転身
―10
身体も気持ちも満足した二人は愛を語る場所をバスルームに移してゆったり浸かる。
足を伸ばした男の腿を跨いだ桜子は胸に背中を預け、背後から抱きかかえてくれる逞しい腕を擦りながら話しかける。
「両手を縛られて目隠しエッチをすればモテルってほんとうなの??」
「たぶんね、オレはそう思うよ。桜子を一目見て惹かれる男がいたとする……桜子は背が高いし可愛いというよりも美人。そのうえ、立ち居振る舞いが洗練されて凛としている。好い男であればあるほど桜子に気後れしてしまい、誘いたい自分よりも気後れする部分が勝ってしまう」
「それは褒め過ぎじゃない??」
「桜子はとびっきりの好い女だよ。自分でも気付いていると思うけど、誘いたいと思っている男たちが遠巻きにウロウロしている。最初の一声を掛ける切っ掛けと勇気がない。セックスに目覚めた桜子の本質は変わらなくても凛とした部分が柔らかくなるから声をかけやすくなる」
「男性に媚びを売るってことじゃなくても……そうなの??」
「桜子は好感を持った男にゴロニャ~ンするのに時間がかかる。その部分が好意を持つ男たちにバリアだと感じさせていたんだけど、自然と薄れると思う」
「嬉しいような嬉しくないような、あなたはそんな私をどう思うの??」
「さっきも言ったろ、そんな男がいたらぶっちめてやる」
「ウフフッ、嬉しい……そうだ、鈴木君と望月君って生徒がいるんだけど、どうして知っているの??」
「鈴木は浜松が本社の自動車メーカーの創業者の姓だし望月姓は静岡と山梨に多いから言ってみただけだよ。あとは競輪選手で鈴木と渡辺姓も多い気がする」
「なんだ、私をストーキングしているのかと思って喜んだのに……ストーカーじゃなくて、ざんねん」
背後から抱きしめた桜子の首筋に舌を這わせ、息を吹きかけるとブルッと震えて、ウッウッ、アンッと艶めかしい吐息を漏らす。
男の右手が下腹部を擦り、左手が胸の膨らみの先端を摘まむと、アンッ、イヤッ、気持ちいいと吐息が喘ぎ声に変わり、男の腕に添えた手に自然と力がこもる。
「爪を立てると痛いよ」
「ごめんなさい。気持ち善くって、つい……」
「いいんだよ、怒っているわけじゃない。今は桜子と二人っきり、なにがあっても楽しい」
「ウフフッ、あなたは私に惚れている。正直に言っちゃえばいいのに……ねぇ、なにを聞いても怒らない??」
「桜子の言葉なら、どんなことでも腹は立てないって分かっているだろう」
「うん、答えがほしいってわけじゃないけど、聞きたいの……高浜さんとは同期入社なんでしょう??その高浜さんが言ったんだけど、あなたは入社時に奥様とお子様がいたって本当なの??」
「ほんとうだよ。履歴書に妻と一歳の息子ありと書いた」
「浪人してないでしょう、奥様とは幼馴染とか??」
「違うよ。一年近く通ったスナックのママだった。で、ある日、子供ができたらしいと言われて、結婚式は3年の秋、両親に結婚の意志を告げた時に入籍した……以上」
「もっと色々聞きたいことがあったのに、以上って宣言されちゃ、しょうがないね。もう一つだけ、結婚を前提に付き合っていたの??」
「そんなことは考えたこともないよ。お互いに都合のいい相手、赤ちゃんが宿んなきゃ結婚することはなかった」
「子供が出来て責任を取ったってことなの??」
「責任なんて考えたこともない。5年先、10年先の目標はあるけど、今大切なのは目の前のことを一つ一つ処理すること。子供が出来たなら、二人で育てればいい。そう思ったから結婚しようって言った」
「結婚を考えたことのない相手でも??」
「嫌いならベッドを共にすることもなかったし、結婚しようと言った時から大好きになった……その頃よりも今はもっと好きになった」
「愛しているって言わないのは、今でも愛する人を待っているからなの??」
「クククッ、誤解しないでくれよ。あの頃は女性を二つに分けていた。したい女としたいと思わない女……したい女は好きな女性、そのうちの一人に赤ちゃんができた」
