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桜子 -9

二度目のデート

朝食はルームサービスで済ませ、11時過ぎにチェックアウトするまでベッドから離れることなくじゃれ合っても飽きることはない。
二人で朝を迎えるのが初めてと思えないほど気持ちも身体も馴染んでいた。
互いの記憶を身体と心に刻み込もうとしてまさぐり合うと性的渇望が蘇り、自然と男と女の象徴に手が伸びる。
二度目のセックスでようやく欲望が治まり平静を取り戻すことが出来た。
昼食を終えて桜子が住むマンションに送り、美味しいコーヒーを淹れるから寄って行くかという誘いを楽しみは次に取っておくと言って婉曲に断った。

桜子の誘いに嬉々として応じ、ダボハゼのように食らいついた一度目のデートを思うと次はオレが誘うと約束したものの連絡するのを躊躇する。
二週間を過ぎて、そろそろ連絡しないと記憶から洩れるかなと思い始めたタイミングで仙台の近郊に住む友人から誘いを受けた。
日帰りの予定で誘いを受け、これも何かの切っ掛けと思い、帰宅後、連絡することにした

当日、用を済ませて仙台駅に送ってもらったタイミングに合わせたようにスマホが着信を知らせてくれる。
「もしもし、私……分かるでしょう??」
「えっ、うん、分かるよ、もちろんだよ」
「じゃあ、名前を呼んでくれる??」
「桜子ちゃん」
「良かった、忘れられたのかと思っちゃった」
「明日にでも連絡しようと思っていたから驚いちゃったんだよ。それより、どうした??」
「インフルエンザに罹っちゃって寝込んでいたんだけど、完治したって先生のお墨付きを貰ったの。お店からもらった休みは残っているし、それで連絡したんだけど今は何しているの??」
「仙台駅で帰りの新幹線の切符を買うところだよ」
「東京駅、それとも大宮駅??インフルエンザは完治したから迎えに行ってもいいでしょう??」
「……仙台まで来ないか??帰るつもりだったけどホテルを予約するよ。急でムリかな??」
「無理じゃない、すぐに出る。長い間、待たせちゃ悪いもんね」


新幹線ホームから階段を下りてくる桜子は病み上がりとは思えないほど溌溂として歩く姿も凛として格好いい。
周囲を気にする様子もなく柏木に向かって手を振り、気付いた人は桜子と視線の先で微笑む柏木を見比べる。
「待たせちゃった??急いできたんだけど、ごめんね」
「来てくれてありがとう。バッグを持つよ」
バッグを持つ柏木に手を添えて歩く桜子は笑みを絶やすことなく横顔を覗き込み、
「初めての時は私がホテルのラウンジであなたを待っていたでしょう。私はあなただと直ぐに分かった。駅で待っていてくれたあなたは私が直ぐに分かった??ねぇ、どうだった??」
「分かったよ、桜子を見間違うわけがないだろう」
「ウフフッ、惚れているって言っても迷惑じゃないよ」

ホテルを目指して10分ほど歩き、部屋に案内されると桜子の頬が紅潮する。
「青葉山公園ですか??」
天井から床までの窓の向こうに見える景色を指差してベルボーイに問いかける。
「左様でございます。広瀬川を渡れば青葉山公園で政宗像がございます。明日、お時間があるようでしたら散策されるとよろしいですよ」

ベルボーイが退室するとテーブルに視線を移して、この間のシャンパンの様なサプライズがないのかと不満顔になる。
「インフルエンザ完治のお祝いをオプションで用意してもらっているよ。食事から帰った後の楽しみにしておこうか」
「ほんとう??ねぇ、なに??教えてよ……いじわる、ウフフッ」
「牛タンを食べに行こう」
フロントに立ち寄り、何軒かの牛タン専門店を教えてもらって中央通りを国分町に向かって歩く。

「不謹慎な言いかたになっちゃうけど、国分町って震災からの復興途中で賑わったところでしょう??夜の仕事を始めた頃、先輩に聞いたことがある。東京からも流れて行った人がいるらしいって……」
「何かで聞いた記憶があるよ。復興に携わる人たちも人間だから、食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求から逃れることはできない。オレの実家は関西で神戸淡路震災の直接の被害はなかったけど、近くのJR駅は被害があったし親戚や友人が被害を被った。数か月前に結婚したばかりの友人もね……震災後、ビルの地下で営業していた風俗店の再開は早かったらしいよ。水さえあればってことでバケツの水で……衣食足りてナントカって言うけど、性欲は生きる力にもなるんじゃないかな」
「クククッ、じゃぁ、牛タンで食欲を満たした後は、性欲、睡眠欲の順で満足させてくれるの??」
「仙台の牛タン、桜子の身体、桜子を抱いて眠る。幸せな夜になりそうだ……桜子に連絡してよかったよ」
「あのね、連絡したのは私。あなたじゃない、忘れたの??」
「ごめん、そうだった。明日連絡する積りだったから勘違いしちゃった」

地下に続く階段を下りた店で定食、牛タン冷しゃぶ、牛タンスモークなどを堪能し、
「せっかくの国分町、どこかで飲んでいこうか??」
「ホテルのバーでもいいし、部屋でも飲める。帰ろうよ」
高浜に言わせると、店では凛として口説く隙も見せてくれないという桜子が柏木の腕を巻き込むようにして歩くのを見ると、どう反応するかと思うと自然と表情が緩む。
「どうしたの??ニヤニヤして気持ち悪い」
「えっ……桜子のような好い女と歩いていると思うと嬉しくなっちゃうのはしょうがないだろう」

ホテルに戻った桜子は欲情を隠そうともせずにキスをねだり、お風呂の準備をしてくるねとバスルームに向かう。
桜子の喜ぶ顔を想像するとこみ上がる笑みを堪えることが出来ず、フンッと咳払いをしてコーヒーメーカーをセットする。
「大好き……花を浮かべたバスなんて南国のリゾートホテルみたい。お湯を足せばいいんだよね」
「花に埋もれてバスタイムを楽しむ桜子。桜の花じゃないと思うけど似合うだろうな。コーヒーを飲む??」
「うん、飲む、バスタイムは昂奮を鎮めてからにする」


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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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