彩―隠し事 303
転生 -8
転生か……生まれ変わったら最初に出会う女性は彩にしてくださいと女神さまにお願いした健志は腕枕で眠る彩の髪を撫でて目を閉じる。
「寝るの??」
「眠ったんじゃないの??」
「眠ったような気がするけど、健志の独り言で目が覚めちゃった。もう一度聞かせて……ねぇ、早く」
「何も言ってないよ、夢でも見たんじゃないか」
「夢じゃない、間違いなく聞いたもん。女神さまとか彩とか間違いなく聞いた。早く聞かせて」
腕枕される格好から健志の上半身に覆いかぶさる彩は先ほどまで眠気を催していたのも忘れたように胸をくっつけて甘えた仕草と言葉で琴線をくすぐる。
「しょうがねぇな、そうだよ。女神さま、生まれ変わったら最初に出会う女性は彩にしてくださいってお願いしたよ……文句ある??」
「ウフフッ、惚れられるのっていいね……ねぇ、惚れる幸せと、惚れられる幸せ、どっちがいいと思う??」
怒ったような声で答える健志を気にかける様子もなく、唇を指先でなぞり鼻梁に沿って滑らせ、眉毛の先を触れるか触れないかの繊細なタッチで確かめる。
「彩がほんの少し動くだけでオッパイの先っぽが胸をスリスリするから気持ちいい」
「エッチ……そんな事より惚れるのが好いか惚れられるのが好いか聞かせて」
「ウ~ン、そうだな。離れている時も彩とのことを想像して幸せな気持ちになれる。惚れているからこそ感じられる幸せだな」
「ウフフッ、彩は惚れられて幸せを感じる派だな。だって、健志と離れている時もプラチナチェーン下着で心を縛られているんだもん。健志が彩に惚れているから他の男性に気を許すなってことでしょう??」
「そうだ、オレは彩に惚れている」
「うん、信じる。付き合う女が出来たから、これまでのように会えないって言われたというカヲルさんの言葉も信じるしね。もっともっと、いっぱ~い、彩のことを好きになってもいいよ」
愛する気持ちと愛される幸せに酔いしれる二人は他愛のない言葉と触れ合う肌の感触で昂ぶる気持ちを抑えきれなくなってくる。
「健志が悪いんだよ。彩は眠っていたのに変な独り言で起こすんだもん」
「ごめん、静かに寝るよ。おやすみなさい」
「ウグッ、痛いっ……」
背を向けて眠る振りをする健志の肩に噛みつき、無理やり向きを変えさせた彩は、
「彩は健志のせいで目が覚めちゃった。どうしてくれるの??責任を取るのが旦那さまの責任でしょう……セックスだけが目的の関係なら満足すればいいでしょうけど……どうするの??」
今日はセックスもそれらしい行為もしていないのに、その言い草はおかしいだろうという言葉を飲み込んで胸に彩を抱き寄せて背中を擦り、髪に顔を埋めて匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「気持ちいい、このまま抱っこしてくれたら眠れそう」
言葉を返さず背中を撫で続け、髪を掻き揚げて耳の裏にキスすると、
「イヤンッ、そんなことをされたら気持ち善くなっちゃう、やめて」
横抱きの彩と一緒に仰向けになり、腕枕をして身体からずれたシャツを直そうと手を伸ばすとビクッと反応する。
卑猥な思いはないとあえて口にせずシャツの乱れを直すと彩は安心したように全身の力を抜き、気付いたときには規則正しい呼吸と共に再び寝息が聞こえ始める。
今度は独り言も吐かずに心の中で、可愛いよ、オレのお嫁さんと告げて目を閉じる。
「ウ~ン……好い匂い……ねぇ、起こして。独りじゃ、起きられない」
仰向けに寝たまま両手を高く宙に伸ばした彩は顔だけを健志に向けてドキッとするほど甘えた声をかける。
「しょうがねぇな。可愛い奥さんのお願いだから無視できないし……フフフッ」
抱き起こした彩を開け放った掃き出し窓からベランダの椅子に座らせると、ピザトースト、アボカドとトマトのサラダ、湯気を立てるミルクティと野菜スープの匂いが彩の眠気を吹き飛ばす。
