M 囚われて
囚われて-2
窓のない部屋では、どれほどの時間が経過したのかさえ分からなくなる。
平静でいられない精神状態では空腹感で時刻の見当を付ける事も出来ない。
SM器具を設えられた地下室に閉じ込められても、昨日から朝食までの男の振舞いを思い出して不安感を押し込め、紳士的な行動が続くと信じようとする。
緊張からくる喉の渇きを我慢できなくなった詩織は、テーブルの上のミネラルウォーターに視線を移して室内を見回しながら近付いていく。
手の中のボトルを見つめ、意を決したようにキャップを外して口に含む。
ゴクゴクッ・・・自棄になったわけではないが一気に飲み干して口元を拭う。
身体のあちこちに水分が行き渡り、生気が蘇ってくるのを感じた詩織は、窓のない部屋で誰も見ているはずがないと高を括り、天井から下がる鎖に触れて手枷を手首に付けてみたり、十字架を背にして立って万歳の格好で両手を上げてみたりと悲劇の主人公になった自分を妄想する。
SMチェアに近付いてみるものの、女性を甚振るために用意したとしか思えない
椅子に座る気持ちはさすがにわいてこない。
ベッドに戻り、SM器具を見ながらこれから先の運命を考えると不安が徐々に育ってくるのを抑えることができない。
尿意を覚えた詩織は室内の彼方此方に視線を巡らせ、見る人のいないことを再確認して隠すもののないトイレに近付いていく。
ガシャン・・・ドアが突然開き、買い物袋を持った男が入ってくる。
「お待たせ、お昼にしようか??上へ行こう・・・アッ、その前に着替えなきゃ・・・これで好いかな??気に入ってくれると思うけど」
快活に話す男から渡された袋の中を見た詩織の表情が驚きで曇る。
「無理です。これは・・・」
「大丈夫だよ。これを着てどこに行くわけでもないから・・・ルームウェアとして、ここにいる間は私の目を楽しませてくれないか??」
「・・・何もしない??」
「ハハハッ・・・女性に興味がないわけじゃないけど、嫌がる事をするのは好きじゃない。美しいものを愛でたいだけなんだから・・・信じて欲しい」
終電がなくなったからとは言え、初対面の男性にホテルに泊まりたいと言い、誘われるまま男性の家に泊まっても、拍子抜けするほど何もなく一晩を過ごさせてくれたのだから信用しても良いかなと思う。
視線の中のSM器具は気になるし、鍵を掛けて出かけたことなど不審な事もあるが屈託なく笑う男の笑顔がそれらを払拭させてくれる。
「信じることにする・・・抱かれても良いかなって思っていた夜に忍び込んで来なかったし・・・キャァ~、何言ってるんだろう」
「フフフッ、そんな簡単に男を信用しちゃだめだよ。ずるい男は紳士とオオカミの間を行ったり来たりするからね」
笑顔で男は狡いと言うのを聞いて、ますます信用できると思ってしまう。
「あなたがオオカミになったところを見てみたいかも・・・な~んてね」
「クククッ、バカにされちゃったなぁ・・・おいで、可愛い詩織さんとキスしたい」
不安を抱きつつも笑顔に引き寄せられるように男に近付き、抱き寄せられた詩織は目を閉じる。
男の唇が触れた瞬間、ウッと声を漏らして背中に回した両手に力を込めてしがみ付くように抱きつく。
「イヤッ、いやぁァ~・・・どうして??ダメ、許して・・・」
背中に回した右手を掴まれて天井から下がる鎖につながれた詩織は、恐怖に似た叫び声を漏らして許しを請う。
「ウフフッ、痛いことはしないから安心していいよ。私がいない時に此処につながれて甚振られることを妄想しただろう・・・違う??していないって言える??」
「・・・そんな事はしてない。苛めないで・・・抱いても良いから優しくして・・・」
口元を緩めて目元に笑みを浮かべた男の表情に悪意は感じられず、本音が全く見えない。
女を天井からぶら下がる鎖に繋ぐ事は非紳士的なのに、言葉や表情に邪気を感じないのが不思議でならない。
右手だけを鎖に繋いだ男は、抗う詩織の顔を両手で挟んでチュッと音を立てて唇を合わせる。
「可愛いよ。しばらく我慢してもらうからね、痛くしないって約束するから・・・」
「イヤッ、何でも言う事を聞くから縛ったりしないで・・・」
誤解しちゃだめだよ。抱くためではなく、着替えのためだからと言う男は、手足をばたつかせる詩織に取り付いて、ジャージのズボンを引き剥がすように脱がせて下半身を丸出しにする。
ハァハァッ・・・言葉もなく立ち尽くす詩織は剥き出しの股間が感じる冷気で下着を着けていない事を思い出す。
「いやんっ、ダメ、ダメッ・・・見えちゃう、恥ずかしい事をしちゃ嫌だっ・・・」
声は震えながらも媚びを売るような甘い声になっていることを詩織は気付かない。
