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彩―隠し事 274

淫 -1

必要な買い物はほとんど済ませたという健志に、ほとんどから漏れているものは何かと聞くと、彩が来ると思っていなかったからビールを買っていないと言う。
「ビールは我慢する。限られた時間だから早く帰りたい、二人の部屋に……」
人目を気にすることなく健志の胸に顔を埋めたまま上目遣いに見る瞳の眩しさに動悸が激しくなり、それを彩に気付かれる面映ゆさに周囲を見回し自然を装い身体を離す。
「抱き合うのは健志も恥ずかしくなってきた??」
「そうじゃないよ」
「じゃあ。どうして離れたの??彩の身体に飽きちゃった??」
「ドキドキしているのを感付かれちゃうと恥ずかしいから離れた」
「クククッ、どうしてドキドキしているのか聞かないことにする……早く、帰ろうよ。することがあるでしょう」
一瞬とはいえ瞳に淫蕩な光を宿した彩は、健志の腕を掴んで歩き始める。
 
車が走り始めると何気ない会話で急に会うことになった微かな緊張を解そうとする。
「ご主人に急な出張でも入っちゃったの??」
「そうなの、工場で不都合があったらしくて明日、月曜の朝一で立会うことになったんだって。彩は友達んチに出かけて帰路に就いたところで急に連絡が入ったから健志に連絡したんだけど迷惑だった??」
「彩を胸に迎えた時、嬉しくてドキドキしたのを気付いただろう」
「クククッ、突然会えたからってドキドキしていたの??急に連絡したから怒っているのかと思って心配しちゃった、ウフフッ」
日曜日の真昼間、夫には淫らな思いを隠して栞や愛美と秘密の遊びをした後で急な出張を知り、邪な思いを抱いたまま健志に連絡した。

栞と愛美との淫猥遊戯で満足できなかった身体の疼きが残り火となって燃え盛る機会を待っているのを彩は感じている。
健志もまた結婚している彩に自分から連絡するのは負担を強いることになるからと我慢していた気持ちを解き放つ瞬間を待っている。

バタンッ……ドアが閉まると同時に彩の手からバッグが落ち、健志の顔が目の前に迫る。
「彩に会いたかった」
「彩も健志に会いたかった……彩の言葉が嘘じゃないって確かめてくれる??」
ウッ……ウグッ、クゥッ~……ヌチャヌチャ、クチュクチュッ……歯がぶつかるほど激しく唇を合わせて呼吸が苦しくしくなるほど濃厚なキスを交わした二人はやっと人心地が付き、見合わせる顔に笑みが浮かぶ。

「照れちゃうな」
「ほんと、彩もやっと落ち着いた気分。ウフフッ、お腹が空いた、二人分ならあるんでしょう??」
愛に飢えていた二人は濃厚なキスと互いの瞳の奥に潜む相手を求める気持ちを見つけて安堵し、身体の疼きを解きほぐす前に胃袋を満足させることにする。
「牛タンシチューが出来ているよ。オレの趣味でシュワシュワワインの辛口を冷やしといたけど好いかな??」
鍋を覗いた彩は、
「タンシチューで何日間、過ごすつもりだったの??」
「なくなるまで。付け合わせの野菜とパンを換えれば気分転換できる。今日はガーリックトーストだよ」
ベランダで夕食を終えるころには夏の空にも闇が迫り、この街の夜の華やかさが広がり始める。

「彩はこの街が好き。最近、仕事でも来ることが多くなったけど活力に満ちてアイデアの発信地だし、夜の華やかさも好き」
昼間はこの街で働く人や買い物をする人たちの活気が新たな仕事を生み、ますます活力に満ちた街になっていく。
夜になると仕事を終えた人たちが一日の疲れを癒し明日への元気を充電するためにこの町に集い、そんな人たちを相手に仕事をする人たちも集まってくる。
夜の町は華やかになり明るさが増せば増すほど影も濃くなり、陰でしか生きられない魔物たちが集まってくる。
陰に生きる魔物は人間の欲や邪な思いを食べて成長していく。

「健志が毎日、ここから見ているこの街の華やかな灯りが作る陰でカヲルさんたちは生きているんだよね」
「光が影を作り、明るくなればなるほど影も濃くなる。人間の欲望が影を濃くし、人知れず深く潜っていくんだろうな」
「陰と縁のない生活もあるけど彩は親友に連れられて陽と陰の境に行き、健志や妖子に会った……」
ベランダから見えるこの街の夜の景色を違和感なく見つめる。
健志は背中越しに彩を抱きしめ、うなじに舌を這わせて温かい息を吹きかけて髪に顔を埋める。
「イヤンッ、くすぐったい……お風呂に入りたい。汗を流して……ねっ、いいでしょう」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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