彩―隠し事 193
獣欲 -7
いかがわしい看板が並ぶ通りには踏み込まず、そこに向かう欲望に満ちた人々の間をすり抜けて瀟洒な三階建ての建物に入りエレベーターに乗る。
館内案内板に書かれているのは会員制のレストランやバーがほとんどで、最上階に目的の店らしいマッサージと書かれた店が入っている。
三階で降りた健志は軽くキスをして、ここだよと指さすドアに“会員制・マッサージパーラー”と書かれたシルバーの看板があり、ノックするとドアが開けられる。
「ご予約ありがとうございます、お待ちしていました。ご案内いたします」
桜の花を連想させる可憐な淡いピンクの施術着で迎えてくれた女性の後姿は同性の彩が見ても羨ましくなるほどスタイルがよく、腰から太腿にかけて健志が好みそうな張りもあり無意識のうちに嫉妬心が沸き上がる。
「こちらの部屋を用意いたしました。お入りください」
女性の指示に従い入った部屋は人の表情が分かる程度の明るさしかなくオリエンタルノートの妖艶な香りが漂い、静かにピアノ曲が流れて二つ並んだ施術台の向こうに男性が一人立っている。
バタン……ハァハァッ、フゥッ~……女性がドアを閉めると訳もなく彩の動悸が激しくなって自然と息が荒くなり、落ち着こうとして目を閉じフゥッ~と息を吐く。
そんな彩を気にする様子もなく案内してくれた女性が、
「本日のご利用、ありがとうございます。お相手は、アキラと私、サクラが務めさせていただきます」
「えっ……」男性施術師がアキラと紹介されると一週間前の浜辺でのアキラ君とのことを思い出して思わず声を漏らしてしまう。
「どうかしましたか??」
「ごめんなさい。アキラさんとおっしゃる名が知り合いと同じなものですから、つい」
「そうでしたか。アキラさん、こんなに魅力的な女性のお知り合いと同じ名前だって、よかったね……まずはシャワーで汗を流してください。シャワーは血行を良くするのでマッサージの効果を高めます。シャワーを終えたら用意してある施術着に着替えてください」
今日は何度目のシャワーだろうと指を折り、汗を流した彩は用意された施術着を手に取り顔を曇らせる。
「ペーパーショーツなんだ……ブラもペーパーで紐止め。破けたりしない??」
「耐水性、耐久性は十分だと思うよ。それより、誰が使ったか分からない使いまわしの下着と使い捨てのペーパー下着、使い捨ての方がいいだろう??」
「うん、そうだね。紐止めだからサイズを気にしなくてもいいしね。ウフフッ、彩のムッチリオチリにもサイズをぴったり合わせられる」
ペーパーショーツとブラジャーを着けてガウンをまとった彩は、同じように使い捨てパンツを穿いた健志の股間に手を伸ばし、
「帰ったら満足させてね。銀細工師さんには申し訳ないけど、身体中をまさぐられて興奮の高みにいたのに止めてって逃げ出しちゃったから……」
「火曜から昨日まで仕事を頑張っただろうに彩は元気だな」
「仕事や家事は本当の私に任せているの。彩は本当の私の心の奥に棲みつく妖しい思いを満足させるのが仕事……知っているでしょう??」
「そうだった。魅力的な彩を見ていると、つい現実を忘れそうになる。戻ろうか」
薄明りだった施術室の明かりは全て消されて何か所かにローソクが灯され、妖艶な香りが漂う部屋は一層艶めかしい雰囲気に包まれている。
「お名前をお聞きしてよろしいですか??」
彩に問いかける落ち着いたサクラの声もこの部屋の雰囲気に相応しく気持ちの奥にまで優しく届く。
「彩でよろしいですか??」
「はい、結構でございます……彩さんは奥の施術台でアキラがお相手いたします。タケはこちらにどうぞ」
男性に任せることとマッサージや施術するとは言わず相手をするという言葉に違和感があるけれど健志をタケと呼ぶことや同部屋であることを安心の拠り所にする。
「背中のマッサージから始めますのでうつ伏せになってください」
アキラの言葉に従いガウンを脱いで施術台に乗ると一瞬緊張した身体にバスタオルを掛けられて、マッサージを受けることにだけを考える。
同じようにうつ伏せの身体にバスタオルを掛けられた健志に向けて手を伸ばすと何も言わずに握ってくれて口元を緩めて微笑んでくれる。
マッサージは足から始まり、包み込むように足の甲や土踏まずを揉まれて足指を一本一本撫でたり伸ばしたりされるとプロジェクトリーダーとして緊張を強いられる仕事の疲れも解されるほど気持ちいい。
