃れようとする。
「どうしました??そうですか、彩さんがタケ以外の男に抱かれるのは早すぎたようですね。気にすることはないですよ」
「ごめんなさい。あなたは聞いているかどうか知らないけど、彩が健志に他の男性に抱かれてみたいって言ったの……それなのに、ごめんなさい」
「気にしないでください。それに、その思いが変わらないのなら焦ることはないですよ。風俗勤めの女性にあることらしいけど、身体の不調は休息で元に戻るけど心の変調は取り返しのつかないこともあるらしいです……焦らないようにね」
「それは健志にも言われました。自分で決めたことだと義務のように思えば、心が壊れちゃうことにもなりかねないから気をつけろと……本当にごめんなさい。お口と手で満足してください、おねがいします」
「気にしなくていいよ」と言ったものの股間でズボンを突き上げるペニスに手を添えられては抗うこともできず、お願いしますと言った男は横たわる。
フェラチオと女性らしく柔らかな指でしごかれた男はあっけなく満足の証を吐き出す。
「すみません、オシャブリまでしてもらって気持ち善かったです」と顔を赤らめる。
ゴールドチェーンを着けたままショーツを穿いて身支度を整えた彩は男の呼んでくれたタクシーで健志の部屋に向かう。
獣欲 -4
下着を着けずにタオルを巻いただけで戻ろうかと思った彩は物欲しげに見られるのは嫌なので、バッグから取り出したベージュのフルバックショーツを穿いてセットのブラジャーを着ける。
鏡に映してみると身体のラインを美しく見せてくれるけれど、女性らしい色気に欠ける気がしてレースなど装飾のある下着を用意しなかったことが悔やまれる。
この期に及んで何を考えているのだろうと思うし直ぐに脱ぐことになるかもしれないけれど、直前まで美しく居たいと思うのが女。
「お待たせいたしました。汗を流してきました」
ジーンズとTシャツ、バッグを一まとめにして座っていたソファに置いた彩は、羞恥と不安や期待を綯い交ぜにして微かに朱に染めた顔を俯いたまま立ち尽くす。
「余計なことですが成熟した女性の持つしっとりとした色気が滲み出てゾクッとするほど美しいです」
「そんな風に褒められるのは慣れていないので恥ずかしいです」
「ないとは言わせませんよ。謙遜が過ぎると同性に嫌われますよ……それでは始めましょうか。タオルを外してください」
浮かべる笑みは清潔感があって羞恥や不安を薄めてくれるし言葉はくだけ過ぎることなく、あくまで事務的に進めてくれるので卑猥な思いを感じる自分を恥ずかしく思う。
外したタオルを折り畳んでジーンズやバッグのそばに置き、胸の膨らみや股間を隠したくなる自分を叱咤して銀細工師から外した視線を正面に向けてすっくと立つ。
「彩さんの白い肌を飾るのはプラチナもいいですが華やかな金もよく似合うと思います。下着は邪魔になるので脱いでください……後ろ向きになるので脱ぎ終えたら教えてください」
ハダカンボを見られるよりも下着を脱ぐ姿を見られる方が恥ずかしいこともある。
ブラジャーを外してショーツを脱ぎ、Tシャツとジーンズの間に挟んで、そっと息を吐き、
「脱ぎました」
「プラチナチェーンがよく似合っています。今度のアクセサリーも彩さんの美しさを際立たせると思います」
ヒッ……話しながら背後に回った男が金のチェーンが飾るはずの背中に指を這わせると彩の口から驚きの声が漏れる。
「このままで待っていてください」
再び先ほどのドアの向こうに姿を消す。
今着けているプラチナチェーン製下着を受け取ったのは雑居ビルの二階にある工房兼店のような場所で雑然としていたが、ここは住まいにしているような清潔感がある。
健志は友人でもあるこの男に彩を抱かせようとしているのだろうか……清潔感があるし指先まで手入れが行き届いているし細かい仕事する手は繊細な動きをする。
仕事で培った想像力とデリケートな動きをするあの手で身体をまさぐられたらどんなに気持ちいいだろうと妖しいときめきが芽生える。
