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ホテル -24

カフェレストラン

朝のロビーはチェックアウトする人たちに交じり、駅構内に直結する立地の良さから待ち合わせや朝食のためにラウンジやカフェレストランに立ち寄る人たちで混雑している。

平静を装うアユは数歩歩くと股間の違和感で立ち止まり、不安げな表情で辺りを見回して男に顔を近付ける。
「あなたがクチュクチュしたから蜜が滲み出たみたいで変な感じ」
「すれ違う人がアユの事を見ているよ。ほら、あのフロントのそばにいる人もじっと見ている……色気とエロ気、今のアユは男にとって目の毒だな。メスの匂いがプンプンしている」
「いやっ、そんな事を言わないで、歩けなくなっちゃう」

人目を気にすることなくアユを抱き寄せた男は。
「スカートのボタンを外したらどうなるだろうな??」
「えっ??」
「スカートのボタンを外すと……スカートが落ちて毛饅頭が丸見えになる」
「なに??毛饅頭って??えっ、クククッ、やめてよ、笑っちゃうじゃない」
「アユはキスが好きだろう??しようか??」
「クククッ、ここで??いいよ、できる??」
チュッ……両手を頬に添えて音を立てて唇を合わせた男は周囲の視線を気にすることなくカフェレストランに入る。

案内されたテーブルに着くと、
「つまんない、もっとエッチなキスを期待していたのに、あんなのは幼稚園児のキスみたい……フフフッ」
本心なのか、ディープキスではないことに安堵したのか分からないほどアユの笑顔は屈託がない。

「おはようございます。お決まりですか??」
アユは卵料理やソーセージ、生野菜サラダのモーニングプレートをコーヒーで、男はグラノーラやアサイージュースのアサイードリンクセットをミルクティーでオーダーする。

隣席の女性客は手を伸ばせば届くほど近く、男は言葉を発せずに口の動きで伝える。
「オマンブーの蜜を指に付けろ」
「いや、できない」
隣席を見ようともせずに首を振り、同じように言葉を発せずに答えると、女性がびっくりして男を見つめるほど毅然として一言だけ発する。
「アユ」
悄然として目を閉じたアユは周囲を見回し、隣席の女性さえもが気にする様子もなくスープを飲むのを見て安堵の表情と共に素早くスカートの裾から手を入れ、滑りを付けた指先を自然な風を装ってテーブルに乗せる。
「濡れているよ、拭いてあげるから待ちなさい」
部屋を出るときに脱がせてポケットに入れてあったショーツを取り出し、平然と指先の滑りを拭う。
「きれいになったよ」
隣席の女性が顔を向けたときショーツはすでにポケットに戻り、アユが指先を見つめている姿を見るだけだった。
唇を舐めハァハァッと息をするアユを見ても、不思議そうな表情をするわけでもなく再びスープを飲み始める。
そんな様子に頬を緩めたアユが男を見つめるタイミングで食事が届き、悪戯されることがなくなったと思ってフゥッ~と息を吐く。

「お待たせいたしました。ごゆっくりお召し上がりください」
オレンジジュースを飲んだアユは美味しいと一言発し、生野菜を食べてトーストを頬張る。
男はグラノーラにアサイージュースをかけて軽くかき混ぜ、トッピングのバナナとマンゴーを食べながらアユの健啖ぶりを好ましく見つめる。
「食欲旺盛の女は嫌い??昨晩は激しかったので疲れちゃった」
声を潜めても手を伸ばせば届くほど近い隣席の女性が顔を向けることなく横目でアユを睨んで眉を顰め、斜め前に座る男の顔を見て口元を緩める。

誰に言うともなく、ごちそうさまと呟いた隣席の女性は男に向けて軽く会釈して静かに席を離れる。
「ねぇ、どうしたの??彼女が席を離れるとき、あなたに何か合図したでしょう??」
「うっうん、そうか??」
「そうだよ、間違いない。どうしたの??ねぇ、教えて??」
「知りたいか??そうだよな……昨晩は激しかったので疲れちゃったって言ったろ、それを聞かれたんだよ。羨ましかったんじゃないか、オレには満足させてあげて、ご苦労様って言いたかったんじゃないか??」
「そんな……聞かれたの??二度と会うことがない女性だからいいけど、恥ずかしい。フフフッ、あなたと過ごす時間に比例して私はエッチな女になっていく、あなたのせいだから責任とってね」