「彩さん、血液型占いと同じように足指の長さで性格診断することをご存じですか??」
「聞いたことがあるけど、詳しいことはどうだったかな??」
「親指が一番長く小指に向かって短くなるのをエジプト型と言い、ロマンチストとされています。親指と人差し指、中指が同じ長さの人はローマ型と呼ばれてシャイで粘り強い。中指が長いのをギリシャ型と言って行動力があるらしいです。まぁ、根拠があるかどうか分かりませんけどね……」
脹脛から太腿、腰の順にマッサージされて背骨に沿って揉み解される頃にはブラジャーの紐が邪魔になるから外しますと言われても猥褻な感じはせず、当たり前のように、ハイと答えて心地好さから眠気を催し、BGM代わりのピアノ曲やアキラの声が遠ざかる。
「彩さん、仰向けになっていただけますか」
「えっ、はい。分かりました」
うつ伏せから仰向けに姿勢を変えた彩が手を伸ばせば届きそうな隣のマッサージ台を見ると健志はすでに仰向けになってパンツ姿の身体をサクラにマッサージされている。
サクラは健志の頭側に立ち、女性らしく細い指先で小さな乳首を撫でて腹部に息を吹きかけている。
オリエンタルノートの妖艶な香りとローソクの灯り、静かなピアノ曲と心地好いマッサージのせいでウトウトしている間に健志とサクラは何をしていたのだろうと心が騒めく。
「彩さん、ここから先はローションを使いますのでバスタオルは外させていただきます」
偶然なのか故意なのか彩には分からないけれどバスタオルと一緒に結び目を解かれたバスタオルも剥ぎ取られて胸の膨らみが露わにされる。
突然の予期せぬ出来事で乳房を両手で覆う彩に、
「彩さん、お話した通りローションを使いますので手を退けてください」
アキラの声に抗うこともできずに手を下ろすと胸の膨らみの谷間に温められたローションが垂らされる。
ニュルニュル、ジュルジュルッ……アンッ、ウッウッ、ウゥッ~……断りもなく乳房を揉まれても止めてと言わずに喘ぎ声を漏らしてしまう。
両手指を握りしめ、唇を噛んで与えられる快感を堪える彩が健志を見るとパンツを膝まで下ろされ、ローションまみれにされたペニスはサクラの手の中で宙を睨んでいる。
いかがわしい看板が並ぶ通りには踏み込まず、そこに向かう欲望に満ちた人々の間をすり抜けて瀟洒な三階建ての建物に入りエレベーターに乗る。
館内案内板に書かれているのは会員制のレストランやバーがほとんどで、最上階に目的の店らしいマッサージと書かれた店が入っている。
三階で降りた健志は軽くキスをして、ここだよと指さすドアに“会員制・マッサージパーラー”と書かれたシルバーの看板があり、ノックするとドアが開けられる。
「ご予約ありがとうございます、お待ちしていました。ご案内いたします」
桜の花を連想させる可憐な淡いピンクの施術着で迎えてくれた女性の後姿は同性の彩が見ても羨ましくなるほどスタイルがよく、腰から太腿にかけて健志が好みそうな張りもあり無意識のうちに嫉妬心が沸き上がる。
「こちらの部屋を用意いたしました。お入りください」
女性の指示に従い入った部屋は人の表情が分かる程度の明るさしかなくオリエンタルノートの妖艶な香りが漂い、静かにピアノ曲が流れて二つ並んだ施術台の向こうに男性が一人立っている。
バタン……ハァハァッ、フゥッ~……女性がドアを閉めると訳もなく彩の動悸が激しくなって自然と息が荒くなり、落ち着こうとして目を閉じフゥッ~と息を吐く。
そんな彩を気にする様子もなく案内してくれた女性が、
「本日のご利用、ありがとうございます。お相手は、アキラと私、サクラが務めさせていただきます」
「えっ……」男性施術師がアキラと紹介されると一週間前の浜辺でのアキラ君とのことを思い出して思わず声を漏らしてしまう。
「どうかしましたか??」
「ごめんなさい。アキラさんとおっしゃる名が知り合いと同じなものですから、つい」
「そうでしたか。アキラさん、こんなに魅力的な女性のお知り合いと同じ名前だって、よかったね……まずはシャワーで汗を流してください。シャワーは血行を良くするのでマッサージの効果を高めます。シャワーを終えたら用意してある施術着に着替えてください」
今日は何度目のシャワーだろうと指を折り、汗を流した彩は用意された施術着を手に取り顔を曇らせる。
「ペーパーショーツなんだ……ブラもペーパーで紐止め。破けたりしない??」
