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彩―隠し事 140

覚醒 -16

高台にあるマンションに向かう上り坂に差し掛かると冷酒で火照った身体に薄っすらと汗が滲む。
「見て、あの三日月。ロッキングチェアに似ていると思わない、座ると気持ち良さそう、宙に浮いてゆらゆら揺れながら足元の世界中が見える。健志が月に座って彩は膝に座る、最高だと思わない??」
「思わない」
「どうして??」
「高い処が嫌いだから」
「つまんない。夢がない男って好きじゃない、彩を夢見心地にしてくれる男性がいないかなぁ」
悪戯っぽく健志を覗き込む彩の表情にドクンッと心臓が反応する。
「ときに何もかも忘れて夢を見ることは子供よりも大人に必要だって言った人がいるけど、彩の話しで突然思い出した。オレの夢は来週、あるホテルの部屋でカーテンを開け放った窓から見える景色を見ながら彩を抱くことだな」
「ふ~ん、小っちゃい夢だけど。彩がヒロインだから嬉しいかも。楽しみだなぁ……月曜からは仕事を頑張んなきゃ」

一週間後に思いを馳せ、改めて三日月を見上げでフゥッ~と息を吐くと、前日に自宅前に着いたという電話以降連絡がない栞のことが脳裏をよぎる。
便りがないのは良い頼りと言うから、ボイスレコーダーを再生しながら妄想を膨らませるご主人が、寝取られ癖と嫉妬の狭間で愛する栞を責めたてて今日は仲良く過ごしているのだろうと想像する。
そんな事を思うと、遠い昔のあの日の事が蘇る。
高校生だった暑い夏の日、隣家の一歳年下の男子がカーテンに隠れて覗き見をしているのを気付いていながら着替えを続け、あろうことか下着まですべて脱ぎ捨てて見せつけるようにした事を……全身の血が逆流しゾクゾクするような気持ち善さが身体中を駆け巡り、その日の夜のオナニーはいつも以上に気持ち善く股間の滑りは異常でないかと思うほどだった。
その後は、恥ずかしい姿を他人に見られたい、見られるか見られないかのスリルを味わいたいと思いながらも実行することなく勉強やスポーツに熱中することで性的な思いを発散した。
憧れていた先輩に誘われて初体験を済ませた後は記憶の隅に隠れていたが、性に奔放な処がある親友の栞に誘われてアダルトビデオの撮影現場を見学させてもらったりSMショークラブに行ったりした。
そんな事をするうちに、恥ずかしい姿を他人に見られたい、見られるか見られないかのスリルを味わいたいという思いから逃れることが出来なくなり、後日一人でクラブに行って見ず知らずの客の前で下着一枚になって縄で縛られた。
その日が縁で付き合い始めたのが健志である。
本名はおろか、住所も仕事もすべて秘密にして彩と名乗って付き合いを続けている。
健志は本名を知らなくていいと言う。
会うたびに彩に惹かれ始めている自分を意識するので本名を知ればアレも知りたいこれも知りたい、もっと会う回数を増やしたいと思うようになって二人の関係が壊れてしまうような気がすると言う。

頬が紅潮しているのを知られたくないので健志に気付かれないように横目で見ると、不意に顔を彩に向け、
「カヲルさんの方が先に着いたようだね」
マンションの前で手を振る人がいる。
「カヲルさんとの付き合いは長いの??……そんな顔をしなくてもいいよ。電話中に一度だけどカヲルって呼んだよ。抱いたでしょう??」
過去の卑猥な想い出に浸っていたのを知る由もない健志に照れ隠しで絡むような言い方をする。
「忘れたよ、本人に聞いてみればいいだろう」
確かめるはずもないと思った言葉に、
「うん、そうする。カヲルさんの事は嫌いじゃないからモヤモヤした思いのままでいるのは嫌」

「彩さん、今晩は……ごめんね、お邪魔だろうけど許して。彩さんともう少し話したいなと思って」
「健志の家だけど、いいでしょう。三人で飲もうよ」
「彩、どうなっても知らないよ。カヲルの酒癖の悪さを知らないだろう??」
「酒癖が悪いなんて変な事を言わないでよ。私だってレディのたしなみは身に着けている積りだよ」
「カヲルさん、酒癖の悪いのは我慢するけど健志と最後に寝たのはいつか教えてください」
「はっきり覚えてないけど、タケの言葉は憶えている。カヲルも知っているはずの彩って人と付き合うようになったから、もう抱いてやれないって言われたの。私にとってタケはお気に入りのバイブレーターのような存在だったけど、彩さんに取られちゃった」
「提案だけど、ここでの話しは一旦オワにして中に入らないか??」
健志の言葉で彩とカヲルは肩を寄せ合い互いの腰に手を回してエントランス
に入りエレベーターに向かう。

健志の部屋に入るとマンション前で微妙な話しも快活にしていた彩とカヲルの間は薄いカーテンで遮られたような雰囲気になる。
「乾杯しようか」そんな二人の様子を解そうと健志は声をかける。
「客であり、みそっかすの私が言うのもなんだけど汗を流してさっぱりした方が、お酒が美味しくなると思うの……悪戯しないって約束するから彩さん一緒にシャワーを浴びようよ」
困惑の表情で健志に視線を向ける彩に気付いたカヲルは、
「ごめんなさい。少し強引と言うか厚かましい言葉だった取り消します」
「いえ、そうじゃないの。いいわ、一緒に汗を流します……カヲルさん、絶対に笑わないって約束してね」
健志に頷いて見せた彩は躊躇することなくデニムシャツのボタンを外していく。
ゴクッ……何が起こるのか予想も出来ないけれど彩の様子に普通じゃないモノを感じたカヲルは唾を飲み、彩を見て健志に視線を移し、再び彩を見つめて手を握る。
肩を滑らせてシャツを脱ぐとブラジャーだけを着けた上半身が露わになる。
健志とカヲルの視線が舐めるように上半身を這うのを感じると羞恥で足が震え、それを吹っ切ろうとして白い短パンを脱ぎ捨てる。
「えっ、可愛い、似合っている。彩の白くて艶めかしい肌にその下着がよく似合っている」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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