アサイージュースに馴染んだグラノーラの中のレーズンとクランベリーを数粒取り分けた男は、
「これは二つとも赤いけどアユのオッパイの先っちょとは似ても似つかないか……アユのはこんなに萎びてないし品がある。色もピンクで可憐だし、ゴメン。変な想像しちゃった」

ホテル -23

ノーパン

高い所が怖いらしいとあたりをつけたアユは、
「夜はしょうがないけど今は陽光に照らされながら可愛がってほしい。こんな格好で縛られて、日陰の女みたいで悲しい……」
悲しそうな表情を作って気落ちしたような演技をするアユに、
「分かったよ、高所恐怖症のオレがショックで倒れても知らねぇぞ」
捨て台詞を吐いて立ち上がった男は窓に近付き、視線を部屋の中に向けてカーテンを開ける。
タッセルを金具に掛けようとしても目を背けたままでは思い通りにならず、時間をかけてやっと留め、フゥッ~と息を吐いてベッドに戻る。
「ごめんなさい、本当に高いところが苦手なんだ、冗談だと思っていた……ウフフッ、マヨネーズの他にもあなたの苦手なモノを一つ発見できた」

カーテンを開け放った部屋は眩い朝陽に覆われて前日からの淫靡な空気を消し去り、目を眇めた二人は苦笑いを浮かべる。
「どうする??」
「残念な気がするけどこんなに明るいと……続きは家に帰ってからしてくれる??あなたに責められて身悶えると、多分、息をするのが苦しくなる……どんな気持ちになるのか試してみたい」
「直ぐじゃなく、何度か会ってからにしようか……首を絞められたいってアユが強請るまで待つことにするよ」
「いじわる、帰ってからの私はそんな恥ずかしいことを口にできない。今日はいつもと違うからエッチになれるのに……」
「クククッ、帰ってからアユは自分で思っている以上にスケベだってことを教えてあげるよ」
「フン、嫌な男。昨日から、何回、言っただろう、いやな男って……口にすればするほど好きになる。フフフッ、お腹がすいた、何か食べたい」
「部屋を出る、それともルームサービスが好い??」
「食べに行く。あなたのモノが使用可能になったようだからルームサービスだとムラムラしそう」
「そんなの食べていないで、私を食べてって言いそうなのか??」
「バカ、行こうよ。お腹がすいた」

シーツを跳ね上げてベッドから降りたアユは下着さえも着けていない白い肌を陽光に晒し、夜の薄明りの中で大理石のように滑りを帯びていた肌は妖艶さを隠し、成熟した女性らしいムッチリ感の中に凛とした清潔感を漂わせる。
「どうしたの??涎が垂れそうな表情だよ」
「初めてアユを見たとき、こんな時間を持てるとは思わなかったよ」
「ほんとう??あなたは気に入った女性を必ず誘うってゴローちゃんが言ったのに、声をかけてくれなかった。好みの女じゃなかったんでしょう??」
「本当にそんな風に思っているのか??オレは自信家じゃないから高根の花だと思ったから本心を隠していただけだよ」
「ウフフッ、そうは思えないけど、今は信じてあげる……準備できたよ」

膝丈のデニムスカートに白ニットのザックリセーターを合わせたアユはくるりと一回りして、どうだと言わんばかりに嫣然と微笑む。
「う~ん、素材が好いから何を着けても似合う……もう少し、色気が欲しいな、脱いで」
「えっ、なに??気に入っているんだけどな……上、下??どっち??」
「下」
スカートを脱ごうとするアユを制して、
「スカートじゃない。パンツを脱ぎなさい」
「下着??できない、ノーパンでなんか歩けないよ」
「アユ……」
叱声にも似た有無を言わせない響きにアユは顔を背けて窓外に広がる景色を一瞥し、夜の猥雑さを隠して昼間の健康的な営みを取り戻した街を見て息を吐く。
「フゥッ~、今日のあなたは、いつもと違うけど好き。あなたを信じているから、脱ぐね……恥ずかしい」
微かに朱に染めた頬に手を添えたアユは、恥ずかしいと呟き、デニムスカートの裾に手を入れて背を向ける。

