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彩―隠し事 40

夜景  

「この景色が好き」
グレープフルーツパッションの入ったグラスを手にした彩は窓際に立ち、高台にある健志の部屋から駅周辺の夜の景色に見入る。
24時を過ぎても夜を彩る灯りはこの街に集う人たちの活力と共に眩いばかりに輝き、善悪を超えた貪欲さが灯りの影で妖しく蠢く人たちの多い事にも驚かされる。
仲の好い栞に連れられて行ったAVの撮影現場やSMショークラブの記憶が脳裏をよぎり、栞がいなければ知ることもなく縁のない世界だろうし健志に出会うこともなかったと縁の不思議に思いを巡らす。

健志が部屋の照明を暗くする。
窓外の景色は変わらないものの、窓に彩が映り背後で見つめる健志も窓の中にいる。
窓の中の健志に話しかける。
「学生時代からの親友がいるんだけど、その人に色々な事を教えてもらって、この街の懐の深さみたいなモノを知って驚いていたんだけど、今日は健志に新しい世界を教えてもらった……何より驚いたのは、彩が自分自身を知らない事が多いってこと」
「後悔してる??」
「そうじゃないの。彩は本当の私じゃないって言ったけど、本名の自分と彩のどちらが本当なのか分からなくなってきた」
「思っていたよりも性的にエッチでスケベって事??」
「そんな風に言われると、実も蓋もないけど、そういうことかなぁ??」
「彩は分かっているんだろう??分かった上で言っているんだと思うけど……仕事をしているときはメリハリの利いた出来る女、前にも言ったけどスーツ姿が似合っていた。ユニフォームが似合う人ってその道で一流って思っているから。仕事を離れれば清楚にして上品な奥様。夜は清楚で上品な奥様が奔放で淫らな彩に変身して享楽に耽る……学生時代からの親友って男性か女性か分からないけど、そういう彩の本質を知った上で誘ってくれているんだろうな」
「うん、ずっと昔から淫奔な彩が心の奥に棲みついていたような気がする。人見知りする私は必死で隠していたんだけど、SMショークラブで彩が姿を現して何かが吹っ切れたような気がする。本当の私はこれまで通り過ごして彩に変身したいときは健志に会うの」
「嬉しいね、それでいいよ。いくつもの顔を自在に使い分けてフラストレーションを残さない。仕事をしているときにエッチでスケベな彩じゃ困るしね……仕事をしているときの彩に会ってみたいな」
「クククッ、だ~め、見せてあげない。謎があった方がいいでしょう??」
健志は彩の後ろ姿を見つめ、彩は窓の中の健志に微笑んで見せる。

グレープフルーツパッションをゴクッと飲んだ彩は振り返ってグラスを置き、
「ねぇ、彩はきれい??可愛いと思う??」
「あぁ、きれいだし可愛い。上手に歳を重ねていると思うよ。すべてが思い通りになったと思わないけど、大きな不満を抱えることなく今に至ったと思う……彩が人妻でなければって思うよ」
「うん??人妻でなければ何??どうするの??はっきり言ってくれないと分からないよ」
「えっ、うん、そうだな……そうだ、人妻って言葉はエロイよな。奥さんと人妻って同じ意味だけど響きは全然違う。彩のような女性にこそふさわしい言葉だね、人妻」
「うまく逃げられたけど許してあげる。追い詰めちゃうと二人とものっぴきならないことになっちゃうかも……ウフフッ」


バスルームに姿を消した奈央と沙耶を相手に男汁を吐き出した男たちに見せつけるようにして、対面座位でつながる健志が放出した精液をバギナの奥深くで受け止めて満足したはずの彩の瞳が薄明りの中で淫蕩な光を宿す。
「あのバーだけど、いつもなの??」
「平日はそれぞれの仕事で忙しいからエロイのは週末だけだよ。それも必ずってわけではなく、酒を飲んでそれで終わりってこともあるよ」
「ふ~ん、そうなんだ……彩を連れてったのは、同じような事をさせようと思ってなの??」
「彩の気持ち次第だって思っていたけど、正直に言うと……彩には参加してほしくなかった」
「ウフフッ、それでつながった後も下着を脱がさなかったの??ねぇ、そうなの??」
「そうだよ。彩のすべてをオレ以外の男に見せたくないと思っていたよ……わがままと思われてもね」
「そうなんだ、思った通りだった。女はね好きな男のわがままを受け入れることに幸せを感じることもあるよ。たとえそれが理不尽だと思える事でもね……昂奮したからかもしれないけど眠れそうもない」

バスルームで会員制バーでの淫靡な昂奮を汗と一緒に流したはずなのに、照明を落とした部屋で窓際に立つ彩を見つめる健志の股間が元気を取り戻しそうになり、彩の瞳に宿る淫蕩な光が妖しく揺らめく。
「理不尽なわがままを言ってもいいよ。バーで彩の事を守ると言ってくれたし、最後の一枚を脱がさずにいてくれたから……」
「それなら、オレだけのためにシャツを脱いで彩の白い肌を見せてくれ」
「今??ここで??」
「そうだよ。今、ここで彩のすべてを見たい」

用意したお泊りセットの中からピンクのブラジャーとショーツを着けて、健志のグレーのシャツを部屋着代わりにしている。
綿にカシミヤ混生地でヘリンボーン織のシャツは綿100%よりも光沢があり肌触りもいい。
「そっちに行ってもいい??」
「ダメ、窓際の彩を見たい」
「いじわる、彩は写真が好きだから健志の想像していることを分かる気がする。景色に負けて埋もれてしまわない??」
「大丈夫、負けるはずがない。それを分かっているはずだよ、分からないなら彩は自分を過小評価しすぎ」

彩は背後に広がる駅周辺の景色に目をやり、白い肌にピンクの下着を着けた自分がその景色の中でどのように見えるかカメラのレンズ越しの姿を想像してみると自然と頬が緩む。
笑みを浮かべた横顔を見た健志は、
「オレにも見えるよ。柔らかな曲線で包んだ彩の身体はピンクやパステルカラーがよく似合う。その背後にある宝石箱をひっくり返したような景色は彩の美しさに嫉妬するよ。車のヘッドライトや走る電車の灯り、航空障害灯が動なら、窓辺で佇む彩は静。動と静の対比も彩の美しさを強調するためにある」
「クククッ……彩はそんな自信家じゃない、でも嬉しい。夜景の中に埋没する事はないって信じる。見せてあげる、見てね……ガッカリしちゃ嫌だよ」
下唇を噛み、宙を睨んでゴクッと唾を飲んだ彩はシャツのボタンに手を伸ばす。

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ちっち

Author:ちっち
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