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ホテル -21

想い出

「カーテンを開け放ったまま寝るの??」
「街の灯りと漆黒の空、腕の中には可愛いアユ、好いと思わない??」
「うん、嫌じゃない。腕枕されて夜空や夜景を見ながら寝るのって、あなたとホテルでお泊りしているって実感できる……嬉しい、ありがとう」
「寝顔と起きた時のアユを想像すると眠るのがもったいない」
「いや、そんな事を言われたら、あなたより先に眠れないし、いつものように目覚めた後のぐずぐずした時間を過ごせなくなる」
「オレの腕の中で屈託なく眠るアユを見たいって気持ちを分かってくれないかなぁ……どうだ??」
「ウフフッ、嬉しいけど自由にさせてくれないの……」
「そうだよ、眠っているときも腕枕か手をつないで夢の中でアユが迷子にならないように守るんだよ」
「あなたは私を悦ばせるのが上手、そんな事を言われたら興奮して眠れない。何かお話をして……ここから見える範囲にある想い出を聞きたい」

「ヒルトンの左に、大阪第一ホテルが入っている円筒形の大阪マルビルがあるんだけど、その二階、入ってすぐ右の階段を上がった処にマハラジャ.マルビルがあったんだよ。入口に象の牙のようなのがアーチを作って迎えてくれた……バブル期のマハラジャやジュリアナ東京って知ってる??」
「名前は聞いたことがあるけど知らない。復活したって何かで見たことはあるけど……地元にいた頃は高校生でしょう、大学は東京だし、いつ頃なの??」
「大学3、4年、息子が生まれる頃だよ。マハラジャ.マルビルと神保町交差点の近くにある錦華公園は忘れられない場所だよ」
「表情が変わった。いやな事を思い出しちゃったようね、ごめんなさい……今、私の事は頭にないでしょう。話を止めて眠っても好いよ」
「いや、アユにはつまんないかも知れないけど聞いてくれる??」
「うん、あなたの辛い想い出でしょう??そんな感じがする。私でよければ吐き出して……」

男の初体験は高校三年の卒業式を終えた直後の日曜日。
友人たちの話は参考にならないので神戸福原のソープランドで教わった。
「えぇ、ほんとう??高三も意外なら、そういう店で教わるって……」
「入浴料を払って、女性とは初めてなのでやり方を丁寧に教えてもらいたいって告げて、ソファに座っていたら他にも客が一人いて恥ずかしかったって覚えているよ。迎えに来てくれたスタイルの好いお姉さんに案内されて部屋へ」
「で、どうだったの??」
「お姉さんにサービス料を払って、脱いで、風呂に入ってって言われるがまま従った記憶がある」
「その時、ここは大きくなった??」
「う~ん、どうだったんだろう??記憶がないよ……色々サービスを受けて丁寧に教えてもらって挿入まで誘導されたんだけど……」
「うん、だけどって、どうなったの??」
「逝けなかった。初めてだし、申し訳ないと思えば思うほど時間がかかったんだよ。私じゃ善くないのって聞かれた記憶があるんだけど、善いも悪いも初めてだから分からないしね」
「それで……最後はどうだったの??」
「いったん出して、オシャブリしてもらって挿入のやり直しとか、とにかく時間がかかったんだよ。ようやく逝ったんだけど、気にすることないよ、初めてだし私が相手だしねって……好きな人が相手だともっと昂奮するだろうし大丈夫だよって言われた記憶がある……その人がトラウマになっている部分もあるんだけどね。モデルのような体形の人だった」
「分かったような気がするけど、優しい人に教えてもらってよかったね。それで、彼女を相手にしてどうだったの??」
「大丈夫だったよ……その後はオレが東京で彼女は地元の大学。四月の日曜日、名古屋で会って東山動物園やテレビ塔に行った。五月の連休は当時住んでいた溝の口のアパートに来てくれた。付き合いは続いて、開店早々のマハラジャに行って、その帰りに子供出来たから結婚するって言ったらサヨナラって言われた」
「傷つけちゃったんだ……後悔している??そう……彼女とその後は??」
天井を見つめたまま頷く男にすべてを吐き出させた方がいいと思ったアユは会話を続ける。

「偶然、一度会ったけど話はしなかったなぁ……実家から空港への道筋に彼女の実家があるんだよ。フフフッ……」
「最初は辛かった??……錦華公園の女子は??」

「彼女はオレが参考書を買いに行った神保町の本屋さんでアルバイトしている人だった。
専門書フロアーにいて、こういうことを勉強しているんですかって聞かれたのが最初だった。彼女は近くの大学に通っていて門限の厳しい実家通いだったから後楽園や小石川植物園、本郷、皇居周辺、神田とか、やたら歩き回ったよ。自主休講でオレのアパートに何回か連れてったけどね……あの日は地下鉄神保町駅の近くにあった柏水堂でマロングラッセを買って錦華公園のベンチに座ったんだけど、子供が出来たから、もう会えないって伝えた」
「そうなの……好い想い出になってる??」
「いや、記憶から消したいよ。時々思い出すけど忘れたいな……」

「あのね、センチになっている処で傷口に塩を塗るみたいだけど、遠距離と近距離とはいえ、二股ってヤツの上に今の奥様に子供が出来たんでしょう??元気のいい大学生とはいえ遊びすぎ。奥様とのことは直接聞いているから理解できるけど、閻魔様から招待状が届いてもしょうがないよ」
「そうか、そうだな。悲劇のヒーローじゃないんだ、オレは。だからいつまでも記憶から消してもらえないんだ」
「フフフッ、そうかもね。彼女たちは幸せになっているよ。ゴローちゃんが言ってたよ、ヤツとやった女性はみんな幸せになっているって。振られた、振られたって言うけど、結婚してオミズを上がった人が多いんだよって」
「多いんだよって、オレはそんなヒドイ男じゃないよ。ほんの一人か二人か三人程度。遊び回っているような言われ方は心外だなぁ」
「ごめんなさい。でも私じゃなくゴローちゃんが言ったんだからね」

「聞いてもらってよかった。失礼な事をしちゃったかなぁってずっと悔やんでいた。オレがどれほどの存在だったか分からないし、アユに言われて思い上がりかもしれないと分かったよ。ありがとう」
「えっ、そんな事を言ったつもりはないよ。彼女たちにとってあなたは、ただの通過点、どうでもいい存在なんて言ってないよ。誤解しないで」
「分かっているよ。オレの言い方が悪かった、気持ちのどっかに刺さっていた棘がもう少しで剥がれそうになった。アユのお陰だよ……ところで、アユにとってオレはどの程度の存在か聞きたいね??」
「……こんな時に聞くのは卑怯。いつか、改めて聞いてくれる??答えを用意しておくから……フフフッ、おやすみなさい」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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