「脱いだよ、これでいいの??」
振り向いたアユは下着を握り締めた手を男に示して瞳をらんらんとさせて欲望を剥き出しにする。
ウェストに触れたり裾を引っ張ったりと落ち着くことはないものの嫌がる様子はなく、昂奮で乾いた唇に舌を這わせて欲情を露わにする。
握り締める指をはがしてショーツを受け取った男はポケットに入れて、
「一階のカフェレストランに行こうか」
手を取りドアに向かう男に従うアユは膝を曲げて腰が引け、凛とした姿勢を見せることがない。
「そんな恰好で歩くと人目を引くよ」
「立っているのさえ辛い。ノーパンで歩いたことなんてないもん」

アユの背中に左手を回して抱き寄せ、チュッと音を立てて唇を合わせた男はデニムスカートの裾をたくし上げて股間に指を伸ばす。
「いやっ、しっとり滲み出ているのが自分でも分かるもん、恥ずかしい」
「どうする??朝食は後回しにするか??」
滑りを帯びた指をアユの唇に近付けると舌を這わせてねっとりと舐めとっていく。
羞恥を滲ませながらも見つめる視線を避けることなく口を開く。
「あなたと一緒だから、このドキドキ感を楽しんでみたい。でも、こんなことは初めてだから、ゆっくりでいいでしょう??」
自分の言葉で落ち着きを取り戻したアユは男の腕に右手をかけて歩き始める。
ドアを開けて廊下に出るとスカートの裾を確かめ、やっと安心したのか、それともノーパンのスリルを楽しむ気分になったのか前を向いて凛とした姿勢で歩を進める。
エレベーターで二人きりになると、
「ねぇ、触ってみて。グジュグジュになっていると思う」
再び裾を捲り上げて股間に指を伸ばすと、熱い蜜でしとどに濡れそぼつ股間が迎えてくれる。

割れ目に指を添えて、ほんの少し力を込めるとズブズブと吸い込まれるように姿を消してしまう。
グジュグジュ、ヌチャヌチャッ……掻き回されたバギナは狭いエレベーター内に卑猥な音を響かせる。
「クゥッ~、だめ。止めて、ダメ、だめっ……ハァハァッ」
男の手首を掴んで動きを封じ、太腿を閉じるアユは瞳を真っ赤に染めて恨めしそうに男を見つめる。

チンッ……男は指を引き抜き、アユはスカートの裾を引っ張って髪を整え、エレベーターのドアが開くと、何事もなかったかのように平静を装ってカフェレストランに向かう。

ホテル -22



目覚めたアユは男の腕に抱かれていることに安堵し、顔も身体も動かすことなく男に寄り添ったまま静かに息を吐く。
「うん??起こしちゃった??ごめん、カーテンを閉めるのに立ち上がっちゃったからね」
「そうなの??本当だ、暗い……あなたに抱いてもらった時も薄明り、目が覚めても薄明り。薄明りが似合う女かなぁ??」
「アユは明るい場所が似合うよ。夜も昼も光があるから影が出来る。男は陰に魅かれる。夜のネオンが作る影はいかがわしくて妖しい魅力があるし、昼間の太陽が作る影は決して見た通りではなく隠している魅力がある事を教えてくれる。昼間のアユは一目惚れするほど立ち居振る舞いが美しい」
「フフフッ、昼間の私が作る影の秘密を教えてくれる」
「簡単だよ、ただ一言、絵を描くのが巧い。実物よりも好い男に描いてもらえるとは思わなかった」
「それだけ??絵を描くのが上手な人はいっぱいいるよ」
「絵を描くのが上手な人はいるだろうけど、アユほどセックスに貪欲で絵を描くのが上手な人がいるかなぁ??」

