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彩―隠し事 166

海の見えるホテル -4

日曜日以来、5日ぶりのセックスは彩と健志の興奮を冷まし、ようやく景色を楽しむ余裕が生まれる。
シャワーブースで汗とセックスの残滓を流し、バルコニーの横に設えられた露天風呂に入って空を見上げると雲の隙間に月と星が見える。
健志は彩の肩を抱き、彩は何の憂いを感じることもなく健志の胸に寄りかかり過ぎゆく時間に身体と気持ちを解放する。

「彩、見てごらん、流れ星だよ。神様が下界の様子を見るために扉を開くと流れ星がこぼれ出る。神様が見ている内に願い事をすると叶う……お願いしようよ」
健志の真面目な口調に異を唱えることなく彩は願い事をする。
「あの流れ星は飛行機のような動き方をするね、ウフフッ」
「成田空港に向かう飛行機だと思えばそう見えるけど、流れ星だと信じれば願いは叶う。ほら、あの雲の隙間から神様がオレたちを見ているよ」
「えっ、本当だ。彩にも神様が見えた。健志はどんなことをお願いしたの??」
「決まっているだろう。彩と過ごす時間を楽しいモノにしてくださいってお願いしたよ。彩は??」
「嘘じゃなく、彩も同じことをお願いした、ウフフッ」
肩を抱いてくれる健志を見ると自然と笑みが浮かび、健志もリラックスして彩を抱く手以外はゆったりと伸ばしている。

夜も航行する船が闇の中で迷子にならないように道標となる灯台はライトアップされているのか白い輝きを放ち、回転灯が規則正しく照らしている。
「彩は水泳やスキューバダイビングなどが出来る昼間の海が好きだけど、夜の海も幻想的で好きになりそう」
「明日は朝陽に顔をくすぐられて起きるんだよ。海は風や陽光で刻々と姿が変わるけど特に日の出と日の入りの頃の変化は一見する価値があると思う……それを彩と見ることが出来るんだからオレは幸せだよ」
「アンッ、今の言葉が子宮を刺激する。ウフフッ、キュンとなった、本当だよ。女はね、好きな男に心を愛撫されると他のモノは何もいらないって思う」

健志に肩を抱かれる彩が全身の力を抜くと身体は自然と湯に浮き、白い下腹部と両脚が水面に姿を現す。
白い肌がまとっていた湯は弾かれるようにサッと引いてヨガやマリンスポーツを楽しむ彩が健康であることを証明する。
「ちょっと待っていて、すぐに戻る」
彩の顔に湯が掛かるのも構わず健志は勢いよく立ち上がり、口を尖らせてキスの真似を残して部屋に戻る。

ワインとグラスに入れた氷、小さな木箱を手にして戻った健志は木箱を開けて色違いのグラスを二客取り出し、氷を入れて白ワインを注ぐ。
「美味しそう……これは江戸切子のグラスなの??二人のために用意してくれたの??健志に抱かれると身体の疼きが治まるけど、心の愛撫が続くからいつまでも昂奮が冷めることはない」
乾杯しようとすると健志はそれを遮り、「彩、立ちなさい」と命じる。
健志の目の前で立ち上がった彩が羞恥を感じて股間を手で覆いそうになると、その手を打たれて隠すことを許されない。
「両足を開いて、震えなさいって言っているんじゃない。両脚を開きなさい……この下着を脱がせてあげるからね」
カチッ……プラチナチェーン製の下着を止めていた鍵を外して彩を解放する。

「どうして??彩が嫌いになったから束縛する必要がなくなったの??」
「そうじゃない。これは離れている時も彩はオレの女だって意識させるために心を縛るモノ。今は手の届くところにいるから拘束する必要がない、そうだろう??」
「クククッ、一緒にいる時に好い男がいて色目を使ったらどうするの??」
「決まっているだろ、その場で素っ裸にひん剥いてお仕置きする」
「イヤンッ、そんな恥ずかしいことをされるのは堪えられない。健志といる時は好い子にする……乾杯しようよ」
甘口の白ワインは氷で冷やされてすっきりとした喉越しになり、切子グラスの華やかさにも酔いキスを繰り返して至福の時間を過ごす。

