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男と女のお話

記憶 2/2

バスタブを泡まみれにして下着とブラウスを洗いながら柏木を思い出す。
コートと上着を脱がされてベッドに横たえられ、ブラウスを脱がせてくれと頼んだ時の柏木の表情に一瞬とは言え卑猥な思いが宿ったことは間違いない。
それが証拠に部屋を出る寸前に額にキスをしてくれた。
部屋に酔っぱらった女性と二人きりでいる時にサヨウナラの挨拶代わりにキスをするだろうか、それに私の容姿は誰にも負けないというほど自惚れ屋でもないけど、それなりに好い女だという自負もある。
そんな私が酔っ払った振りをして何をされても受け入れる積りでいたのに……明日の朝は絶対に逃さない。
結婚している柏木さんを深追いする積りはないけど、キャバ嬢としてアルバイトをしていた時から一度は抱いてほしいと思っていた。
同伴を何度かしてもらって卒業が決まるとお祝いだと言って懐石料理を振舞ってくれたし卒業旅行に行くと話すと餞別もくれた。
お土産を渡すために連絡しても食事だけで、それ以上の事は何も求めず店にいる時と同じ爽やかな笑顔で別れを告げるだけだった。
紳士的な振る舞いで傷つく女がいることを分からないのだろうか……

下着とブラウスを洗い終えた深雪は一旦湯を抜いたバスタブに立ち、自らの全身に手を這わせてニコリと微笑む。
「なかなかのモノよ、深雪。あなたは好い女、自信を持ちなさい」
当時も容姿を含めてそれなりに自信を持っていたが、柏木には冗談も含めて一度も口説かれなかったことを癪に思っていた。
客として好意を持っていたが愛する対象ではないと思っていた。口説かれないことへの恨みも混じっていたかもしれない。
一度だけでもいいから抱いてほしい。
奥さんを愛していることは当時も今日も言葉の端々から感じられるのでそれ以上を望むものではない、一度だけでいい、どのお客さまよりも気になっていた柏木に抱かれたい。
偶然、出会った柏木であったが、もしかすると私の潜在意識が再会を望んでいたのかもしれないと思うと苦笑いが浮かぶ。

下着の替えを用意していなかったので素肌にナイトウェアを着けようと手に取ってみたが、鏡の中の自分を見て何も身に着けずに素っ裸のままベッドに入る。
目を閉じて眠ろうとすると、道を譲ろうとする柏木の前に立った時の怪訝な表情を思い出して自然と笑みが浮かぶ。
ウッウッ……無意識のうちに左手が乳房に伸びてヤワヤワと揉みしだき、右手が下腹部を撫で始める。
シーツに包まって閉じていた両足がしどけなく開いて右手が伸びるのを待っている。
「アンッ、いやっ、我慢できない」
柏木に抱かれることを期待している身体は久しぶりのオナニーを我慢できるわけもなく、右手が股間で蠢くと泥濘が生まれ、左手が胸の膨らみの先端を摘まんでコリコリクチュクチュ刺激すると股間の泥濘は涸れることのない泉のように花蜜が溢れ出る。
「ウッウッ、気持ちいい……」
目を閉じて股間を弄ると狂おしいほどの昂ぶりであっという間に昇り詰めてしまう。


目覚めた深雪は時刻を確かめてバスルームに向かう。
今朝の柏木に期待する就寝前の昂奮も久しぶりのオナニーで身体が満足すると安眠することが出来た。
全身を泡まみれにして卑猥な思いを封じ込め、スッキリした気分で薄化粧を施して髪を整えたタイミングでドアチャイムが鳴る。
期待と不安で動悸が激しくなったのを深呼吸で落ち着かせて初めてナイトウェアに袖を通して前は留めず、窓のカーテンを閉めてドアに向かう。

「おはようございます。本当に迎えに来てくれるか不安だったけど安心しました」
「おはよう……風流な恰好は嫌いじゃないけど目の毒だよ。前を留めてくれたら嬉しい」
「あら、どうして??私のオッパイじゃ満足できないの??」
「言葉は淑女、格好は娼婦。ミユキちゃんのような好い女がオッパイを見せつけて迎えてくれると勘違いしちゃうよ」