「チーズの匂いで起きちゃった……野菜スープも具沢山で美味しそう。いただきます」
手も洗わず寝起きのまま熱々のスープを飲む彩を見つめる健志の表情は優しく綻ぶ。
「幸せそうな顔……どうして??」
「美味そうにスープを飲む彩の幸せそうな表情を見ると楽しくなっちゃう。幸せな表情の彩を見るとオレも幸せな気持ちになる」
「うん、野菜やウィンナーなど具沢山のコンソメスープで元気になるし、チーズやベーコンのピザトーストでエネルギーのチャージも十分……夜が待ち遠しい。明日は黄色いお日さまにご対面するんだよね、クククッ」
食事を終え、出勤準備をする彩の気配を背後に感じながら後片付けをする健志はこの上ない幸福感と残暑とは異質の温かさに包まれて仕事もはかどる。
「出かけるね。行ってきます」
「駅の近くまで送るよ」
人通りの少ない駅近くの路地で停車した健志は、彩の頬に唇を合わせ、
「行ってらっしゃい。帰りは駅に着く前に連絡してくれよ、迎えに来るから」
「うん、連絡するから迎えに来てね。健志はこれから何をするの??」
「日経先物取引でお金儲けするよ。今んとこ専業で仕事の様なものだから」
「一度見たいなぁ、PCを睨んでいる健志を……」
「じゃあ、今晩見せてやるよ」
「夜もできるの??」
「あぁ、日経先物取引は朝8時45分から15時15分まで休憩なし。その後は16時30分から翌朝5時30分まで、1日24時間の内、19時間30分取引出来るからね」
「夜、見せてね。チューしてくれないと行けない……ウフフッ、ありがとう、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
見送る健志の表情は薄気味悪いほどにやけ、路地からメイン通りに出た彩の姿が見えなくなると、ゴホンと空咳をして居住まいを正し、帰路に就く。
転生か……生まれ変わったら最初に出会う女性は彩にしてくださいと女神さまにお願いした健志は腕枕で眠る彩の髪を撫でて目を閉じる。
「寝るの??」
「眠ったんじゃないの??」
「眠ったような気がするけど、健志の独り言で目が覚めちゃった。もう一度聞かせて……ねぇ、早く」
「何も言ってないよ、夢でも見たんじゃないか」
「夢じゃない、間違いなく聞いたもん。女神さまとか彩とか間違いなく聞いた。早く聞かせて」
腕枕される格好から健志の上半身に覆いかぶさる彩は先ほどまで眠気を催していたのも忘れたように胸をくっつけて甘えた仕草と言葉で琴線をくすぐる。
「しょうがねぇな、そうだよ。女神さま、生まれ変わったら最初に出会う女性は彩にしてくださいってお願いしたよ……文句ある??」
「ウフフッ、惚れられるのっていいね……ねぇ、惚れる幸せと、惚れられる幸せ、どっちがいいと思う??」
怒ったような声で答える健志を気にかける様子もなく、唇を指先でなぞり鼻梁に沿って滑らせ、眉毛の先を触れるか触れないかの繊細なタッチで確かめる。
「彩がほんの少し動くだけでオッパイの先っぽが胸をスリスリするから気持ちいい」
「エッチ……そんな事より惚れるのが好いか惚れられるのが好いか聞かせて」
「ウ~ン、そうだな。離れている時も彩とのことを想像して幸せな気持ちになれる。惚れているからこそ感じられる幸せだな」
「ウフフッ、彩は惚れられて幸せを感じる派だな。だって、健志と離れている時もプラチナチェーン下着で心を縛られているんだもん。健志が彩に惚れているから他の男性に気を許すなってことでしょう??」
「そうだ、オレは彩に惚れている」
「うん、信じる。付き合う女が出来たから、これまでのように会えないって言われたというカヲルさんの言葉も信じるしね。もっともっと、いっぱ~い、彩のことを好きになってもいいよ」
