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彩―隠し事 167

海の見えるホテル -5

健志の胸に顔を埋めて眠っていた彩は目を覚まし、眠りを妨げないようにすり抜けてリビングルームに移動する。
カーテンを開けて真っ青な海に誘われるようにバルコニーに出ると降り注ぐ陽光が波に反射してキラキラ輝き、あまりの眩しさに目を眇める。
眩しさは決して不快なモノではなく身体の芯に残る日頃の疲れを溶かしてくれるようで気持ちが快活になってくるのを感じる。
灯台を見ると闇が覆う海の道標の役割も必要なくなり白い身体を休めて静かに佇んでいる。

前は海、左右は壁が視界を遮ってくれるのを確かめた彩は全てを脱ぎ捨てて素っ裸になり、下腹部や腰に手を這わせて一週間着けたままで過ごしたプラチナチェーン製下着を外されたことを確かめる。
仕事中も独り寝のベッドに入った時やバスタイムでも、突然に健志のことを思い出すことがあった。
決して仕事の邪魔をすることなく、次に会う時を楽しみにして頑張る基になってくれた下着がなくなったのは寂しい気持ちもするが障子の向こうに健志がいる。

バルコニーからリビングに戻った彩は眠っているはずの健志との間にある閉めきった障子を見つめ、素っ裸のままヨガを始める。
20分ほど続けると全身が火照り薄っすらと汗を掻く。
生きていると実感して幸福感に包まれ、ハダカンボのまま胡坐座りになって背中と肩を意識しながら姿勢を正して目を閉じる。
胸や腹部を照らす陽光が太陽のエネルギーを注入してくれるのを身体の奥深くで感じる。

スゥッ~……静かに障子が開けられて背中に健志の視線を感じる。
「おはよう。眠っているのを邪魔したくなかったの……後ろ姿だけど色っぽい??ねぇ、どうなの??」
「おはよう……全然、色っぽくもエロクもないよ。姿勢が好いしヨガの効果もあるんだろうけど肌が健康的で美しい。芸術的に美しい彩を見てエロイとは思わないし健康的な色気はあるけど襲いたくもならない」
「褒めてもらったと思ってもいいよね……今日はどうするの??彩を抱きたいって声でもないし」
「彩が嫌でなければ普通のカップルのようにデートしてみたい」
「嬉しい、健志と彩はセックスだけでつながっているわけじゃないよね。海があるから最高、灯台も近くで見たいな」
「よかった、賛成してもらえてうれしい。夕方はエステを予約してあるから早めに戻らなきゃいけないけどね」
「エロ動画にあるようなエッチなエステなの??」
「違うよ、ちゃんとしたエステ。仕事で疲れた彩の疲れをいやしてもらう。すぐそばでオレも施術してもらう予約だけどね」

シャワーで汗を流し衣装を整えた彩は健志と共に朝食をとるためにレストランに向かう。
朝食を終えた二人は歩きやすい服装と靴で灯台を目指し、海沿いに30分ほど歩くうちにどちらともなく手が伸びて自然な風でつないでいる。
青い空に向かって背を伸ばす白い灯台を真下から見上げると凛とした姿に圧倒され、
狭いコンクリート階段を昇って夜の海を照らしていたライトを見ると、「お疲れさま」と声を掛けたくなる。
青い海は何処までも広がり水平線を見ると地球が丸いということを思い出させる。
岬の高台にある灯台を下りて海のそばを通る遊歩道を歩くとカニなどの生き物を見ることもできる。
卑猥な思いを忘れて磯遊びに興じ、空腹を覚えると貧しいことをウリにして有名になった電車で犬吠駅から観音駅まで移動して銚子観音の境内を通り海岸を目指す。
港近くにある食堂で新鮮な魚料理に舌鼓を打ち腹が朽ちると彩の瞳に淫蕩な光が宿る。

「彩、ホテルに戻ろうか??」
「えっ、そんなに物欲しそうに見える??」
「クククッ、濡れているんじゃないのか、どうする??」
「そんな事を聞かれても恥ずかしくて答えられない……健志が決めてよ」
テーブル越しに顔を近付け、声を潜めて話す二人は周囲の客の目に奇異に映るだろうが話の内容を考えると致し方ない。
昼食時とあって店内は込み合い、食事を終えて居続けるのも憚られるので店を出る。
もう少し歩きたいという彩の言葉であてもなくゆっくり散歩を楽しみ、カフェで休憩したり醤油工場沿いを歩いたりと卑猥な思いを封印して銚子駅を目指す。
到着した銚子電鉄から青と黄色と白、海や太陽を想像させる上り特急電車に乗り換える人がいる。
二人は銚子電鉄に乗り、仲ノ町、先ほど降りた観音、本銚子と車窓の景色を楽しみながら終点の外川を目指す。
ホテルに戻ると彩はベッドに倒れ込む。
「こんなに歩いたのは久しぶり。ダメね、もっと歩かないと……」
「彩、もう少し歩いてもらうよ。エステは別棟になっているらしいからね」

施術室のバスで汗を流して二つ並んだベッドに横たわり、アロマオイルに包まれる至福の時間に全身の緊張を解いてすべてを委ねる。
彩は仕事の緊張や疲労が身体の隅に澱のようにたまっていたのが揉み解されてスッキリし、歩き疲れたとベッドに倒れ込んだのが嘘のように清々しい気分で施術を終える。
健志は満足気な表情で微笑む彩を見ると身体だけではなく気持ちも満たされる。

一旦、部屋に戻って化粧を整えた彩は当然という表情で化粧ポーチの下に隠れている小さなバッグを手に取り中身をベッドに並べる。
コンビニの二階にある店で買ったバイブやアナルグッズと赤い縄、携帯用ビデを掴んでウフフッと嫣然と笑みを浮かべ、「あれっ、首輪がない」と、頬を朱に染める。
「バッグの一番下に入っているよ」
「ウフフッ、あった。彩は健志のワンちゃん、昨日は腕枕で静かに寝たけど今日は許さないよ」
「オレは構わないけど、朝日を見なくてもいいの??明朝は晴れるって天気予報で言っていたよ」
「じゃあ、徹夜で可愛がってくれる??」
大袈裟に顔を顰めた健志は、行くよと声をかけてドアに向かって歩き出す。
「待って、手をつないでくれないと迷子になっちゃうよ」
首輪やオモチャをベッドに並べたまま、右手で健志の左手を掴んで正面に立ち目を閉じる。
「可愛いよ。彩さまが望んでいるようなのでキスをさせていただきます」
「余計なことは言わなくていいの、早く……」

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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