「ひどい男ね、女をやりたいか、やりたくないかで分けるなんて」
「あの頃は穴があればってことで、美人なら竹輪でもって頃だったからな」
「やっぱりひどい男。私は美人の竹輪??そうなの??」
「桜子は美人の竹輪じゃないさ。言っただろう、とびっきりの好い女だよ」
「ウフフッ、よく分からないけどあなたの言葉を信じる……奥様に申し訳ない気持ちになるけどね」
「妻はオレと二人の時間を楽しんでくれるから喜びは二倍に、悲しいときは二人で分かち合うから半分になる。女性に嫌われるようじゃ嫌だよと言うけど、オレはその言葉を素直に受け取っている」
「クククッ、身勝手なのか奥様に素直なのか嫌な男。浮気は奥様公認ってこと??」
「それは違うよ、オレは浮氣をしない。オレはいつも本気,浮ついた気持で女性と付き合うのは相手にも自分にも、そして妻にも失礼。オレは誰が相手でも常に本気だよ」
「悪い男と狡い男っているけど、あなたは……」
「オレは狡い男。そんなに褒めんなよ、照れちゃうよ」
「狡い男って認めておいて、褒められていると思うなんて図々しい」
「妻との時間は本気。桜子との時間も本気……世間の評価は狡い男ってことになるんだろうな。桜子がそんなオレを嫌いになるならしょうがない……」
「残念でした。私はあなたを嫌いになってあげない……好きなんだもん。連絡してくださいって書いたメモを渡して手に入れた男なんだから」
「そうか、ありがとう。桜子の顔を見たい、身体の向きを変えてくれよ」
「イヤッ、今はあなたを正面から見ることができない。恥ずかしいもん」
「それじゃあ、もう一度目隠しをするけどいいの??」
「今日のあなたは強引……」
「オレは強引で身勝手な男だよ、嫌いにならないでくれよ」
「強引なあなたを嫌いじゃないし、傲慢ではないよ。キスするって約束してくれたら身体の向きを変えてあげる」
「キスでもマン舐めでもなんでも約束するよ」
「クククッ、いやらしい」
身体も気持ちも満足した二人は愛を語る場所をバスルームに移してゆったり浸かる。
足を伸ばした男の腿を跨いだ桜子は胸に背中を預け、背後から抱きかかえてくれる逞しい腕を擦りながら話しかける。
「両手を縛られて目隠しエッチをすればモテルってほんとうなの??」
「たぶんね、オレはそう思うよ。桜子を一目見て惹かれる男がいたとする……桜子は背が高いし可愛いというよりも美人。そのうえ、立ち居振る舞いが洗練されて凛としている。好い男であればあるほど桜子に気後れしてしまい、誘いたい自分よりも気後れする部分が勝ってしまう」
「それは褒め過ぎじゃない??」
「桜子はとびっきりの好い女だよ。自分でも気付いていると思うけど、誘いたいと思っている男たちが遠巻きにウロウロしている。最初の一声を掛ける切っ掛けと勇気がない。セックスに目覚めた桜子の本質は変わらなくても凛とした部分が柔らかくなるから声をかけやすくなる」
「男性に媚びを売るってことじゃなくても……そうなの??」
「桜子は好感を持った男にゴロニャ~ンするのに時間がかかる。その部分が好意を持つ男たちにバリアだと感じさせていたんだけど、自然と薄れると思う」
「嬉しいような嬉しくないような、あなたはそんな私をどう思うの??」
「さっきも言ったろ、そんな男がいたらぶっちめてやる」
「ウフフッ、嬉しい……そうだ、鈴木君と望月君って生徒がいるんだけど、どうして知っているの??」
「鈴木は浜松が本社の自動車メーカーの創業者の姓だし望月姓は静岡と山梨に多いから言ってみただけだよ。あとは競輪選手で鈴木と渡辺姓も多い気がする」
「なんだ、私をストーキングしているのかと思って喜んだのに……ストーカーじゃなくて、ざんねん」
背後から抱きしめた桜子の首筋に舌を這わせ、息を吹きかけるとブルッと震えて、ウッウッ、アンッと艶めかしい吐息を漏らす。
男の右手が下腹部を擦り、左手が胸の膨らみの先端を摘まむと、アンッ、イヤッ、気持ちいいと吐息が喘ぎ声に変わり、男の腕に添えた手に自然と力がこもる。