深雪の腰に手を回してドア近くの壁に押し付けてチュッチュと唇を合わせて直ぐに離れ、
「悪い子だ。ミユキちゃんが望んでいた仕事に就いたようだし、想像以上の好い女になっていたからお祝いを兼ねてドライブに誘おうかと思ったけど、その前にお仕置きをしなきゃいけないな」
「イヤンッ……そんなことを言われると立っているのも辛くなる。お仕置きをされるの??……怖いけど嬉しい」
深雪を抱き上げてベッドに運んだ柏木はカーテンを閉めてあるのを見て、
「ミユキちゃん、眠れたかい??」
「こんな風にしてもらおうと昂奮したけど、久しぶりにアレをしたら熟睡できた」
「悪戯されようとしてカーテンを引いてあるんだね。ミユキちゃんを観察させてもらうよ」

両足を垂らしてベッドに寝かされた深雪は両足の間に入り込んだ柏木の脚が膝を抑えるので閉じることは出来ず、両手を掴まれて抑えつけられると昂奮で息を荒げるばかりで逃げることも出来ない。
ハァハァッ……見つめる視線に羞恥を覚え、身体を捻ろうとしても叶わず、顔を背けて目を閉じる事しかできない。
柏木の唇が閉じた瞼にキスをして舌先が刷く感触に、ウッと艶めかし吐息を漏らして目を開ける。
「どうした??昨日は酔った振り、今日はオッパイとマン毛を見せつけて挑発した悪戯子猫ちゃんだろ……可愛いよ」
「いやっ、お店にいた時も昨日も私に欲情する気も見せなかった。こうするしかないでしょう??その気になってもらえないと惨めだけど……」
「学生だった当時はともかく、昨日のミユキちゃんは眩しくて必死に我慢していた。帰りがけに額にキスしたけど、それは許して欲しい」
「ウフフッ、額にキスして我慢してくれたの??今は我慢しちゃ嫌、もう大人の女だよ」
柏木が額にキスしたのは性的欲望を我慢するためだと想像したことが間違いではなかったと知る深雪は自信を取り戻す。

ナイトウェアを咥えて左右に大きく開き、オッパイも股間の茂みも露わに晒し、胸の膨らみの先端を口に含み、膝を抑えていた太腿を股間に押しつけて蠢かす。
「アンッ、そんな事をされたら……だめっ、気持ち善くなっちゃう」
掴んでいた手を離した柏木は羞恥に染まる深雪の頬に手を添え、
「子猫ちゃんの巡らした罠に嵌って我慢できなくなっちゃった」
深雪の唇に舌を這わせて甘噛みすると息が荒くなり、艶めかしい吐息が漏れて両手を柏木の背中に回して抱きしめる。

我慢の限界を迎えた柏木は壊れ物を扱うように優しく白い肌に唇を這わせて息を吹きかける。
「アウッ、いぃ、気持ちいい。抱いてほしいと思っていたけど、今は恥ずかしい」
「シィッ~、男と女は凸と凹。相性が良ければピタリとはまる。ミユキちゃんとオレの相性を確かめてみよう」
柏木の手が頬を撫でて唇を刷き、深雪がその指を噛もうとすると上手く避けて首から肩を経て脇腹を擦り、腰の肉付きを確かめるように撫でて内腿を擦る。
「イヤッ、そこは嫌。恥ずかしい……」
溢れ出る花蜜で股間は濡れそぼち、指先で拭い取った柏木は深雪の唇に押し付ける。
「イヤンッ、いじわるな人……美味しい」
「蜜の味は本当の深雪の姿。甘いだろう、好い女の証拠だよ」
「ハァハァッ、私のすべてを味わって、本当に好い女かどうか確かめて……クゥッ~」
深雪の表情は険しくなったり柔和になったりを繰り返し、昂ぶりと羞恥、貪欲な欲望と満足感の間を行ったり来たりして彷徨い続ける。

白い乳房を揉みしだき、先端を咥えて甘噛みしながら顔を振ると深雪は上半身を仰け反らせて白い喉を見せる。
両手で胸の膨らみと先端の突起を弄り続けると乳輪が膨らんで淡いピンク色だったのが濃くなりはっきりと勃起する。
鳩尾の辺りから下腹部まで一気に舐め下りて飾り毛を咥えてハムハムと引っ張り温かい息を吹きかける。
「ヒィッ~、いやんっ……」
柏木の髪の毛を掴んで腰をせり上げて顔を圧迫し、もっとと叫んで貪欲に愛撫を催促する。

グチュグチュ、ジュルジュルッ……涸れることなく滾々と花蜜を溢れさせる泉の源泉で舌や指が躍り始めると、深雪の両足は柏木の上半身に妖しく絡んで逃すまいとする。
「ダメ、欲しいの、入れて……凸と凹の相性を確かめて、早く、おねがい、我慢できないの」