「クククッ、教えてあげる。“叫び”で有名なムンクだけど母や姉の死に直面、それと色男だったから恋愛地獄を彷徨って愛と死に翻弄されたの。ラファエロも女性関係で苦労したんだよ、彼の死後、相手の女性は修道院に入ってラファエロとの愛を全うしたとも言えるけど……日本では、そうね、岡本太郎さんの母親、岡本かの子さんが有名だよね。時代が違うから、現代人の倫理観だけで解釈するのはどうかと思うけどね……」
「そうか、アユも芸術家のDNAを持っているからスケベなんだ、ふ~ん」
「そうかも……私自身、今まで気付かなかったけど、あなたに会って才能が開花した。クククッ、エッチかどうか判定してね」

腕の中からすり抜けて素っ裸で寝る男の股間に移動する。
アユを満足させてくれたペニスは元気だった昨夜の面影もなく萎れてだらしなく股間にぶら下がる。
「暴れん坊チンチンはどこに行っちゃったかと思うほど萎れて元気がない」
「しょうがねぇだろう。若いアユに満足してもらおうと必死に頑張ったんだからな」
「あなたは十分に若いし、私は三十を過ぎているんだよ。若さを誇る歳でもない」
竿を手の平で受けて擦り、陰嚢をヤワヤワと揉んでも元気になる気配もない。
「あ~ぁ、や~めた」
男と同じく素っ裸のまま眠りについていたアユは股間から這い上がり、胸の膨らみを擦りつけて怒った振りをする。
「そうか、アユを満足させられないオレを嫌いなっちゃったか。しょうがないよ、ごめんな」
「クククッ、私のふくれっ面が可愛かった??嬉しそうにしてるもん、ねぇ、怒った振りをする私を可愛いと思った??」
「可愛いよ。蠱惑的っていうのかな、光と影、オレの気持ちを惑わすほど可愛い」

押さえつけるようにして身体を重ね、アユの両手を左手一本で掴んで頭上で固定する。
「いやんっ、怖い。哀れな私は襲われちゃう、オオカミの顔が近付いてくる」
顔を近付けた男はそれ以上、何をすることもなくただ見つめ続ける。
羞恥で頬を染めた顔を背けようとしても、手首を掴む手の肘を顔に添えてそれを許さず、反対側に動こうとすると右手を頬に添えて許さない。
「恥ずかしがるアユを見ると苛めたくなる」
「いやっ、意地悪……許して、ダメ??どうして??」
「小っちゃい男の子が大好きな女の子に意地悪するのと同じかなぁ。気持ちをうまく伝えられない焦りから訳の分かんない行動をするような……」
「フフフッ、分かるような気がする。あなたにもそんな経験があるの??」
「残念ながらオレにはない。男友達と遊ぶばかりで女の子に興味はなかったよ」
「クククッ、それで、18歳の時、ソープで初体験を済ませたんだ」
「それは違う。オレの初体験は当時付き合っていた同級生、ソープのお姉さんはセックスを教わった先生」
「ふ~ん、自分の人生を偽っちゃうんだ……ふ~ん」

瞳に意地悪な笑みを湛えて見つめるアユに欲情した男は太腿で股間を圧迫しながら乳房をヤワヤワと揉み始める。
両手を掴まれて自由が利かないアユは身体を揺すっても逃れることが出来ず、噛みつこうと顔を上げても避けられてしまう。
「オオカミに食べられるのが嫌で抗う可愛い子ウサギちゃん。どんな風に料理されたい??」
上体を被せられて動きを封じられた上に腿で股間を擦られながら乳房を揉まれ、耳元で囁かれてはアユに抗うすべもなく、
「オオカミさんがあなたなら食べられたい。どんな風に料理されても幸せ、あなたの身体の一部になれるんだもん。いつもと違う事をされたい、私の身体で遊んでほしい」

唇を重ねてキスした男が離れると、
「フフフッ、なんか熱い棒を押し付けられたみたい。これで終わりじゃないでしょう??食べて、オオカミさんに食べられたいの……早く」
「アユ、自分の言葉を忘れるなよ。ゴメンなさいって言っても許さないからね」

脱ぎ捨ててあったガウンの紐をアユの首に巻いて両端に手首を縛りつける。
「アユ、動くと首が締まるよ。気をつけなさい、分かったね」
「ウグッ、グゥッ~、怖い、少し動いただけでも首が締まる……ねぇ、大丈夫??」
「大丈夫だよ、首が締まるかどうかはアユ次第だから」
「うん、あなたの言葉を信じる。カーテンを開けないの??」
「夜はいいけど、昼間はダメだよ、こんな掃き出し窓みたいに足元までガラスが入っているんだから」
「もしかして……そうなの、高いところが怖いの??夜ははっきり景色が見えないから平気なんでしょう??」
「うるさい」
意地になって否定する男の言葉にアユは意地悪な笑みを浮かべる。

