彩―隠し事 50
土曜日の午後
前ボタンのデニムスカートにざっくりセーターを合わせた彩に倣い、チノパンとTシャツを着けてデニムジャケットを羽織る。
「彩はセーターなのに健志は上着があるの??」
「バッグを持たないから財布や小銭ジャラジャラを入れるポケが必要だろ」
「そうか、分かった。何処に行くの??」
「彩は元気かもしれないけど、オレはダメだ。彩が相手でも二回は頑張りすぎた、お日さまが黄色いよ。目的もなく歩きたい……デートのようだからダメかな??」
「いいよ、嬉しいかも。セックスが目的の付き合いみたいなもんだけど、会う度、時間の許す限りアレだけじゃね」
駅へ続く坂道を歩き始める二人は言葉を交わすことがなくても不安に思う事はなく、求め合う手は自然とつながる。
微風と戯れる彩の髪がサワサワと揺れて、乱れ髪を掻き揚げる手の白さと艶のある黒髪との対比が清潔な色っぽさを感じさせて健志の頬が緩む。
「どうしたの??面白い景色があった??」
前を向いて歩いていたはずの健志が横目で見ながら彩を気にしていたように、彩もまた健志の様子を気遣っている。
「あれっ、タケちゃん、デートなの??」
「そうだよ、こうして手をつないで歩くだけでウキウキするのは久しぶりだよ」
健志はつないだ手を顔の前まで持ち上げて、顔を綻ばせ、
「彩さん、この人は、え~っと……」
「私はキャバ嬢なの、タケちゃんはお客様。ややこしい紹介は必要ないよね。タケちゃんをよろしくね、彩さん。急いでいるから、これで失礼するね。お店で待っているからね」
開け放った窓から一陣の風が吹き込み、あっという間に反対側の窓から出て行くような爽快な空気を残し、振り返ることなく頭上で手を振りながら遠ざかっていく。
呆気にとられたような表情でキャバ嬢だと名乗った女を見送った彩は、健志を覗き込んで、
「今の人と寝たことがあるでしょう??食事をするのと同じようにやっちゃいそうな人。好き嫌いがはっきりしていて、好きなものならパクッと食べちゃう……間違えている??」
「うん、そうかもな。買い物に付き合ってくれって言われたんだけど、途中で雨が降ってきたんだよ。偶然、ラブホが目の前、ここで雨宿りしようかって、どちらともなく口にした」
「部屋に入ったら、雨が止むのを待つ間にすることをしようって、スッポンポンになっちゃった??」
「彩は超能力があるみたいだな、大体あっているよ」
立川駅前からペデストリアンデッキを北に向かい、伊勢丹とモノレール北駅の間を通り高島屋を過ぎてパレスホテルに入る。
ピザに物足りなさを感じていた健志がランチバイキングを食べようと声をかけると、
「うん、いいよ……アレッ、ちょっと待って……もう少し後じゃダメ??」
彩の視線の先には15時から始まるスイーツバイキングの案内がある。
「彩はスイーツ.バイキングの方がいいのか??」
「ダメ??サンドイッチやフルーツもあるからいいでしょう??」
「よし、出直そうか。その前に今日は土曜日だから予約しとこう」
ホテルを出て、どうしようかと思案顔の健志に彩はニヤッと悪戯っぽい笑みを送る。
「今日は土曜日。昔、エアグルーブが男たちを蹴散らして天皇賞を勝ったレースを覚えている……最近はやってないけど、運試ししない??健志と一緒ならツイテルって確認したい。どうかな??」
「分かった。ウィンズまで5分ほど歩くよ……日曜はセントライト記念、今日は阪神でローズステークスだったかな」
立川駅を北口から南口に移動してゲームセンターの脇を通り過ぎてウィンズに向かう途中、彩はコンビニが入るビルの看板にオモチャ屋を見つけると乾いた舌に唇を這わせて滑りを与える。
ウィンズに着いた二人は新聞をざっと見て、
「彩は分からないから、エアグルーブに乗っていた武豊騎手。それ以外は健志が選んで、健志が女神さまに愛されているかどうか分かるわよ」
「女神さまが彩に変身しているかもしれないから頑張ろう」
新聞を穴が開くほど睨みつけた健志は、マークカードに記入する。