「ヒィッ~、くる、来る。感じる、ようやくつながった……温かくて気持ちいい」
「オレもだ、深雪に包まれて気持ちいい」
花が美しく咲くのは虫を誘って、その仲介で受精するため。
女性が美しさと妖しい魅力を撒き散らすのは男を誘うため、二人のこれからは深雪の気持ちで決まる。
キャバ嬢を辞めて絵里奈から深雪に戻った時に携帯の番号は変えた。
バッグに入っているスマホに柏木の番号は残っている。


<< おしまい >>

男と女のお話

記憶 1/2

そぼ降る雨に通りを歩く人は傘を差し、傘を持たない人は肩をすぼめて早足になっている。
そんな人たちに紛れても意に介する様子もなく胸を張って歩く男は颯爽と歩いてくる女性を見つけて頬を緩める。
スプリングコートのポケットに片手を入れ、膝下を伸ばして歩く姿は凛として近寄りがたい魅力を備えている。
あと数歩という距離まで近付いた女性はにこやかに笑みを浮かべて真っすぐに男に向かって歩く。
あれっという表情の男が道を譲ろうとすると女性もその方向に進路を変えて、目の前で立ち止まる。
「ごめん……」
不快な表情をすることなく男が歩道の隅に立って進路を空けても女性は進もうとせず、またしても男の前に立ちふさがる。

「私の記憶にない人だと思うけど何か迷惑をかけましたか??」
「ほんとう??あの頃、女として侮辱されたと不満に思いましたよ。そのことをお忘れですか??」
「女性を侮辱した記憶はないし、あなたのように美しい人を忘れるはずがないし困ったな」
「ヒントを差し上げます……三杯目は少しだけ濃く作りますね」
何かに気付いた様子で女性の顔をまじまじと見つめる男は、
「あれっ、もしかすると、エリちゃん??そうなの??」
「そうです絵梨奈です。今は深雪ですけど、あの頃はお世話になりました」
「そうか、私が知っているのは源氏名で本当は深雪さんって言うんだ。知らぬこととはいえゴメンね」
「そんなことで謝らないでください、分からなくって当然です……そんな事より、私は一目見て柏木さんだと分かったのに、気付いてくれなかった。罰として夕食をご馳走してください、ダメですか??」
「えっ、ダメじゃないけど……困ったな」

「約束があるのなら諦めますが、念のため申し上げると私は付き合っている人はいないし、夫と呼ぶ人もいません……柏木さんは人のモノは何であれ欲しがらない、そう言ってましたよね??」
「分かった、気付かなかったお詫びにご馳走させてもらうよ。何が好い??」
「ウフフッ、やったぁ。2年以上前ですが、私が大学を卒業するから店を辞めるというと卒業祝いだと言って連れて行ってくれたお店があったでしょう。あの店はダメですか??」
「憶えているよ。高級感のある佇まいで庭も素晴らしく記念日などのイベントには重宝する懐石料理の店だったけど閉店しちゃったよ。エリちゃんじゃなかった、深雪さんが美味いと言って飲んだ系列のクラフトビールも止めちゃった」
「そうですか残念だなぁ……柏木さんにお任せします。今日は金曜日だから月曜の出勤まで時間はたっぷりあるし、食事の好き嫌いはありません。それと深雪さんじゃなく、ミユキと呼んでください。いいでしょう??」
「分かった。ミユキちゃん、雨を避けられる場所に移動しようよ」
「ウフフッ、やせ我慢は辛いですか??」
「雨だからって肩をすぼめて歩くのは雷さんに負けたようで癪だからね。ミユキちゃんも傘ナシで颯爽と歩く姿は凛として格好良かったよ」
「誰が見ているか分からないから精一杯虚勢を張っていました。柏木さんに会ったから、一応目的は達成です」

「ミユキちゃん、走るよ」
歩行者信号が青になると柏木は深雪の手を握って駆けだす。
横断歩道を渡り切った柏木は手を引いて傘の間をすり抜けて目の前のビルに入る。
ハンカチを取り出して頬に当て、髪を拭いて湿り気を吸い取ろうとする。
「ありがとう……優しくされたら惚れちゃうよ」
「えっ、おう……エレベーターに乗るよ」
「クククッ、照れている??赤くなっているよ」