ホテル -21

想い出

「カーテンを開け放ったまま寝るの??」
「街の灯りと漆黒の空、腕の中には可愛いアユ、好いと思わない??」
「うん、嫌じゃない。腕枕されて夜空や夜景を見ながら寝るのって、あなたとホテルでお泊りしているって実感できる……嬉しい、ありがとう」
「寝顔と起きた時のアユを想像すると眠るのがもったいない」
「いや、そんな事を言われたら、あなたより先に眠れないし、いつものように目覚めた後のぐずぐずした時間を過ごせなくなる」
「オレの腕の中で屈託なく眠るアユを見たいって気持ちを分かってくれないかなぁ……どうだ??」
「ウフフッ、嬉しいけど自由にさせてくれないの……」
「そうだよ、眠っているときも腕枕か手をつないで夢の中でアユが迷子にならないように守るんだよ」
「あなたは私を悦ばせるのが上手、そんな事を言われたら興奮して眠れない。何かお話をして……ここから見える範囲にある想い出を聞きたい」

「ヒルトンの左に、大阪第一ホテルが入っている円筒形の大阪マルビルがあるんだけど、その二階、入ってすぐ右の階段を上がった処にマハラジャ.マルビルがあったんだよ。入口に象の牙のようなのがアーチを作って迎えてくれた……バブル期のマハラジャやジュリアナ東京って知ってる??」
「名前は聞いたことがあるけど知らない。復活したって何かで見たことはあるけど……地元にいた頃は高校生でしょう、大学は東京だし、いつ頃なの??」
「大学3、4年、息子が生まれる頃だよ。マハラジャ.マルビルと神保町交差点の近くにある錦華公園は忘れられない場所だよ」
「表情が変わった。いやな事を思い出しちゃったようね、ごめんなさい……今、私の事は頭にないでしょう。話を止めて眠っても好いよ」
「いや、アユにはつまんないかも知れないけど聞いてくれる??」
「うん、あなたの辛い想い出でしょう??そんな感じがする。私でよければ吐き出して……」

男の初体験は高校三年の卒業式を終えた直後の日曜日。
友人たちの話は参考にならないので神戸福原のソープランドで教わった。
「えぇ、ほんとう??高三も意外なら、そういう店で教わるって……」
「入浴料を払って、女性とは初めてなのでやり方を丁寧に教えてもらいたいって告げて、ソファに座っていたら他にも客が一人いて恥ずかしかったって覚えているよ。迎えに来てくれたスタイルの好いお姉さんに案内されて部屋へ」
「で、どうだったの??」
「お姉さんにサービス料を払って、脱いで、風呂に入ってって言われるがまま従った記憶がある」
「その時、ここは大きくなった??」
「う~ん、どうだったんだろう??記憶がないよ……色々サービスを受けて丁寧に教えてもらって挿入まで誘導されたんだけど……」
「うん、だけどって、どうなったの??」
「逝けなかった。初めてだし、申し訳ないと思えば思うほど時間がかかったんだよ。私じゃ善くないのって聞かれた記憶があるんだけど、善いも悪いも初めてだから分からないしね」
「それで……最後はどうだったの??」
「いったん出して、オシャブリしてもらって挿入のやり直しとか、とにかく時間がかかったんだよ。ようやく逝ったんだけど、気にすることないよ、初めてだし私が相手だしねって……好きな人が相手だともっと昂奮するだろうし大丈夫だよって言われた記憶がある……その人がトラウマになっている部分もあるんだけどね。モデルのような体形の人だった」
「分かったような気がするけど、優しい人に教えてもらってよかったね。それで、彼女を相手にしてどうだったの??」
「大丈夫だったよ……その後はオレが東京で彼女は地元の大学。四月の日曜日、名古屋で会って東山動物園やテレビ塔に行った。五月の連休は当時住んでいた溝の口のアパートに来てくれた。付き合いは続いて、開店早々のマハラジャに行って、その帰りに子供出来たから結婚するって言ったらサヨナラって言われた」
「傷つけちゃったんだ……後悔している??そう……彼女とその後は??」
天井を見つめたまま頷く男にすべてを吐き出させた方がいいと思ったアユは会話を続ける。

