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偽者 ~PRETENDER~ -36

佐緒里と内藤 -8

内藤は満足の証を口腔に吐き出して征服欲を満たし、店の同僚やお客様にまで褒めそやされるたびに身体の奥に澱む被虐心との乖離で落ち着かずにいた佐緒里は、強い男に支配されたいと思いながらも大っぴらにそれを求めると全てを失う不安で口にすることが出来なかった。
そんな佐緒里は屈折した秘密を守り、欲求を満たしてくれそうな内藤に巡り合って穏やかな満足感に浸っている。

恥ずかしいから一緒は嫌だと言う佐緒里に先にシャワーを使いなよと言うと、女は時間がかかるから後でいいと言う。
そっと抱き寄せて額に唇を合わせて、すぐに出るからねと言うと、急がなくていいよと顔をほころばす。
性的欲求を露わにして髪を振り乱し、口の周りを先走り汁と唾液まみれにして凄艶な色気を撒き散らす佐緒里の魅力を捨てがたく思うものの、はにかんで笑みを浮かべる清楚な様子に股間が反応しそうになり慌ててバスルームに向かう。

汗を流した内藤に代わってバスルームに向かう佐緒里は、
「あなたのシャツを貸してくれる??男物のシャツを着けて腕枕してもらう夢を見ていたの。いいでしょう??」
ブルーのツイルシャツを用意した内藤は、ここに置くよとシャワーの音に負けない声をかけてキッチンに立つ。

夕日で朱に染まる雲に頬を緩め、イカとスズキやアサリ、セロリとアスパラ、ニンニクを用意してスズキの白ワイン蒸しの準備を終えるとイカとセロリの炒め物を作り始める。
「好い匂い……イカとこっちは何??」
ブルーのシャツを腕まくりした佐緒里が鼻をクンクンさせて炒め物とワイン蒸しに顔を近付ける。
「スズキのワイン蒸しだよ」
「イカとスズキか健康には良さそうだけど、肉も食べた方が好いんじゃないの……ねっとりと抱いてくれるんでしょう??」
「後ろにあるよ……高級肉じゃないけど好いだろう??」
「これはランプ肉だね。面倒なことが嫌いだからアフターは断ることにしているけど、同伴でステーキを誘われてランプ肉をご馳走してくれるお客様はいないなぁ……クククッ」
「高級肉でなきゃダメって言うなら帰ってもいいよ。オレは赤身が好きなんだよ、文句ある??」
「ウフフッ、見栄を張らずに自分を忘れない。そんな男性が好き……お店では威張る男性、よく見せようとして見栄を張る男性。色々な人を見ているから」

イカとセロリの炒め物、スズキとアサリやアスパラの白ワイン蒸し、ランプ肉とアスパラ、ピーマンやニンジンのグリルをテーブルに運び、朝食で残ったバゲットを用意する。
キンキンに冷えた白ワインで乾杯をした佐緒里は、
「霜降りでなくても美味しい。薄切りにしたランプ肉にワサビがよく合う」
佐緒里の健啖さが心地良く自然と浮かぶ笑みに不満の声をあげる。
「なに、大食いの女は嫌い??お腹が空いているし、あなたが料理上手だからしょうがないでしょう??文句ある??」
「誤解だよ。食欲は活発、活動的の裏付けで好ましいし、食べる姿勢が好い。上品さや教養を感じさせてくれる」
「ふ~ん、案外と理屈っぽいんだね。もっと感覚を大切にするシンプルな人だと思っていた……料理男子って言われるのは、どんな感じ??」
「料理を女性に振舞ったことがないから言われたことがないけど、嫌じゃないよ。食べることは生理的欲求やセックスと同様、生きるために必要不可欠。食材を目の前にしてメニューを考えたり、メニューから食材を用意したりクリエイティブな作業だと思う」

食事を終えた二人は食器を片付けて十分に冷やしたスパークリングワインを用意して窓際に座る。
柱を背にして座る内藤に身体を預ける佐緒里は肌触りの好いシャツに包まれてうっとりと目を閉じ,肌をまさぐる手の感触に酔いしれる。
綾織のツイル生地は夕日に照らされて光沢が際立ち、羞恥で朱に染めた佐緒里の魅力を際立たせる。
「肌触りの好いシャツだから、シャツ越しに撫でてもらうと気持ち良くてうっとりする……あなたを美香ちゃんに付けたのは失敗だったかなぁ……」
「最初から、やり直すか??」
「ウフフッ、冗談よ。あなたといると心地いいから、そう思っただけ。別れた亭主のせいで男性に対する不信感が消えたわけじゃないの、あなたといると男の人っていいなと思い始めているけどね」
「そうか、佐緒里のような女性が人生観を変えようかって思うほど影響を与えたとすれば光栄だな」
「クククッ、やっぱり今のままが好い。誰にも話したことのない私の隠し事もすぐに見破ってくれたし、秘密を守ってくれる。今の私には大切な人……私は悪い女」
「好い女は自分を高めようとするから男に媚びない甘え下手。自立していて好き嫌いに妥協しない佐緒里は弱気な男が相手するには手強すぎる」
「ウフフッ、褒めてもらったのかなぁ??」
寄りかかる佐緒里を強く抱きしめた内藤は、
「オレの前じゃ頑張らなくても好いよ。甘えたい時は電話でもいいし、メールでもいい、いつでもいいよ」
「ありがとう。美香ちゃんが使わないときは、この胸を借りることにする」
佐緒里の顎に指をかけて正対させ、顔を近付けると唇に舌を這わせて滑りを与えた佐緒里は目を閉じる。
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ちっち

Author:ちっち
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さむいのも嫌
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