淡いブルーの花柄の浴衣を青紫の帯で締めた彩は着替えなどを詰めたままのバッグを開き、
「頼んどいた着替えなどは忘れずに入れてくれているよね??」
「忘れてないし容量に余裕があったから、彩が悦びそうなモノも入れといたよ」
衣服を取り出してハンガーに掛け、下着などを入れたポーチの下にもう一つバッグがあったので開けてみる。
「スケベ、こんなモノは頼んでないよ」
「必要なかった??大袈裟なモノは用意しなかったけど幾つかあった方がいいと思ったんだけど……」
「クククッ、今日は満足したけど明日も明後日もあるもんね。必要になるかもしれない、ウフフッ」

自然な振る舞いでPCを操作する彩はモニターを見つめ、健志に視線を移して表情を強張らせる。
「彩の隠し事を知りたい??……何があっても彩のことを嫌いにならないって約束してくれれば、もう一人の彩に会わせてあげる。と言っても過去の彩だけどね。どうする??」
「会いたい。彩の本当の姿は知らなくもいいと約束するけど、本当の彩の心の隅に棲みついていた彩。卑猥な思いの化身である彩のことは知りたい」
「分かった。約束してくれてありがとう……これが本当の彩なの」
ノートパソコンを健志に向けて突き出し、グラスに残っていたワインをゴクッと飲み干す。

「えっ、これが彩なの??……顔は映っていないけど身体の特徴は間違いなく彩だね……でも、これは??」
「そう、本当の私が彩の名でブログを書いていたの。ハダカンボの私をアップするだけだったのが、清潔感に溢れるヌードだとか一度でいいから抱いてみたいとか褒められたりあんな姿を見たい、こんな事をしてほしいって言われるうちにオナニーをしたりアナルにオモチャを挿入したり、前から興味があった自縛ってのをしたり……」
「ほんとうだ、きれいだし清潔感がある。えっ、スポーツ新聞に取り上げられたこともあるんだ、フ~ン……どう言えばいいか分からないけど、嫌いになることはない」
「要求がエスカレートしてくるから、期待に添うのも怖くなっちゃったし、その他にもいろいろあって止めたの。本当にこれを見ても嫌いにならない??」
「誰でも秘密にしたい隠し事の一つや二つはあると思う。嫌なことや思い出したくもない経験をしたことのない人間がいたとすると薄っぺらで魅力のない人になると思う。傷ついたり、知らないうちに人を傷つけたり、辛い経験が人に優しさや努力する大切さを教えてくれると信じている……それにスケベでエッチな彩はこんなことで発散しないと性的欲求を持て余してとんでもない事をしたかもしれない。クククッ、そんな彩も見てみたいけどね」
「ありがとう、健志に知ってもらって良かった。このブログを知っている人はいるけど、書いていたのが私だと知っているのは健志だけ……もう一度聞くけど、彩の本当の名前などを知らなくてもいいの??」
「その方がいい……それに嘘を嘘のまま信じればそれは真実。だから、彩はオレに本当のことを言おうなんて思わなくてもいい。目の前の彩がオレの知るすべて……」
「彩のことを嘘吐きだって言うの??……ウフフッ、どう言い訳をする」
「ごめん、言葉を間違えた。嘘を嘘として信じるんじゃなく、スケベでエッチな彩と、たぶん清楚な人妻と言われる本当の彩は表裏一体。どちらが表か裏か、そんな事はどうでもいい、オレが見ている彩を好きだ……おいで、オレの膝を跨いでくれよ」

近付いた彩は健志の膝を跨ぎ、髪に手櫛を入れられるとうっとり目を閉じ、唇を重ねられると背中に手を回してギュッと抱きしめて舌を絡めて唾液を啜る。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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