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彩―隠し事 136

覚醒 -12

この街の夜に集う人々の欲望を貪欲に飲み込んでしまう繁華街の灯りを見ながら彩はスプモーニ、健志はジントニックのグラスを傾けてゆっくりと刻む時間に身を委ねる。
「一人の時にスプモーニを飲むことがあるの??それとも、彩の知らない女性客用なの??」
「クククッ、彩のためだよ。トニックウォーターはジントニックと共通、グレープフルーツジュースは問題ない。カンパリを用意すればいいだけだからね……ここは彩以外の女性を招かない」
「ふ~ん、一応、信じてあげる……一時間ほど前の事が遠い昔のように思える。今ほどゆったりとした気分になるのは久しぶり」
「忙しいんだ。仕事が順調ってことらしいね、彩なら大丈夫だよ」
「ウフフッ、彩がどんな仕事をしているか知らないのに……でも、ありがとう。彩の仕事を教えてあげようか」
「聞きたくない。彩の仕事を知れば、本当の名前を知りたくなる。次は住んでいる処、ご主人はどんな人か……あれもこれも知りたくなる。今の関係を壊したくないから知らないままでいる方がいい」
「そうね、今はまだ知らない方がいいかもね……見て、痕がこんなに薄くなった」
「ほんとうだ、温めてマッサージしたのが良かったんだね。この痕が消える時は彩の記憶からオレがいなくなるってことじゃないよな??」
「心配している??……じゃぁ、彩が逃げられないように拘束しとけばいいのに。彩は健志につながれていたい」
「……分かった。離れている時間もオレの女だという印をつけとこう。仕事中もご主人と食事をしている時も彩のオンナにオレを意識させる」

彩の身体にオレの女だという印を刻むと聞いても健志が何を考えているのか分からず期待と不安で続く言葉を待つ。
傷付けられることはないだろうと思うけど物思いに耽っているようで視線を合わそうとしない。
突然、彩を見て笑みを浮かべた健志は机を前にして何かを書き始め、彩が何をしているのと聞いても秘密、いずれ分かるよと教えてくれない。
スプモーニを飲みながら夜の街と健志を交互に見ていると、スキャンしている様にも見えて何をしているのか気になる。
PCで何やらしていた健志は彩に視線を向けて終わったよと言うものの、何が終わったのか教えてくれそうもない。

「何をしていたの??エッチな事だと思うけどすごく気になる」
「彩が気に入ってくれると嬉しいけど、離れている時もオレの事を忘れないようにプラチナ製のアクセサリーを友人に注文した」
「ほんとう??プラチナ製のネックレスか何かなの??嬉しい、絶対に気に入ると思う、ありがとう」
スマホが着信を知らせて健志が話し始める。
「……そうだよ、銀は時間と共に硫化銀に変化して黒くなるからプラチナで頼むよ……絵が下手だけど分かってくれたようで安心した……明日、夕方にはできるの。急いでくれるのは嬉しいけど雑な仕事は嫌だぜ……そうか、うん、任せる。頼んだよ」

「彩、アクセサリーは夕方に出来るって、楽しみにしてくれてもいいよ」
「今は夜っていうより、夜中だよ。どんな店なの??」
「個人営業で元々夜型人間、週末は競馬をやっているから夜、仕事をして昼間は寝ていた方が無駄遣いしなくていいらしい」
「ふ~ん、人それぞれ……あの華やかな灯りを求めて色々な人が集まってくるし、明るければ明るいほど影も濃くなる。そうでしょう??」
「そうだと思うよ。昼間の彩は本来の姿で上品で貞淑な妻でありながら仕事もバリバリこなす。時々だけど夜になって身体の奥に巣食うスケベな思いが目覚めると彩に変身して影を求めて徘徊する」
「そうだよ、そんな時に会ったのが健志……えっ、彩のスマホに着信が、ちょっと待って」

「もしもし、栞なの??どうしたの??今どこにいるの??大丈夫なの??……ごめん、栞の事なのに私が昂奮しちゃダメだよね……そんなことない。栞は学生時代からの大切な親友だもん……うん、それで、どうしたの??」
今日、浮気相手が用意する初対面の男たちと乱交プレイを楽しむという親友からの電話だと察しが付く。
自然と聞こえるのはしょうがないにしても、そばにいて聞き耳を立てたり彩の表情から会話の内容を探ったりするのは不作法だと思う健志は空になったグラスを片付けて寝室に入り、寝る準備をする。

「気付いたと思うけど浮気相手と乱交プレイをした友人からの電話だった。浮気相手を含めて五人の男性の相手をしたんだって……精も根も尽き果ててやっと自宅に着いたんだけど、これからご主人に報告するんだって。多分、今日は寝かせてもらえないだろうなって……」
「えっ……大丈夫なの??」
「話したと思うけど、ご主人は寝取られ願望って言うのかなぁ、彩の親友である妻が他人に抱かれることを想像して昂奮する性癖があるんだって。今日が二回目らしいけどボイスレコーダーで録音したのを再生して、どんな事をされたんだ、気持ち善かったのかって責めるんだって……今晩は寝かせてもらえないほど責められるだろうって声を上ずらせていた」
「彩と彩の親友の性欲は際限がなさそうだね、やわな男じゃ相手をできそうもないな」
「彩もなの??否定はしないけどね。水泳などのマリンスポーツと今はヨガで鍛えているからセックスも強いよ」
「彩、憶えているだろ、お風呂でシャワーに打たれながら終わったことを」
「ウフフッ、もう一度しようなんて言わないから安心していいよ。眠くなっちゃった、寝ようよ」
長かった金曜日が終わっても土曜日と日曜の午後まで二人でいる時間はたっぷりある。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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