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彩―隠し事 221

栞 新たな一歩 -10

歩きながら覗き込む栞に視線を合わせることなく表情を強張らせた優子は進行方向に視線を向けたまま口を開く。
「うん、私の想像を超えているから驚いて声が出なかった。栞が望んでというか、栞の企みでご主人と雨宮さんを手玉に取ったんだよね、そうだよね??」
「そうだと思うけど、自分でもよく分からない。私の性的好奇心のせいなのか、それとも大好きな旦那様の寝取られ願望を叶えてあげたいのか……多分両方だろうけど、後悔してないよ。クククッ、監督がね、優子によろしく伝えてくれって言っていたよ」
「私は絶対ダメ、出来ない」
「分かっている、でも付き合っている人がいるんでしょう??旦那様が優子んちに泊まることを許してくれるまで聞かない。その時は納得するまで徹底的に問いただすからね、ウフフッ、楽しみだなぁ」
優子の返事を求めるわけでもなく屈託のない笑顔で空を見上げて両手を大きく伸ばす。
「エッチな妄想を振り払うには仕事をするに限る。午後は頑張んなきゃ……プロジェクトのデータ分析は任せてね」

午後の栞は自ら口にした通り卑猥な妄想を振り払おうとするかのように仕事に集中し、最初の内はチラチラ様子を見ていた優子も安堵と共に午後の予定をこなしていく。
終業時刻になると栞は今日も夫と待ち合わせの約束をしていると早々に帰路に就き、残った課員も一人、また一人と退室して課長と優子だけが残る。
「前任の課長から鍬田さんと深沢さんは仲が良くていつも一緒だと聞いていました……金魚のウンチもいつまでもくっついているわけじゃないですよね。あっ、失礼な言い方をしました。謝ります」
「いいえ、自分でもそう思います。学生時代からの親友で親にも言えないことも相談し合う仲ですから……それはそうと、課長から見て私と栞、どっちが金魚でウンチはどっちだと思いますか??」
「えっ、苛めないでください。失言でした、全て取り消します」
「ウフフッ、自分でもそう思いますと言いましたよね。その上で、金魚かウンチか教えてください」
「強いて言えば、金魚は鍬田さん、深沢さんがウンチですね。深沢さんに聞かれたら反対のことを言いますが……顔が赤くなります、もう許してください」
「ウフフッ、分かりました。でも、乙女心が傷ついたので忘れるためには……お酒まで望みませんがコーヒーはご馳走していただかないと。どうですか??」
「分かりました、私の不注意で傷つけた乙女の心が癒されるようお供いたします。私はあの頃と変わっていないので洒落たカフェなど知りません。お店選びはお任せしていいですか??」

「ここは昔の乙女が二人で仕事帰りによく立ち寄るカフェです……久しくお会いしていませんが奥様はお元気ですか??」
「元気ですよ。今は近くのお店でパート勤めしています。鍬田さんと一緒に仕事をすると伝えると何といったか分かりますか??……浮気しようと思ってもまた振られるだけだから、諦めなさいと言われました。すべて、お見通しですよ」
「クククッ、アキは変わらないね」
「鍬田さんに振られて気落ちしている私を慰めてあげるからついておいでと言われた結果が結婚。私には過ぎた妻です、愛しています……あっ、ごめんなさい、着信です……えっ、妻からです」
一瞬、驚いた表情を見せた課長はその場でスマホに話しかける。
「もしもし、誰と一緒だと思う??……鍬田さんとコーヒーを飲んでいる……嘘じゃない、本当だよ……えっ、ちょっと待って、聞いてみるから……妻が代わってくれというんだけど、いいかな??」

「アキ??久しぶりだね、昔のままの声、懐かしいなぁ……こちらこそ、課長にはお世話になっています。クククッ、変なことを言わないでよ……いいの??お伺いします。話したいよね……栞も一緒に??どうかな、最近ご主人とラブラブで今日もサッサと帰っちゃった……分かった、誘ってみる。楽しみにしている。代わるね、バイバイ」
優子からスマホを受け取った課長は笑顔で話し、最後に「……分かった、買って帰る。うん、伝える」と告げてポケットに収める。
「鍬田さんとは縁のない運命のようです。妻に買い物を頼まれているようではだめですね。一縷の望みも絶たれました、諦めます」本気とも冗談ともとれる表情の課長はわざとらしくガッカリした表情を作り、ハァッ~と溜め息をつく。
「そうだ……それはそれとして、鍬田さんと深沢さんのお二人を絶対にお連れしろと言われました。助けると思ってお願いします」
優子もまた課長と浮気するのもいいかなと思っていた気持ちを旧友である奥様と話して水を差される。

店を出たところで課長と別れ、健志の声を聴きたいと思う気持ちを吹っ切るために夫の好きなビールのつまみを買って帰ることにする。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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