健志が選んだモズカッチャンと彩の言う武騎手の乗るリスグラシューの2頭軸マルチ3連単で相手に、カラクレナイ、サトノアリシア、ブラックスピーチ、メイショ―オワラ、ヤマカツグレースの5頭の馬番をチェックして購入金額300円で合計9000円と共に発券機に投入する。
「当たりそう??何通りなの??」
「2頭軸マルチの相手5頭は30通り。18頭立てだから4896通り。単純に数学的確立からは163分の1、大丈夫だろう」
阪神競馬場11R、発送時刻15時35分を待たずに、丁度いいよと促してホテルに戻る。
彩は途中、コンビニの前でわざとらしく顔を上げて、大人のオモチャ屋さんの位置を確かめる。
スイーツバイキングの開始早々というのに満席に近く、予約してあったことでホッとする。
彩はこのホテル自慢の地元産のハチミツ使用のロールケーキ、立川ロールに頬を綻ばせ、フルーツ満載のタルト、抹茶フィナンシェ、バナナプリン、メロンショートケーキ、黒ビールのムースやクレープと呆気にとられるほどの食欲を見せる。
彩に食欲を奪い取られた格好の健志は、健啖ぶりに笑みを浮かべてペペロンチーノを食べる。
「満足した??」、「食べすぎちゃったみたい」、「多摩川を見ながらのんびり歩いてみようか??」、「そうだね、まだ4時過ぎだもんね」
立川北駅でモノレールに乗って柴崎体育館で降車、新奥多摩街道を渡って多摩川に向かう。
緑地公園は犬の散歩をする人、親子やグループでボール遊びをする人、ジョギングやロードバイクで颯爽と駆ける人など土曜日の午後を楽しむ人たちで溢れている。
雑木が茂る場所を多摩川に向かって入ると人はいなくなり、緑地公園で遊ぶ人たちの喧騒も聞こえなくなる。
「食べすぎちゃったかなぁ??今日はヨガをしなきゃ、有酸素運動って効果があるんだよ」
調べてあげるよと言った健志は、セーターの裾をたくし上げて真っ白な腹部を丸見えの状態にしてブラジャーをずり上げ、乳首に吸い付き、前ボタンスカートのボタンを外していく。
「だめ、いやっ、見られちゃう。やめて……」
「大丈夫、ここには誰も来ないし、どこからも見えない。彩の素晴らしい身体を自然の中で見てみたい」
前ボタンのデニムスカートにざっくりセーターを合わせた彩に倣い、チノパンとTシャツを着けてデニムジャケットを羽織る。
「彩はセーターなのに健志は上着があるの??」
「バッグを持たないから財布や小銭ジャラジャラを入れるポケが必要だろ」
「そうか、分かった。何処に行くの??」
「彩は元気かもしれないけど、オレはダメだ。彩が相手でも二回は頑張りすぎた、お日さまが黄色いよ。目的もなく歩きたい……デートのようだからダメかな??」
「いいよ、嬉しいかも。セックスが目的の付き合いみたいなもんだけど、会う度、時間の許す限りアレだけじゃね」
駅へ続く坂道を歩き始める二人は言葉を交わすことがなくても不安に思う事はなく、求め合う手は自然とつながる。
微風と戯れる彩の髪がサワサワと揺れて、乱れ髪を掻き揚げる手の白さと艶のある黒髪との対比が清潔な色っぽさを感じさせて健志の頬が緩む。
「どうしたの??面白い景色があった??」
前を向いて歩いていたはずの健志が横目で見ながら彩を気にしていたように、彩もまた健志の様子を気遣っている。
「あれっ、タケちゃん、デートなの??」
「そうだよ、こうして手をつないで歩くだけでウキウキするのは久しぶりだよ」
健志はつないだ手を顔の前まで持ち上げて、顔を綻ばせ、
「彩さん、この人は、え~っと……」
「私はキャバ嬢なの、タケちゃんはお客様。ややこしい紹介は必要ないよね。タケちゃんをよろしくね、彩さん。急いでいるから、これで失礼するね。お店で待っているからね」
開け放った窓から一陣の風が吹き込み、あっという間に反対側の窓から出て行くような爽快な空気を残し、振り返ることなく頭上で手を振りながら遠ざかっていく。
呆気にとられたような表情でキャバ嬢だと名乗った女を見送った彩は、健志を覗き込んで、
「今の人と寝たことがあるでしょう??食事をするのと同じようにやっちゃいそうな人。好き嫌いがはっきりしていて、好きなものならパクッと食べちゃう……間違えている??」
