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雨 -2

男と女

キスを終えた二人は逸る気持ちを隠そうとして視線を合わさず、あえて正面を見てグラスを口にする。
男はバックバーの奥に張った鏡の中の愛美に可愛いよと囁く。
「フフフッ、なんか照れるな。こんな、はしたない誘い方をして変だけど……住まいは別にあるけど、二階が簡単な居住スペースになっているの……あなたの帰りを待っている女性がいればしょうがないけど、いないなら雨が止みそうもないし、衣服が乾くまで雨宿りしていかない??」

愛美に誘導されて二階に上がった男は視線を巡らす。
ベッドやバスタブ付きシャワーユニット以外に目立った家具もなく、衣類はハンガーラックと衣装ケースに幾つかある程度と愛美の言う住まいは別だという言葉を思い出させ、店内の趣味の好い内装との違いに苦笑いする。
「色気のない部屋でしょう。ここは仕事前と終わった後の仮眠程度しか使わないからキッチンスペースもこの程度で間に合うの……シャワーを使って、私も汗を流すから」
ずぶ濡れのズボンとシャツを脱いだ男は下着と靴下だけを残してシャワーユニットの前で立ち尽くす。
「全部、脱がなきゃ洗えないでしょう」
「それはマズイだろう」
「大人の男と女。女の部屋に入った男が今更だよ……諦めなさい。あなたは女郎蜘蛛の糸に絡めとられた雄蜘蛛、捕食されたくなかったら私を満足させなさい」
「愛美さんを満足させるしか、蜘蛛の糸から逃れる方法はないのか??」
「そうなの、さっきも言ったけど、男女を問わず、私以外の人をここに迎えたのは初めてだよ。ガッカリさせないでね……あなたに一目惚れしちゃったの、あなたは??」
「私も愛美さんに一目惚れ……今でもドキドキしてるよ」

「靴下やシャツは脱ぎっぱなしでいいよ。すぐに洗っちゃうから」
唇を合わせたくなるのを我慢した男は脱いだ靴下と下着をその場に残し、シャワーユニットの扉を開く。
コントロールパネルやシャワー用カランの付いた背面以外はクリアーガラスのため素通しで、愛美から丸見えなのが気になるものの、彼女が使用する景色を想像すると股間がピクッと反応する。
ボディシャンプーで全身と髪を洗い、シャンプーを流した男はバスタブに湯を張る用意をしてさっさと出る。

キッチンで手洗いしたのか、男の下着や靴下とシャツをハンガーに掛けた愛美は、ブラジャーとショーツだけを着けた姿の清潔な色気で男を刺激する。
「あらっ、私の下着姿じゃ昂奮しないんだ。悲しいな……私のガウンは小さいだろうからタオルで我慢してくれる??」
タオルを腰に巻いて縮こまったままの股間を隠した男の唇にチュッと音を立てて唇を合わせ、シャワーユニットに近付いてバスタブに湯を張ったのを見て満面に笑みを浮かべる。
ありがとうの言葉とともに愛美は振り返り、屈託のない笑顔に頬を熱くする男は、オレは間違いなく恋していると気持ちが騒めき始める。
背中を見せてブラジャーを外して嫣然と微笑み、ショーツを足から抜く瞬間に股間の陰りを見せる。

愛美は顔の左側を見せてバスタブに浸かり、巧みな手の動きで胸の膨らみの先端を隠す。
男の視線をくぎ付けにするしなやかな指の動きで白い腕を擦り、行儀の悪い格好でバスタブの縁に伸ばした足を見せつけて挑発する。
大部分はバスタブで隠れている太腿のムッチリとした肉感にゴクッと唾を飲み、膝下から踝に続く伸びやかな美しさに頬を緩める。
「どうしたの??裸の女を見るのが初めてではないでしょう??」
眉を吊り上げ、怒った振りをする男を焦らすようにボディシャンプーで全身を泡まみれにして、アッカンベーと舌を出す。
一見、クールに見えるけど積極的で、自分の意思を曲げない女性とイメージしていた愛美の茶目っ気に男の気持ちが穏やかになり、
「ワインを1本持ってくるよ」と、声をかけて店に戻り、チーズとクラッカー、白ワインとグラス2脚を用意して戻る。

バスローブ姿でベッドに座る愛美はチーズやワインを確かめて、
「これは偶然……じゃないよね??ゴーダチーズ、リースリングワインとリースリングワイン用グラス。リースリングワインを選んだのは、二人の時間に相応しいからかしら??」
「能書きを言うほどワインに造詣が深いわけじゃないから、この選択を褒めてもらえるのは嬉しいけど偶然だよ。愛美さんの店を見つけた事と言い、今日の私は人生最良の日を迎えたのかもしれない」
「好いわ、そういう事にしてあげる。開封してくれる??」
愛美に試されている事が分かっても男は平静を崩すことなく、いつも以上に巧く開栓して二つのグラスに注ぐ。

「愛美さんを紹介してくれた雨に乾杯」
「待っていた男性に合わせてくれた雨に乾杯」
顔の前で捧げ持ったグラスで乾杯した二人はフルーティーでキリッとした酸味の白ワインを味わい、どちらともなく顔を近付けて唇を合わせる。
蕩けるような唇の感触に酔い舌を絡ませて満足感に満ちた時間を過ごせることを確認した二人は、糸のように伸びた唾液が二人をつないで離れがたい思いを示すのを朱に染めた瞳で見つめる。
「恥ずかしい……男の人とこんな風に過ごすのは久しぶり」
「可愛いよ。今までも雨は嫌いじゃなかったけど、それは嫌な事を洗い流してくれるからだった。今日は改めて、雨が引き合わせてくれる出会いもある事を知って、もっと好きになった」
「あの日の雨が止んでいたら、すれ違っていただけかも……少し違うと思うけど、こんな詩の歌があったよね、知らない??」
「多分、西野カナさんの、ifだと思う」
「そうだ、それ、ifだった……明日、買いに行く。今度、あなたが名前を教えに来てくれたら、その曲で迎えてあげる。他のお客様がいても二人だけの秘密」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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