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彩―隠し事 134

覚醒 -10

散歩を楽しみながら訪れたカヲルの部屋での出来事が強烈でマンションを後にしても彩は口を開こうとせず、健志も話しかけることを躊躇って微妙な距離を保ちながら歩く。
追い抜いて行こうとするタクシーを止めて乗り込んでも、二人とも左右のドアに寄りかかるようにして座り距離を詰められないでいる。
ブラジャーもショーツも着けずに縄模様が残る肌をワンピースで隠した彩は、走りゆく窓の外の景色をぼんやりと眺めて鎮まることのない動悸に羞恥を覚える。
運転手に気付かれないように胸に指を這わせて縄の痕を擦り、手首に残る模様を確かめるように指先を這わせる。
そんな彩を愛おしく思う健志はそっと近づいて背中に手を回して抱き寄せる。
右手で抱き寄せて左手で手首を擦るとルームミラーで運転手の視線が前を見ていることを確かめた彩は、
「怒ってない??」
「何があっても彩の味方だって言っただろう」
彩の手首に残る縄模様を優しく擦り、ルームミラーを横目で見ながら耳元で囁く。
「気持ち善かったんだろう??オレ以外の男がいるところで憚りのない善がり声を出すから胸が痛くなっちゃったよ」
「えっ、ヤキモチ??ウフフッ」
身体を丸めて萎れていた彩が元気を取り戻して表情が明るくなり、健志の股間に手を伸ばす。
「なんだ、おっきくないんだ」

「此処でよろしいですか??」
「あっ、結構です。ありがとうございました」
歩いて行った距離のためタクシーはあっという間に健志の住むマンションに到着する。
エレベーターでは視線を交わすものの身体の接触を拒否するように再び右と左に分かれて手を伸ばそうともせず、言葉を交わすこともない。
チンッ……エレベーターが停まるとドアに手を添えて彩を下ろし、部屋に向かう廊下では健志が先に立って歩く。

グラスに炭酸水を注いで彩に手渡した健志はボトルを傾けてゴクゴクと音を立てて飲み干して下着も含めて全て脱ぎ捨て、
「先に行くから直ぐにおいで」と声をかけてバスルームに向かう。
床に散らばった衣服を拾い集める彩の表情から緊張が消え、
「もう、しょうがないなぁ」と笑みを浮かべて拾い集め、上着のポケットに入っていたブラジャーとショーツと共に洗濯機に放り込む。
ワンピースを脱いで素っ裸になり、姿見に映した肌に残る縄模様をなぞり、
「可哀そうな、彩……でも、気持ち善かった」と、呟いて頬を緩める。

「入るよ……目を閉じてくれる」
シャッ~……バスタブに湯を張りながらシャワーを浴びていた健志は入ってきた彩にシャワーを浴びせて抱き寄せる。
挟まれた乳房がひしゃげるほど抱き寄せられ、言葉を発する間もなく唇を合わされて濃厚なキスをする。
シャッ~、シャッ~……頭からシャワーを浴びながら舌を絡ませて両手で肌をまさぐり、言葉に出来ぬ思いを伝えあう。
相手を思いやろうとすると言葉に嘘が混じることもある。正直な思いを伝えようとするとすべてを伝えきれずに誤解されることもある。
心が通じ合う会う二人に言葉は必要ない。唇を合わせ、肌を這う手の動きで気持ちが伝わる。

「ねぇ、今日だけは言わせて……健志が好き。大好き」
「オレもだ。彩が大好きだし愛おしいと思う。もっと早く会いたかった」
「ほんとう??彩が結婚する前に会いたかったの??ねぇそうなの??」
「あぁ、彩をオレだけのモノにしたかった。ウソじゃない」
好きだと言えても、愛しているとは言えない。
愛していると口にすれば彩の本当の生活が壊れるだけではなく、二人の仲も崩壊するような気がして口にするのを躊躇する。
健志の左手と彩の右手が固く結ばれて指を絡ませる。
小柄な彩が健志を見上げる瞳は濡れ、彩を抱きしめる健志の右手に力がこもる。
「痛いっ……いやっ、緩めちゃ嫌。彩を離さないで、離れそうになったら力ずくに抱きよせて、おねがい」
「クククッ、彩はわがままな女だな。可愛いよ」
「そうだよ、彩はわがままなの。満足させてくれないと健志のことを好きなままではいられないかもしれない……彩の事が本当に好き??ねぇ、信じさせて」

シャッ~、シャッ~……健志は左手で握った彩の右手を離そうとせず、右手でシャワーに打たれたままの髪を掻きあげる。
「今はシャワーにすべてを流されるのも悪くない。洗い清めてきれいになった彩を抱いてくれる??」
「彩は今のママで十分にきれいだよ。洗い流すことはない、あるがままの彩が好きだ、信じてくれるね」
健志の右手は彩の股間に伸びて十分な滑りを帯びていることを確かめ、左手で抱き寄せて右手で猛る怒張を摘まんで膣口に擦りつける。
「入れるよ……彩はオレの女だ」
「嬉しい。彩は健志の女。シャワーを浴びただけの彩を愛してもらえる……大好き」
健志は彩の本名も住んでいる処も知らない。それでいいと思っている。
本当の彩の一部でも知れば、もっと知りたい、一緒に過ごす時間を増やしたいと欲が出て関係は壊れるかもしれない。
健志は目の前の彩を愛すると心に決める。
そんな健志の気持ちを知ってか知らずにか、小柄な彩は健志にしがみつき気持ちに続いて身体もつながる瞬間を待つ。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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