「偶然、一度会ったけど話はしなかったなぁ……実家から空港への道筋に彼女の実家があるんだよ。フフフッ……」
「最初は辛かった??……錦華公園の女子は??」

「彼女はオレが参考書を買いに行った神保町の本屋さんでアルバイトしている人だった。
専門書フロアーにいて、こういうことを勉強しているんですかって聞かれたのが最初だった。彼女は近くの大学に通っていて門限の厳しい実家通いだったから後楽園や小石川植物園、本郷、皇居周辺、神田とか、やたら歩き回ったよ。自主休講でオレのアパートに何回か連れてったけどね……あの日は地下鉄神保町駅の近くにあった柏水堂でマロングラッセを買って錦華公園のベンチに座ったんだけど、子供が出来たから、もう会えないって伝えた」
「そうなの……好い想い出になってる??」
「いや、記憶から消したいよ。時々思い出すけど忘れたいな……」

「あのね、センチになっている処で傷口に塩を塗るみたいだけど、遠距離と近距離とはいえ、二股ってヤツの上に今の奥様に子供が出来たんでしょう??元気のいい大学生とはいえ遊びすぎ。奥様とのことは直接聞いているから理解できるけど、閻魔様から招待状が届いてもしょうがないよ」
「そうか、そうだな。悲劇のヒーローじゃないんだ、オレは。だからいつまでも記憶から消してもらえないんだ」
「フフフッ、そうかもね。彼女たちは幸せになっているよ。ゴローちゃんが言ってたよ、ヤツとやった女性はみんな幸せになっているって。振られた、振られたって言うけど、結婚してオミズを上がった人が多いんだよって」
「多いんだよって、オレはそんなヒドイ男じゃないよ。ほんの一人か二人か三人程度。遊び回っているような言われ方は心外だなぁ」
「ごめんなさい。でも私じゃなくゴローちゃんが言ったんだからね」

「聞いてもらってよかった。失礼な事をしちゃったかなぁってずっと悔やんでいた。オレがどれほどの存在だったか分からないし、アユに言われて思い上がりかもしれないと分かったよ。ありがとう」
「えっ、そんな事を言ったつもりはないよ。彼女たちにとってあなたは、ただの通過点、どうでもいい存在なんて言ってないよ。誤解しないで」
「分かっているよ。オレの言い方が悪かった、気持ちのどっかに刺さっていた棘がもう少しで剥がれそうになった。アユのお陰だよ……ところで、アユにとってオレはどの程度の存在か聞きたいね??」
「……こんな時に聞くのは卑怯。いつか、改めて聞いてくれる??答えを用意しておくから……フフフッ、おやすみなさい」

ホテル -20

ピロートーク    

熱い迸りを奥深くに吐き出した男はアユの手を握り、
「気持ち良かったよ。いつもより激しいアユも可愛い」
包み込んだ手の甲を親指の腹で撫でて指の付け根を優しく擦る。
「気持ちいい……あなたに食べてもらおうと思って料理を始めると後ろに立ってお尻をツルって撫でて首に舌を這わせ、何を食べさせてくれるのって息を吹きかけながら囁く。並んで歩くときは手をつないでくれる……悪い男」
「大好きなアユの事をいつも触れていたいと思うのはダメなのか、分かったよ、これからは触らないようにする。我慢するよ」
「ダメ、これまで通りがいいの。身体のどこかに触れてくれると忘れられてないって思えるもん、抱いてくれなくてもね……フフフッ、私の身体に飽きちゃった??」