「耐水性、耐久性は十分だと思うよ。それより、誰が使ったか分からない使いまわしの下着と使い捨てのペーパー下着、使い捨ての方がいいだろう??」
「うん、そうだね。紐止めだからサイズを気にしなくてもいいしね。ウフフッ、彩のムッチリオチリにもサイズをぴったり合わせられる」
ペーパーショーツとブラジャーを着けてガウンをまとった彩は、同じように使い捨てパンツを穿いた健志の股間に手を伸ばし、
「帰ったら満足させてね。銀細工師さんには申し訳ないけど、身体中をまさぐられて興奮の高みにいたのに止めてって逃げ出しちゃったから……」
「火曜から昨日まで仕事を頑張っただろうに彩は元気だな」
「仕事や家事は本当の私に任せているの。彩は本当の私の心の奥に棲みつく妖しい思いを満足させるのが仕事……知っているでしょう??」
「そうだった。魅力的な彩を見ていると、つい現実を忘れそうになる。戻ろうか」
薄明りだった施術室の明かりは全て消されて何か所かにローソクが灯され、妖艶な香りが漂う部屋は一層艶めかしい雰囲気に包まれている。
「お名前をお聞きしてよろしいですか??」
彩に問いかける落ち着いたサクラの声もこの部屋の雰囲気に相応しく気持ちの奥にまで優しく届く。
「彩でよろしいですか??」
「はい、結構でございます……彩さんは奥の施術台でアキラがお相手いたします。タケはこちらにどうぞ」
男性に任せることとマッサージや施術するとは言わず相手をするという言葉に違和感があるけれど健志をタケと呼ぶことや同部屋であることを安心の拠り所にする。
「背中のマッサージから始めますのでうつ伏せになってください」
アキラの言葉に従いガウンを脱いで施術台に乗ると一瞬緊張した身体にバスタオルを掛けられて、マッサージを受けることにだけを考える。
同じようにうつ伏せの身体にバスタオルを掛けられた健志に向けて手を伸ばすと何も言わずに握ってくれて口元を緩めて微笑んでくれる。
マッサージは足から始まり、包み込むように足の甲や土踏まずを揉まれて足指を一本一本撫でたり伸ばしたりされるとプロジェクトリーダーとして緊張を強いられる仕事の疲れも解されるほど気持ちいい。
「彩さん、血液型占いと同じように足指の長さで性格診断することをご存じですか??」
「聞いたことがあるけど、詳しいことはどうだったかな??」
「親指が一番長く小指に向かって短くなるのをエジプト型と言い、ロマンチストとされています。親指と人差し指、中指が同じ長さの人はローマ型と呼ばれてシャイで粘り強い。中指が長いのをギリシャ型と言って行動力があるらしいです。まぁ、根拠があるかどうか分かりませんけどね……」
脹脛から太腿、腰の順にマッサージされて背骨に沿って揉み解される頃にはブラジャーの紐が邪魔になるから外しますと言われても猥褻な感じはせず、当たり前のように、ハイと答えて心地好さから眠気を催し、BGM代わりのピアノ曲やアキラの声が遠ざかる。
「彩さん、仰向けになっていただけますか」
「えっ、はい。分かりました」
うつ伏せから仰向けに姿勢を変えた彩が手を伸ばせば届きそうな隣のマッサージ台を見ると健志はすでに仰向けになってパンツ姿の身体をサクラにマッサージされている。
サクラは健志の頭側に立ち、女性らしく細い指先で小さな乳首を撫でて腹部に息を吹きかけている。
オリエンタルノートの妖艶な香りとローソクの灯り、静かなピアノ曲と心地好いマッサージのせいでウトウトしている間に健志とサクラは何をしていたのだろうと心が騒めく。
「彩さん、ここから先はローションを使いますのでバスタオルは外させていただきます」
偶然なのか故意なのか彩には分からないけれどバスタオルと一緒に結び目を解かれたバスタオルも剥ぎ取られて胸の膨らみが露わにされる。
突然の予期せぬ出来事で乳房を両手で覆う彩に、
「彩さん、お話した通りローションを使いますので手を退けてください」
アキラの声に抗うこともできずに手を下ろすと胸の膨らみの谷間に温められたローションが垂らされる。
ニュルニュル、ジュルジュルッ……アンッ、ウッウッ、ウゥッ~……断りもなく乳房を揉まれても止めてと言わずに喘ぎ声を漏らしてしまう。
両手指を握りしめ、唇を噛んで与えられる快感を堪える彩が健志を見るとパンツを膝まで下ろされ、ローションまみれにされたペニスはサクラの手の中で宙を睨んでいる。