「爪を立てると痛いよ」
「ごめんなさい。気持ち善くって、つい……」
「いいんだよ、怒っているわけじゃない。今は桜子と二人っきり、なにがあっても楽しい」
「ウフフッ、あなたは私に惚れている。正直に言っちゃえばいいのに……ねぇ、なにを聞いても怒らない??」
「桜子の言葉なら、どんなことでも腹は立てないって分かっているだろう」
「うん、答えがほしいってわけじゃないけど、聞きたいの……高浜さんとは同期入社なんでしょう??その高浜さんが言ったんだけど、あなたは入社時に奥様とお子様がいたって本当なの??」
「ほんとうだよ。履歴書に妻と一歳の息子ありと書いた」
「浪人してないでしょう、奥様とは幼馴染とか??」
「違うよ。一年近く通ったスナックのママだった。で、ある日、子供ができたらしいと言われて、結婚式は3年の秋、両親に結婚の意志を告げた時に入籍した……以上」
「もっと色々聞きたいことがあったのに、以上って宣言されちゃ、しょうがないね。もう一つだけ、結婚を前提に付き合っていたの??」
「そんなことは考えたこともないよ。お互いに都合のいい相手、赤ちゃんが宿んなきゃ結婚することはなかった」
「子供が出来て責任を取ったってことなの??」
「責任なんて考えたこともない。5年先、10年先の目標はあるけど、今大切なのは目の前のことを一つ一つ処理すること。子供が出来たなら、二人で育てればいい。そう思ったから結婚しようって言った」
「結婚を考えたことのない相手でも??」
「嫌いならベッドを共にすることもなかったし、結婚しようと言った時から大好きになった……その頃よりも今はもっと好きになった」
「愛しているって言わないのは、今でも愛する人を待っているからなの??」
「クククッ、誤解しないでくれよ。あの頃は女性を二つに分けていた。したい女としたいと思わない女……したい女は好きな女性、そのうちの一人に赤ちゃんができた」
「ひどい男ね、女をやりたいか、やりたくないかで分けるなんて」
「あの頃は穴があればってことで、美人なら竹輪でもって頃だったからな」
「やっぱりひどい男。私は美人の竹輪??そうなの??」
「桜子は美人の竹輪じゃないさ。言っただろう、とびっきりの好い女だよ」
「ウフフッ、よく分からないけどあなたの言葉を信じる……奥様に申し訳ない気持ちになるけどね」
「妻はオレと二人の時間を楽しんでくれるから喜びは二倍に、悲しいときは二人で分かち合うから半分になる。女性に嫌われるようじゃ嫌だよと言うけど、オレはその言葉を素直に受け取っている」
「クククッ、身勝手なのか奥様に素直なのか嫌な男。浮気は奥様公認ってこと??」
「それは違うよ、オレは浮氣をしない。オレはいつも本気,浮ついた気持で女性と付き合うのは相手にも自分にも、そして妻にも失礼。オレは誰が相手でも常に本気だよ」
「悪い男と狡い男っているけど、あなたは……」
「オレは狡い男。そんなに褒めんなよ、照れちゃうよ」
「狡い男って認めておいて、褒められていると思うなんて図々しい」
「妻との時間は本気。桜子との時間も本気……世間の評価は狡い男ってことになるんだろうな。桜子がそんなオレを嫌いになるならしょうがない……」
「残念でした。私はあなたを嫌いになってあげない……好きなんだもん。連絡してくださいって書いたメモを渡して手に入れた男なんだから」
「そうか、ありがとう。桜子の顔を見たい、身体の向きを変えてくれよ」
「イヤッ、今はあなたを正面から見ることができない。恥ずかしいもん」
「それじゃあ、もう一度目隠しをするけどいいの??」
「今日のあなたは強引……」
「オレは強引で身勝手な男だよ、嫌いにならないでくれよ」
「強引なあなたを嫌いじゃないし、傲慢ではないよ。キスするって約束してくれたら身体の向きを変えてあげる」
「キスでもマン舐めでもなんでも約束するよ」
「クククッ、いやらしい」