漲る力を吐き出した股間から元気が抜けていくのを感じる男は、つないだ手に力を込めてアユを見つめる。
「フフフッ、いやんっ、そんなに見ないで。恥ずかしい……気持ち良かったし終わった後も余韻を楽しませてくれるから大好き」
「好きって言われると照れるな」
「負担になる??決して奥様との時間は邪魔しないし、お泊りしたいなんて我がままは二度と言わないって約束する」
「アユはそんな事を気にしなくていいよ。我がまま言わないなんて約束されると困るなぁ……人形のように思い通りになるアユが好きなんじゃない。笑ったり怒ったり、我がままも言う、そんなアユが好きなんだよ」
「うん、分かってる……この間、お客様に嬉しいことを言われちゃったの。どんなことか分かる??」
「ウ~ン、そうだなぁ……アユが可愛いとか美人ってことは改めて言う事じゃないだろうし……店に掛けてある絵を見てアユが書いたかどうか、服装のセンスがいいとか、指がきれい、後ろ姿が凛として格好いい……そんなことかなぁ??」
「本当にそんな事だと考えているの??今の私がそんな事を言われて喜ぶと思っている??」
悪戯っぽい笑みを浮かべて額を擦り合わせたアユは男の瞳を覗き込む。

アユの視線に照れる男が身体を蠢かすと、
「アンッ、漏れちゃう。だめ、動いちゃダメ」
バギナの奥深くで受け止めた迸りが漏れそうになるからと股間を押し付けたアユを抱きしめ、鳥が餌をついばむようにチュッチュッと唇を合わせる。
「フフフッ、教えてあげる……喧嘩した彼氏と仲直りしたのって言われたんだよ。どうしてって聞いたら、この前、来たときと今日は全然違う。楽しそうだからって」
「クククッ、それで、何て言ったの??」
「よく分かったわねぇ、私が悪いんだけど、ケンカして別れようって言っちゃった。日を改めて謝ろうとしたら、ケンカってどっちが悪いって事じゃないよって許してくれたから嬉しくてって言ったら、フフフッ、ごちそうさま、幸せのおすそ分けしてもらうよ、カンパイだって」
「好いお客さんだね」
「だめ、ダメッ、漏れちゃう。あなたのモノが萎んじゃうからだよ……」

ナイトテーブルに手を伸ばした男は手にしたティッシュを結合部にあてて萎れ始めたペニスを引き抜く。
「アンッ、可愛いボウヤが居なくなっちゃった……えっ、クククッ、さっきまで私の中で我が物顔に暴れていたのに、こんなに萎れて小っちゃくなっちゃって、可愛い」
男の胸から這い出たアユは身体を入れ替えて股間を覗き込む。
自ら吐き出した男汁と花蜜にまみれたペニスはだらしなくぶら下がり、指先で竿を撫でて再び可愛いと呟いたアユはパクリと口に含んで舌を絡ませる。
滑りをすべて舐めとって口に溜め、口をア~ンと開けて男に見せて嫣然と微笑み、ゴクッと音を立てて嚥下する。
白い喉を上下させて飲み込む様子を見つめる男は頬を緩め、唇を重ねて舌を差し入れる。
瞳を真っ赤に染めて受け入れたアユの唇をハムハムと甘噛みして舌を絡めると、ズズッと唾液を啜りこむ。
「ダメッ、これ以上されると、またしたくなっちゃう。今は我慢する。明日の朝、目が覚めた時にしてもらうんだから……約束だよ。我がままを言いなさいって聞いたよ」

したくなったら困るからシャワーは別々にというアユに応えて男がベッドを離れる。
汗と共に卑猥な思いも洗い流した男に続いてシャワーを浴びたアユは、ナイトウェアを羽織って満足の証のように上気した顔を隠すように俯いたまま戻る。
男に背を向けて通り過ぎ、薄明りの部屋の窓際に立って街の景色に見入る姿は神々しく感じるほど美しい。
かきあげた黒髪がオフホワイトのナイトウェアに広がる色っぽさにゴクリと唾を飲む男は、抱きつきたくなる衝動を目を閉じて首をぐるりと回して我慢する。
「フフフッ、見えているよ。抱いたばかりの私の後ろ姿に昂奮してゾクゾクするの??」
「参ったな、見られていたとは不覚だった。そうだよ、凛としたアユの後ろ姿に惚れ直したよ」

アユの背後に立ち肩に手を置いて同じ夜景を見る男は、
「明日は今見ている景色の場所を歩いてみようか」と、囁く。
プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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