姿を見せた男はスタンドミラーを運び、彩が全身を見ることのできる位置に置いて蹲り、プラチナチェーンに指を這わせる。
腰を一周する指は肌に直接触れることなくチェーンをなぞるだけなのに彩の心臓はドクドクと全身に熱い血を届け、口から飛び出してしまいそうなほど鼓動が早くなる。
前後の区別をするためと装飾ためにつけられたダイヤを撫でて、
「美しい女性にはダイヤが似合いますね。今度のアクセサリーにも付ければよかったかな……」ダイヤの部分は独り言のように漏らす。
ハァハァッ……肌が朱に染まり、腹部が波打つほど息を荒げているのを気付かないはずはないのに男の指は腹部から大陰唇の縁を通り、会陰部を経て尻の割れ目に隠れて再び腰を一周するチェーンにつながるのを確かめるように指を這わせる。
ハァハァッ……荒い息が落ち着く暇を与えられることなく男の指は恥毛を刈り取られた恥丘を撫で、言葉をかけることなく大陰唇に指を添えて真っ赤な花弁をあからさまにし、左右のチェーンで挟むようにクイクイとしごく。
「イヤッ、何を確かめているのか分からないけど遊ばれているようで堪えられない……」
「ごめんなさい……鍵をお持ちですか??サイズ合わせのためにゴールドチェーン下着と穿き替えていただきます」
抗議をする積りはなかったがプラチナチェーンを触れる男の動きに羞恥を覚え、それが密かな快感となって昂ぶる気持ちを言葉にすると男は客と細工師の関係に戻ってしまう。
バッグに入れてあった鍵を受け取ると、男は失礼しますと声をかけて錠を解いてプラチナ製下着を脱がせる。
二人しかいない部屋で、素っ裸で立つ彩を見つめる男はゴクッと唾を飲み、彩は自分の身体に性的感情を持ったとしか思えない男を前にして全身の血が渦巻き身体を動かすこともできなくなる。
マネキンが着けるゴールドチェーンの胸元をなぞる男は、
「チェーンはキヘイ編みと言う編み方で継がっています。ゴールドの輝きとエレガントさを活かせます。輝きは編み方に、豪華さは重さに比例していますので今までのプラチナチェーンよりもずっしり感じると思います…………」
男の説明が続くけれど遠くに聞こえる波の音のように意味がなく、身体は立っていられるのが不思議なほどフワフワと力が入らない。
「彩さん……彩さん、大丈夫ですか??」
「えっ、あっ、ごめんなさい……このゴールドチェーンで彩は縛られちゃうんだね。チェーンを着けている限り彩は健志の女で居られる。おねがいします」
股間と胸の膨らみをゴールドチェーンが飾り、腹部や腰を取り巻く金の輝きと重量は健志に拘束されていると実感できるものの普段の生活で着けていられるとも思えない存在感がある。
カチッ……着け終えたゴールドチェーンは真鍮製の小さな鍵で留められて彩から優子に戻れなくなるような重厚感と威圧感で彩の身体も心も縛る。
「サイズを確かめる前に全体の感じはどうですか??重さや窮屈で痛い箇所、その他にも何か感じたことなどをおっしゃってください」
「窮屈だとか痛いと感じる箇所はありません。ずっしりとした重さの重厚感、キラキラ輝き華やかでエレガント……他人に見せることができないのが残念だけど素晴らしいです」
男と二人きりでいることを忘れたように肌を這うチェーンを指でなぞり、身体の向きを変えたり捩じらせたりして輝きの変化に見入る彩の頬が紅潮する。
「しばらくそのままの姿勢を崩さないでください。サイズを確かめますので」
窮屈に感じる場所はないと言ったので緩みがないかを確かめるために腰や腹部のチェーンに沿って指を這わせ、所々でクイクイと引っ張ったりもする。
「腰や腹部のつなぎの部分のサイズは申し分ないようです。胸と股間のサイズを確かめますがデリケート部分なので丁寧に確かめさせていただきます」
男の言葉で心臓は早鐘を打ち、脚は震えて唇の渇きを堪えることができずに舌を這わせて滑りを与える。