八階で降りた二人は石畳風の入り口を入って居酒屋に入る。
金曜日とあって個室はすべて塞がっているため座敷席にする。
コートを脱いで優雅な仕草で座る深雪のスカートがずり上がり、白い太腿を目にする柏木の表情が一瞬変化する。
淫蕩な視線とは言えないものの成熟した女性として見られたと感じた深雪は満足し、窓から見える華やかな駅前の夜景と賑やかさに感嘆の声を漏らす。
「きれい。この街を8階から見るとこんな景色なんだ……卒業と就職で離れたこの街を懐かしく思って久しぶりに来たんだけど、柏木さんに会えるとは思ってもいなかった。私の記憶違いかなぁ??高い処が苦手だって聞いたような気がするけど、まさか2年や3年で克服できるとも思えないし……ウフフッ」
「ミユキちゃんを見ていれば高い処にいることは気にならない……暗いので高さを感じないから平気だよ」

白ワインで生ガキと焼ガキを堪能すると気持ちが一層解れて会話も弾む。
深雪が卒業旅行に行くと聞いた柏木が両替しないで持っていたユーロ紙幣をプレゼントし、お土産としてベルトを買ってきたことや希望通りに就職することが出来て充実した日々を送っていることなどを話した。
ワインを冷酒に替えて刺身や牛肉と野菜の朴葉焼きなど数種類と〆のお茶漬けを食べ終わると満面に笑みを浮かべた深雪は、まだ解放してあげないと酔った振りをする。
「帰れなくなっちゃうよ」
「いいの。今日はホテルに泊まるって決めたから、どこかで飲みたい。連れて行って……奥さんに怒られちゃう??」
絵梨奈の源氏名でキャバクラ勤めをしていた頃、毎回のように20時のオープン直後に来店し、延長1回で帰る柏木に規則正しいのはどうしてだと聞くと、エリちゃんに会いたいし妻に怒られたくないしと言ったのを思い出した。
「じゃぁ、宿泊するホテルのバーに行こうか。雨の中ウロウロしなくても好いし、そうしよう」

店を出ると柏木は買い物をするかと聞いて、深雪が必要ないと答えると5分ほど此処で待っていてと告げて雨の中を走りだす。
帰宅が遅くなることを奥さんに連絡するのを聞かれたくないのだろうと降る雨を見つめていると、お待ちどうさまと声をかけた柏木が傘を差して歩いてくる。
「傘を買ってきてくれたの??」
「そうだよ。二度も雨の中を走らせるわけにはいかないだろう」と、微笑む。
歩いて数分のホテルでフロントに向かう深雪は女性の飛び込み客である事を心配したが、柏木が何度も利用しているらしくて不都合なくチェックインすることが出来た。
「1人で宿泊するこの人を明朝迎えに来るつもりだけど、念のため現金でデポジットを入れときます」
「いつもご利用いただいていますから結構ですよ」
「もしも、来られなくなった時のためですから、預かってください」
部屋の鍵を受け取るとバーに向かう。

柏木はウィスキーの水割り、ミモザ色で甘口アルコール度数も高くないミモザを飲み終えた深雪はバラライカを飲み始める。
「ペースが早すぎるよ、大丈夫か??」
「いいの、久しぶりに懐かしい人にあったし気分は最高。今日はこのホテルに部屋を取っってもらったし酔っぱらっても介抱してくれる優しい人がいるしね……お代わりください」

歩くことも覚束なくなった深雪を部屋に送り、コートをハンガーに掛けてベッドに横たえた身体から上着を脱がせて、
「ミユキちゃん、このまま寝かせるわけにもいかないからスカートも脱がせるよ」
「ウ~ン……ここはどこなの、ベッドなの??苦しい、スカートもブラウスも脱がせて、早く……飲み過ぎちゃったみたい」
「脱がせるよ、動いちゃダメだよ」
スカートを脱がせ、ブラウスのボタンを外し始めると焦点のあっていなかった深雪の視線が柏木を見据えて淫蕩な光を宿したように思えたが、卑猥な感情が芽生えた自分の勘違いだろうと言葉にせずに言い聞かせる。
脱がせた上着やスカート、ブラウスもハンガーに掛けた柏木は、

朝食を一緒に摂れるように迎えに来るから待っていてくださいとメモを残し、深雪の額に唇を合わせて灯りを落として部屋を出る。

「なんだ、つまんない。抱いてほしかったのに……」
身体を起こした深雪が笑みを浮かべながら不敵な独り言を漏らしたことを柏木は知らない。
「シャワーを浴びてさっぱりしよう」
下着を脱いでハダカンボになった深雪はバスルームに向かう。
プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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