愛する気持ちと愛される幸せに酔いしれる二人は他愛のない言葉と触れ合う肌の感触で昂ぶる気持ちを抑えきれなくなってくる。
「健志が悪いんだよ。彩は眠っていたのに変な独り言で起こすんだもん」
「ごめん、静かに寝るよ。おやすみなさい」
「ウグッ、痛いっ……」
背を向けて眠る振りをする健志の肩に噛みつき、無理やり向きを変えさせた彩は、
「彩は健志のせいで目が覚めちゃった。どうしてくれるの??責任を取るのが旦那さまの責任でしょう……セックスだけが目的の関係なら満足すればいいでしょうけど……どうするの??」
今日はセックスもそれらしい行為もしていないのに、その言い草はおかしいだろうという言葉を飲み込んで胸に彩を抱き寄せて背中を擦り、髪に顔を埋めて匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「気持ちいい、このまま抱っこしてくれたら眠れそう」
言葉を返さず背中を撫で続け、髪を掻き揚げて耳の裏にキスすると、
「イヤンッ、そんなことをされたら気持ち善くなっちゃう、やめて」
横抱きの彩と一緒に仰向けになり、腕枕をして身体からずれたシャツを直そうと手を伸ばすとビクッと反応する。
卑猥な思いはないとあえて口にせずシャツの乱れを直すと彩は安心したように全身の力を抜き、気付いたときには規則正しい呼吸と共に再び寝息が聞こえ始める。
今度は独り言も吐かずに心の中で、可愛いよ、オレのお嫁さんと告げて目を閉じる。
「ウ~ン……好い匂い……ねぇ、起こして。独りじゃ、起きられない」
仰向けに寝たまま両手を高く宙に伸ばした彩は顔だけを健志に向けてドキッとするほど甘えた声をかける。
「しょうがねぇな。可愛い奥さんのお願いだから無視できないし……フフフッ」
抱き起こした彩を開け放った掃き出し窓からベランダの椅子に座らせると、ピザトースト、アボカドとトマトのサラダ、湯気を立てるミルクティと野菜スープの匂いが彩の眠気を吹き飛ばす。
「チーズの匂いで起きちゃった……野菜スープも具沢山で美味しそう。いただきます」
手も洗わず寝起きのまま熱々のスープを飲む彩を見つめる健志の表情は優しく綻ぶ。
「幸せそうな顔……どうして??」
「美味そうにスープを飲む彩の幸せそうな表情を見ると楽しくなっちゃう。幸せな表情の彩を見るとオレも幸せな気持ちになる」
「うん、野菜やウィンナーなど具沢山のコンソメスープで元気になるし、チーズやベーコンのピザトーストでエネルギーのチャージも十分……夜が待ち遠しい。明日は黄色いお日さまにご対面するんだよね、クククッ」
食事を終え、出勤準備をする彩の気配を背後に感じながら後片付けをする健志はこの上ない幸福感と残暑とは異質の温かさに包まれて仕事もはかどる。
「出かけるね。行ってきます」
「駅の近くまで送るよ」
人通りの少ない駅近くの路地で停車した健志は、彩の頬に唇を合わせ、
「行ってらっしゃい。帰りは駅に着く前に連絡してくれよ、迎えに来るから」
「うん、連絡するから迎えに来てね。健志はこれから何をするの??」
「日経先物取引でお金儲けするよ。今んとこ専業で仕事の様なものだから」
「一度見たいなぁ、PCを睨んでいる健志を……」
「じゃあ、今晩見せてやるよ」
「夜もできるの??」
「あぁ、日経先物取引は朝8時45分から15時15分まで休憩なし。その後は16時30分から翌朝5時30分まで、1日24時間の内、19時間30分取引出来るからね」
「夜、見せてね。チューしてくれないと行けない……ウフフッ、ありがとう、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
見送る健志の表情は薄気味悪いほどにやけ、路地からメイン通りに出た彩の姿が見えなくなると、ゴホンと空咳をして居住まいを正し、帰路に就く。