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桜子 -8

ピロートーク

湯を張ったバスタブに浸かり夜の東京湾を照らす煌びやかな夜景に魅せられる柏木はバスルームのドアが開く気配に視線を向ける。
柏木に視線を向けることなくシャワーブースに入り、背中を見せたまましゃがみ込んで股間を洗い終えると振り返り、羞恥を浮かべてニコッと微笑む。
邪知のない可憐な笑顔に股間が反応しそうになり、両手で湯を掬ってブルブルッと顔にかける。
「私の背中を見たい??それとも正面??」
「桜子の顔を見ていたい」
「ウフフッ……これでいい??」
足を伸ばしてゆったり浸かることのできるバスタブの反対側に入り、足を絡めるようにして顔を見合わせると柏木は視線を外して夜景を見る。

「私に興味がないの??それとも意気地なしって呼ばれたい??」
「そうだな……興味はあるよ。桜子に興味がないって言うほど野暮じゃない」
「ウフフッ、意気地なしなんだ……こんな風にするとドキドキする??」
柏木の両足を跨いで少しずつにじり寄り、顔が接するほど近付いていく。
「私に興味がないわけじゃないんでしょう??どうして顔を逸らすの??」
「困らせるなよ。オレは自信家じゃないから、そんなことを言われても……」
「出ようよ。続きはベッドで問い詰めてあげる」
「取り調べのようだね」
「そうだよ、覚悟してね」

カーテンを開け放ったままナイティを着けてベッドに上がるとサラサラとしたシーツの感触が心地好く自然な振る舞いで柏木は左腕を伸ばし、桜子もまた当たり前のように腕枕される。
「幸せ……はしたないと思われたらどうしようと思いながら誘って良かった。断られたら店を辞めたかもしれない。そうなったら、あなたの責任だったんだよ」
「次もアリなら、オレが誘ってもいいか??」
「あれっ、今度はあなたが誘ってくれるって約束したのを忘れたの??お店は遠いから高浜さんに誘われた時だけで勘弁してあげる。店の外で会いたいの、忙しいって言うなら私があなたの家まで行くよ」
「オレが愛撫する処が性感帯になると言ってくれたけど、琴線に触れるとは桜子がオレにかけてくれる言葉の事だよ……」
「ウフフッ、ほんとう??じゃぁ、ご褒美を頂戴」

腕枕したまま体重をかけないように覆い被さり額に掛かる髪を整えると眩しそうに見上げて、
「早く、焦らしちゃ嫌」
柏木は舌を突き出して唇をつつく。それに応えるように桜子の舌が這い出て宙でつつき合い絡みつく。
舌が躍り、絡み合う二人は昂奮で息を荒げる。
ハァハァッ……ジュルジュル、ヌチャヌチャッ……桜子の上下の唇を甘噛みして舌先で唇を刷くと、柏木の首に両手を回して抱き寄せ、焦らすのは嫌だと言わんばかりに濃厚なキスを自ら仕掛ける。
覆い被さる柏木がゾロリと唾液を流し込むと瞳を真っ赤に染め、白い喉を上下して嚥下する。

クククッ……再び腕枕をしたまま横たわる柏木を見ることもなく暗い天井を見つめたまま桜子は思い出し笑いする。
「どうした、気持ち悪いな。何か思い出しちゃったか??」
「だって、おかしいんだもん。同伴でしゃれたお店や高級な食事をごちそうになることはあるけど、シャチのショーを見て水浸し……あんなに笑ったのは久しぶり」
「しゃれた店を知らないし、桜子に喜んでもらおうと考えたらシャチに思い至っただけだよ。おかしいか、そうか、そうだよな、ゴメン」
「誤解しないでよ、楽しかったんだから。食事を終えてこの部屋に戻った時、シャンパンを用意してくれたでしょう……しゃれた店を知らない人のする事じゃないよ。あなたの過去に嫉妬しちゃいそう」

「退職してからも高浜さんともう一人、三人の付き合いはずっと続いているんでしょう、いい事を教えてあげようか」
「うん、聞きたい」
「どうしようかな……ただじゃ嫌、ご褒美をくれたら教えてあげる」
柏木は右手の人差し指で桜子の左胸をつつく。
「アンッ、ポッチンに当たったけど、これじゃご褒美じゃない」
胸の膨らみの先端を指先で擦り、腕枕した左手が右胸の麓をヤワヤワと揉み始める。
「イヤンッ……クゥッ~、ねっ、言ったでしょう。あなたの触れる処が私の性感帯」
「嬉しい事を言うね」
指の腹で擦り、手の平で擦る。手の平がくすぐったく感じるまで円を描くように蠢かすと、桜子は眉間に皴を刻み、舌が唇を這う。
「アンッ、そんな事をされると……ウッ、クゥッ~、もう一度、抱いてくれるの??我慢できなくなっちゃう」
「好い事って何か、教えてくれるんだろう??」
「アンッ、意地悪……」
柏木の指が先端を摘まんでキュッキュッと捻ると目を閉じ、下唇を噛んで顔を仰け反らせる。
白い喉が艶っぽくて思わず唇を重ねようとすると、桜子が目を開ける。

「男の人には可愛げのない女に見えることもあるらしくて、しばらく男性と親しく付き合ったことがないの……それで、高浜さんに好い人いないかなって言ったら、居るよ。気に入るかどうか分からないけど、気後れすることなく桜子ちゃんの相手をする男がって、今度連れてくるからって言ってくれたのが柏木さんだったの」
「光栄だね、ハマはオレの事を何て言ったの??」
「クククッ、背の高い桜子ちゃんにサイズ負けすることはないし、上品で清楚、加えてスケベな好い女が好き……酷い言いかたでしょう。元同僚って聞いたから、粗野でがさつ、何か問題を起こしてクビになった男性を想像したの」
「それはヒドイな。桜子が悪いのかハマの言いかたが悪いのか分からないけど。で、印象は崩れた男って事だったのか」
「言ったでしょう、崩れたって言うのは好印象だって、会社帰りでスーツ姿のお客様が多いから新鮮だったの。それに一目惚れしたから……ウフフッ、今は腕枕をしてもらっている。私の印象がどうだったのか聞かせて……」

胸の膨らみを包み込むように添えた手を動かすこともなく、耳元に顔を近付けて息を吹きかける。
「イヤンッ、あなたの触れる場所が性感帯になっちゃうんだよ。気持ち善くなったら責任取ってくれる??」
「クククッ、桜子が相手なら一晩に3回は出来るだろうな、試してみるか??」
「バカッ、無理しなくていいよ。ねぇ、私の印象を聞かせて」
「水割りを作るとき流れるような動きで無駄がない。姿勢が好いし、表情が良かった。無理に合わせようとして不自然な笑顔を浮かべることはないし、凛として格好良かったよ」
「じゃぁ、どうして誘ってくれなかったの??」
「自信家じゃないから、桜子のような好い女を口説くには水割りの量が足りなかった」
「酔っぱらわせないと口説いてもらえなかったんだ。ザンネン……はしたないかなと思ったけど私が誘って正解だったんだ。ウフフッ、ねぇ、私の事が好き??」
「あぁ、好きだよ」
「指切りして、ねぇ、指切り……私の事を誘って店の外で会うって約束してよ」

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のます、指切った……約束したよ」
「これからはオレが誘うって約束するよ」
「うん、安心したら眠くなった。寝るのは時間がもったいないけど、楽しい明日は寝ないと来ないもんね」
「夢ン中で桜子がドッカへ行っちゃわないように腕枕してるよ」
「私が迷子にならないように心配してくるの??嬉しい」
「おやすみのキスをしよう」
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プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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