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彩―隠し事 302

転生 -7 

月が雲に隠れると繁華街の灯りが一層煌びやかかに映える。
木曜日とあって週末ほど欲望に飢えた人たちはいないだろうが、仕事の疲れを癒す人や嫌なことを忘れたい人、酒を愛する人、愛する人ともっと親密になりたいために酒を飲む人たちで賑わっていることだろう。
恋と酒の共通点は人を熱くし、明るくして寛がせる。と言った人がいるらしい。
彩はビール、健志はジントニックを飲みながら繁華街の夜景に見入り、手を伸ばせば大切な人に触れることができると心が温かくなる。

ベランダで椅子に座る健志の太腿を跨いだ彩は背中を預け、背後から抱きかかえてくれる逞しい腕に手を添える。
「今はまだ9月、夜も温かいからこのまま眠ってみたい気もする」
「いいよ、眠りなよ。彩の体温や鼓動、呼吸を感じると幸せな気分になれる。眠ったらベッドに運んであげるから安心していいよ」
「このまま眠るのはもったいない気がする……一つ聞いてもいい??」
「いいよ、答えられないこともあるかもしれないけど……」
「彩にも秘密にしなきゃいけないことがあるの??」
「大切な人だからこそ話すことが大切だと思う。言葉にしなくても理解してくれるとは思わない。でも、大切な人だからこそ話せないこともある。友人には秘密にしなければいけないけど彩には知ってもらいことがあるし、その逆で友人には話せるけど彩だからこそ秘密にすることもある」
「クククッ、悠士さんとどんな遊びをしたかは飲み屋のオネエサンには話せるけど、彩には話せないってこと??」
「嫌なことを言うんだな。でもそのようなことかな」
「分かった。でも知りたいのは答えられることだよ。健志は夢の中で彩とどんなことでも出来るから独りでいても寂しくないって言ったでしょう、そしてその時は恋人なのか結婚しているのか教えてくれなかった……もし、彩にプロポーズするときはどんな言葉なのか知りたい」
後ろ向きで胸に抱きかかえられていた彩は太腿に横座りになって健志の顔を覗き込む。
突然見せたいじわるな笑みを浮かべた彩の表情にドキッとした健志は視線を繁華街の夜景に向けて話し始める。

「そうだな、生まれ変わった時は彩をお嫁さんにしたいけどプロポーズの言葉は決めている」
「生まれ変わったらプロポーズしてくれるんだ。今、お稽古してもいいよ」
「実は夢の中で済ませたよ」
「彩は喜んだでしょう??どんな言葉なのか教えて……」
「彩と結婚すればオレは幸せになれる。彩がオレのことを嫌いじゃなければ幸せなオレを見て彩も幸せな気分になれるはず、だから結婚してください」
「健志にとってなんだか都合のいいプロポーズだけど聞いたことがあるような気がする……」
「うん、釣りバカ日誌の中でハマちゃんがみち子さんにしたプロポーズ。君を幸せにする自信はありませんが、僕が幸せになる自信はあります。僕と結婚してください……これを拝借した。だめっ??」
「ダメじゃない。好きな人が幸せな気分になれば彩も幸せな気持ちになれる。大切な人が苦痛に苛まれているそばで彩が幸せな気持ちになれるわけがない。そんな言葉で告白されれば直ぐに抱きついてキスしちゃう……こんな風にね」
横座りから太腿を跨いで首に手を回してチュッと唇を合わせて小首を傾げる。
そんな仕草の可愛さに我慢できなくなった健志は彩を胸に抱きよせて額に唇を合わせる。
「アンッ、彩はキスが好きだけど、額じゃない」
「続きはベッドで……」
彩を横抱きにした健志は室内に入り、抱っこされた彩が窓を閉めるとベッドを目指す。

「ちょっと待って……」
彩はDVDを入れたクッション封筒を取り出してテーブルに置き、
「これはお土産だけど開けるのは明日、彩と一緒だよ。独りで開けると嫌いになるからね。分かった??」
「分かった、彩が帰ってくるまで預かっとく……引き出しに入れとくからね」
机の引き出しに封筒を入れた健志は再び彩を抱き上げる。

静かにベッドに横たえられた彩は健志の首に回した両手に力を込めて引き寄せ、
「ちゃんとしたキスをして、額は子供を寝かせる時にするキスの場所。彩は成熟した女だよ」
胸の前で手を組んで目を閉じる彩に覆いかぶさった健志はまたしても額に唇を合わせてチュッと音を立てる。
「彩は子供じゃないから額じゃダメだって言ったのに……どうして??」
わざとらしく怒って見せる彩の可愛さにドキッとしながらも、両手を掴んで動きを封じ、
「提案があるんだけど聞いてくれる??」
「聞いたら放してくれる??そんな強く掴まれると手が痛い」
「オレから離れたいんじゃ聞いてもらわなくてもいいよ」
「離れたいなんて言ってない、痛いって言っただけなのに。どんな提案なの??」
「今日は木曜で日曜までいられるんだろう??その間だけでいいから疑似夫婦ってことにしないか??……ダメか、そうだな。聞かなかったことにしてくれ」
「そうじゃない、急な話しでびっくりしたのと疑似夫婦ってどんなことをするのか分からないから戸惑っただけ。生まれ変わったらプロポーズしてくれるって言ったけど、その前にたとえ4日間でも夫婦になれるって嬉しい……転生って言葉かなぁ」
「転生、そうだね。日曜日、彩がこの部屋を出るまでは夫婦だよ……安心したから眠くなった。寝ようよ」
「キスは……それと夫婦ならすることがあるでしょう??」
「夫婦は毎日のようにしないだろう。今日は木曜で彩は明日出社すれば土日の連休。金曜の夜はオマンコが乾く暇もないほどやりまくるのが夫婦じゃないか??」
「そうなの??それが健志の理想の夫婦像なんだ、フ~ン。明日は仕事をセーブして夜に備えないといけないな……嘘は許さないからね」
「明日は生卵とヌルヌル粘々食品に精力剤で夜に備えるよ、それが夫婦だろう」
「クククッ、彩は水泳と今はヨガで鍛えているから体力勝負なら負けないよ。今日は旦那さまの言う通りに寝てあげる」
健志の腕に抱かれて居心地の良さを感じる彩はスゥ~、スゥ~と寝息を立て始める

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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