窓のない部屋では、どれほどの時間が経過したのかさえ分からなくなる。
平静でいられない精神状態では空腹感で時刻の見当を付ける事も出来ない。
SM器具を設えられた地下室に閉じ込められても、昨日から朝食までの男の振舞いを思い出して不安感を押し込め、紳士的な行動が続くと信じようとする。
緊張からくる喉の渇きを我慢できなくなった詩織は、テーブルの上のミネラルウォーターに視線を移して室内を見回しながら近付いていく。
手の中のボトルを見つめ、意を決したようにキャップを外して口に含む。
ゴクゴクッ・・・自棄になったわけではないが一気に飲み干して口元を拭う。
身体のあちこちに水分が行き渡り、生気が蘇ってくるのを感じた詩織は、窓のない部屋で誰も見ているはずがないと高を括り、天井から下がる鎖に触れて手枷を手首に付けてみたり、十字架を背にして立って万歳の格好で両手を上げてみたりと悲劇の主人公になった自分を妄想する。
SMチェアに近付いてみるものの、女性を甚振るために用意したとしか思えない
椅子に座る気持ちはさすがにわいてこない。
ベッドに戻り、SM器具を見ながらこれから先の運命を考えると不安が徐々に育ってくるのを抑えることができない。
尿意を覚えた詩織は室内の彼方此方に視線を巡らせ、見る人のいないことを再確認して隠すもののないトイレに近付いていく。
ガシャン・・・ドアが突然開き、買い物袋を持った男が入ってくる。
「お待たせ、お昼にしようか??上へ行こう・・・アッ、その前に着替えなきゃ・・・これで好いかな??気に入ってくれると思うけど」
快活に話す男から渡された袋の中を見た詩織の表情が驚きで曇る。
「無理です。これは・・・」
「大丈夫だよ。これを着てどこに行くわけでもないから・・・ルームウェアとして、ここにいる間は私の目を楽しませてくれないか??」
「・・・何もしない??」
「ハハハッ・・・女性に興味がないわけじゃないけど、嫌がる事をするのは好きじゃない。美しいものを愛でたいだけなんだから・・・信じて欲しい」
終電がなくなったからとは言え、初対面の男性にホテルに泊まりたいと言い、誘われるまま男性の家に泊まっても、拍子抜けするほど何もなく一晩を過ごさせてくれたのだから信用しても良いかなと思う。
視線の中のSM器具は気になるし、鍵を掛けて出かけたことなど不審な事もあるが屈託なく笑う男の笑顔がそれらを払拭させてくれる。
「信じることにする・・・抱かれても良いかなって思っていた夜に忍び込んで来なかったし・・・キャァ~、何言ってるんだろう」
「フフフッ、そんな簡単に男を信用しちゃだめだよ。ずるい男は紳士とオオカミの間を行ったり来たりするからね」
笑顔で男は狡いと言うのを聞いて、ますます信用できると思ってしまう。
「あなたがオオカミになったところを見てみたいかも・・・な~んてね」
「クククッ、バカにされちゃったなぁ・・・おいで、可愛い詩織さんとキスしたい」
不安を抱きつつも笑顔に引き寄せられるように男に近付き、抱き寄せられた詩織は目を閉じる。
男の唇が触れた瞬間、ウッと声を漏らして背中に回した両手に力を込めてしがみ付くように抱きつく。
「イヤッ、いやぁァ~・・・どうして??ダメ、許して・・・」
背中に回した右手を掴まれて天井から下がる鎖につながれた詩織は、恐怖に似た叫び声を漏らして許しを請う。
「ウフフッ、痛いことはしないから安心していいよ。私がいない時に此処につながれて甚振られることを妄想しただろう・・・違う??していないって言える??」
「・・・そんな事はしてない。苛めないで・・・抱いても良いから優しくして・・・」
口元を緩めて目元に笑みを浮かべた男の表情に悪意は感じられず、本音が全く見えない。
女を天井からぶら下がる鎖に繋ぐ事は非紳士的なのに、言葉や表情に邪気を感じないのが不思議でならない。
右手だけを鎖に繋いだ男は、抗う詩織の顔を両手で挟んでチュッと音を立てて唇を合わせる。
「可愛いよ。しばらく我慢してもらうからね、痛くしないって約束するから・・・」
「イヤッ、何でも言う事を聞くから縛ったりしないで・・・」
誤解しちゃだめだよ。抱くためではなく、着替えのためだからと言う男は、手足をばたつかせる詩織に取り付いて、ジャージのズボンを引き剥がすように脱がせて下半身を丸出しにする。
ハァハァッ・・・言葉もなく立ち尽くす詩織は剥き出しの股間が感じる冷気で下着を着けていない事を思い出す。
「いやんっ、ダメ、ダメッ・・・見えちゃう、恥ずかしい事をしちゃ嫌だっ・・・」
声は震えながらも媚びを売るような甘い声になっていることを詩織は気付かない。