「うん、そうかもな。買い物に付き合ってくれって言われたんだけど、途中で雨が降ってきたんだよ。偶然、ラブホが目の前、ここで雨宿りしようかって、どちらともなく口にした」
「部屋に入ったら、雨が止むのを待つ間にすることをしようって、スッポンポンになっちゃった??」
「彩は超能力があるみたいだな、大体あっているよ」
立川駅前からペデストリアンデッキを北に向かい、伊勢丹とモノレール北駅の間を通り高島屋を過ぎてパレスホテルに入る。
ピザに物足りなさを感じていた健志がランチバイキングを食べようと声をかけると、
「うん、いいよ……アレッ、ちょっと待って……もう少し後じゃダメ??」
彩の視線の先には15時から始まるスイーツバイキングの案内がある。
「彩はスイーツ.バイキングの方がいいのか??」
「ダメ??サンドイッチやフルーツもあるからいいでしょう??」
「よし、出直そうか。その前に今日は土曜日だから予約しとこう」
ホテルを出て、どうしようかと思案顔の健志に彩はニヤッと悪戯っぽい笑みを送る。
「今日は土曜日。昔、エアグルーブが男たちを蹴散らして天皇賞を勝ったレースを覚えている……最近はやってないけど、運試ししない??健志と一緒ならツイテルって確認したい。どうかな??」
「分かった。ウィンズまで5分ほど歩くよ……日曜はセントライト記念、今日は阪神でローズステークスだったかな」
立川駅を北口から南口に移動してゲームセンターの脇を通り過ぎてウィンズに向かう途中、彩はコンビニが入るビルの看板にオモチャ屋を見つけると乾いた舌に唇を這わせて滑りを与える。
ウィンズに着いた二人は新聞をざっと見て、
「彩は分からないから、エアグルーブに乗っていた武豊騎手。それ以外は健志が選んで、健志が女神さまに愛されているかどうか分かるわよ」
「女神さまが彩に変身しているかもしれないから頑張ろう」
新聞を穴が開くほど睨みつけた健志は、マークカードに記入する。
健志が選んだモズカッチャンと彩の言う武騎手の乗るリスグラシューの2頭軸マルチ3連単で相手に、カラクレナイ、サトノアリシア、ブラックスピーチ、メイショ―オワラ、ヤマカツグレースの5頭の馬番をチェックして購入金額300円で合計9000円と共に発券機に投入する。
「当たりそう??何通りなの??」
「2頭軸マルチの相手5頭は30通り。18頭立てだから4896通り。単純に数学的確立からは163分の1、大丈夫だろう」
阪神競馬場11R、発送時刻15時35分を待たずに、丁度いいよと促してホテルに戻る。
彩は途中、コンビニの前でわざとらしく顔を上げて、大人のオモチャ屋さんの位置を確かめる。
スイーツバイキングの開始早々というのに満席に近く、予約してあったことでホッとする。
彩はこのホテル自慢の地元産のハチミツ使用のロールケーキ、立川ロールに頬を綻ばせ、フルーツ満載のタルト、抹茶フィナンシェ、バナナプリン、メロンショートケーキ、黒ビールのムースやクレープと呆気にとられるほどの食欲を見せる。
彩に食欲を奪い取られた格好の健志は、健啖ぶりに笑みを浮かべてペペロンチーノを食べる。
「満足した??」、「食べすぎちゃったみたい」、「多摩川を見ながらのんびり歩いてみようか??」、「そうだね、まだ4時過ぎだもんね」
立川北駅でモノレールに乗って柴崎体育館で降車、新奥多摩街道を渡って多摩川に向かう。
緑地公園は犬の散歩をする人、親子やグループでボール遊びをする人、ジョギングやロードバイクで颯爽と駆ける人など土曜日の午後を楽しむ人たちで溢れている。
雑木が茂る場所を多摩川に向かって入ると人はいなくなり、緑地公園で遊ぶ人たちの喧騒も聞こえなくなる。
「食べすぎちゃったかなぁ??今日はヨガをしなきゃ、有酸素運動って効果があるんだよ」
調べてあげるよと言った健志は、セーターの裾をたくし上げて真っ白な腹部を丸見えの状態にしてブラジャーをずり上げ、乳首に吸い付き、前ボタンスカートのボタンを外していく。
「だめ、いやっ、見られちゃう。やめて……」
「大丈夫、ここには誰も来ないし、どこからも見えない。彩の素晴らしい身体を自然の中で見てみたい」